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森保ジャパンのリーダーシップスタイルを語る完結編です!

選手の意見交換を吉田麻也(シャルケ)が取りまとめ、森保一監督に具申。監督は受け入れ“フランクフルトモデル”が日本代表に移植される。スペイン打破につながる勝負布陣は、選手主導で立案・合議されたものだった。
(日本経済新聞12月8日 41面スポーツ2「エピローグ 森保JAPAN(上)…忍耐・柔軟・勤勉 森保采配の妙」より)

心理学を学びコーチングの資格を有する新進気鋭の若手A課長と、部長職を長く経験し、定年再雇用でA課長のチームに配属された実践派のSさんとによる、「森保ジャパン」を語る完結編です。

森保監督と吉田主将の最高の笑顔が飛び出した帰国会見!

(Sさん)
ブラジルがクロアチアに敗れました。共通する事象に基づいて結論を導き出す帰納法的推論を援用すると、日本とブラジルの実力は同等ということになります(笑)

(A課長)
まさに! 日本代表団は帰国しましたが、まだまだワールドカップを楽しむことが出来ますね。捉え方によって“景色”は変わりますから。

(Sさん)
“景色”はキーワードとなりました。森保監督と吉田主将の会見は、これまでのワールドカップ帰国会見とは違った景色です。8日の日経新聞社会面を飾った二人の笑顔は印象的でした。

(A課長)
ドイツ戦は11月23日です。帰国は12月7日ですからちょうど2週間です。この半月で、まさに日本の景色が変わったのではないでしょうか?

(Sさん)
本当にそうですね。「失われた30年」という言葉が日本人の心に棲くってしまった昨今、自己肯定感に乏しい“思い込みの世界”に閉じ込められたように感じています。それが森保ジャパンの一挙手一投足を見て、そして感じることで「私たちはいける!」「私たちには力がある!」と、自己効力感が高まってきたのではないでしょうか。
「感動」によって、これまでとは違う自分が目覚めてくるようです。

(A課長)
分かります。普段はスポーツに全く興味のない私の妻も、今回は興奮しています。三苫薫選手と田中碧選手の鷺沼コンビに釘付けでした。
私の妻の実家は、隣のたまプラーザということもあってか、日頃クールな彼女とは全くの別人が這い出したようで驚いています。「実のところ、自分は妻の本当の姿をわかっていなかったのではないか…」と、少し自信をなくしています。

(Sさん)
いえ、Aさんがそのように感じたということは、“人を知る”ということに関して、真実に近づいていますよ。私は24歳で結婚して妻とは40年一緒に暮らしていますが、未だに謎だらけです(笑)

最も近しいはずの夫婦とは“灯台下暗し”の関係なのか!?

(A課長)
大先輩のSさんにそう言っていただくとホッとするなぁ~ 心理学はかなり勉強したつもりですが、一番身近だと思い込んでいる妻との関係は、究極に“灯台下暗し”なのかもしれませんね。
さてアイスブレイクはこれくらいにして、今日も森保ジャパンを語りたいのですが、Sさん、いかがでしょう?

(Sさん)
了解です。3回目の完結編ということでやってみましょう。最初に話したように、帰国会見に響いています。監督と主将コンビの満面の笑みを見ると… う~ん、なんだろう? 大袈裟ではなく、心が洗われる。

前回の1on1では、スペイン戦を詳述する日経の紙面に吉田麻也選手が登場しないので、私は「菊作り、菊見るときは陰の人」を連想しました。

(A課長)
写真は「真を写す」と言われます。肩書という役割は監督と選手ですが、二人の内面には“対等な関係”がしっかり構築されている、と私には映りました。
二人がいかに信頼し合っているか、その笑顔とコメントから伝わってきます。改めて、「森保ジャパンはシェアードリーダーシップ」であることを確信しています。

森保監督と吉田主将の関係は対等!?

