エグゼクティブコーチングとは何か、エグゼクティブコーチングと他のコーチングの違いはどこにあるのか、エグゼクティブコーチを目指すにはどうしたらよいか、など、エグゼクティブコーチングに関する様々な疑問にお応えします。
エグゼクティブコーチングとは
エグゼクティブコーチングとは、エグゼクティブの方々の成長支援や組織の発展を目的としたコーチングプログラムのことです。
エグゼクティブとは
そもそも、エグゼクティブ(Executive)とはどういう意味でしょうか?
Executiveの意味は、新英和中辞典によると、「(形容詞)実行する、実行力のある、行政上の、(名詞)役員、管理職員、経営者、重役」などと訳されています。
経営思想家ピーター・ドラッカー氏は、その著書『経営者の条件』(ダイヤモンド社)の中で、「自らの知識あるいは地位のゆえに組織の活動や業績に実質的な貢献をなすべき知識労働者は、すべてエグゼクティブである」と言っています。
そういう意味では、経営管理者はもちろん、責任ある地位、意思決定を行なう立場にある人はすべてエグゼクティブであるとも言えます。
エグゼクティブコーチングの目的
エグゼクティブコーチングの最大の目的は、経営者の良きパートナーとして、組織の発展と共に、より優れた経営者(エグゼクティブ)に成長して頂くようサポートすることです。
優れた経営者とは、経営のプロフェッショナルであり、同時に豊かな人間性と社会性を兼ね備えた経営者です。経営のプロフェッショナルとは、いかなる状況にあろうとも、企業を健全に成長させる能力を持った経営者です。しかも私利私欲を求めるのではなく、従業員や社会全体の幸福に貢献することを真剣に考え、行動する経営者です。多くの人が自然に集まって、その人のリーダーシップに従って、それぞれがベストを尽くすような人間的魅力にあふれた人です。
コーチングとは「マネジメントや人材開発の一手法である」と捉えられていることが多いですが、コーチングは本来「自分を自分で活かせるようになる」「常に最高の自分であり続ける」「よりよく生きる」というところに本旨があります。
このことは、エグゼクティブコーチングにおいても変わりません。コーチは、経営者のありたい姿、目指す理想のリーダー像に向かって側面から支える応援者です。ただしエグゼクティブコーチングにおいては、経営者自身の課題だけではなく、従業員や取引先など組織を取り巻く利害関係者すべてのことを視野に入れて考える必要があります。
コーチングを行う人のことを「コーチ」と呼び、コーチングを受ける相手の人を「クライアント」と呼んでいます。コーチングは「指導」と訳されていることが多く、「コーチ」と言うと「指導する人」をイメージそれる方が多いですが、コーチは教え、指導する人ではありません。経営者自身が持っている力を最大限に活かしきって、経営者が目指したい世界を、経営者と協働して創りあげる伴走者のような存在です。
株式会社コーチビジネス研究所では、エグゼクティブコーチングの目的として、特に次の3つを掲げています。
- 人を幸せにする企業が最も幸せになる 「幸せ創造企業」をつくる
- 社員の力で最高のチームをつくる (エンパーワーメント)
- 経営者(エグゼクティブ)自身の成長
エグゼクティブコーチングの特徴
コーチングは大きく、個人のより良い人生をサポートすることを目的にした『ライフコーチング』、ビジネスにおいてより高い成果を挙げることを目的にした『ビジネスコーチング』、エグゼクティブの成長支援と組織の発展を目的にした『エグゼクティブコーチング』の3つに分けることができます。エグゼクティブコーチングの特徴として、特に、次のようなことが挙げられます。
1. 扱うテーマ・領域が広い
エグゼクティブ(経営者)の皆さんは、日々様々な課題に追われていて、テーマが多岐にわたるのが特徴です。しかも、経営者個人の課題と組織の課題の両方を扱いますので、ライフコーチングやビジネスコーチングという分野を問わず、両方扱います。
主な課題としては、次のようなものがあります。
- 経営者(リーダー)としての更なる成長、自己変革
- 後継者の育成
- ビジョン、経営理念の策定と組織への浸透
- ダイバーシティ、多様化への適応
- 経営者の健康問題や家族問題などライフバランス
2. 視点の違い
