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全てにおいて突き抜けた「沖縄科学技術大学院大学(OIST)」を起点に、Tリーグトップの「琉球アスティーダ」につながった1on1ミーティングです!

────日本は学生を研究室に囲い込み、同じ大学の大学院に進ませる。
「この呪縛は解く必要がある。昔からある慣習の打破はどの国でも難しいが、変化を起こさないといけない。大学は閉鎖的でなくオープンな存在であるべきで、学生は多様な人と協業することで興味関心を広げ、つながりを持つことができる。卒業後は別の大学で博士号を取る流れを強力に進めれば能力が向上する。学生の流動性を高め協働すること問題の解決に役立つ」
(日本経済新聞6月18日2面「直言Think with NIKKEI~閉じた大学 呪縛解け カリン・マルキデス沖縄科学技術大学院大学長~」より引用)

心理学を学びコーチングの資格を有する新進気鋭の若手A課長と、部長職を長く経験し、定年再雇用でA課長のチームに配属された実践派のSさんとによる、2023年24回目の1on1ミーティングです。

紙面が刷新された日本経済新聞「直言」から1on1がスタート!

(Sさん)
今日の1on1は、日本経済新聞が紙面構成を順次刷新していくと予告していた、初日18日の日曜版を取り上げて、Aさんと語り合ってみたいのですが、いかがでしょうか?

(A課長)
いいですねぇ~ 刷新については、確か9日だったかな… アナウンスされていましたよね。チェックしてみましょうか…

日本経済新聞は6月18日からコンテンツを充実させます。私たちの身近にある問題や最新のニュースの核心に迫る新紙面や企画を始めます。日本経済新聞社は「考え、伝える。より自由で豊かな世界のために。」というパーパスを掲げています。読者のみなさまのご期待に応えられるよう総力をあげて取り組みます。引き続き、ご愛読ください。

スタートが、日曜版の「直言 Think with NIKKEI」と「科学の扉」ですね。

(Sさん)
そうなんですね。ただ、日曜版については、助走していたようで、新聞の1面の常識である、「トップ記事であるアタマ」と「二番手記事のカタ」を並べる、という形式を止めています。「トップとアタマを合体させ」、ワイドを広げた上半分の大きなスペースで、「チャートは語る」をテーマに改変しています。エビデンスとしてのグラフを3つくらい掲示して、「ファクト フルネス」を訴求している印象です。日経新聞らしいトライアルだなぁ、と感じていました。

(A課長)
なるほど… そうなると、各新聞の比較研究がやりにくくなりますね。「G7広島サミット」をどう評価しているかをSさんは、日経、朝日、毎日、読売、産経の1面を比較しています。日経、朝日、読売、産経の4紙はトップとカタは同じ内容でした。毎日新聞だけは他紙のカタをトップ記事にもってきていた… という、分かりやすい評価ができなくなる。

(Sさん)
スポーツ新聞と違って、全国紙には暗黙の業界標準があった、ということです。日経新聞は、そのあたりも崩そうとしている。
18日の2面を開いたとき、驚きました。インパクトありましたね~ 小ぶりな社説は変えていませんが、それ以外の全面が、ワンテーマの「直言」で覆いつくされています。そして、「何事も最初が肝心」ですから、この「直言」する人を誰にするのか… 日経新聞は考え抜いたと思います。その人物は、沖縄科学技術大学院大学長のカリン・マルキデス博士でした。

OISTのカリン・マルキデス学長が「直言」のトップバッター!

(A課長)
私もしっかり読みました。沖縄科学技術大学院大学はOkinawa Institute of Science and Technology Graduate Universityが英語名なので、OISTと呼ばれる、知る人ぞ知る大学院大学です。日本でレベルが高い大学というと、明治時代に設立された旧帝大の流れをくむ東大、京大などがイメージされます。ところが沖縄で、文部科学大臣の認可を経て正式に設立されたのは2011年です。ほんの10年前にできた大学ですから、日本の世論という視点では、極めて認知の低い大学だと思います。

(Sさん)
Aさんにそう言っていただくとホッとします。2010年から2年間、南九州の4県… 熊本、鹿児島、宮崎、そして沖縄を統括する担当でした。沖縄にも代理店がかなりの数ありますが、全店お伺いしています。那覇市、沖縄市、宜野湾市、浦添市。糸満… 2カ月に1度は行っていたかな。
ただ、2011年にできたOISTのことは、当時まったく印象に残っていないんです。

(A課長)
Sさんは、そうやって沖縄の話をされますが、私は沖縄には観光で一度しか行っていないので、仕事とはいえうらやましい(笑)

(Sさん)
もちろん、仕事と観光は区別していましたよ。もっとも、土日を絡めて行くことが多かったので、ちょっと微妙かな(笑)。私は「城マニア」なので、首里城をはじめ、世界遺産に登録されている5つのグスクはすべて行っています。首里城焼失がニュースで報じられたときはショックでした。悲しかったですね。
ちなみに、城は沖縄ではグスクと発音します。「せーふぁうたき」など4つの遺構も制覇しました。

城マニアのSさんは、沖縄の世界文化遺産を全て制覇していた!

