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日本経済新聞の新企画『直言』・カリン・マルキデスOIST学長(20230618)~上川陽子法相(20240317)を振り返り、緒方貞子元国連難民高等弁務官の“異質の調和”につながった1on1ミーティングです!

最後になりましたが、変わらず重要なこととして、取り組む必要のある極めて大切な課題が一つあります。それは、苦しんでいる人々に関心を寄せ、行動をとるという各国政府や首脳の政治的意思をどのようにして維持できるか、ということです。私は以下の質問を問いかけて、発言を締めくくりたいと思います。
生活や尊厳が危機にさらされている人々に対して、私たちは十分な思いやりを示しているでしょうか。もしそうだとして、このような思いやりを国際社会における政治的かつ慈善的な行動に転換するには、どうすればよいのでしょうか。
ありがとうございました。
(2013年5月、ニューヨークの国連本部 緒方貞子さん(85歳)スピーチより)

緒方貞子さんは「巨星」だった…

(A課長)
Sさん、おはようございます。
このところ、日経新聞の日曜版の2面に毎回掲載される、大物にインタビューする『直言』を取り上げていませんが、今日の1on1は、3月17日に掲載された、“時の人”へのインタビューから始めてみませんか?

(Sさん)
やりましょう! 時の人…まさにそうですね。今回は上川陽子外相だ。
日経新聞が紙面の刷新を大々的に告知したのが…ちょっと調べてみますね…去年の6月9日です。その第一弾が、日曜版2面「総合欄」の全面刷新でした。社説を掲載する面ですが、それ以外の大スペースを割いて、一人の人物に徹底的にインタビューする、という思い切った企画です。

日本経済新聞2023年6月新企画『直言』のトップバッターはカリン・マルキデスOIST学長

(A課長)
思い出します。その『直言』に、最初に登場するのが、沖縄科学技術大学院大学、OISTのカリン・マルキデス学長です。何事も「最初が肝心」ですから、誰にインタビューするか… 日経新聞は考えたと思います。東大や京大など「日本人にとっての」有名大学を、マスコミは頻繁に取り上げます。ところが、OISTを私たちは知らなかった。世界に冠たる大学院大学が日本に、しかも沖縄にあったのです。私たちは『直言』によってOISTと出逢うことが出来た。

(Sさん)
本当にそうです。『直言』に登場したたくさんの人物のオピニオンを、Aさんと共有することで、ソクラテスの「無知の知」に、ほんの少しだけ近づくことが出来ました。いえ、自己満足そのものですが…(笑)

(A課長)
(笑)…『直言』には、旬の大物だけでなく、過去の大物も登場します。今この時と過去がどうつながっているのかを、振り返ることもできます。コーチングも「振り返り」が重要です。

(Sさん)
Aさんはあらゆる話をコーチングにつなげていく…(笑)
今思ったのですが、私たちの1on1で、『直言』を取り上げた回を振り返ってみませんか?  今回の上川外相につながっていく足跡です。

(A課長)
いいですね、やってみましょう。

(Sさん)
では時系列ということで…
2023年7月5日の1on1に取り上げた『直言』は、日経新聞の論説委員兼編集委員の秋田浩之さんが、米国のブッシュ大統領と歩調を合わせて「対イラク戦争」を主導した、ブレア元英国首相に鋭く切り込んでいます。Aさんは、インタビューを終えた秋田さんのコメントにフォーカスした。秋田さんは、ブレア元首相を五感でつかんでいましたね

毎回の1on1は、Aさんと対話を深めていくことで、テーマに像が結ばれていきます。ですから、後で振り返ってイメージできるよう、「タイトル」を付すことを共有しました。そのときは… 「異和を覚える論説」にも「三猿」ではなく「異質の調和」を目指そうと語り合う1on1ミーティングです! です。

「対イラク戦争」を主導したブレア元英国首相は何を思うのか…

彼の表情が曇り、口ごもったように見えた瞬間が2度あった。1回目は第3次大戦の危機をたずねたときだ。紛争がウクライナ内に限定されることに「望みを抱いている」と応じ、発言を切り上げようとした。(中略)
再び表情が曇ったのが、イラク戦争の是非を2度、聞いたときだ。開戦理由の大量破壊兵器は見つからず、首相だったブレア氏は非難を浴びた。イラクの独裁政権を倒したのは正しかったと信じつつ、なぜ情報収集を誤ったのか、今も自問しているように感じた。

まてよ… こんな感じで振り返ると、上川外相までたどり着けそうにないので、『直言』を取り上げた「日にち」と「タイトル」のみをチェックすることに止めましょうか(笑)

(A課長)
そうしましょう(笑)

(Sさん)
では……

<2023年7月12日>
「AT1債は債権なの?」を起点に「シリコンバレーバンク破綻」「クレディ・スイス損失吸収条項適用」、さらに「トラスティ(Trustee)」につながった1on1です!

