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「(株)ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は日本の変革を提言する啓もう家であり思想家である!」を語り合った1on1ミーティングです!

──失敗から何をどう変えていったのか。
「失敗を繰り返し、社員の実際の行動が今の時代に合うように変わらなければダメだ。ファストリも数々の失敗を経て各地の特徴を学び、少しずつ成長の芽が出てきた」
(日本経済新聞8月20日2面「直言~失敗で磨け 無二の価値~」より引用)

心理学を学びコーチングの資格を有する新進気鋭の若手A課長と、部長職を長く経験し、定年再雇用でA課長のチームに配属された実践派のSさんとによる、2023年33回目の1on1ミーティングです。

前回の「失敗は成功のための一要素」の続編がスタート!

(Sさん)
おはようございます。残暑となってもいいのに熱波が続いています。暑さを忘れるための1on1をさっそく始めましょう。

(A課長)
毎回のアイスブレイクは気候変動を話題にしますが、今日はナシですね(笑)
では早速… テーマですが前回は、『君の名は』と『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』を対比させて、失敗は成功の一つの要素にすぎない、ということを共有しました。「失敗談義」は奥が深い。今日もその続きをやってみませんか?

(Sさん)
いいですね~ Aさんはすでに題材を考えている?

(A課長)
Sさんのことだから、日曜日の日経新聞2面は絶対読んでいると思うので、それです。

(Sさん)
2面という漠とした言い方で示唆しているところがグッドです。『直言』ですね。まさに「阿吽の呼吸」だ(笑)
毎週日曜版2面が『直言』だったので先週も当然、と思っていたところ掲載がなかった。「この特集はどうなるんだろう」と、心配しました。
『直言』はただのインタビューと違って、斯界のオーソリティーに対して、「どこまで“本音”を引き出すことができるか」を意図しています。2面のすべてを使う以上「ジャーナリスト魂を発揮している!」と評価されないと、日経新聞としての「志」に傷がつく。

(A課長)
Sさんらしい捉え方だ。このインタビューは、コーチング、特に経営層との対話である「エグゼクティブコーチングとは何か?」を思索するうえで、とても参考になります。鎧をまとわざるを得ない経営層の心をほぐし、なかなか言えなかった本音を開示してもらう。その過程でクライアントである経営層に「気づき」が訪れる。コーチング視点ですが…

(Sさん)
今回は柳井正さんです。これまでの1on1でも、柳井さんの発言を取り上げています。Aさんが柳井さんをどう捉えているかを知りたい。

(A課長)
はい、今鎧と言いましたが、柳井さんについては当てはまりません。鎧を全く必要としない強靭なオーラで全身が包まれている方ではないでしょうか。ちょっと喩えが極端かな(苦笑)。
さてタイトルですが、「失敗で磨け 無二の価値」です。まさに前回の1on1の続きとしてピッタリですね。柳井さんが「失敗」をどう捉えているか…迫ってくるものがあります。

柳井正さんは鎧など必要としない強靭なオーラで包まれている!

(Sさん)
私たちも共有したように、「失敗」は「成功」のためのプロセスの一部です。柳井さんは、そのことを「実績」で証明してくれました。ただ、さまざまなメディアで柳井さんが語り、メディア側も「経営戦略」の視点で、詳細に分析していますから、Aさんとそのあたりを再確認するだけでは、コーチング型1on1としては、ちょっと物足りない。「経営戦略を超えた」視点を探ってみたい。特に柳井さんの「人間観」「承継」について…
「見出し」にそのことが表れています。「“人材鎖国”解き世界へ」「後継も創業家 夢がない」ですから。

(A課長)
つまり、日本経済新聞は「柳井さんの思想」に迫ろうとしている。

(Sさん)
ええ、そこだと思います。毎回インタビュアーが振り返ってコメントする内容こそが『直言』シリーズの肝です。

インタビュアーから…「カリスマの後の道見えず」
「自ら高い目標を掲げる。そこから逆算し達成する方法を考えて実行する」。柳井氏はこの考えの下、ファストリを一代で世界トップグループのアパレル企業に育て上げた。
「成長しなければ死んだも同然」。常に自らへ高い目標を課し部下にも求めた。経営スピードについていけない人が何人も去った。2002年には玉塚元一氏に社長を任せたもののわずか3年で更迭した。
ファストリが巨大アパレルに成長し、柳井氏のカリスマ性が強まれば強まるほど後継者のハードルが高まるジレンマを抱える。炭鉱の町として栄えた出身地の山口県宇部市の衰退を目の当たりにした。改革への強いこだわりは、原体験から来る焦燥感の裏返しだ。
柳井氏は「人材は育ってきた」と強調する。しかし、社長復帰から20年ほどが経過した。多くの創業社長と同様に柳井氏の時間も少ない。(平岡大輝、篠原英樹)

(A課長)
踏み込んでいる。

(Sさん)
そうなんです。玉塚元一さんにも触れている。しかも「更迭」という言葉を使って。Aさんは玉塚さんにどんなイメージを持っていますか?

