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想像力を思いっきり広げ、「理想とする信念」を心に秘め、未来を描いていくのがコーチングです!

放っておいても人口が増える高度経済成長期の発想が抜けきらず、国を開く本気は見えない。外から来る人と一緒になって豊かさを求め、社会のフェアネスと結びつきを強めていく。そんな繁栄の道が見えている。国境を閉ざしていてはその道は遠のき、失うモノも大きい。
(日本経済新聞1月9日1面「国開く本気、変革も呼ぶ」)より引用)

心理学を学びコーチングの資格を有する新進気鋭の若手A課長と、部長職を長く経験し、定年再雇用でA課長のチームに配属された実践派のSさんとによる、2023年2回目の1on1ミーティングです。ソニーウォッチャーのSさんが、ソニーが人工衛星の打ち上げを成功させたことを興奮気味に語ります。

ソニーが人工衛星打ち上げを成功させた!

(A課長)
年が改まる、というのはいいですね。「昨年は昨年、いろいろあったけど、年も変わったのだから、新たな気持ちでやっていこうよ!」と言っても、違和感なく共感してもらえる雰囲気が正月にありますから。

(Sさん)
人は自分の力だけでチェンジすることは難しいですよね。周りの環境や他者の… つまり外の力を借りて変わっていくのだと思います。新年になると起動する“改まった気持ち”も、その一つです。

しめ縄やお正月飾りは、速いタイミングだと1月8日の朝に片づけるので、9日月曜日の日経新聞を気持ちも新たに読んでみました。すると、さりげないスペースの「ソニー、衛星打ち上げ成功」という記事を見つけました。

(A課長)
えっ? ソニーが人工衛星を作っていたのですか?

(Sさん)
ソニーウォッチャーを自負する私も知りませんでした。衛星の大きさは、幅10センチ、高さ20センチ、奥行きは30センチとあります。

ウォークマンが生み出され、世界的大ヒットとなったのは「小型化に限界はない」、という「ソニーのものづくり基本理念」があったからこそ、でした。その伝統は今に引き継がれているということですね。

(A課長)
ソニーは、最先端技術を全方位で活用していますね。エンドユーザー向けだけでなく、消費者があまり意識していない基盤技術でも存在感を示しています。非接触ICカードは、今ではコンビニの電子マネーなど、完全な生活インフラとなっています。それもソニーであることをSさんが話してくれました。

ソニーの最先端技術は多彩!

(Sさん)
フェリカですね。このブランド名を知っている人は、かなりのソニーマニアです(笑) FeliCaはFelicityという“至福”に絡めています。ホームページをチェックしてみましょうか…

駅の改札口で交通系ICカードをタッチしたり、コンビニエンスストアで電子マネーを利用したり。いまや、あちこちで見られる“かざす便利”をつくりだしたのが、ソニーの非接触ICカード技術方式「FeliCa」です。非接触だから、かざすだけで高速データ送受信。さらに、データは何度も書き換えられ、カード本体を再利用できるエコロジーなシステム。厳重なセキュリティーも実現し、公共交通機関の乗車券システムから、電子マネー、マンションの鍵まで幅広い用途で使われています。これからも、Felicity(至福)に由来する名前どおり、「FeliCa」は世の中をもっと便利に楽しく変えていきます。

(A課長)
そういえば、ワールドカップでの三苫選手のゴールは、世界中の人がラインの外に出ていると確信したにもかかわらず、上空からの画像ではミリ単位でラインに被っていることをVARが判定しています。その技術もソニー傘下のホークアイ・イノベーションが担っていますね。
広島出身のSさんが、「広島県は全国1位の移民送出県ですよ」と語った12月5日の1on1の時に、話題になりました。

VARといえば、日経新聞が異なる視点でテーマアップしていました。「日経新聞 VAR」で検索してみましょう…

トップに、「分断する世界にVARを」が出ました。12月19日の日経新聞です。
藤井彰夫解説委員長が書いていますから、2023年の日経が何を最重要テーマとしていくか、その序曲たる内容であったことが、新年になって像を結びました。

カタールでのサッカー・ワールドカップ(W杯)では、米国とイランなど敵対する国同士もピッチ上でルールにしたがって戦った。

円滑な進行に一役買っているのがセンサー、映像解析、AIなど最先端技術を駆使したビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)だ。人間の審判が見えなかった角度の映像も分析し、日本のスペイン戦での逆転ゴール判定で威力を発揮した。VARによるプレー中断も増えたが、双方が頭を冷やすきっかけにもなっているのではないか。

今の世界にも様々な紛争を多くの角度からみて公正な判断を手助けするVARのような仕組みが必要だ。本来は国際機関が果たすべき役割だが、国際連合、WTO、国際通貨基金(IMF)などは十分に機能していない。

コロナ禍で途絶えていた首脳外交は始まった。次は新たな紛争解決・危機管理のメカニズムの構築が必要だ。公正なルールに基づくフェアプレー。世界はもっとスポーツから学ぶ時だ。

ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)が注目されている!