<2023年8月9日>
「女子大冬の時代?」… お茶高、お茶の水女子大を考察することで、「男とか女とか…」から自由な発想に広がっていった1on1ミーティングです!

<2023年8月23日>
「(株)ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は日本の変革を提言する啓もう家であり思想家である!」を語り合った1on1ミーティングです!

<2023年8月30日>
本来大きく異なるセクターの経団連十倉雅和会長と連合芳野友子会長は「“賃上げ”が日本の喫緊かつ最重要の課題である」ことを共有している!

<2023年9月6日>
前半は「中国語は音楽的である」、後半は「アンドリュー・ング米スタンフォード大学兼任教授が登場する『直言』」を語り合う1on1ミーティングです!

<2023年10月4日>
前半は「京都駅のトリビア」、後半は「二者択一」を否定するラモス・ホルタ氏、柳井正さん、河合隼雄さんを語り合う1on1ミーティングです!

<2023年10月11日>
前半は信州小布施の「北斎館」、後半は野中郁次郎一橋大学名誉教授の「共感を重んじ知を磨け」にインスパイアした1on1ミーティングです!

<2023年10月25日>
「胡坐座りで講義する哲学者」、シェリー・ケーガン米イエール大学教授の『直言』にインスパイアを得て展開された1on1ミーティングです!

<2023年11月1日>
前半は、「対話の伝道者 カール・ロジャーズ」、後半は、対話とは異なるインタビューを「開成中学・高校 野水勉校長の『直言』」で考えてみた1on1ミーティングです!

<2023年11月15日>
星野リゾート磐梯山温泉ホテルの「温もりのアクティビティ」、森林貴彦監督の「待つコーチング」、そして「極少移民国でなくなる日本の未来」を語り合う1on1ミーティングです!

<2023年11月22日>
前半は「政治対話を拒絶するネタニヤフ首相とその真逆だったエジプト・サダト大統領」、後半は「連合・芳野友子会長の『直言』」を語り合う1on1ミーティングです!

<2023年11月29日>
前半は、伊坂幸太郎さんの『777 トリプルセブン』『マリアビートル』、後半は、武見敬三・厚生労働相の『直言』を語り合う1on1ミーティングです!

<2023年12月6日>
『翔んで埼玉~琵琶湖より愛をこめて~(ネタバレあり)』と、新浪剛史・経済同友会代表幹事の『直言』を語り合う1on1ミーティングです!

<2023年12月20日>
英王立国際問題研究所ブロンウェン・マドックス所長の『直言』を皮切りに、レネ・ハース英アームCEOの『直言』で「新結合≒創造的破壊」を語り合う1on1ミーティングです!

<2023年12月27日>
アビジット・バナジー米マサチューセッツ工科大学教授の『直言』を起点に、日本の「プライマリースクール」の未来を展望する1on1ミーティングです!

<2024年1月11日>
読売新聞が報道する「JAL機、脱出劇“プロの仕事”」に感動し、日本経済新聞『直言』の「ロバート・ゼーリック氏が語る不確実性」を思索する1on1ミーティングです!

<2024年1月17日>
賃上げは、「味の素(日本経済新聞『直言』)」・「連合」・「経団連」の異なるセクターが、“志”を一にする喫緊の大テーマ!

<2024年1月24日>
「SLIM」日本初の月面着陸成功を起点に、「悪しき“物語”」と「善き“物語”」を俯瞰し、「〇〇的なものが、〇〇を覆い隠す」を探索する1on1ミーティングです!

<2024年2月14日>
型を大切にしながら、型にとらわれることなく、現状とは違う未来を志向していくのが、優れたビジネスコーチ!