(A課長)
ええ、とてもハンサムというか、スマートな方ですよね。ローソンのトップだったときの印象が強い。新浪さんの後任として就任されたかと思います。ただ、一時期ユニクロのトップだったことを知り、びっくりしました。

新浪剛史さんと玉塚元一さんの関係とは?

(Sさん)
そうか… 20年前の話だから、Aさんが中学、高校生くらいの時だ。新浪さんは現在サントリーのトップです。今年の4月に経済同友会代表幹事に就任されました。ベンチャー支援に力を入れている新日本経済連盟の幹事もされています。高度成長時代の非政治部門の日本のリーダーはソニーの盛田さんに象徴されますが、新浪さんこそ現代ニッポンの若きリーダーです。「アラウンド60」ですからまだまだお若い(笑)
新浪さんと玉塚さんの関係をチャットGPTに質問してみましょうか。

新浪剛史さんは、ローソンの元社長兼CEOで、現在はサントリーホールディングスの社長です。玉塚元一さんは、新浪さんの後任として2014年にローソンの社長に就任しました。新浪さんと玉塚さんは、経営方針や戦略について共通のビジョンを持っており、良好な関係を築いています。

新浪さんと玉塚さんは、ローソンの経営において連携し合っており、互いに尊敬し合っています。新浪さんは、玉塚さんを「非常に優秀な人材」と評価し、「彼が社長になったことでローソンはさらに成長する」と期待しています。玉塚さんは、新浪さんを「経営者として尊敬する人」と述べ、「彼から学んだことは多くある」と感謝しています。

(A課長)
ところで『直言』に、「ファストリの売上収益」が1989年から2023年までの長期にわたって棒グラフで示されていますが、信じられない成長ですね。そして、ユニクロと聞くと、条件反射のようにオーナーの柳井さんの姿が浮かんできます。その柳井さん以外の人が20年前社長やっていた、というのはイメージできません。

(Sさん)
Aさんの世代はまさにそうだと思います。
私は、ユニクロが今日まで奇蹟的な成長を果たすことができたのは、玉塚さんの社長就任、そして3年間で退任された時期にその秘密があると思います。その後柳井さんはトップ・オブ・トップに復帰されました。そして「陣頭指揮」でユニクロを率いてきた。いや、こんな“並の表現”では実態を表せない。
そうですね…「資本と経営の分離」という、一見チャーミングに聞こえる概念を粉砕し続けて、馬車馬のように働いてこられた結果としての今であるように感じています。

(A課長)
これまで、さまざまな著名な方々について、この1on1で語り合ってきましたが、Sさんの今の言葉は、かつてないラディカルというか、バッショネイトですね。

ファストリ1990年~2023年の年度別実績を詳細に調べてみた!

(Sさん)
う~ん、そう言われてみるとそうかも、です(笑)
掲載された棒グラフに刺激されて、ファストリの1990年から2022年まで、つまり日本全体が「失われた30年」と言われた期間ですが、各年度の有価証券報告書を丁寧にチェックしてみました。少し時間がかかりましたが、棒グラフだけでは見えてこない各年度の実数をエクセル表にして顕在化させています。

まとめとして、表の一番下に、直近の実績が1990年、2000年、2010年の各年度の実績と比べて何倍になったのか、表示しています。直近の数値は、売上・利益については予測値が発表されていますから2023年と比較しています。従業員数は昨年2022年の実績です。

(A課長)
なるほど… 1990年の売上は51億円、利益は1億円、従業員はたったの19人ということか。中小企業そのものですね。それが33年後には、売上は529倍、利益は3700倍。従業員数も凄いですね。6万人近くに増え3030倍になっている。

(Sさん)
改めてファクトを知ると、モンスター企業だとわかります。ただし、2002年・2003年と2年連続でマイナスとなります。2000年・2001年に売上が爆発した反動減です。
1999年に売上1000億円に到達するまで、順調に売り上げを伸ばしています。その間の伸びもすごいのですが、Aさん、2000年の売上を見てください。

(A課長)
2289億円… えっ、いきなり倍だ! その翌年は4185億円! こんなことがあるんだ…

(Sさん)
フリースです!
ユニクロはロードサイドリテイラーからの脱皮を意図して、1998年11月に原宿に都心型の実験店舗をオーブンします。そのときはじめてレディーズ商品を手掛けたんですね。キッズフリースも大々的に宣伝しています。ファミリーブランド化のスタートです。
当時、ユニクロのフリースが日本を席巻しました。驚きの品質で1900円の値付けです。もちろん私も買っています。ただ… 街中のあの人もこの人も着ていますから、さすがに恥ずかしくなって、早々に着るのをやめました。日本人全体が制服のごとく同じアウターを着衣したという前代未聞の現象でした。

日本人全体が制服のように着衣する前代未聞の現象となった!?

