7月3日(水)に所用で大宮に向かい、まずは町中華で昼食を摂る際の「ながら新聞」を求めるべく、大宮駅東口の南銀(なんぎん)方面への階段を降りたところに佇む、こじんまりとしたKioskに立ち寄りました。
そこで、複数の新聞が丸めて収められているラックを眺めていると、異様に目立つ新聞(らしきもの)が一つ、目に飛び込んできたのです。
「何だろう?」と興味を覚え、ゆっくり取り出し丸みを伸ばすと(購入の意図はなく元に戻すつもりだったので)、セピア色の古い写真が全面を覆っています。よく見ると、背広姿の外国人とおぼしき人物に囲まれた小柄の老人が笑顔でカメラに向かっています。渋沢栄一翁です。定番の新聞1面の体裁ではなく、とにかく全面大の写真だったので驚きました。
購入を決めて、Kioskの店員さんに渡すと…「あら、何かしら… えっ、新聞なの?」と、面食らったそのままの声です。左上に表示されている社名を見つけて、「埼玉新聞ですね…150円です」と、言葉が返ってきました。
7月3日の「埼玉新聞」は渋沢栄一の大特集を組んでいた!
町中華で、早速広げてみます。実は、1面だと思ったこの紙面はA面で、折り込まれた隣面はD面と表示されており、写真はつながっていました。その大見出しは、「受け継がれる渋沢栄一の精神~take over SHIBUSAWA spirits」です。そして、このA面・D面を裏返すと、B面・C面とあります。
つまり、2024年7月3日版の埼玉新聞は、1面から始まる「本紙」を、企画特集である「A~D面」が包み込む体裁だったのです。渋沢栄一の新1万円札が発行されるその日、埼玉新聞は、気合(spirits)を込めて渋沢栄一の大特集で臨んでいました。
この1週間、渋沢栄一をさまざまな媒体が取り上げています。そこで、(株)コーチビジネス研究所も渋沢栄一について語ってみようと思います。
D面では、「新1万円札発行を好機に」をタイトルに、「渋沢栄一の精神」を紐解きます。その一部を引用します。
激動の幕末から明治、大正、昭和を駆け抜けた渋沢翁の生きざまは、令和を生きる私たちに数多くのことを教えてくれます。グローバル化が進む今、100年以上前から渋沢翁が実践した道徳・経済両立の思想は、国連が世界の共通目標に掲げる「SDGs(持続可能な開発目標)の精神」そのものです。
晩年は社会・公共事業にも熱心に取り組み、亡くなる91歳まで市民の福祉向上に尽力しました。「人生100年時代」が叫ばれる今、老いても意気軒高なその姿は私たちに勇気と希望を与えてくれます。
渋沢栄一の思想の完成は「道徳経済合一説」
もう一つ、埼玉新聞を引用します。D面の大見出しは「公益のため 近代日本の礎築く」です。(株)コーチビジネス研究所は「異質の調和」を掲げています。それは「コーチングによって見出され、実現できる」と捉えます。
渋沢栄一の思想の完成は「道徳経済合一説」ですが、それについての埼玉新聞のコメントは次の通りです。
「日本近代資本主義の父」といわれる渋沢だが、自身は自らの思想について「資本主義」という言葉を使っていない。渋沢が唱えた「合本(がっぽん)法」は、公益の追求を事業の目的に掲げ、それに賛同する人たちから資金を集めて事業を行うというものだった。その基本となった思想が「道徳経済合一説」。事業家は自分の利益だけでなく、公共の利益を追求することで、社会全体が豊かになるという考えだ。
渋沢が亡くなって90年余り。経済のグローバル化が進み、格差と社会の矛盾が広がる中で、公益のために尽くした渋沢の生涯と思想は注目を集めている。
実は、毎週1回のインタバールで、4年間~続けているこのコラムでも、「渋沢栄一の生涯と思想」について、深掘りを試みています。2021年7月から9月にかけて、8回のシリーズでアップしています。
今回、コラムを書くにあたって、そのすべてを振り返ってみました。有名な『論語と算盤』だけでなく、渋沢栄一に関する学術書をはじめ、さまざまな文献を渉猟しています。市井の一渋沢栄一ファンとして、「渋沢栄一の生涯と思想」をかなり詳細に描いてみました。
そこで今回のコラムは、この8回シリーズにリンクを張り、「どのような内容が綴られているのか?」というガイドになるよう、それぞれのコラムの見出しを紹介させていただきます。このタイミングだからこそ、「渋沢栄一のspirits」に触れていただきたいと感じています。
- 私なりの渋沢栄一論にチャレンジしてみます
- ノーベル賞の選考に関する史料は、50年後に公開されます
- ノーベル賞選考の過程で把握された渋沢栄一の人物像とは…
- 吉武教授はノーベル委員会の渋沢評価について、次のように総括しています
- 「世界で評価され通用する日本人は渋沢栄一である!」と国を挙げて推挙している…
- 米国が世界に与える影響力はそれほど大きいものではなかった…!?