(A課長)
Sさんが「城マニア」であるとは…知らなかった。日本には多くの城が存在していたと思うのですが、天守閣がそのまま残っている城は少ないですよね。いくつあるんですか?

(Sさん)
ええ、現存12天守という言い方で説明されます。その中に大天守と小天守のツインタワーである熊本城は含まれていません。西南戦争で焼かれましたから。ただ築城当時の姿を保っている唯一の多重櫓である宇土櫓は、重要文化財です。
平成28年4月14日に発生した益城が震源の熊本大地震でも、この宇土櫓はかろうじて崩壊を免れました。

(A課長)
そういえば、Aさんは南九州エリアを担当されていたから、発生後すぐに現地に飛びましたよね。

(Sさん)
ええ、熊本を離れて5年が経っていましたが、支援で現地に赴きました。震源の益城は震度7です。その場所に入ったとき「これは戦場だ!」と、実感しました。自衛隊の車両も多く目にしています。
益城にも代理店が複数あります。オーナーにお会いして、いろいろお話を聴くことができました。各オーナーの頑張りは、レジリエンスそのものです。感動体験でした。

お城に話を戻しましょうか。
私は12天守のうち、弘前城以外はすべて行っています。姫路城は圧巻ですが、好きなのは、丸岡城、犬山城、彦根城です。特に丸岡城は、小ぶりのかわいいお城です。

代理店オーナーは熊本大地震でレジリエンスを発揮した!

(A課長)
日本のどこにいても大地震は起こりうる。Sさんと『すずめの戸締まり』を語り合ったのを思い出します。
ええっと、沖縄の世界遺産で「せーふぁうたき」は知っています。 漢字だと「斎場御嶽」でしたっけ?

(Sさん)
さすが、Aさん!
そうだ… マニアックな質問になりますが、よろしいですか?

(A課長)
コーチングのフィードバックと違いますから、事前了解は必要なしです(笑)

(Sさん)
フィードバックに限らず了解をとるのがクセになっている。まあヨシとしてください(笑)
世界遺産の一つに、漢字だと「今帰仁」と書くグスクがあります。どう読むかご存じですか?

(A課長)
う~ん… さすがに無理ですね(苦笑)

(Sさん)
「なきじん」です。沖縄の言葉は、九州や本州、四国とは別の言語体系なのかもしれません。今帰仁は、名護市の西側に丸く広がる半島の中にあって、小高い丘陵の上に優美なカーブで築かれた石垣が残されています。かなりの規模です。その上に立ってみると、360度の大パノラマでした。海からの風がとても気持ちいい。

沖縄は、もともと今帰仁や座喜味の山北、首里の中山、そして南山の三山に分かれていて、それぞれ首領が支配していました。それを1429年に尚巴志が三山を統一して琉球王国が建国されます。

琉球王国は中国や日本、そして東南アジアとの多面外交で繫栄してきましたが、1609年に薩摩藩が攻め込んで以降、日本の影響を強く受けるようになります。そして1879年に沖縄県となりますが、それが「琉球処分」です。何とも名状しがたい表現ですね。

琉球王国は三山を統一した尚巴志が1429年に建国!

(A課長)
信長、秀吉、家康については、語りつくされた感もありますが、沖縄三山の歴史も興味深いですね。Sさんは沖縄を担当することで「学ぶきっかけを得た」ということですか?