経営者は常に、従業員や取引先など利害関係者の幸福、会社の未来や業界の動向、社会全体のことまで視野に入れて考えて行動しています。エグゼクティブコーチングが、マネージャーや一般社員を対象とするコーチングと大きく違うのは、コーチとして、経営者の観ている世界と同じか、またはそれ以上の意識段階に立つことが求められることです。
3. 目の前の課題解決だけでなく、常に経営者としての成長に焦点を当てる
目の前の課題の解決だけでなく、常に経営者自身の成長のためにどうあるべきかに焦点を当てます。
4. 経営者としてのPVPを確立する
PVPとは、Purpose(目的)、Values(価値観)、Principle(原理原則)のことで、株式会社コーチビジネス研究所の支柱としている考え方です。経営者としてのPVPを明確にして頂くことが、リーダーとして不可欠であると考えていて、エグゼクティブコーチングの大切なテーマにしています。
5. アセスメントの活用
エグゼクティブの方は、評価する立場になることはあっても、自らを評価される機会はほとんどないのが実情です。エグゼクティブとして更なる成長のためには、常に自らのマネジメントを客観的な視点から見てみるということが重要です。コーチングをより効果のあるものにするために、『360度評価』のようなツールを用いて、エグゼクティブの方と関わることの多い関係者の皆さんから意見やフィードバックを聞く機会を設けたりすることも行います。
エグゼクティブにコーチは必要か?
経営者の皆さんは自分の「軸」というものをしっかりと持って経営されていて、常に自分を律して行動できる方々が多いです。そんな方々にコーチは必要なのだろうかと疑問を感じている人もいるかもしれません。しかしながら、どんなに優れた経営者でも、様々な課題を抱えています。本当はもっと大事なことについて考えなければならないのに、目の前のことに追われてなかなか手をつけられない、と悩んでいる人もいます。
エグゼクティブ(経営者)の悩み
多くの経営者が抱えている共通のお悩みは次の4つです。
1. 孤独である
「愚痴れない」「弱音を吐けない」「本音を言えない」など、立場ゆえの孤独感を抱えています。
2. 責任が重い
社員やその家族の生活、地域社会との関わりなど、常に重い責任を背負っています。
3. 解決すべき課題が多く、時間がない
売上、人事、お金、トラブル対応など、解決すべき課題にいつも直面しています。課題解決のために時間を費やしていることが多く、未来のことをじっくり考える余裕がない状況です。
4. 「次の打ち手」を描く必要がある
経営者の重要な仕事は、事業を成長させ継続させることです。そのために、「次の打ち手」を考えることに頭を悩ませています。
エグゼクティブコーチングの効果
アメリカでは、6から7割の経営者がコーチを付けていると言われます。有名なゼネラル・エレクトリック社の元CEOジャック・ウェルチ氏をはじめ、アップル創業者のスティーブ・ジョブズ氏、グーグル元CEOのエリック・シュミット氏など名だたる経営者は皆コーチをつけていたことで知られています。
日本の経営者は、いまだにスポーツのように教えるコーチをイメージしている人もいて、「自分には必要ない」というように思っている人がまだ多いですが、近年、若い経営者を中心に、コーチを付ける経営者も増えてきています。
ゴルフの腕を上げたいと思っている経営者は多いかと思います。自分一人で練習場に行って練習するよりも、プロのコーチをつけて練習した方がより効率的・効果的に上達すると、お考えになるのではないでしょうか。一流のアスリートの皆さんには皆優れたコーチが付いているように、経営においても、コーチがいることでより大きな力を発揮することができるようになります。
エグゼクティブコーチをつけている経営者からも、具体的に次のような効果があって業績の向上につながっているという声が挙がっています。
1. 視点が広がる
人は、誰かに話をすることで、頭の中で考えていることが整理され、自ら気付きを得ることが少なくありません。そこで話し相手を求めて、夜の街に足を運ぶ方もいるでしょう。でもそこで聞いてもらえるのは、現状の話や愚痴にとどまるのではないでしょうか。
一方、訓練されたコーチは、相手の話を傾聴し、頭の中で考えていることを整理していただきながら、自分や会社の将来について考えるきっかけを提供し、視点を広げ、視点を変えるお手伝いをします。時には、相手の鏡のような存在になって、経営者ご本人も気づいていないことについてフィードバックをします。こうしたことを通して、一人では気づけないことに気づき、アイデアや未来へのヒントが生まれます。
