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森保ジャパンのリーダーシップトランスフォーメーションは、広島の地で育まれ開花したシェアードリーダーシップ!

当初はサテライトチームであるマツダSC東洋でプレーしていたが、この年からマツダ監督に就任したハンス・オフトに見出された。その後チームは2部に降格しオフトは退団したが、ビル・フォルケスコーチに育てられ、3年目の1989年にJSL2部デビュー、風間八宏のアシストで先制点および2点目を挙げる。1991年にマツダとプロ契約を結び、同年JSL1部昇格に貢献した。(「森保一 Wikipedia」より)

心理学を学びコーチングの資格を有する新進気鋭の若手A課長と、部長職を長く経験し、定年再雇用でA課長のチームに配属された実践派のSさんとによる、「森保ジャパン」を語る2回目の1on1ミーティングです。広島出身のSさんは少々興奮気味です。

transformational leadershipとleadership transformationを語ります。

(Sさん)
スペインも撃破しましたね。

(A課長)
1週間前に語り合った通りになりました。そこにはもちろん願望もありましたが、コスタリカに負けても「いける!」という感覚が、Sさんとの間で共有できていたと思います。

今回のワールドカップは、アジア最終予選でいきなり、オマーンとサウジアラビア戦で二連敗を喫した後の6連勝という離れ業により進出を決めています。そのときに「神ってる」と感じたのですが、今はもうその感覚はないですね。

(Sさん)
私も同感です。つまり“実力”です。ちなみに「神ってる」は、当時カープの緒方監督が鈴木誠也へのオマージュとして使った言葉が発祥です(笑)

前回の1on1で、日本サッカーが未知の領域にトランスフォーメーションしたことを共有しました。そのことを「森保ジャパンのリーダーシップトランスフォーメーション」という言葉でAさんが象徴化させています。デジタルネイティブのAさんらしい新語です。

(A課長)
そうなんです。これを英語表記ではないカタカナで検索してみたところ、やっぱり出てきませんでした。日本語英語としてはまったく使われていません。ただ、transformational leadershipは「変革型リーダーシップ」と日本語にも訳され、1980年代の後半あたりから研究されてきたリーダーシップ論です。ジョン・コッターの理論に代表されます。今年の1月14日の1on1でテーマにしました。

(Sさん)
やりましたね。ただ、森保ジャパンのリーダーシップはそれとはちょっと違いますね。シェアードリーダーシップに近いような気がします。

(A課長)
私もそのように感じています。そのあたりは後ほどテーマにしてみましょうか? ちなみに、leadership transformationは、「リーダーシップの変革」という意味ですから、森保ジャパンに使えます。

(Sさん)
今日の1on1もいい流れになってきました。
さてAさん、前回の森保ジャパンを語る際には、ちょっとガマンしていたことを今日話してもいいですか?

(A課長)
コーチング型1on1では、話したいことをガマンするというルールは存在しません。Sさんの脱線… という言い方は失礼かな(笑) ぜひともお願いします。

(Sさん)
コーチングのフィードバックは、事前に了解をとる、ということをAさんから聞いていたので、セオリーに則りました(笑)

森保監督が今あるのは、事業団リーグだったJSLの時代にマツダから社会人をスタートしたことがあると思います。1992年からJリーグがスタートし、企業名のマツダからサンフレッチェ広島に変わります。広島出身の私はカープ同様、サンフレッチェの大ファンですから、森保選手の活躍は鮮明に記憶しています。

(A課長)
広島と埼玉を語るときのSさんは熱くなる!

広島は「東洋のラテン」なのか…?