(A課長)
当然、反動減となるわけだ。

(Sさん)
玉塚さんの社長就任と退任経緯をチャットGPTに質問してみました。

玉塚さんがユニクロの社長に就任した理由は、柳井正会長が会長兼CEOに退き、玉塚さんを代表取締役社長兼COOに指名したからです。柳井会長は、「玉塚さんは私と同じビジョンを持っている」と述べました。玉塚さんは、経営戦略や海外展開などの分野で優れた手腕を発揮し、柳井会長から高く評価されていました。

玉塚さんがユニクロの社長を3年で更迭された理由は、ユニクロの業績が大幅に減少したからです。フリースブームの後遺症に苦しみ、フリース以外の新たなヒット商品が生み出せなかったことや、他社との差別化が図れなかったことなどが原因とされています。また、玉塚さんと柳井会長との間にも意見の相違が生じました。柳井会長は、「玉塚さんは自分の考えを押し通すタイプで、他人の意見を聞かない」と批判しました。

(A課長)
チャットGPTは間違いもあるから、ちょっと微妙だけど… 私の方で、玉塚さんのWikiをチェックしてみましょうか? 経歴でユニクロのあたりは…

1998年(平成10年)日本IBMに転職しコンサルタントの職に就く。コンサルティング業務を通じてファーストリテイリングの柳井正、澤田貴司と知り合い、入社4か月で日本IBMを退職してファーストリテイリングへ入社する。
2002年(平成14年)ファーストリテイリング代表取締役社長兼COO就任。2005年(平成17年)ファーストリテイリング社長を任期満了前に退任。元ファーストリテイリング副社長の澤田貴司と共にリヴァンプ(企業再生事業)を設立し共同代表に就任。

(Sさん)
玉塚さんが社長に就任したのは反動減となる初年度です。柳井さんはCEOですから、現在の感覚ではトップを降りていないし、むしろ本当のトップのままなんですね。玉塚さんに期待したのは、もちろん反動減を止めることですが、真意は海外進出だったと思います。柳井さん自身は海外を経験されていないし、だからこそ玉塚さんにそれを託した。
『直言』は、柳井さんの次の言葉からスタートします。

「今でこそ海外で成功しているが、進出後20年ほどは失敗の連続だった。ロンドンに数十店も大量進出して、最初は大成功すると思ったら結果は大失敗だった。北京や上海などで商品が全く売れない時期があった。米国もそうだ。現地の事情を把握せず出店したのが理由だ」

ユニクロの初の海外進出は2001年のロンドン出店です。2002年にフランスと大陸中国、2005年に米国に進出しています。
私が上海に駐在したのは2005年からの4年間ですが、2006年11月に、当時上海で最大の売上を誇る浦東の巨大ショッピングセンター「正大広場」にユニクロが出店します。正面エスカレーターを上がった一等地に700坪の巨大店舗を構えています。アジア旗艦店です。「ものすごい家賃だろうなぁ~」とため息が出ました。

私が上海の久光百貨店に上海1号店を出店した時期だったので、強く印象に残っています。それが… 柳井さんがおっしゃるように、まったく客が入らないのです。私が上海にいたとき、ユニクロの店の客足が伸びてきたというイメージはありません。大量出店したロンドンも悲惨な状況だったようですよ。

日本で大成功したから…というのは通じなかったのです。当時の中国については、まだ「パチ物天国」ですから、ポロシャツにしてもTシャツにしても海外有名ブランドのロゴをこれ見よがしにプリントしている商品に価値を見出していた時代です。ノーブランドの品質重視商品に価値を感じる成熟型文化の到来までには、しばらく時間が必要でした。

(A課長)
柳井さんにしても玉塚さんにしても、「強烈な失敗体験」だったということか…

上海進出700坪のアジア旗艦店は、閑古鳥が鳴いていた!?

(Sさん)
ただ、ユニクロがすごいなぁ~と思ったのは、柳井さんの次の言葉です。

「現地のニーズや商習慣をよく知っているのはその国の人。だからこそ世界の人材と日本人でチームをつくり、それぞれの国や地域で最適な運営体制をつくることが大事だ。そのために日本の繊維を製造する技術を中国などに持って行き、協力工場など現地の企業家や個人と共同で事業を拡大してきた」

(A課長)
Sさんとは以前、UNIQLO、MUJI、DAISOの3つがSPAの世界ブランドだ、ということを語り合いました。柳井さんがおっしゃるようにファストリが世界化したのは、中国を中心にSPAとしての盤石な生産体制を構築したことがその背景だ。
2兆7千億円を見込む2023年の売上のうち、半分以上が海外です。店舗数はグレーターチャイナを中心に7割ですから、初期の大失敗にめげることなく、ローカライゼーションに注力し、失敗を糧として成功のノウハウを粘り強く蓄積していった賜物という訳か。

(Sさん)
本当にそうだと思います。
そろそろ時間ですね。実はまだ本質に迫り切れていない。最後に私の私見ですが、柳井さんの心の内を勝手に覗いてみようと思います。

(A課長)
勝手に…ですか?