(Sさん)
公正、フェアプレーが〆のキーワードになっていますね。まさに2023年に日経新聞が掲げたパーパスとドンピシャリです。そこにソニーが絡んでいるので実に嬉しい。

Aさん、新年2回目の1on1のテーマを何にしようか、いろいろ考えてみたのです。ソニーの人工衛星打ち上げ成功の記事を日経新聞で見つけたあと、他の記事も丁寧に読んでみました。日経は1月1日の元旦号から、「Next World 分断の先に~世界をつなぐフェアネス」を大テーマとして、2023年での大変革を提言しています。その内容は、これまでになく踏み込んでいると思うのですね。

(A課長)
踏み込んでいる…?

(Sさん)
ええ、間違いなく踏み込んでいます。1月9日1面の「Next World 分断の先に」は「国開く本気、変革も呼ぶ」というタイトルです。見出しで「正比例する移民と豊かさ」を掲げ、日本の空気として、どこか避けている「移民受け入れ」を正面から論じています。労働移民だけでなく、生活移民も含めたアプローチです。

(A課長)
日本の空気…ですか?

(Sさん)
日本は地政学的に辺境の島国です。出入りのほとんどないところで、姿かたちも似たような人たちだけで、ず~っとやってきた、いや、やってこれた。ですから、国家としての極めて特殊な長久の環境が背景にあります。
米国のように移民で成り立っている国、欧州のようにヒトラードイツという、人間という存在を根底から熟考させられる経験をした諸国とは、経験知があまりにも違い過ぎます。

日本は移民問題に関する経験値が絶対的に不足している!?

(A課長)
なるほど… 私は、含意が大きく異なる2つの言葉を並べた「ダイバーシティ&インクルージョン」をイメージしました。このことを「正しくあるべきだ」というポリティカル・コレクトネスで理解しようとしているのが多くの日本人の実情ではないか? と想像しています。

(Sさん)
ダイバーシティ&インクルージョンは「異質の調和」を目指そうとする合体コンセプですね。森保ジャパンの完結編として語り合った1on1のまとめとして、Aさんはそのことを語っている。

(A課長)
私は、少しセカイ系が入っているかもしれませんが、世界の行く末という大テーマだけでなく、妻との関係という極めて個人的なことも、ダイバーシティ&インクルージョンの視点で考えています。私とあなた… 自分ではない他者との関係、組織、国家というレベルを問わず、「ありたい理想の姿」は、この言葉に行きつくような気がしています。

(Sさん)
私は中国事業を担当して4年間の大陸中国での生活が、自分を変えたと実感しています。それもあって、ここまで少子化が進むなか、未だに“日本人”の枠内だけで、その対策が喧々諤々と語られる現状に、どこか違和感を覚えています。

家族の捉え方は文化の基底ですから、一朝一夕で変われるとは、もちろん思っていませんが、それでも影響力を持つ誰かが口火を切らないと…
そのことを、英フィナンシャルタイムズとの合体を経て、世界を俯瞰する視点を獲得した日本経済新聞は自覚的にやろうとしている、と感じています。

(A課長)
家族ですか? そういえば私がコーチビジネス研究所のコラムを熱心にチェックするようになったきっかけは… いつだったかな? ちょっと待ってください。
2020年5月10日のコラムでした。

日本の家族構成はどう変化しているのか… 気になったこともあって、ネット検索したのです。Sさん、「変化する家族 コーチング」でググってみてくれますか?

(Sさん)
トップに出てきたこれですか? タイトルは「心理学とコーチング ~変化する家族とコーチング~」ですね。

高度経済成長期の家族観はどこにも存在しない幻想そのもの!

(A課長)
その時は、「変化する家族」だけでトップにヒットしていました。
平成27年の国勢調査時点で、世帯人数が2.38人にまで減少しています。これは平均です。全年齢を通してのひとり世帯は35パーセントです。
そして、「30歳~49歳の男性で1度も結婚したことのない人は36%!」とあるので、ちょっと驚きました。少子化以前に、そもそも結婚する人が圧倒的に減っているのです。

(Sさん)
これが日本の家族構成のファクトということですね。

(A課長)
コラム後半の、「日本に住む外国籍の人を“日本人”はどのように思っているのでしょうか?」という問いに対するコメントは、今まさにSさんが言葉にしている内容です。

日本という国家は地勢学的条件をはじめとして日本人という概念を空気のように受けとめています。姿かたちも共有した内と外という概念です。外国籍の人が隣に住んでいても、法律など制度環境は“日本人”だけに適用することが自明という感覚です。あらゆる統計数値は“日本人”であることをベースとしており、例えば外国籍の子供の教育環境はどのような実態であるのか? を調べようとするとかなり骨がおれてしまうのが現状です。

(Sさん)
藤井彰夫解説委員長による2023年の序曲は12月19日にありました。外国籍の人との共生に関する記事が同じ日の日経社会面にあります。気になる記事だったのでスクラップしていたのですが、不思議なつながりを感じます。
アーカイブを見てみましょうか?

