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本来大きく異なるセクターの経団連十倉雅和会長と連合芳野友子会長は「“賃上げ”が日本の喫緊かつ最重要の課題である」ことを共有している!

心理学を学びコーチングの資格を有する新進気鋭の若手A課長と、部長職を長く経験し、定年再雇用でA課長のチームに配属された実践派のSさんとによる、2023年34回目の1on1ミーティングです。

「我々はサステナブルな資本主義を目指している。キーワードは成長と分配だ。経団連が『分配』という言葉を使ったのは30年ぶりだと言われている。国内投資の拡大、将来不安の払拭、賃上げの実現が柱となる。すべて密接に関係しており、政府と民間がそれぞれ役割を果たす必要がある」
(日本経済新聞8月27日2面『直言~増税議論「逃げるな」~』より引用)

打ち上げ成功率97.82%のH2Aは今回も絶対成功する!

(Sさん)
前々回の1on1で、イーロン・マスク氏の宇宙事業が話題に上りましたが、古川さんを乗せた「クルードラゴン」が予定通り打ち上げに成功し、国際宇宙ステーションでの滞在が始まました。

(A課長)
ええ、でも46回中45回成功しているH2Aロケットは打ち上げが延期されています。H3の失敗で、JAXAのプレッシャーはハンパないと思います。Sさんが「クルードラゴン」で、「予定通り」と枕詞を挿入しましたが、絶対に成功してほしい!

(Sさん)
本当に… ハラハラドキドキですね。
さて、今日のテーマですが… 27日の日経新聞2面をやってみましょう。

(A課長)
そうくると思いました。日曜版2面の特集『直言』を取り上げるのが、パターン化してきましたね。「対話」がテーマなので、コーチングを語り合う1on1にピッタリだ。しかもお相手は、斯界のオーソリティーであり、コーチングの中でも、経営層をクライアントとするエグゼクティブコーチングを深く捉えていくうえで、とても勉強になります。

(Sさん)
今回は財界トップの十倉雅和経団連会長です。経済政策は当然のこと、国家政策を提言するジャーナリズムとしての頂点を極めようとしている日本経済新聞ですから、いつもにも増して気合が入っている。これまでのインタビューと記事執筆は、お一人の記者が担当されていましたが、今回は、渡辺康仁さん、岡部貴典さん、河野祥平さんの3人となっている。

十倉経団連会長インタビューに気合を入れる日本経済新聞社!

(A課長)
本当にそうだ。

(Sさん)
Aさん、私はいつものように1面から読み始めています。日曜版の1面は、慣例の「アタマ」と「カタ」を並べるのではなく、合体して大きく『チャートは語る』と目立つ装いになっています。今回は“「強欲インフレ」欧州を覆う”と、インパクトある見出しで目を引きました。しっかり読んでいます。
そして、おもむろに2面の『直言』を読んだんですね。すると…

(A課長)
すると…

(Sさん)
ええ、日経新聞の「デスク陣」は、とても連携が取れている、と感じました。

(A課長)
「デスク」という言葉はよく耳にしますが、一般企業で言うと「部長クラスの人」というイメージかな? チャットGPTに質問してみましょうか…

新聞社で「デスク」と呼ばれる人は、各部の責任者であり、記者たちの取材や記事の編集を総括する人です。一般の企業では「部長クラス」という役職名がありますが、新聞社では「デスク」という呼び名が一般的です。デスクになるには、まず記者として現場で経験を積み、次に取材チームのリーダーである「キャップ」として活躍し、実力が認められるとデスクとして記者たちを束ねる立場になります1。

デスクは重要な役割を担っています。デスクは記者から受け取った原稿をチェックし、紙面に掲載するかどうか、どのくらいの大きさの記事にするかなどを決めます。また、デスクは取材の指揮をとり、記者にアドバイスをしたり、必要な人員を呼び出したりします。デスクの能力の高さが新聞記事の完成度を大きく左右するといっても過言ではありません。

「デスク陣」の連携という視点から言えば、デスクは各部に配属されており、複数のデスクがシフトを組みながら勤務をしています。そのため、デスク同士は情報や意見を共有し、紙面全体のバランスや方向性を考える必要があります。また、編集長や副編集長とも連携し、最終的な紙面作りに貢献します。

日本経済新聞「デスク陣」の連携は見事!