(Sさん)
ええ、失礼を自覚のうえで…
柳井さんはフリースが売れ過ぎたことで、反動減を当然予想したと思います。恐怖めいた感情にも囚われたのではないでしょうか。期待した海外展開もままならない。それまでの成功によって築きあげてきた自信が、そのとき揺れ動いたと思います。

(A課長)
だから玉塚さんに譲った…

(Sさん)
20年前ですから、柳井さんもまだお若いし、玉塚さんは40歳です。結果的に柳井さんの復活を望む内外の声によって「柳井さんは復帰する」という流れになります。ただ、柳井さんは玉塚さんに「信頼して託した!」というメッセージを市場に発していたわけですから、復帰に際してとても悩まれたと思います。

だからこそ、その3年間を経て柳井さんは変身されたのではないでしょうか。「オーナーとしても執行の最高責任者としても、すべての責務を自分が負う」、という自らへの宣言です。それが、「バディをつくろう」という方向には向かわなかった。ただし、その分、大きな声で自らの考えを市場に発信し、その反応によって、自らを正していく、というスタイルを作られたのではないでしょうか。ですから「君子豹変する!」は、日常だったと思います。

柳井さんは「君子豹変」が日常化していく!?

(A課長)
Sさんは以前、「君子豹変」は肯定表現だと解説してくれました。柳井さんの「歯に衣着せぬ発信力」は、そうやって育まれていった…

(Sさん)
柳井さんの足跡とは、ひとりの経営者の枠を超えて、「日本の変革を提言する」啓もう家、思想家が誕生していくヒストリーのような気がしています。
思い出します。今年になって何回目の1on1だったかな… 3回目の1月18日だ。Aさんと、改めてわが社の商材である化粧品について語り合ったとき、前日17日の日経新聞3面に掲載された柳井さんにインタビューを取り上げましたよね。その見出しは、「ピンチの今こそ“大移動”」でした。柳井さんの言葉で、引用したところを振り返ってみましょう。

「世界の分断が始まる」と言っている人が多い。僕は反対に世界が本当につながっていくと考えている。世界のあらゆる事件が即座に日本や個人に関係してくる。今までなかったことだ。

世界を分断しようとしているのは国家だ。ただ分断は国にとっても良くない。戦争をする方が良いのか。平和的に共存する方が良いのか。覇権争いをやるのが良いのか。当事者は良いかもしれないが、周辺の国は困る。
日本は米中の間にいて、どっちの味方だと言われても、両方とも味方だとしかいえない。敵をつくる行為はやめてもらいたい。

(A課長)
日本への、そして世界への提言になっている。きな臭い空気が漂っているこの時に「中国の味方」であることを宣言されている。それも大きな声で!
Sさん、もう一つ残ったテーマがあります。「承継」について、柳井さんの本心はどこにあると思いますか?

(Sさん)
見出しにある「後継も創業家 夢がない」というのは、ウソのない言葉なのではないでしょうか。「人材は育ってきた」と答えられているようですが、まだまだ引退される雰囲気はない(笑)
後半で、「グローバルで優秀な人材といえばみんな欧米を思い浮かべるが、アジアにも優秀な人材はいくらでもいる。ベトナムをはじめ東南アジア、インド、中国の人たちはすごく優秀だ」、と語られていますから、このあたりの国から柳井さんの後継者が誕生するかもしれない。

「オープンなこころで失敗を全肯定できる」境地を目指したい!

(A課長)
Sさんと語り合うことで、「柳井さんとは?」と訊かれた場合、シンプルな言葉が像を結んでいます。

(Sさん)
おっ、何でしょう?

(A課長)
「オープン!」、そして「失敗を全肯定している人!」です。

(Sさん)
いい! 本当にそうだ。コーチングの人間観は「オーブンであること」です。そして、「失敗によって人は成長し続ける」ことができます。
今日の1on1もまとまりました。ただ「自分に素直になる」と同じくらい「オープンであること」というのは、人間にとってものすごく難易度の高い境地だと思います。Aさん、「失敗を真摯に受けとめ」ながら、その境地を目指して引き続き1on1ミーティングをやっていきましょう。

坂本 樹志 (日向 薫)

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