(Sさん)
42面のスホーツ2に、そのエビデンスが掲載されていますね。記事のタイトルは「忍耐・柔軟・勤勉 森保采配の妙」です。3日連続で掲載された「エピローグ 森保JAPAN」というシリーズ企画の初日です。

選手の意見交換を吉田主将がとりまとめ森保監督に提案する。それを森保監督が受け入れ採用している、という内容です。おそらくこのパターンが、森保ジャパンの中に早期に形づくられ、プリンシプルとなっていたのだと想像します。「組織戦略」です。

(A課長)
ブレていない、ということですね。ただ記事タイトルに“柔軟”とありますが、矛盾しませんか?

(Sさん)
その質問は予想していました(笑) 柔軟対応は「各試合における戦術」です。以前Aさんから紹介された、コーチビジネス研究所の「CBLコーチング情報局」を毎日チェックしているのですが、9日にアップされたテーマが「コーチングの戦略とは?」でした。
簡潔に説明されており、森保ジャパンにおける「戦略と戦術」を考える上でヒントになります。

「戦略」は、文字が示しているように元は軍事用語です。今日では広く、政治活動、社会活動、そして経営全般に用いられるようになりました。その意味は、最重要な課題に対して、高い次元で方向性を定めていくことです。したがってコーチングにおいても「戦略」という言葉を使用します。

なお、関連用語に「戦術」があります。大きな方向性である「戦略」に従い、一つひとつの目的を達成するための方法のことです。

森保監督は「戦略」、吉田主将は「戦術」を司るシェアードリーダーシップ!

(A課長)
ありがとうございます。コーチングについては、英語表記をそのまま使っているので、私たち日本人にはスホーツに限定されたイメージがまだ強いと思います。
私の取得した資格はエグゼクティブコーチであり、対象は企業経営者や経営幹部が中心です。経営戦略、戦術を打ち立てる際に悩んだり、迷ったりしているクライアントと対話を重ね、伴走していくという役割を担っています。

「CBLコーチング情報局」はコーチングのさまざまなキーワードが簡潔に説明されているので勉強になります。

(Sさん)
私はAさんとの1on1を通じてコーチングを知ることが出来ました。日本ではまだまだ定着していませんが、コーチングが企業に限らずあらゆる関係性に広がっていけば、トランスフォーメンションは起こりますよ。

(A課長)
力強い言葉です。私はそのことを信じて、コツコツやっていこうと思っています。
Sさん、日経新聞の記事で嬉しい言葉を見つけています。同じ記事の見出しに注目してください。

(Sさん)
ええっと… 見出しは「選手の声傾聴、力引き出す」ですね。

(A課長)
「聞く人」という言葉は氾濫しています。ただ、聴の文字を使った「聴く」、そして「傾聴」という言葉を新聞で見かけることはほとんどありません。

日本経済新聞が「傾聴」を見出しに使っている!

(Sさん)
そう言われれば… 確かにそうだ。

(A課長)
「傾聴」はコーチングの最も重要なスキルです。

(Sさん)
私もそのことを実感できています。以前の1on1で、「コーチングのスキルとは何か? ざっくりと教えてください」とお願いした際、「傾聴のスキル」が別格のスキルであることをAさんは強調しています。

(A課長)
同じく「CBLコーチング情報局」に、そのことが明瞭に書かれています。

「傾聴」とは、「コーチが耳だけでなく十の目と心によって、声音を超えたクライアントの心の声を感じとること」なのです。

と言う説明は、「なるほど…」と感じさせます。森保ジャパンとコーチングがつながっています。

(Sさん)
日経新聞もトランスフォーメーションしている印象だ。コーチング、そして森保監督のリーダーシップ観が伝わってくる内容を読み上げます。

森保監督は使われる側の意向もくみ、委ねられるものは委ねるスタンスを取った。ヨーロッパの風土で成長した選手たちは、日本人指導者以上に様々な見識を吸収している。押さえつけるより、コミュニケーションの力で生かそうとする運営は、チーム力を最大限引き出すうえで代表の現状に適していた。

