無料相談・資料請求はこちら

前半は信州小布施の「北斎館」、後半は野中郁次郎一橋大学名誉教授の「共感を重んじ知を磨け」にインスパイアした1on1ミーティングです!

心理学を学びコーチングの資格を有する新進気鋭の若手A課長と、部長職を長く経験し、定年再雇用でA課長のチームに配属された実践派のSさんとによる、2023年41回目の1on1ミーティングです。

CDPのA評価獲得で環境問題への意識が格段に高まった!

(A課長)
おはようございます。いきなり秋ですね。寒くなりました。

(Sさん)
まさに。盛夏から晩秋ですよ。季節感が狂ってしまいます。これも温室効果ガスの影響でしょうか。

(A課長)
そういうことだと思います。CDP…環境報告のグローバルスタンダードともいえる非政府組織ですが、A評価を獲得することで社内に環境問題への意識が格段に高まりました。地球規模における喫緊の課題です。

(Sさん)
Z世代のネット調査によると、一番の関心事は環境問題のようですね。科学的知見もどんどん蓄積されています。ディストピアは御免こうむりたいですよ。

(A課長)
私たちの責務です。

(Sさん)
本当にそうです。天候の話は定番のアイスブレイクですが、ちょっと重くなりましたね。さて、今日のテーマですが、前回と同じく日経新聞の日曜版を取り上げてみたいのですが、いかがですか?

(A課長)
そう来ると思いました。今回は一橋大学の野中郁次郎名誉教授だ。Sさんが以前、中公文庫の『失敗の本質―日本軍の組織論的研究』について、熱く語ってくれましたから。今日のテーマは、「これしかない」と準備しています。

10月8日の日本経済新聞『直言』は野中郁次郎名誉教授が登場!

(Sさん)
以心伝心ですね(笑)
当然2面の『直言』なのですが、今回の日曜版はちょっと驚きました。

(A課長)
うん? 何に驚かれたのですか。

(Sさん)
ええ、『失敗の本質』に興奮して以来、野中郁次郎さんの本はかなり手に取っています。直近は、日本経済新聞出版の『共感経営「物語戦略」で輝く現場』を読んでいます。経営学の範疇を超えた思想家としてのお姿が伝わってきました。帯のキャッチコピーは、「論理はイノベーションを生まない。“跳ぶ仮説”で常識を破壊せよ」ですから、『直言』のインタビュー内容そのままです。

(A課長)
そこに驚かれたのですか?

(Sさん)
あっ、すみません。流れで野中郁次郎さんのことを話してしまいました。そこではないんですね。シンクロニシティに結びつけるのはどうか、と思いますが…

(A課長)
相変らず引っ張りますね~(笑)

(Sさん)
業務報告は結論を最初に述べる「アンチ・クライマックスオーダー」にすべきですが、1on1ミーティングは、ついつい、言いたいことを最後にとっておく「クライマックスオーダー」にしてしまう(笑)
8日の日経新聞は全28ページです。真ん中の9ページから20ページは日曜版の定番特集「NIKKEI The STYLE」ですが、新聞用の紙ではなく光沢のあるコート紙ですから、他紙との差異化を前面に出しています。

「NIKKEI The STYLE」はスノッブ…?

(A課長)
「NIKKEI The STYLE」のターゲットは明快に富裕層ですね。読み手によっては「スノッブ」を感じるかもしれない。クラス感が透けて見える。

(Sさん)
Aさんのコメントから「リベラル」が伝わってくる。
高度経済成長を経て、日本が世界第二位のGDPを誇るまでになったのは、分厚い中間層の存在でした。それが「失われた30年」によって崩壊したとも言われます。二極化です。「貯蓄から投資へ」が謳われていますから、「富裕層はお金をため込むのではなくどんどん使ってほしい」という、日経新聞の意図は理解できます。ただ、欧米文化に靡きすぎているようにも感じるところです。

「リベラル」であるAさんの受けとめ方を知ってしまうと、「NIKKEI The STYLE」を話題にするのが、ちょっと憚られる(笑)
「クラス感」ではなく「ある偶然」を感じたんです。巨大な版画絵が目に飛び込んできて驚きました。ど真ん中の15~16ページは、2面見開きの葛飾北斎の「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」です。北斎の大特集が組まれていました。

(A課長)
ああ、ありましたね。私は電子版なので、その迫力はよくわからない…

(Sさん)
なるほど… 電子版と紙版の違いはそういうところに表れてくるわけだ。電子版が主流になると、コストをかけて紙質を変える意味がなくなる(笑)

(A課長)
Sさん、シンクロニシティとか、偶然とか、意味がわからない…(苦笑)

(Sさん)
引っ張り過ぎかな(反省の笑)
先週は、ワーケーションで京都に4泊、その翌日は奈良に泊まっています。私は奈良に居てAさんとの1on1をやりましたよね。

(A課長)
ええ…

(Sさん)
予定では、その日に奈良を出て埼玉に帰るつもりでした。ただ妻が、小布施にある「北斎館」を観てみたいというので、松本にもう一泊して、そして埼玉に戻ってきました。

Sさんは10月5日に信州小布施の「北斎館」に行っていた!