2. 意思決定の質が向上する
経営者として最適な意思決定をしていくうえで、常に自分自身を最良の状態にしておくことが大切です。エグゼクティブコーチは、経営者のライフスタイル全体から経営者を観ていきますので、エネルギーバランスの最適化が図られ、意思決定の質の向上につながります。
3. 関係の質が向上する
経営者が自らコーチングを受け、学んで頂くことで、会社内の雰囲気がガラッと変わったというケースがたくさん生まれています。幹部や社員との関係の質も格段に向上します。マサチューセッツ工科大学元教授のダニエル・キム先生が提唱している「成功の循環モデル」という有名な理論があります。成功している企業は、「関係の質」を高めることでグッドサイクル(好循環)を回しているというのです。
その「関係の質」には、たとえば社員同士の関係性や社員と幹部との関係性があります。「関係の質」が高いと、単なる「仲良しクラブ」ではなく、お互いに建設的な議論が行われ、「思考の質」が高まっていく。その結果、社員たちが主体的に行動するようになり「行動の質」も高まる。だから業績も向上するわけです。その意味で、「関係の質」を高めることが非常に重要だというのが、この理論です。
ともすれば結果だけを求めて、とにかく売上を上げるようにと、社員を叱咤激励することが少なくありません。叱咤激励することで、一時的には良くなっても、結局はやらされているだけなので、社員たちは主体的に行動しようとしなくなってしまいます。「どうせ言っても無駄だ」と、自ら考えようともしなくなるでしょう。その結果、「関係の質」は低下し、悪循環に陥るのです。「関係の質」や「思考の質」を高めていくうえで、コーチングは非常に効果があります。
エグゼクティブコーチングのテーマ(例)
エグゼクティブコーチングにおけるテーマは多岐にわたりますが、次のようなことがテーマになることが多いです。
- 思考を整理し、的確な判断に役立てたい
- 経営者自身のリーダーとしてのあり方を考えたい
- ビジョンや理念を考えたい
- 思考の枠を広げたい
- 後継者を育成したい
エグゼクティブコーチングの進め方
エグゼクティブコーチングのご依頼を頂いた場合、一般的に次のような手順で進めていきます。
1. オリエンテーション
オリエンテーションの主な目的は、次の2つです。
コーチングに関する合意
コーチングとは何か、コーチとしてできること、できないこと、クライアントとしてやって頂くべきことは何か、コーチングで得たいこと、コーチに期待すること、契約期間などについて確認し、合意をとります。
信頼関係をつくる
コーチ自身の経歴やコーチングに関する考え方などを話して、コーチに対する理解を深めて頂くと共に、クライアントとのことを知ることで、お互いの信頼関係を高めるための時間です。
2. アセスメント(自己査定)
コーチングを始める前に、クライアント自身で、まず自己を振り返ってみて頂くためのアセスメントをやって頂きます。自分はどのような思考の癖や行動パターンをとることが多いか、どんな価値観を持ち何を大切にしているのか、コミュニケーションスタイルはどうか、経営者としての更なる成長のために何をしたいのか、などについて整理して頂きます。
3. プレコーチング
クライアント自身のアセスメントを元に、「プレコーチング」というものを実施します。「プレ」とは「前の」というような意味がある接頭語です。本格的にコーチングを始める前に行なうコーチングというような意味があります。
通常コーチングは、クライアントが達成したい目標や解決したい課題など、ある特定のテーマにそって、6カ月や1年といった期間にわたり継続して実施していきます。
実際は、1回目のコーチングをプレコーチングに進めることが多いかと思います。プレコーチングを実施することで、真のテーマが見つかることもあります。例えば、最初は、クライアントから「〇〇のテーマでお願いします」と言われて始まることが多いですが、アセスメントを実施したことで、もっと先に取り組んだ方が良いと思われるテーマが見つかったりすることがあります。