(Sさん)
スゴイなぁ~ いえ、チャットGPTがスゴイというわけではなく、Aさんの「質問力」です。私が言いたかったことが回答にすべて盛り込まれている。チャットGPTを上手く使いこなすには「質問力」が鍵を握っています。

(A課長)
いえ… ちょっとホメすぎですよ。ただSさんがそう感じてくれたのだとしたら、私がコーチングを真剣に学んでいるからだと思います。クライアントの気持ちを真に理解するために、どのように質問すればよいのか… とにかく考え続け、実際のコーチングセッションで実践を重ねてきました。そのあたりが「質問力」を磨く修行になったと思います。

(Sさん)
なるほど… コーチングは奥が深い。
1面と2面の担当デスクは違うと思うのですが、1面を読み、続けて2面を読むと、日本経済新聞の視点が「複合的に」理解できます。テーマも見事に連動している。新聞社としてのマネジメント力を感じます。

『チャートは語る』のもう一つの見出しは“企業利益、要因の5割 賃上げ追いつかず”です。2面の『直言』で、十倉さんは「賃上げ」を熱く語ります。30年ぶりに経団連が「分配」という表現を使ったことを、しっかりアピールしています。
1面の記事は、ヨーロッパの状況を中心に世界を俯瞰しています。

欧州で高インフレが収まらない。前年同月比の伸び率は日米を上回る。企業が価格転嫁や便乗値上げで積み上げた利益がインフレ要因の5割を占めるとの試算もある。物価高に賃上げが追いつかず、消費の弱さにつながった。

(A課長)
私も読んでいますが、この記事が何を訴えたいのか、正直なところあいまいな理解のまま、2面を開きました。

27日の日曜版1面『チャートは語る』は欧州を俯瞰している!

(Sさん)
確かにわかりにくい内容なのですが、ヨーロッパの状況を詳述したうえで、米国と日本のインフレを見事に対比させた記事なんですね。『チャートは語る』のタイトル通り「3つのグラフ」がファクトとして語ってくれます。

上段は「欧州の食品インフレ率は日米を上回る」ことを示した折れ線グラフ、中段は「ユーロ圏のインフレの内訳のほぼ半分は企業のもうけ」の棒グラフ、下段は「欧州各国は企業収益の改善が先行」した棒グラフを並べて、ビジュアル化しています。
プレゼンテーションの王道である「タイトル・見出し」でアイキャッチさせ、グラフといった「チャート」で興味をつなぎ、記事である「テキスト」で全容を把握してもらう。という流れです。

(A課長)
Sさんはマーケティングの知識が豊富だから、余裕を持って日経新聞と対峙している。私の場合、次の2面『直言』が気になって、真剣に読んでいない。見たいものだけを見てしまった(笑)

(Sさん)
今度はAさんに、お返しでホメてもらった(笑)
3段目のグラフは、グレートモデレーションが終焉して、世界でインフレが急速に進んだその状況を、国別企業利益の視点で捉えています。高い順に8カ国並べているのですね。ドイツは20%をはるかに超え、欧州で最も低いフランスでも10%と高い。米国はフランスより少し高い利益ですが、欧州はフランスを除いて、労働コストが利益の伸びと比べてかなり低いのです。

(A課長)
今グラフを見ながらSさんの説明を聞いているのですが…

(Sさん)
中段を見てください。インフレの内訳を分解しています。欧州は利益の占める割合が最も大きい。つまり「インフレがやって来た。よし、この際販売価格をどんどん上げて儲けよう。『インフレのため販売価格を上げざるをえません』と市場にアナウンスすれば説明がつく!」という訳です。インフレを利用した便乗値上げに走ったんですね。それで利益が膨らんだ。ですから記事の大見出しが“「強欲インフレ」欧州覆う”となっているわけです。
インフレが米国と比べてもはるかに高いのは、それが背景です。そして賃上げは「おいてきぼり」にされ、記事にあるように「生活苦への不満は欧州各地でストライキを誘発」した。

欧州は米国と異なる「強欲インフレ」!