(A課長)
日経新聞の北斎とSさんの北斎が、そこでつながったわけだ。ただシンクロニシティまでいくかどうか…(笑)

(Sさん)
ちょっと盛ってしまいました。一応、偶然の一致ということにさせてください。
小布施については、あまり乗り気ではなかったのですが、「あなたは城好きだから、久しぶりに国宝の松本城を観てもいいんじゃない」、と言われたので、「じゃあ、行こう」となったんですね。妻は小布施の栗を堪能したかった、というのも理由です。まあ、バーターというか、ウインウインで決定しました。

(A課長)
奥さまはSさんのことをよくわかっている(笑)

(Sさん)
手のひらに載せられているんですよ(苦笑)
長女と孫は新幹線で東京に帰ったので、気ままな道程です。それから前回の1on1でも話しましたが、自動運転を使ったので疲れはほとんど感じない。
私は小布施については、認識ゼロでした。ましてや葛飾北斎の美術館が信州の片田舎にあるとは… 小布施の印象は、山口県の津和野のイメージです。妻は「角館のようね」、って言っていました。
美術館は、北斎のすべてを堪能できる素晴らしい施設でした。感動体験です。『北斎館』をネットで共有しますね。

(A課長)
なるほど… 「なぜ小布施に北斎美術館があるのか?」というのは、「幕府による天保の改革で絵の政策が制限されたとも、地元の豪農・豪商の高井鴻山の招きに応じたとも、さまざまな説がある」とありますね。

葛飾北斎の「祭屋台肉筆天井画」は圧巻!

(Sさん)
北斎のリアル展示品が膨大で、じっくり見ようとすると時間がいくらあっても足りない。特に、祭屋台の肉筆天井画が素晴らしかった。85歳で「龍図」と「鳳凰図」を。86歳には「男浪図」「女浪図」を描いています。この浪は、日経新聞も掲載している「神奈川沖浪裏」のうねりと瓜二つと言っていい。北斎のモチーフだったんですね。

日経新聞の北斎特集の見出しは「うねる波の迫力 世界を魅了」です。小見出しは「過去最高額で落札」ですから、日経らしくオークションを取り上げている。

2023年3月21日。競売大手クリスティーズがニューヨークで開いたオークションで「富嶽三十六景」のうち「神奈川沖浪裏」が276万ドル(当時のレートで約3億6000万円)で落札された。北斎の作品としては過去最高額だ。
錦絵(多色摺り浮世絵版画)で現存数も多く、コロナ禍をはさんだ20年から23年まで同社の競売で少なくとも8点の「神奈川沖浪裏」が約25万ドルから160万ドルの間で落札されている。摺りの時期が早く保存状態がよいものは市場でも評価が高い。とはいえ落札予想額の上限のおよそ4倍に達した今回の高値に関係者は目を見張った。

Aさん、このくらいにしておきましょうか。本テーマの野中郁次郎さんの話になる前に終わってしまう。

(A課長)
了解です(笑)
では、早速Sさんに訊ねますが、野中郁次郎さんの言葉で、響いたところを教えていただけますか?

(Sさん)
はい、たくさんあります。本社コメンテーターである中山淳史さんが質問した、最初の回答から引き込まれました。

中山 : 企業にとって「失われた30年」の真因はどこにあったのか。
野中 : 雇用や設備、債務もその通りだ。しかしより本質をいうならプラン(計画)、アナリシス(分析)、コンプライアンス(法令順守)の3つがオーバーだった。

バブル崩壊によって、放縦極まりない企業の姿勢が白日の下になったわけです。その反動から、この3つがクローズアップされます。その環境は、緻密を好むというか、裏地の柄にまでこだわる日本的感性にフィットしたんですよ。ある意味でクリエイティブではない取り組みです。それをどんどん精緻化させていきます。

計画・分析・法令順守の過剰が「失われた30年」の真因!