(A課長)
森保監督のスタイルはシェアードリーダーシップです。そして理論的には、ケン・ブランチャードが提唱した「SL理論」を彷彿とさせます。
SLとはSituational Leadership の頭文字であり、状況対応型リーダーシップと訳されています。

(Sさん)
思い出します。Aさんと1on1ミーティングを始めた最初の頃、「リーダーシップ理論の変遷」のなかで、Aさんが「エレガントな理論である」と紹介してくれました。

森保ジャパンはエレガントなSL理論とも符合する!

(A課長)
森保ジャパンの各メンバーは、記事コメントにあるように、「日本人指導者以上に様々な見識を吸収している」成熟度の高い選手たちです。SL理論は「対象であるメンバーの状況、発達レベルによって効果的なリーダーシップは異なる」が骨子です。

つまり、初心者には「指示型」のリーダーシップスタイルを、そして成熟度が高まってくると、「コーチ型」に、そして「支援型」と変わっていきます。

ただ、「コーチ型」とありますが、ingが付されるコーチングとはニュアンスが異なるので、誤解は禁物です。「ティーチング型」の方がなじむかもしれない。

(Sさん)
森保ジャパンは「委任型」ですね。吉田麻也主将にマネジメントは委託され、そして選手個々は自律した判断と行動をとっている。それが高いレベルのチームワークとなっている。

(A課長)
「委任型」にはその根幹に「コーチングの思想」が息づいています。森保ジャパンはSL理論ともつながっています。

(Sさん)
ところで、ワールドカップはまだ続いていますが、森保ジャパンは解散しました。新聞紙上に踊っていたジャパンブルーも消えて、ちょっと寂しいですね。
思い返すとユーフォリア、熱狂の宴でした。コスタリカ戦に負けたときは「手のひら返しのバッシング」、ところがスペイン戦で勝つと「森保監督ごめんなさい」の「手のひら返しの大絶賛」です。その点私たちは冷静でした(笑)

行動経済学・カーネマン教授の「速い思考」「遅い思考」とは?

(A課長)
行動経済学でノーベル経済学賞を獲得した、心理学者であるカーネマン教授の『ファスト&スロー(ダニエル・カーネマン/早川書房)』は、そうなってしまう人間の思考を解明しています。
「私たちヒューマンは、ヒューリスティックに基づいてあまり考えることなく判断してしまうことが多い」と指摘します。それを「ファスト・速い思考」であるシステム1と命名しています。

(Sさん)
以前の1on1でAさんが解説してくれましたね。そのとき、「“ヒューリスティック”とカタカナにしてしまいましたが、これは“経験則”をカッコよく言い換えた表現ですから、ちょっとカッコつけてしまいました」と、Aさんは言っています。そういう言葉はなぜか忘れない(笑)

(A課長)
まいりました(笑)
ただ時間が経過すると、冷静に捉えようとする「スロー・遅い思考」のシステム2が起動する、とカーネマン教授は補完してくれていますので、救われます。

冒頭で紹介した日経の「エピローグ 森保JAPAN」で感じたことがあります。これはドーハに派遣されている岸名章友記者が書いています。宴は終わりましたから、その視点は冷静です。

ところが、ドイツ戦に勝った翌日の日経新聞11月25日の単発記事では、現地の興奮そのままの筆致です。

日本代表監督に就任してからの4年間、「パッとしない監督」を装っていたのか、それともここぞで振り抜く伝家の宝刀をわざと隠し持っていたのか。そう勘ぐりたくなるくらい、森保監督が後半から打ち続けた采配は劇薬だった。
必要なチューニングを施された日本代表という車は、エンストから立ち直り、駆動をよみがえらせるとドイツの高級スポーツカーをぶっちぎった。