このプレコーチングの時間を使って、改めてコーチングの目的、目標、全体スケジュールなどの確認や調整を行います。そして、プレコーチングにおいて、具体的に次のようなことを明確にしてからスタートします。
- ゴールを設定します
- ゴールを達成した時の状態をイメージします
- 価値に沿ったゴール設定になっているかを考えます
- そのゴールを目指す理由や目的を明確にします
- ゴールに向かうための選択肢を考え、どのテーマから取り組むかを決めます
- ゴール達成への確率を上げるためのアイデアがあれば考えます
- 進めていくうえでの気がかりや不安を解消します
- 次のコーチングセッションまでにやって頂くことを確認します
4. コーチング・セッション
5. 評価、フィードバック
コーチビジネス研究所のエグゼクティブコーチングの特長
株式会社コーチビジネス研究所の提供するエグゼクティブコーチングの特長は、次の3点です。日本で唯一の中堅・中小企業向けエグゼクティブコーチを養成している専門機関であり、創業経営者や事業継承者向けに多くの実績を有するのが強みです。エグゼクティブコーチとして研鑽を積んできたJEA(一般社団法人日本エグゼクティブコーチ協会)認定エグゼクティブコーチが担当します。
特長1. PVPを明確にする
PVPとは、Purpose(目的)、Values(価値観)、Principle(原理原則)のことです。エグゼクティブ(経営者)としてのPVPが明確であれば、どんな環境の変化にも対応できると確信しています。
特長2. 「リフレクション(Reflection)」によって未来を創る力を養う
予測困難な時代にあって、未来を考えるうえで重視しているのが、「リフレクション(Reflection)」「対話」「メタ認知」です。「リフレクション(Reflection)」とは、自分の内面を客観的、批判的に振り返る行為です。自分自身の成長だけでなく、他者への理解を深めて成長を促進し、リーダーシップ力高めることにつながります。
特長3. B-Brain「脳活用度診断プログラム」などアセスメントの活用
B-Brain「脳活用度診断プログラム」とは、脳外科医が発見し開発したプログラムで、脳の思考傾向や行動のクセ、ストレス耐性などを測ることができます。これらを初めとしたあらゆる手法を用いて、改めて「自分を知る」ということに取り組んで頂きます。
エグゼクティブ・コーチングの例
【例】課題1.多忙で目の前の問題処理に追われており、大切なことに手がつけられていない、自分の考えを整理する時間がほしい、相談相手がほしい。
一対一の定期的な面談などを通して、経営者の皆様が考えていること、実現したいこと、課題に思っていることなどをお聴きし、経営者の皆様と一緒に、より早く、より効果的に課題解決や目標達成ができるようサポートします。緊急度と重要度を勘案のうえ、経営者の皆様が本来の経営に専念できるような環境づくりをお手伝いします。仕事面のみならず、健康面やご家族の問題などプライベート面もトータルでサポートします。
【例】課題2.後継者として考えている常務取締役A氏の言動の改善指導をしてほしい。
A氏はやり手で収益をもたらす能力についてはまったく心配していないのですが、大きな態度、歯に衣着せぬ物言い、優秀でない者に寛容でない、などの言動がみられ、次期リーダーとしてふさわしいかどうか心配なところがありまして・・・
対応例
常務取締役A氏との一対一のコーチングを通して、ご自身の言動や振る舞いについてどう感じているのか、ご自身や周囲への影響などを考えて頂きながら、もし気づいていないようであれば、質問やフィードバックなどによって気づきを促し、気づきを具体的な行動として実践できるまでサポートします。従来のような指示・命令の指導法ではなく、自ら気づいて行動できるようにするところがコーチングの特長です。
ご要望に応じて、個別コーチングに併せて、対象の方のリーダー・マネジメント教育も実施させて頂きます。
【例】課題3.ビジョン、ミッション、クレドを再構築し明文化したい。
対応例
一対一のコーチング面談によって、エグゼクティブ(経営者)の皆様が考えている思いを引き出し、ビジョン、ミッション、クレドという形で明文化するお手伝いをさせて頂きます。一人では気づかない新たなアイデアや視点が生まれます。
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