(Sさん)
決勝トーナメントに進出した勢いで語ります(笑)
森保監督は掛川出身ですが、父親の転勤にあわせて各地を転居し、小学生からは長崎に落ち着いています。ただ高校卒業後の社会人からは広島なので、現在に至る人格…日経新聞「至言直言」の水沼貴史さんは「鈍感力」と言っていますが… それは広島で形成されたと思うのですね。

私は、「広島は東洋のラテンである」と勝手に命名しています。瀬戸内海を地中海に見立て、蕎麦ではない小麦のうどんですから…つまりパスタ勢力圏です。気候は温暖で、気質は一言で言えば「陽気」です。

(A課長)
いいですね~ 確かに日本の中ではイタリアに一番近いイメージだ。ただSさん流解釈の可能性もあるので、「広島の県民性」でググってみましょうか? トップに出て来たのは…

温暖な気候の中で広がる陽気な広島県気質
…それで、広島県人は祭りに遊び、そして派手で楽しいことが大好き。 商売には不熱心で、金銭にもルーズ。 生活費を切り詰めてまで、遊びやギャンブルに興じるほど。 さらに、見栄っ張りで口が悪く、マナーも悪いので、他県人に嫌われやすいのが玉にきず。

(Sさん)
出典は「PRESIDENT Online」ですか… 私の認識とズレてはいませんが、アンチ広島のライターが書いている感じですね。ちょっと面白くない(笑)

私は埼玉県に家を買って30年経つので、「広島愛」と同じくらい「埼玉愛」を自認しています。お隣り群馬の山本太一県知事が、魅力度ランキングに触れて「いじめの構図に近い」とマジに立腹していましたが、私は映画『翔んで埼玉』への、当時上田埼玉県知事の発言に共感しました。

「(埼玉を)ディスるような作品を作って申し訳ございません」と謝罪した武内英樹監督らに対し、上田知事は「悪名は無名に勝る。話題になること自体、悪くない」と余裕の表情をみせた。(「THE SANKKEI NEWS」より)

(A課長)
これまたいいなぁ~

広島県は全国1位の移民送出県だった!

(Sさん)
少し脱線が続いたので、エビデンスを語ります。広島県人はオーブンです。閉じていないのですね。広島県は全国1の移民送出県なんです。

2017年のデータでは109893人です。進取の精神は広島のDNAですね。2位が沖縄の89424人、3位は熊本の76802人となっています。
営業エリア部長のときには、南九州の熊本、鹿児島、宮崎、そして沖縄を担当したので、そのあたりの気風は理解できます。

それから広島県人にとってカープは、「ワーク・イン・ライフ」をもじって「カープ・イン・ライフ」という存在ですが、私が中学生のころまでは「セリーグのお荷物球団」と言われていました。そのカープに初めて外国人監督のルーツ氏が就任することで激変します。就任早々、ユニフォーム、ヘルメットを赤に変えます。それまでのユニフォームは特徴のない地味なカラーでした。

(A課長)
「赤ヘル軍団」は最初からではなかったのですね。

「赤ヘル軍団」はルーツ外国人監督が生みの親!

(Sさん)
そうなんです。ルーツ監督が在籍したのは短期間でしたが、ルーツイズムを引き継いた生え抜きの古葉監督がカープを常勝球団へと変身させます。リーダーシップスタイルはシェアードリーダーシップの「チーム古葉」です。コーチ陣との関係を見事に構築します。

古葉竹識監督は、ベンチではすべて立ち姿で戦況を見守ります。テレビカメラから半身が隠れるような場所を選んでいました。影のごとく動きません。その分コーチ陣は状況変化に機敏に対応します。コントラストが見事でしたね。出身地の熊本弁が抜けないのもほほ笑ましかった…

ところで、最近では一部上場の社長に外国人が就任することに、違和感をおぼえることは少なくなりましたが、サンフレッチェ広島の母体のマツダに、1996年フォード出身のヘンリー・ウォレス社長が就任します。その後、翌年にはジェームス・E・ミラー、1999年にマーク・フィールズ、2002年にルイス・ブースと外国人社長の時代が8年続いたのですね。

いずれも素晴らしい社長で、経営危機に陥っていたマツダをトランスフォーメーションします。1998年度には6年ぶりの売上高増加、営業利益も5年ぶり黒字化を果たします。シェアも5%にアップしています。

元々マツダにはロータリーエンジンを世界で初めて実用化したという独自の文化がありました。現在は外資との融合を経て、ハイブリッドな企業文化が根付いています。広島という土地柄の柔軟性がその背景にあると感じています。

森保選手を見出したのは外国人のハンス・オフト監督だった!