(A課長)
なるほど… 森を見ることなく木を見ていれば、やっていける内容だ。

(Sさん)
すべてが「守り」です。そこにエネルギーを投入しつづけると、もともと辺境の島国である日本の保守性が、盤石なものになっていく。変な表現ですが…

(A課長)
私の就職戦線はリーマンショックとぶつかっています。バブル崩壊で、金融機関の人気もパッとしていなかったことも重なり、東大をはじめとする優秀な学生のコンサル志向が高まりました。

(Sさん)
コンサルは、頭は使うけど汗はかかない(笑)

(A課長)
ええ…まあ、そうですね(笑)
コンサル業界も分化が進みます。企業も自前というより外部委託できるものは、どんどんアウトソーシングしよう、ということが主流になりましたから、優秀な頭脳を持った人たちの吸収源となります。そうなると、企画書や成果物のレベルがどんどん上がり、まさにマニアックな内容を競い合うオタク的環境が現出しています。ビジュアルの洗練度は、まあスゴイ!

(Sさん)
野中郁次郎さんの慧眼だ。その次の回答も「目からウロコ」です。

数値目標の重視も行きすぎると経営の活力を損なう。例えば多くの企業がPDCAを大切にしているというが、社会学者の佐藤郁哉氏は最近、『PdCa』になったといっている。Pの計画とCの評価ばかり偏重され、dの実行とaの改善に手が回らないということ。同感だ。

数値偏重では革新起きず! 共感を重んじ知を磨け!

(A課長)
同感です。
その次も共感至極です。

行動が軽視され、本質をつかんでやりぬく『野性味』がそがれてしまった。野性味とは我々が生まれながらに持つ身体知だ。計画や評価が過剰になると劣化する。

なんだかすべての言葉をSさんと共有したくなってくる。
日経新聞は、「企業の失敗、野生喪失から」を大見出しに使っている。絶妙です。後半の小見出しは「共感を重んじ知を磨け」です。「成功」を問う流れになります。

中山 : では、成功の本質とはどんなものか。
野中 : 過去の組織、戦略、構造、文化を変える。そして我々はなぜここにいるのかを確信できる価値と意味を問い直す。モノマネでは元も子もない。だから私は「考える前に感じろ」と訴えている。

次のコメントはSさんにバトンタッチします。

(Sさん)
ここも以心伝心だ。ソニーマニアの私に花を持たせてくれましたね(笑)

ソニーグループを再生した平井一夫氏(前会長)が、改革には「IQ(知性)よりEQ(感性)だ」と話していたのが興味深い。「感動」というパーパスで自信を失いかけた社員のマインドセットを変えたのだが、重視したのは共感だった。6年で70回以上のタウンミーティングをしつこくやったという。

ソニー前会長の平井一夫さんは1on1ミーティングの伝道者!

(A課長)
Sさんと1on1を100回以上重ねていますが、平井一夫さんの哲学も「1on1ミーティング」です。トップになるとさすがに一対一の対話は困難なので、タウンミーティングとなりましたが、原点は1on1です。トップになっても「社員と対等」は崩れていない。いや、平井さんは心の底から、それをやっている。

Sさんとの1on1のテーマは、それこそ満艦飾ですが、ソニーについては10回以上やったかな? Sさんはソニーを「変革が常態の“やんちゃな中小企業連合体”!」と喩えている。

(Sさん)
野中郁次郎さんの思いとソニースピリッツはつながっています。最初に紹介した野中郁次郎さんとジャーナリストの勝見明さんの共著である『共感経営』を読み返してみました。「まえがき」に次のような文言があります。

本書は、その知識のなかでも、言葉や数字では表せない思いや理念などの暗黙知を共有する共感を、いわば、“6番目の経営資源”として提示するものといえます。

ソニースピリッツは「感動」と「共感」!

(A課長)
経営資源の6番? 5番目までは何と書かれていますか。

(Sさん)
ええ、人、モノ、金、情報の4つはすぐに思い浮かぶと思います。5番目はドラッカーが指摘した「知識」です。野中郁次郎さんは、その「知識」を腑分けしています。「共感」こそが、現代に求められている「知」であると訴えている!

(A課長)
Sさんは野中郁次郎さんのことを「経営学者を超越した思想家」であると言う。伝わってきます!
私は「コーチングの時代がまさに到来している」と感じています。私が学んだコーチビジネス研究所は「受容と共感」を語り続けている。時代がコーチングに追いついてきた! 経営学の泰斗である野中郁次郎さんが、最終的に至った一つの境地は「共感」であった、ということなのではないでしょうか。このことを今日の1on1の〆として、しっかり「受容」したいと思います。

坂本 樹志 (日向 薫)

現在受付中の説明会・セミナー情報