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第4回:海外赴任先で部下の本音が見えない ─「聴いているつもり」の駐在リーダーが気づいた対話の壁─

前回、管理職未経験でタイに赴任し、孤軍奮闘していた女性リーダーがTERAKO屋への参加を決めたところまでお伝えしました。
「で、実際に何が変わったの?」── そう思いますよね。今回は、3人の学びが始まって最初にぶつかった壁の話をします。そしてその壁は、第1回で私自身が語った「結論を急ぐ上司」の話と、まったく同じ根っこを持っていました。

「現地スタッフの言い訳が聴けない」── 態度に出てしまう自分

学びが始まって間もなく、彼女は自分自身に驚いたそうです。
テーマは「承認と傾聴」。彼女はセッションの中で率直に語りました。

「改善活動を始めてから、欠点ばかりが目につくようになった」

大きな方向転換をチームに求める時、メンバーは表面上従う。でも、心から納得していない。言い訳を聞いていると、つい「言い訳するな」と思ってしまう。そしてそれが、態度に出る。
「聴くことが大事」── 頭ではわかっている。でも自分は、言い訳をきけない。結論を急いでしまう。
第1回で書いた、かつての私とそっくりです。部下が作った企画を最後まで聴かず、結論だけ言って会議を切り上げていた私。「進めること」が大事だった私。

駐在員もローカルマネージャーも、同じ壁にぶつかっていた

この日、悩んでいたのは彼女だけではありませんでした。
マネージャーのAさんは、運送オペレーションの管理で各担当者から「悪い点」だけが報告され全体像が見えないと語った。ルート変更を提案しても「できない」と言われる。その理由がわからない。
マネージャーのBさんは、チームのスキル底上げをしたいが直接「こうしなさい」とは言いたくない。自分で可視化ツールを開発し、手本を示す方法を選んだ。「批判するのではなく、チームとして一緒に進む」── Bさんは、すでに自分なりの共創を始めていました。
立場は違う。でも3人は同じ問いの前に立っていた。「どうすれば、相手の本音が見えるのか」。

「聞いてもらえた」経験が、対話を変え始めた

彼女は後にこう振り返っています。

「3人が同じ課題を共有していることがわかり、自分だけではないと実感できた。TERAKO屋で「聞いてもらえる経験」を通じて、もっと話したいという気持ちが自然に湧いてきた」

これ、小さなことに聞こえるかもしれません。でも、ここに対話の本質があります。聴いてもらえた人は、もっと話したくなる。もっと話したくなった人は、本音を出す。本音が出ると、本当の課題が見えてくる。

「人は判断なしには聴けない」── 対話力の本当の難しさ

学びが進むにつれ、彼女のアンケートにはこんな率直な言葉が並びました。

「People cannot listen without judgement(人は判断なしには聴けない)」

意識すればするほど、難しい。「ここで言い返してはいけない」と考えながら聞いていると、逆にそのことに囚われる。家族に対してはもっと難しい。小学生の息子に対してはDLQ(対話知能指数)を発揮することがとても難しいと書いていて、「がんばります」と添えられていた。
きれいごとではない、この率直さ。私はこのアンケートを読んだ時、「ああ、この方は本気で向き合っている」と感じました。対話力とは、テクニックを覚えることではない。自分の中にある「聴けなさ」に気づき、それを超えて聴こうとし続けることなんです。

心理的安全性が生まれた瞬間 ── 理想のチーム像が言葉になった

GROWモデルを学ぶ回で、彼女の中に理想のチーム像が明確になりました。

「メンバー一人一人が自分の夢を持ち、自信を持って仕事を楽しんでいる状態。会社で過ごす時間が有意義だと感じられること」

今はまだ「個人の集まり」。でもアプローチは見えてきた。まず3人のマネージャー層から始めて、TERAKO屋で学んだことを職場に持ち帰り、サークルを広げる。アンケートにはこう書かれていました。

「3人の間にsafe space(安全な対話空間)ができた。これを他のメンバーにも広げたい」

次回は、彼女が自分自身のパーパス── 「私はなぜここにいるのか」── を発見した時の驚き、そしてそこから組織に起きた「目に見える変化」をお伝えします。頼んでいないのに、部下が自ら動き出す── 「迷いがなくなった」と彼女が語るまでの物語です。

一言まとめ

「聴けない自分」に気づくことが、本当の対話の第一歩。


このブログは、部下の行動が変わらないと悩むすべてのリーダーに向けて書いています。その中でも、異文化の壁の中で孤独な戦いに挑む海外駐在員、すべての責任を一身に背負う現法リーダー、そして駐在員の成功が会社の生命線である経営者・人事リーダーの皆さんに届けたい。DLQ(対話知能指数)の実践と、現場が動いた実際の成果を、連載でお届けします。

河原 説子(エグゼクティブコーチ/CBL海外駐在サポート「Polar Star」)
私たち「Polar Star」は、海外駐在歴30年の元大手メーカー北米Executive VP、欧亜5カ国で駐在員500名以上と対話したタイ永住コーチ、グローバル企業で人事20年のプロ、外資系企業でJapan CFOのキャリアを持つコーチ、大手総合商社で海外新規事業を手がけた戦略家── 6人のエグゼクティブコーチが、駐在リーダーの「孤軍奮闘」を終わらせるために集まったチームです。一人で抱え込まなくていい。私たちが、あなたの隣にいます。

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