今回のコラムは「変化する家族」を取り上げます。家族は集団の最小単位であり小さな社会です。すべての人が体験する環境でもあり、当事者としての捉え方はまさに人それぞれです。そしてその姿は確実に変化しています。
ところが、マクロとしてのイメージは、変化している実態と違っていることに気づきます。コラムでは、ここにフォーカスして進めてみようと思います。
昭和30年代に「夫婦と子供二人」という標準モデルが出来上がり、そのモデルをベースとした高度経済成長がスタート、日本国家としての成長戦略が大成功します。ところが今日、モデルは“明瞭に”崩壊してしまいました。にもかかわらず、成功体験が強烈すぎるため、その価値観にとらわれ、それとのギャップに日本全体が呻吟しているように感じます。
そして今、新型コロナウイルスの蔓延により、STAY HOMEが強いられています。これまで家族のことをそれほど考えることなく、暮らしていたのが(暮らせていたのが)、同じ空間で長い時間を共有することで、これまで見えなかった家族間の関係性が浮き彫りになってきた、ということが起こっています。家族の関係に限らず、新型コロナウイルスによって、これまで自明だとされていた「社会の価値観」に対して、根底からの疑問が突きつけられているのではないでしょうか。
平成27年の「1世帯当たりの人員は2.38人」!
さて、集団の最小単位、と説明しましたが、家族≒世帯と捉えると、意味合いが異なってきます。そのあたりのことを、まずは統計で明らかにしてみましょう。
日ごろから世帯人員に興味を持たれている方は別として、2.38人であることを知って驚かれるのではないでしょうか。関連のデータを以下記してみましょう。
・「一般世帯数」 5,333万1,797世帯
・「単独世帯数」 1,841万7,922世帯(一般世帯の34.6%)
・「夫婦と子供から成る世帯」 1,428万8,203世帯(同26.9%)
・「夫婦のみの世帯」 1,071万8,259世帯(同20.1%)
・「ひとり親と子供から成る世帯」 474万7,976世帯(同8.9%)
※施設等の世帯 11万6,888世帯
→施設等の世帯とは、寮、寄宿舎、病院、療養所、社会施設、老人ホーム、自衛隊営舎、矯正施設などの入居者で一般世帯とは区別される。
1世帯の平均人員は2人に限りなく迫っています。単独世帯数は34.6%ですから、最もメジャーな世帯ということになります。有配偶者の世帯についても夫婦のみの世帯と子供のいる世帯の数にそれほど差がないので、高度経済成長期の家族モデルは少数派に転じてしまったことが統計からも証明されています。
30歳~49歳の男性で1度も結婚したことのない人は36%!
未婚率も見てみましょう。
・男性30歳~49歳の未婚率 40.2%(うち死別と離別は3.9%)
・女性30歳~49歳の未婚率 32.2%(うち死別と離別は7.7%)
30歳~49歳までの層で1度も結婚したことがない人の割合は男性で36.3%、女性で24.5%となっています。
合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子供の平均推計人数…以後出生率と表記)は、2018年に1.42まで下がっており少子化が注目される中で、この未婚率は、やや影に隠れているきらいがありますが、こうして実際の数値を確認すると、驚かれるのではないでしょうか。
ここで、フランスの未婚率と比較してみましょう。出生率が下がってきたというもののフランスの出生率は2017年で1.88と高いレベルを維持しています(2.1人で人口が維持されるのでフランスも人口減ではありますが)。したがって未婚率はかなり低い、と想像されますが、実は日本より未婚率が上回っています。「ええっ、そんなに多産なの?(出生率は平均なので多産の人が多いと高くなる)」と、びっくりしてしまいそうですが、フランスの場合婚外子の割合が6割に近い、というのがそのからくりです。
フランスにはPACSという「同性または異性の成人2名による、共同生活を結ぶために締結される契約」という制度があり、同棲カップルにも結婚(法律婚)に準じる保護が与えられます。フランスの場合も結婚の場合は離婚が容易ではありませんが、同棲だとそもそも結婚でありませんので別れる際の手続きは簡便です。日本でも同様な制度を導入すれば出生率が上がるのでは…という声も一部ではありますが…とても国民的議論に広がっていく、という想像はできそうにありません。
日本に住む外国籍の人を“日本人”はどのように思っているのでしょうか?