「風紋」というコーナーで、「中国出身者と共生探る芝園団地」です。大きな見出しで「日本社会の希薄化も問う」とあります。次の言葉から始まります。

ごみの投げ捨て、夜中の騒音、香辛料の強いにおい……。入居者の半数以上が中国の出身者だという埼玉県川口市の「芝園団地」はかつて、言葉の壁や生活習慣の違いによるトラブルが相次いだ。「チャイナ団地」と呼ばれたこともある。

京浜東北線の蕨駅の少し北側に壮大なマンション群が姿を現します。そこが芝園団地です。

埼玉県川口市の芝園団地は共存から共生へ…

(A課長)
共生への奮闘ぶりが描かれている。キレイごととは異なる、住民としての当事者の視点ですね。現在は自治会役員9人のうち4人が外国の出身者で、大きな生活トラブルもなくなり、共存から共生が着々と進められている。

芝園団地では多文化共生などに興味を持つ学生たちをボランティアとして外から招き入れ、交流イベントを企画・実施してもらった。行政に対しては、第三者の一員として実際に現場に入り、住民を後押しする役割を期待している。

(Sさん)
最後のまとめは、日本社会の実相に視点が移っています。リフレーミングです。

本質は隣人とどう共存・共生関係を築くかにある。芝園団地は隣人が外国人だから目立っているだけで、「日本各地の隣近所が抱える課題の延長線上にある場所」にすぎなかったのだ。
子どもの声や除夜の鐘がときに騒音と認識され、孤独死を聞いて驚かない社会で、地域のあすの姿をどう描くのか。多文化共生は私たちの足元にある、私たち自身の問題ということになる。

(A課長)
今日の1on1は、ダイバーシティ&インクルージョンから「共生」という概念に広がりました。このことはまさにコーチングが掲げる理念です。理念は「理想とする信念」の省略表現です。価値観は異なっていても対話を通じて、そのことが実現されるではないでしょうか?

(Sさん)
12月19日の日経新聞の中で、もう一つAさんに紹介したいところがあります。最後の40面文化欄です。タイトルは「政治哲学者アーレントに脚光」です。見出しは「分断克服のカギは話し合い」です。

ちょうど1年前、2022年1月6日の1on1で、Aさんが「アイヒマン実験」を解説してくれました。そのときAさんは、アーレントの論文集である『責任と判断』の一節を引用しています。インパクトがありました。

ちくま学芸文庫から出版されているハンナ・アレントの論文集である『責任と判断』を最近読んだのですが、今回Sさんに紹介したくて持ってきました。その中の一節に次のような言葉があります。

第三帝国の殺人者たちのことを思い出していただきたいのです。彼らは非難の余地のない家庭生活を送っていただけでなく、余暇にはヘルダーリンの詩を読み、バッハの音楽に耳を傾けるのを好んでいました。そしてほかの誰にも劣らず、知識人にも犯罪を犯す傾向がそなわっていることを証明したかのようでした……

アーレントの関連書籍が相次ぎ刊行されているようですね。記事の中にある、哲学者の佐藤和夫千葉大学名誉教授の次の言葉が印象に残ります。

お互いの存在や意見に価値があると認め合うことが大切だ。誰かと現実を共有した経験は、お互いが世界を作る主催者だという意識を持つことにつながる。

想像力を駆使して対話を重ねていくのも経験の共有!

(A課長)
12月19日の日経新聞の構成は、いろいろ考えさせられますね。アーレントは深いですよ。Sさんは先ほど、「欧州のようにヒトラードイツという、人間という存在を根底から熟考させられる経験をした諸国とは、経験知があまりにも違い過ぎる」と言葉にされました。まさにその通りです。

経験知はその人に固有のものです。他者はどのようにあがいたところで獲得できないし、共有は不可能です。ただ、人には想像することができるという、まさに力が備わっています。アーレントを読むと、その想像力が広がっていきます。想像する力を駆使して、そして対話を重ねるのも経験の共有だと思うのですね。コーチングによってそれは可能になります。

前回、2023年最初の1on1では、フューチャーペーシングをSさんと共感しました。今日の1on1も、私はその感覚に身を委ねています。

(Sさん)
多くの日本人にとって、移民というテーマは現実感が持てないと思います。ただ日本の将来に思いを馳せると、それが実感を伴うテーマとしていずれ浮上してきます。

移民は一つのテーマです。Aさんの言う想像力を思いっきり広げていくと、さまざま何かが見えてくるのではないでしょうか。未来はまだ起こっていません。だからこそ、「理想とする信念…ありたい理想の姿」をしっかり描いて、フューチャーペーシングでやっていきたいですね。
思えば叶う! です。

坂本 樹志 (日向 薫)

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