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第9回:フィードバックからフィードフォワードへ ─未来を共に創る“学びの会話”とは─

フィードバックは本来「成長のための鏡」

企業の成長に欠かせないのが「学び続ける組織文化」です。
しかし、その出発点であるフィードバックが、しばしば誤解され、誤用されています。
「改善のために伝える」という名のもとに、上司が一方的に評価を下す。
本人は「ダメ出しをされた」と感じ、意欲を失う——。こうした構図は、どんなに優れた人材育成制度を整えても、組織の学びを止めてしまいます。
本来、フィードバックは「成長のための鏡」であるべきです。
ところが現実には、評価・比較・矯正の手段として使われがちです。
その結果、「何が悪かったか」だけが残り、「次にどうしたいか」という視点が抜け落ちてしまうのです。
これでは、人は行動を変えようとはしません。
なぜなら、行動変容の源泉は反省ではなく希望だからです。

フィードフォワードは、より良い未来をデザインする会話

そこで注目されているのが「フィードフォワード(Feedforward)」という考え方です。
これは、過去ではなく未来に焦点を当て、「どうなりたいか」「そのために何を試すか」を対話するアプローチです。
フィードバックが「過去の結果を修正する」のに対し、フィードフォワードは「未来の可能性を開く」ことを目的とします。つまり、上司と部下が共により良い未来をデザインする会話なのです。

例えば、あるIT企業では評価面談を「フィードフォワード・セッション」に切り替えました。上司は「今期の課題」を指摘する代わりに、「次にチャレンジしたいテーマは?」「そのために私にできるサポートは?」と問いかけます。
半年後、社員の自己評価スコアが平均で15%上昇し、エンゲージメント調査でも「上司と話す時間が前向きになった」という声が増えました。上司が評価者から伴走者に変わったとき、会話のエネルギーは一気に未来へ向かうのです。

フィードフォワードの鍵は、問いの質

フィードフォワードの鍵は、問いの質です。
たとえば——
「何が足りなかったと思う?」ではなく、「次はどんな結果を生みたい?」
「なぜうまくいかなかったの?」ではなく、「次に活かせることは何?」
「どう直せばいい?」ではなく、「どんなサポートがあれば挑戦できる?」
こうした問いは、相手の内側に眠る可能性を呼び覚まします。
そして、上司自身も共に学ぶ存在として変わっていくのです。
この対話の転換は、単なる言葉遣いの違いではありません。
それは、組織の「人を見る姿勢」の転換です。
過去の欠点ではなく、未来の可能性を見る。
評価ではなく、成長を信じる。
この視点の変化が、組織の中に心理的安全性と挑戦の両立を生み出します。

フィードフォワード文化が根づいた組織は未来を語り合う

フィードフォワード文化が根づいた組織では、人々は過去を恐れず、未来を語り合います。
失敗は非難ではなく、学びの素材。
上司と部下は、結果を報告する関係ではなく、未来を共創するパートナーになります。
その瞬間、会話は「評価の場」から「進化の場」へと変わるのです。
コーチングは、このフィードフォワードを日常の会話に組み込む最も実践的な技術です。
問いを通して人の意識を未来へ向け、希望と行動を結びつける。
その対話の積み重ねが、組織全体の学習能力を高めていきます。
未来を創る力は、いつも次に何を話すかという一つの会話から始まるのです。

株式会社コーチビジネス研究所(CBL)は、エグゼクティブコーチの養成を行っているコーチング専門機関です。個別コーチングのみならず、組織コーチングにも取り組んでおり、特に独自に開発した「グループコーチングWA」は、いま多くの企業で導入が進んでいます。詳しくは下記をご覧ください。

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国際コーチング連盟認定マスターコーチ(MCC
日本エグゼクティブコーチ協会認定エグゼクティブコーチ
五十嵐 久

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