“対話”に変化していく『直言』は、その人の“素”が匂い立つ…

(A課長)
重ねてきましたね~ インタビューもお互いが真剣にコミットメントすると、それは“対話”に変化します。こうやって振り返ると、対話の醍醐味が感じられる。
人選も実にさまざまです。日本ではほとんど話題にされない、それでも世界の凄い人物に日経新聞はインタビューしている。もちろん「時の人」も登場しますが、多くは「意外な人選」です。「意外だなぁ~」と感じた人も、『直言』を最後まで読み込むと、「なるほど…」と、理解できる。速断は禁物です

(Sさん)
そしてAさん、今回は上川法相です。日経新聞の大見出しは「時が来れば役割果たす」、小見出しは「いまは外相に一意専心」「国益見すえ<もしトラ>対応」の2つを充てている。

ご自身も、「次の首相にふさわしい候補」の一人として急浮上したのには、「まさか…」の思いだと想像します。アクセルがかかったのが、ルッキズムとも解釈されうる麻生副総裁の発言というのも、何がプラスにはたらくか、わかったもんじゃない。
制度疲労が極まった政界の「環境激変」が作用し、「手堅く真面目な仕事ぶり」で定評のある上川さんにスポットライトが当たった、という背景です。

(A課長)
麻生副総裁は、上川外相の「外交手腕」を、もろ手を挙げて評価している。ただし、その「言い方」に対しても、さまざまな声が上がっています。「あれやこれや」もあって、抜群の注目度です。

(Sさん)
私たちは「あれやこれや」から距離を置きましょうか…
Aさんは、『直言』での上川外相の回答のどこにフォーカスしますか?

(A課長)
そうですね、多くは「政局がらみ」の質問です。質問は全部で12ほど。私は、11番目の質問に対する上川法相の回答に響いています。

──女性議員として苦労は多かったのでは。
「難問にぶち当たったとき、尊敬する先輩である元国連難民高等弁務官の緒方貞子さんを思い浮かべる。緒方さんには遠く及ばないが、ロールモデルとの自覚をもって山積する外交課題に正面から向き合いたい」

上川陽子法相のロールモデルは緒方貞子さん!

2年前の5月から6月にかけて4回連続で、緒方貞子さんのことをSさんと徹底的に語り合いました。これも、「日にち」と「タイトル」を確認しておきましょうか。

<2022年5月13日>
『日本左翼史』『ロヒンギャ危機』にみる「閉じた世界」に関する一考察

<2022年5月20日>
『難民に希望の光を 真の国際人緒方貞子の生き方』『緒方貞子 戦争が終わらないこの世界で』etc.…にみる「異質の調和」に関する一考察

<2022年5月30日>
『満州事変(緒方貞子)』、『地ひらく(福田和也)』とコーチングに関する一考察

<2022年6月6日>
『ひとはなぜ戦争をするのか』のアインシュタイン、そして「緒方貞子さんは“上善如水”の人」に関する一考察

最初の5月13日の1on1で、Sさんは、緒方さんの次の言葉を紹介してくれました。ここから、Sさんと私の「緒方さんを探求するする旅」が始まった!

“多様性”への対応ですよね。このごろ、多様性というものはポジティブなこととして出されていますけれどもね。では、多様性にどう対応するか… やっぱり尊敬しなくてはいけないのでしょうね。尊敬というのはオーバーかな? 尊重でしょうか。
隣の人は自分と同じとは思わない方がいいですよ。あなたと私は違うのです。違った部分については、より理解しようとするとか、より尊敬するとかしなくてはいけないのではないでしょうか。“異人”という言葉。あれ、“異なる人”と書くでしょう。人間を見る時には、本当はにんべんの“偉人”でなくてはいけないのですよ。

緒方貞子さんの言葉は「ダイバーシティ&インクルージョン」の本質そのもの!

(Sさん)
5月20日、そして5月30日の1on1で、私は、緒方さんのデビュー論文である『満州事変』(岩波現代文庫)を紹介しています。満州事変が起こった昭和6年・1931年に、渋沢栄一が91歳で亡くなります。あらゆるタイミングが1931年に凝縮されているのを痛感します。

(A課長)
私が「『満州事変』は、どんな“印象”の本ですか?」と、質問すると、Sさんは次のように答えた。とても“印象”に残っています。

極めて冷静な筆致です。多角的で、かつロジカルです。私は日本の近現代史について、保阪正康さん、半藤一利さん、福田和也さん… 日本学術会議の任命拒否問題で話題になった東大大学院教授の加藤陽子さんの本も含めて、たくさん読んできました。いずれの本も「なるほどなぁ~」と感じ入るのですが、緒方さんのアプローチは、それらのいずれとも違っています。