(A課長)
欧州の状況が分かってきました。しかし、ものすごいインフレですね。記事にも書かれています。

インフレの中でも生活に欠かせない食品の高騰は国民にとって死活問題だ。欧州委員会が過去1年間で物価がどれだけ上がったかを映す家計の体感インフレ率を調べたところ、低所得者層では過去20年間で最高の26%に達した。

(Sさん)
さて、米国です。この記事は欧州にスポットを当てているので米国のことは書かれていません。ただグラフが語っています。欧州と比べて特異です。Aさん、労働コストを見てください。

(A課長)
利益を逆転している。高い!
ということは、米国は、物価は上がっているけど賃金も上がっているから収入はむしろプラスということか…だから消費は衰えない。したがって景気も減退していない。
なるほど… だから「まだ金利を上げる必要がある」という判断が留保されているわけだ。消費大国である米国の面目躍如ですね。

(Sさん)
あくまでも平均です。格差が異常に拡大している米国ですから、階層ごと見ると違う姿となると思いますが、それでもやはり米国は特異ですね。「例外国家」です。最後に「日本は?」というと…

(A課長)
両方の棒グラフの長さが見えないくらい小粒だ。企業収益の方が若干高いけど、労働コストは上がっていない。それでも、ちょっと動いているかな…

欧州・米国と違って日本は「動きがない」…

(Sさん)
そうなんです。私たちは欧州、米国で暮らしていないから、日本での体感しか知らない。『チャートは語る』のファクトは、「とにかく日本は動きがない」ということを示しています。記事の最後は、日本への提言としてまとめています。

値上げに慎重とされた日本企業も変わり始めた。経費削減で工夫してきたが、価格転嫁は避けられない。OECDによれば、日本の企業利益の伸びは4%と主要7カ国(G7)で最も低く、賃金の伸びも鈍かった。「強欲なき」日本の企業は家計の負担を抑えてきたが、限界は近い。
長期にわたる賃金と物価の低迷は海外との購買力の差を広げ、「安いニッポン」を招いた。欧州企業は批判を受けて従業員待遇の改善に本腰を入れる。適正利潤を原資に継続的な賃上げの好循環を実現できるか。単なる値上げに終われば、日本の経営者にも世間の厳しい目が向かう。(ベルリン=南毅郎、筒井恒)

(A課長)
「強欲なき」日本! という言葉はベルリンにいる南さんと筒井さんだからこそ、浮かび上がってきた表現というわけか…

(Sさん)
日本の中にいると、そこはなかなか実感できない。西洋社会は「弱肉強食」が自明のこととして組み込まれています。日本はおそらく、「やさしい国家」なんですよ。河合隼雄さんはそれを「母性原理」が強いと表現している。

さて、『直言』に移りましょうか。以前の1on1で、十倉さんと連合会長の芳野友子さんが話題に上りました。プーチン大統領の「孤独」を深掘りしてみたときです。Aさんはそこで「無意識のジェンダーバイアス」に触れている。ええっと… 去年の4月21日です。

(A課長)
思い出します。連合も芳野さんで変わった。経団連も十倉さんで変わった。

連合芳野友子会長は「問題意識はほぼ一緒だ」とコメントした!

(Sさん)
ええ、時代がお二人の登場を呼び寄せたのかもしれない。それまでの歴代経団連の会長は、どちらかというと「父性原理」を背景にコメントを発していたように感じます。十倉さんは「母性原理」が強い方だ。

(A課長)
ええ、語る際の表情、佇まいからもそれが伝わってきます。コーチングは、クライアントを五感で把握しようとします。

(Sさん)
補完していただきました。
今回の『直言』で日経新聞は、大きく2つのテーマで十倉会長にインタビューしています。前半は「消費増税」、後半が「賃上げ」です。恒例の「インタビューから…批判すべきは批判を」で、十倉会長の言葉が止まったシーンを切り取っています。

数秒間の沈黙があった。政府・与党は消費税の議論から逃げているのではないかと問いかけた時、よどみなく質問に答えていた十倉氏の言葉が止まった。
「過激な言葉を使って政府を批判するつもりはありません」。時の政権を刺激することを避ける物言いは、経団連のトラウマを映し出している。

記事は「消費増税」論議を微妙に避けようとしている十倉会長に、「ジャーナリストの矜持」を発揮し切り込みます。最後のまとめは…

半身の議論で日本の危機的な財政の解決策を見出すことはできない。十倉氏に課せられた重い課題だ。

(A課長)
「消費増税」については「Sさんは一家言あり」、と感じています。

(Sさん)
ものすごく重要、かつ複雑な大テーマですよね。いつかAさんとも語り合ってみたい。ただ、今回の1on1は十倉さんの「賃上げ」に対するスタンスに響きます。十倉さんの「賃上げしなければ」という思いは、信念として伝わってきます。

十倉経団連会長の「賃上げ」への想いは「信念」!