日本という国家レベルの大問題が「少子高齢化」である、という点につき私も同意します。ただ、少子化対策を、日本国籍を有した“日本人”に限定している論調に対しては若干疑問を感じています。つまり日本に居住する外国籍の人たち、そして移民というテーマを包含した上でのアプローチです。
日本という国家は地勢学的条件をはじめとして日本人という概念を空気のように受けとめています。姿かたちも共有した内と外という概念です。外国籍の人が隣に住んでいても、法律など制度環境は“日本人”だけに適用することが自明という感覚です。あらゆる統計数値は“日本人”であることをベースとしており、例えば外国籍の子供の教育環境はどのような実態であるのか? を調べようとするとかなり骨がおれてしまうのが現状です。
ただし、新型コロナウイルスによって、自明のように続いていた社会の枠組みが、果たして「当たり前のことだったのか?」と、本質から問い直されています。当初政府は、収入減が一定の水準を下回る「世帯に30万円」を支給する、としていましたが、これが改められ、一律に「一人10万円」に変更されました。日本に住んでいる外国籍の人も対象となります。
冒頭で、『新型コロナウイルスによって、これまで自明だとされていた「社会の価値観」に対して、根底からの疑問が突きつけられているのでは…』、と述べましたが、この政府方針の転換も一例と言えるかもしれません。
記述が「出生率→日本の制度環境→新型コロナウイルス」と広がってしまいました。
テーマを「家族」に戻しましょう。今コラムの最後として「どうして結婚しない人が増えているのか」について、アプローチしてみます。
「結婚はすべき」という価値観が揺らいでいるのかもしれません。
データが示す現実を見据えるならば、「妙齢になると結婚して子供を産むのが普通だよね」という価値観そのものが、メジャーではなくなっている、ということが挙げられます。
その背景として「結婚制度」が硬直的であること(離婚が著しく困難など)、また就職氷河期に正社員で採用されていない層が固定化し、収入が増えないことで結婚をためらう層が著しく増えてしまったこと、などの要因が指摘されています。正社員と非正規社員の収入格差は社会問題化しており、“貧困層の拡大”が現実味を帯びてきているのが今日の実相、とも言われています。ただそのような外から見える現象とは別の視点として、想定を超えた社会構造の変化が人の精神面を揺り動かし、共有されていると思われていた思考の枠組みそのものが変わってしまったのでは、という仮説です。
考えてみれば、社会の枠組みはその時代において共有された価値観を拠りどころとして、成立していました。ところが、さまざまな環境の変化により、そしてその変化の本質に迫ろうとした人物が登場し、新しい価値観を提唱することで、人々の意識も変わっていきます。
有意義な人生を送るための重要なサポート役…それがコーチングです。
今日コーチングは世の中に広く受け入れられています。ところがその有効性が認められるまでには相応の年月が必要でした。
私たち一人ひとりは社会とのつながりの中で生活しており、充実した人生を送るためには人との連携が欠かせません。そしてそれを可能せしめるのが広い意味でのコミュニケーションであり、その有効性を具体的に提示し、相手や目的に合わせて適切に使うよう導いてくれるのがコーチングです。
今日、コーチングの体系はかなり整備されています(もっとも決して止まることなく進化し続けていますが)。このコーチングも「変化の本質に迫ろうとした“複数の人物”」の存在と、提唱する心理学の理論を背景に発展してきました。この大きなテーマについては、いずれコラムで取り上げたいと思います。
坂本 樹志 (日向 薫)
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