(A課長)
Sさん、森保監督を紹介するWikipediaを読んで気づいたことがあります。

高校の監督と日本サッカーリーグ(JSL)のマツダ(現サンフレッチェ広島)の今西和男総監督が知り合いだったため、1987年同クラブ入団。同期は河村孝らがいたが森保は入団当初はその中で最下位の評価だった。当時マツダ本社は高卒採用枠5人までであったため森保は本社に入社することが出来ず、子会社のマツダ運輸(現マツダロジスティクス)に勤務した。

つまり全然目立った選手ではなかったというわけです。その森保選手を見出したのが、外国人のハンス・オフト監督です。またしても外国人が登場しますね。日本人の目には見えていない森保選手の能力を見抜いていたということです。
日本人離れしている森保選手のことを、普通の日本人はなかなか理解できないのかもしれない(笑)

オフト氏は1992年に日本代表監督に就任します。ドーハの悲劇のときの監督でした。

1992年4月、オフトが日本代表監督に就任すると日本代表に初招集される。代表メンバーの何人かは存在自体知らなかった無名選手の大抜擢で、同郷の長崎県出身の高木琢也と前川和也以外、誰一人「モリヤス」と読めなかった。

同年5月オフトジャパン初戦のアルゼンチン戦で先発メンバーに抜擢され初出場を果たし、この際アルフィオ・バシーレ監督とクラウディオ・カニーヒアが“日本にはいいボランチがいる”と高く評価したことから、「森保」と「ボランチ」の名前が脚光を浴びることになる。以降レギュラーとして活躍、ラモス瑠偉をカバーすることに重点を置いた。

(Sさん)
Aさん、水沼貴史さんの「鈍感力」を借用します。稲盛さんの『京セラフィロソフィ』の中で響いた箴言をAさんと10個ずつ出し合ったときのことを思い出しています。

(A課長)
ちょっと待ってください、メモってますから。…10月3日でした。う~ん、なるほど… Sさんが「大胆さと細心さをあわせもつ」を挙げたところかな? そのときSさんは次のように話していますよ。

部下から「S部長はいばらの道なのにお花畑だと思って進んでいきますよね~」と言われたのですが、後ろを振り返って、「うわっ、ヤバっ」と思うこともしばしばです。細心さも兼ね備えたい、ということで選びました。

印象に残ったので書き留めています。

森保ジャパンは「楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行する」!

(Sさん)
Aさんのメモ魔には脱帽です(笑) 私がその次に挙げた稲盛さんの箴言が、森保監督の真骨頂です。持ち前の鈍感力を生かしながら、今回のワールドカップの采配は「楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行する」です。
この精神が選手たちの中に浸透していると感じました。

(A課長)
Sさんはその箴言を挙げた理由を「すべてを楽観的にやってしまうことがあるので、要注意です」と言っていました(笑)

(Sさん)
森保監督は、勢いで動いてしまう広島の血というか、それを「巨人の肩に立つ」ことで克服したのだと思います。

(A課長)
つぎつぎとつながりますね。
さて、そろそろ今日のまとめに入りましょうか。森保ジャパンはシェアードリーダーシップであることをSさんと共有しました。それを紐解いてみたいと思います。Sさんの切り口を話していただけますか?

(Sさん)
了解です。実際の試合で監督はピッチの白線内には立てません。私は吉田麻也キャプテンの存在が大きいと思います。もちろんこれまでの主将もキャプテンシーを発揮してきました。ただ、プレイヤーの側面が強かったというか、プレゼンスが表に出ている人たちでした。

吉田選手は、現場において間違いなくマネジメントしているキャプテンです。というのも、後半はアベマのカメラを日本視点と全体視点…鳥の目ですね、この2つを切り替えて視ていたのですが、日本カメラは、ほぼ吉田選手の動きを追っていました。

吉田選手の視線は360度といってよいほど、とにかく動いています。当然身体も一体となって機敏な動きです。そして声出し… クリアの動作も神業を感じます。このキャプテンの存在はチームに心理的安全性を与えていると思いました。最後の砦を守る権田キーパーは吉田主将の背中をずっと感じることで、次々とスーパーセーブを繰り出します。

森保ジャパンは吉田麻也主将とのシェアードリーダーシップ!