(A課長)
はい、そこは私も同感です。「“新しい資本主義”を共有し、そこに向かって舵を切らなければ!」という強い使命感をお持ちだ。

「市場万能主義は色々な弊害を生んだ。一番大きいのは格差の拡大だ。日本でも格差の固定化や再生産が進んでいる。資本主義は公平で公正な条件で切磋琢磨してイノベーションを生むために有効だが、行き過ぎた資本主義は是正すべきだ」

(Sさん)
あの経団連のトップが、バーニー・サンダースか、アレクサンドリア・オカシオ=コルテスか、と見紛うような発言をされている。いや、ちょっと極端な表現ですが。
1面の『チャートは語る』が指摘しているように、日本の「いまそこ」にある最優先課題は「賃上げ」です。企業セクター側もそのことを共有しているのではないでしょうか。この環境が醸成されてきたのは十倉さんの発信力があったからだと思います。

(A課長)
Sさん、月曜日の日経新聞16面の「経済教室」で、八代尚宏昭和女子大学特命教授が「終身雇用制の功罪」をテーマで寄稿されています。結論は「従来型の終身雇用制ではなく、労働移動を活発化させることこそが“新しい”長期雇用保障につながる」というパラドックスのような提言です。私たちの世代にとって、まさにこのことが真実だと感じられる!

長期雇用保障は、過去の高成長期には大きな役割を果たしたが、今後の女性活躍・高齢化社会では弊害も著しい。労働者にとっても企業内に閉じ込めることで、仕事の満足度が低くなっている。転職の有無にかかわらず、個人の能力にふさわしい職務に就くことで生涯現役の働き方ができる。これが新しい長期雇用保障の本来の姿といえる。

経営家族主義を貫いた「出光佐三さんの昭和」を語るSさん…

(Sさん)
私たちの年代が、終身雇用制の恩恵を感じることができた最後の世代だと振り返っています。世界が驚嘆した日本の高度経済成長のバックボーンは、「退職金制度に裏付けられた終身雇用制」です。それが「経営家族主義」という言葉を生んだ。
ただ、日本にとって「その成功体験」が強烈であったがゆえに、そこから脱することができなかった。
ノスタルジアですが、出光佐三さんのことを想起しています。「すばらしい」という言葉だけでは表せない、まさに「会社=家族」が実体として存在することを世に証明した方です。

(A課長)
それは… Sさんが言葉にされたように「ノスタルジア」じゃないでしょうか。「時代が人を創る」、と言いますが、おそらく出光佐三さんのような傑出した人物はもう表れない。ただ、その「たましい」は引き継ぎたい。

(Sさん)
ありがとう…と言っていいのかな? 若いAさんにフォローしてもらった感じだ(笑)
Aさん、少し誤解を解きたい。十倉さん、そして芳野さんという全く異なるセクターのトップが日本の喫緊の大テーマを共有している。

これまで「動きのなかった日本」は、ここから本当に変わります! Aさんのようなミレニアム世代、そしてZ世代も覚醒しつつある。私たちのような世代も現実を受けとめはじめている。いや、受けとめなければいけないと体が反応している。生きている以上、社会に貢献したい、というのが人間の本能だと思うから。

日本は今ここから変わっていく!

(A課長)
そろそろ時間ですね。今日の1on1も濃かった(笑)。日本国家、そして私たちの身近なと
ころも問題山積みですが、大先輩であるSさんの熱い言葉に力を得て、未来志向で取り組んでいこうと思います。いえ、取り組みます!

(Sさん)
宣言ですね。コーチング的には「思います」、ではなく「やります!」とクライアントが言葉にしたとき「動きはじめる」と、Aさんから聴いています。自らが範を示してくれました(笑)

(A課長)
Sさんのフィードバックでますます追い詰められました(笑)
私が今できることは、とにかくコーチングを一人でも多くの人に理解してもらい、広めていくことです。コーチングの理念である「私たちは変わることができる!」を信じて、取り組みます!

(Sさん)
熱い! これからも引き続き、バッショネイトな1o1をやっていきましょう!

坂本 樹志 (日向 薫)

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