- 渋沢栄一が人生で最も充実感を覚えていたのは大蔵官僚時代…!?
- 渋沢栄一のパラレルワールドを想像してみました
- 渋沢栄一は“維新の三傑”大久保利通に真っ向から反論しています
- 渋沢栄一は「幕末~大正」時代の“真の”語り部
- 渋沢栄一は多くの人物をポジティブに評価していますが…
- 渋沢栄一は井上馨と共に大蔵省を辞しています
- 『論語と算盤』のなかで渋沢栄一は真の「立志」を語ります
渋沢栄一『実験論語処世談』…渋沢翁は懸値なきところが歴史だ!
- 今回のコラムは『実験論語処世談』を取り上げます
- 『実験論語処世談』には、同世代を含む131人の歴史上の人物が登場します
- 子曰。君子不器。【為政第二】
- 大久保利通に対して「気味の悪いような心情を抱いてしまう」と語る渋沢栄一です
- 渋沢栄一は「すこぶる親切な同情心の深い人」と西郷公を評価します
- 西郷公は「他人に馬鹿にされても、馬鹿にされたと気づかない人」だった…!?
- 「木戸公は文雅である」と渋沢栄一は語ります
- ドラッカーは渋沢栄一と岩崎弥太郎を極めて高く評価しています
- 渋沢栄一はアニマル・スピリットを持つ革新的企業者!
- 岩崎弥太郎との関係は渋沢栄一を語る上での定番エピソードです
- 「渋沢栄一 v.s 岩崎弥太郎」の本質は「三井 v.s 三菱」であった…
- 会社を強固な「民間の中のパブリック」の場に変えていく渋沢栄一
- NHK大河ドラマ『青天を衝け』のスタッフに脱帽!
- 「みんなで作り上げた作品!」はエンドロールに込められている
- 『青天を衝け』の渋沢栄一は従来の大河ドラマの主人公とは違う…
- 『論語と算盤』の「常識とは如何なるものか」を抜粋します
- (パブリックを包摂した)渋沢栄一の資本主義
- 渋沢栄一の心技体が融合したハイブリッドの孔子像
渋沢栄一が啖呵を切ったその“言葉”が「道徳経済合一説」を生んだ…!?
- 渋沢栄一は、権威を嫌いリアルな世界観を築きます
- 渋沢栄一の心の奥底を探訪してみる…
- 大親友の直言に当時の渋沢栄一は動揺したのかもしれない…?
- 人にとって絶対必要な“拠り所”について考えてみました
「道徳経済合一説」とアダム・スミスの『国富論』、 そしてマックス・ウェーバー
- 企業経営も社会事業の一環である
- 渋沢栄一は「資本主義」という言葉をあまり使っていない
- 渋沢栄一はアダム・スミスを超えた思想家である
- 西洋思想界の巨人マックス・ウェーバーと渋沢栄一の視点を考えてみる
- 渋沢栄一は“論点先取”の対極に立つ「調和」の哲学を伝道!
- 渋沢栄一の壮大な実績はどのようにして形成されたのか…?
- 多くの資本家から資金を集めたその方法は「奉加帳方式」…?
- 渋沢栄一の活動の在り方は経済団体がカギを握っている…
- 経済団体の存在意義とは…
坂本 樹志 (日向 薫)
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