(Sさん)
11月28日の1on1でAさんがこの箇所を取り上げましたね。後半に森保ジャパンの「豹変した」姿を記者はどう描くのか… さすが文筆のプロだなぁ、と私はリスペクトしましたよ。

(A課長)
そうなんですね。ところが、時間を置いての「エピローグ 森保JAPAN(下)」の〆は、次のようにまとめています。

DFの数が3人か4人かといったオプションよりも、おおもとの「日本サッカーなるもの」のベースを練り上げること。それが前進しているのか後退しているのか分からなくなりそうな螺旋の円環における道しるべとなるのではないか。

岸名記者が文学的な表現に載せて、感じた課題を挙げ、そして期待を込めた激励のメッセージを送っています。

(Sさん)
内容を見ると、全体に厳しめですね。ドイツ戦の戦評とは異なる印象だ。

(A課長)
私たちはみんなヒューマンですよ(笑)
森保ジャパンがドイツ戦に勝利してからの2週間、私たちの内部でさまざまのトランスフォーメーションが生じたと思います。その起点は「感動」でした。

Sさんが日経新聞の論調に違和感を覚えたのは何故?

(Sさん)
私たちが森保ジャパンを語る1on1の総括は「感動を起点とするトランスフォーメーション」で決まりだと思います。ただし、日本がどうしてもトランスフォーメーションしきれない深いテーマというか、それは、「決して否定すべきものではない」とも感じるのですが、気づいたことがあります。

(A課長)
何でしょう? Sさんの想いを聴かせてください。

(Sさん)
「エピローグ 森保JAPAN(上)」の内容を読み込むうちに、いくつか違和感を覚えたところがあります。次のようなコメントです。

「我の強い外国人監督であれば、こうしたプロセスは起こらなかっただろう…」
「日本人体制ならではのメリットが出たともいえる…」

つまり“日本は固有”であるという前提です。Aさんとの11月28日の1on1で私は、「ワールドカップで戦っているときは“熱き日本人”ですが、彼らの本質はすでに国籍を超えているのだと思います」と、話しました。

ところが、ジャーナリズムが抱える構造ともいえるかもしれませんが、日本人としてのナラティブ・物語を自明として記事化されているように感じます。

私はドラッカーが好きなのですが、その思考は「どこの国からの発想なのか?」が見えてこないのです。無国籍のイメージです。それが良いとか、そうでないとかと評価するつもりはありません。ただ一つの考えを、それが国全体の共有思考である、すべての国民が共感している、という前提に立つのは「いかがなものか…」と感じてしまうのですね。

(A課長)
Sさんは以前、一人の中国人の発言を捉えて、「だから中国人は…」と口にすることに違和感を覚える、と言っていましたよね。

(Sさん)
中国に限らず、それぞれの国… stateではないnationには文化があります。ただ私とAさんが違うように、一人ひとりは個性的です。

ダイバーシティ&インクルージョンをかみしめたい!

(A課長)
ダイバーシティ&インクルージョンですね。2つのワードはセットです。「多様性を認めて、そして包摂する」です。
私たちヒューマンに求められるのは、「速い思考」に陥ってしまうことを受けとめ、だからこそメタ認知、バーズアイビュー…俯瞰できる目線を獲得しようと、日々精進を重ねることではないでしょうか?

国連難民高等弁務官であった緒方貞子さんの言葉を思い出します。コーチングの3原則に想いを馳せ、今後ともコーチング型1on1をやっていきましょう!

隣の人は自分と同じとは思わない方がいいですよ。あなたと私は違うのです。違った部分については、より理解しようとするとか、より尊敬するとかしなくてはいけないのではないでしょうか。“異人”という言葉。あれ、“異なる人”と書くでしょう。人間を見る時には、本当はにんべんの“偉人”でなくてはいけないのですよ。

坂本 樹志 (日向 薫)

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