(Sさん)
ええ、おもろまちにある「県立博物館・美術館」に3回通っています。愛称は“おきなわのもの”を意味する「おきみゅー」です。すごく勉強になりました。

おっと、このままいくと、沖縄県の歴史を語る1on1になりそうだから、戻します。
刷新なった日経新聞の2面をじっくりと読み込みました。現在の学長であるカリン・マルキデス博士も素晴らしい人です。そしてOISTがいかにスゴイ大学であるのか、実感することができました。

(A課長)
ちょっとネットで調べてみましょうか。
なるほど…
日経ビジネス」は、タイトルが「ランキングは東大より上、沖縄のOISTに優れた人材が集まる理由」で、記事内容は「学術出版の英シュプリンガー・ネイチャー発表の『質の高い論文ランキング2019』では、OISTが日本1位、世界9位となった」と始まっている。

Forbes」のタイトルは「世界が憧れる“研究者の楽園”が沖縄に、OISTはなぜ世界で活躍する人材を輩出できるのか」です。
“研究者の楽園”というキャッチコピーはいいなあ。沖縄の環境がそのままイメージされますね。執筆者のセンスもいい。

記事の始まりは…
英国の「質の高い論文ランキング」で東京大学を超える世界9位を獲得、世界トップクラスの研究者/学生を引きつけてやまないのが、沖縄県・恩納村にある沖縄科学技術大学院大学(OIST)だ…

沖縄科学技術大学院大学は東大・京大を凌駕する世界9位の大学!?

(Sさん)
すごい大学が沖縄に誕生したわけだ。
年間運営費も調べてみましょうか。Bingに訊いてみよう…

沖縄科学技術大学院大学の令和3年度予算は、運営費交付金87億円、施設整備費補助金14億円などを含めて、総額279億8400万円です
東京大学の令和3年度予算は、運営費交付金83億円、施設整備費補助金14億円などを含めて、総額453億5750万円です。
京都大学の令和3年度予算は、運営費交付金80億円、施設整備費補助金5億円などを含めて、総額247億7250万円です。
以上のことから、東京大学が最も予算が多く、次いで沖縄科学技術大学院大学、京都大学の順になります。ただし、これらの予算は各大学の規模や特色によって異なることに注意してください。例えば、沖縄科学技術大学院大学は博士課程のみの小規模な大学であり、東京大学や京都大学は多くの学部や附属機関を持つ大規模な大学です。また、各大学は自己収入や寄附金なども財源としています。

突き抜けている…

(A課長)
OISTで教鞭をとられているペーボ教授が、昨年ノーベル賞に輝いています。日経新聞の「直言」では、次のように紹介されていますね。

質の高い科学論文の割合で研究機関を格付けした「ネイチャー・インデックス」で、世界9位となり、22年にはスパンテ・ペーボ兼任教授が古人類のゲノム研究でノーベル生理学・医学賞に輝いた。

そういえば以前の1on1で、Sさんは池上彰さんがペーボ博士にインタビューした『大岡山通信』を取り上げました。

そのペーボ博士は、兼任とはいえOISTの教授であり、ノーベル賞は直近の2022年です。大騒ぎしてもいいと思うのですが…
米国で長期間研究し、その研究成果によってノーベル賞を獲得した人物が、たまたま「日本人」だと、上を下への報道合戦となります。もちろん私も誇らしく感じます。ただ沖縄の大学、そして外国人だと…
「その違いは何だろう?」と、考え込んでしまいます。

(Sさん)
その疑問は探求すべき価値のある大テーマですよ!
OISTは国立大学ではありませんが、設立経緯そのものは政治的な要素も感じます。ただOISTが画期的なのは、過去沖縄に投じられた振興予算が「沖縄米軍基地」との関りと切っても切れないのに対し、そのことは感じられないし、さらに建学の思想が、これまで日本で設立される大学では“ありえない”、というか“想像できないスケール”です。

つまり、暗黙裡に形成されてきた「日本の大学だから…」という、しがらみが全く感じられない。沖縄という日本の中央からとてもとても離れた場所にある大学院大学、という地政学的条件が、大いに貢献している。
記事に「学生260人の8割は外国人だ」という円グラフが掲載されていますね。インド34人、英国19人、ロシア17人、中国14人… 実に様々です。

カリン・マルキデス学長のインタビューを受けて日経新聞は、「閉じた大学 呪縛解け!」を全体のタイトルにしました。

沖縄科学技術大学院大学は全てにおいて突き抜けている!