(A課長)
コーチング型1on1の成果でしょうか。私とSさんの捉え方がハーモナイズしている。私も吉田選手の存在の大きさを感じていました。
それで、スペイン戦を詳報する3日土曜日の日経新聞38、39面で、吉田選手の動きが書かれている箇所を探したのですが… 出てこないのです。やっと39面の最後の最後に次のようなコメントがあるのを見つけました。

「日本の3試合をクロアチアも分析してくる。ここから分析のイタチゴッコが始まる。オプションを1、2、3くらい持っていないといけない」と主将の吉田は話す。ここからグー・チョキ・パーのじゃんけんはもっと複雑になるという意味だろう。ラウンド16から本当のW杯が始まるといわれるゆえんでもある。

(Sさん)
吉田キャプテンはアナリストでもある!
森保監督も決してプレゼンスを前面に出す監督ではありません。それでもサッカーという格闘技ともいえる競技を率いるリーダーとして、言葉、表情、そして身体全体を使い選手たちを鼓舞します。そしてそのリーダーをサポートし、シェアしているのが吉田選手です。
私は吉田選手の風情から、「菊作り、菊見るときは陰の人」という言葉を連想しました。

菊作り、菊見るときは陰の人…

(A課長)
いつだったかな? ソニーグループの大御所であった丸山茂雄さんの日経新聞「私の履歴書」にインスパイアを得て1on1をやりましたが… 7月5日でした。そのときのテーマは「黒子」でしたね。

(Sさん)
黒子といえば… 同じ日経3日の15面ビジネスで、「W杯で 活躍ソニーの目」というタイトルの記事がありましたね。「スペイン戦ライン判定、ミリ逃さず」という見出しなので、記事の内容がすぐさま理解できます。

カメラや映像解析を担っているのが、ソニー傘下の英ホークアイ・イノベーションズです。映像解析技術は、過去のW杯でもゴールの機械判定やVARに用いられた。オフサイドの半自動判定も、20年以降に国際大会で運用して精度を高めてきた。

(A課長)
またしてもソニーですね。さまざまなことが連動している。

(Sさん)
ホークアイ、すなわちバーズアイビューです。ネーミングもグッドです。アベマの全体カメラである鳥瞰の目で感じたのですが、日本のフォーメーションは実にエレガントです。過去のワールドカップでの日本の陣形はどうしても乱れがちでした。特に後半は選手の疲れが手に取るようにわかって、安心して見ていられるシーンはありませんでした。

今回森保監督は交代の5人枠を戦略的に使い、特定の選手に頼るという采配を回避しています。チーム全体の運動量を分散させています。

(A課長)
「真のリーダーシップとチームワークはカリスマが率いるチームからは生まれない」ということですね。

森保ジャパンは、もちろん三苫選手や堂安選手という攻撃に絡む選手が目立ちます。そうでなければサッカーではありません。ただ、これまでは中田英寿選手など一部の選手が異常に目立ったチームであり、またキラーパスに代表されるように、他のメンバーがついていけないというか、チームワークは形成されていなかったと思います。

ところが今回のチームはすべての選手が持ち場におけるプロ中のプロであり、動きの止まらない素晴らしく美しい陣形があっという間につくり出され、私もバーズアイビューの醍醐味、芸術作品をみるようなゾクゾクする感覚を体験しています。

(Sさん)
テレビでは味わうことのできない感動体験をアベマが生み出しているということですね。新市場や新技術が開発され、波及していくその起点には「感動」がある… 前回の1on1ともつながりました。
39面には吉田主将に選手たちが駆け寄り、満面の笑みでハグしまくっている写真が大きく掲載されています。

(A課長)
感動は継続中です。コーチング3原則の一つである「オンゴーイング…現在進行形」です。
今日の深夜12時、クロアチア戦でも感動を分かち合いましょう!

坂本 樹志 (日向 薫)

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