そしてSさんは、それを裏付ける「まえがき」の一節を紹介してくれました。

私は本書において、満州事変当時の政策決定過程を逐一検討することにより、事変中如何に政治権力構造が変化し、またその変化の結果が政策、特に外交政策に如何なる影響を及ぼしたかを究明することとしたい。
このような変化は、対立する諸勢力間の争いの結果生じたものであるが、軍部対文官の対立ということで説明出来るような単純なものではなかった。むしろ、それは佐官級ならびに尉官級陸軍将校が対外発展と国内改革を断行するため、既存の軍指導層および政党ならびに政府の指導者に対し挑戦したという、三つ巴の権力争いとして特色づけられるものである。

(Sさん)
上川法相は緒方さんがロールモデルだと言う。上川さんは、難問に“ぶち当たると”、緒方さんを思い出して「艱難辛苦何するものぞっ!」と、自らを鼓舞されるのでしょう。

(A課長)
「艱難辛苦、汝を玉にす!」ですね(笑)  
そろそろ時間です。Sさん、『直言』を2回目に取りあげた時の「タイトル」を思い出してほしいのですが…

(Sさん)
トニー・ブレア元首相を語り合った1on1ですね。「異和を覚える論説」にも「三猿」ではなく“異質の調和”を目指そうと語り合う1on1ミーティングです!

(A課長)
はい。そして、5月20日のタイトルは、『難民に希望の光を 真の国際人緒方貞子の生き方』『緒方貞子 戦争が終わらないこの世界で』etc.…にみる“異質の調和”に関する一考察

(Sさん)
“異質の調和”がキーワードだ。

(A課長)
この“異質の調和”は、私が学んだ「(株)コーチビジネス研究所」の五十嵐久代表が、講座の中で、私たちに語った言葉なんです。とても深い…

『コーチング思考』は“異質の調和”が鍵!

(Sさん)
なるほど…

(A課長)
五十嵐さんの本が近々出版されます。『コーチング思考』という本で、そこには「新たな道を探るには異質の調和が鍵になる」と、サブタイトルが付されています。さっそくアマゾンに予約注文しました。

(Sさん)
今この時、日本に、そして世界が迫られている「新たな道」だ。
確か…5月30日の1on1の最後で、五十嵐さんの提唱する「異質の調和」を、Aさんは、緒方さんとハーモナイズさせて私に紹介してくれた。その箇所を共有し、今回の1on1の〆としましょう。次回もよろしくお願いします!

今回、Sさんとの1on1によって、コーチビジネス研究所の五十嵐代表が提唱する「異質の調和」の重要性を再認識しています。それは、『緒方貞子 戦争が終わらないこの世界で』の半ばあたりの第5章、「戦争への疑問…満州事変研究」のなかで緒方さんが語る次の言葉に接したことで、その思いを強くしています。
深い愛情と極めて次元の高いリアリズムが一体となった姿が伝わってきます。

緒方 : 自分の国の将来にとってプラスがあると考えるのは、当然だったと言えるでしょう。けれども、そのプラスというものが、ほかの人びとの非常に甚だしいマイナスにならないようにしなければならない。その時に、どこまで現地の人たちにマイナスになるものが許されるのか、それは考えなければいけませんよね。
どこか違う土地に行って、かなり勝手に「これが望まれている」と言って押しつけることは今でもやっていますよ、いろいろなところで。そうでしょう?

小山 : それは、無責任になってしまうことですね?

緒方 : やり方によっては無責任になってしまいます。例えば、アメリカがアフガニスタンにリーダーを送る場合も、アメリカにとって全部プラスになるような人を置いてもしょうがない。あちら側にとってもプラスになることを理解して協力できる人を送るのが、今度はアメリカ側の責任になるわけです。全ての人が同じような生活をしているわけではないですから……

緒方さんはそう言った後、次のように続けた。

緒方 : 内向きはだめですよ。内向きの上に妙な確信を持ってそれを実行しようとすると、押しつけになりますよね。理屈から言えば、そうではないですか。内向きというのは、かなり無知というものにつながっているのではないでしょうか? 違います?

坂本 樹志 (日向 薫)

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