(A課長)
Sさん、OISTのサイトをネットで見ているんですが、とんでもない広さですね。

本学のキャンパスは、ダイビングやシュノーケリングで有名な恩納村の丘陵地区に広がる約200ヘクタールの亜熱帯林の中にあります。近未来的な沖縄のお城をイメージした建物で、高くそびえるスカイウォーク、きらめく湖、美しい森を見下ろす外壁、なだらかな岩壁が特徴的です。

(Sさん)
ええ、すべてにおいて突き抜けた大学です。敷地面積は200ヘクタールですか…
ディズニーランドは50ヘクタールくらいですから、4個分ですね。大学院ですから学生数は少なく260人。つまり学生一人当たりのスペースは、7700㎡です。

(A課長)
日本でイメージされる平均的な大学とはあまりにも違い過ぎるので、そのような数値が独り歩きすると、「不公平すぎる!」といった関係各位の声が高まるような気もしますが、それも聞こえてこないですよね。

(Sさん)
ええ、沖縄にあるからでしょう。

(A課長)
マルキデス学長は、「博士学生は社会変革の起爆剤になれる。しかし、日本の産業界は博士を雇うことに関心がない。雇う必要がないと感じている」、と言葉にされていますが、どう思われますか?

(Sさん)
ええ、マルキデス学長が断言するように、それが実態です。昭和、平成、令和と移ろうにつれて自明の流れとなってしまった。

私は同業界のW社とは縁があっていろいろ情報を交換するのですが、人事担当役員から、私が懇意にしていたK研究員の退職を知らされました。東大大学院のドクターを出ています。そのときの担当役員は、「彼は東大の院だけど、〇〇大学の△△学部だからね」と、少し冷ややかでした。

日本の産業界が博士を雇うことに関心がないその理由とは…

(A課長)
なんだか象徴的な話だなぁ…

(Sさん)
大学院になると、俗にいう偏差値の基準では測れない。日本はどうも大学、そして学部の偏差値ランキングで、その人を評価する価値観がはびこっているように感じます。典型的なバイアスです。

日本の既存大学の博士課程の在り方に問題があることも現実ですが、博士については、企業側が「汎用性がない」というイメージで受けとめてしまっている。つまり専門性が高すぎて“使えない”ので、採るのなら修士まで、という訳です。平たく言うと、「マニアは勘弁したい」です。いまだに「学卒で採用して社内で育てる」という、すでに劣化が顕著な体制を変えられない。
“使えない”のは、企業そのものがイノベーティブでないからであり、本末転倒です。

(A課長)
ただ、さすがに日本全体に「このままではヤバい!」という“実感”が生じているのではないでしょうか。コロナ禍も、目を覚ますきっかけになっています。痛みは“実感”によってしか、受けとめることができません。

(Sさん)
そうですね。株価もバブル後最高値を更新していますし、十倉会長の言葉はこれまでの経団連会長にはないメッセージを発している。

「デフレからの脱却と人への投資促進による構造的な賃金引き上げを目指した企業行動への転換を実現する、正念場かつ絶好の機会だ(1月10日定例記者会見)」

「春闘を経営側としてどう乗り切るべきか」という一貫したスタンスで、連合などをけん制するのが経団連の存立基盤ですから、実に画期的です。

(A課長)
日経新聞はOISTを紙面刷新の一番手に選びました。沖縄の時代がやってくるのかもしれませんよ。

(Sさん)
いいですね~
そういえば、バスケットボールBリーグの沖縄がスゴイ! 1万人を収容する「沖縄アリーナ」も最新鋭の施設だけあってスゴイみたいですね。地元「埼玉アリーナ」では、さまざまなイベントが開催されるのでよく行きますが、残念ながら「沖縄アリーナ」にはとてもかなわない。
すり鉢状の観客席は、これまでの日本のアリーナにはないデザインです。テレビからも臨場感が伝わってきます。観客動員数がリーグ1位を誇っているのも納得です。

「琉球アスティーダ早川周作会長」がJEAのシンポジウムで講演されます!

(A課長)
Sさん、そろそろ時間ですね。沖縄が日本を変えていくキーワードになるような気がしています。特にソフトパワー!

Sさんは、バスケットのBリーグを話題にされましたが、卓球のTリーグも沖縄はすごいですよ。早川周作会長がつくられた「琉球アスティーダ」が2020-2021年のシーズンに優勝を果たしています。世界ランク2位の張本選手が所属しているチームです。

「アスティーダ」は、「明日、未来」と、沖縄の言葉で太陽の「ていだ」を組み合わせた造語です。「未来を照らす太陽」という意味が込められています。プロスポーツチームでは日本で初めての上場企業なんですね。

日本エグゼクティブコーチ協会(JEA)のシンポジウムが7月14日・15日で開催されます。早川会長が講演されるので、とても楽しみです。

(Sさん)
今日の1on1は、OISTからスタートし、最後は琉球アスティーダで〆ることができました。
引きつづき、コーチング型1on1をやっていきましょう!

坂本 樹志 (日向 薫)

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