第23回：採用は「評価」ではなく「対話」。応募者の心に映る、会社の“人格”のありよう ─あなたのしぐさから伝わるもの─

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採用は「会社の人格」を現す場である

採用は、会社と応募者の双方が「選ぶ・選ばれる」行程ですが、その本質的な目的は、両者がこれから共に歩むための「信頼関係」を構築することにあります。
合否を付けることと同時に大切なのは、あらゆる場面が「対話」の積み重ねになることを認識していることです。

応募者はプロセスのすべてを通じて、「この会社は、どんなところだろうか」という不安と期待への答えを、全身で受け取りながら選考を進みます。
求人票の言葉だけでなく、日程調整メールの丁寧さ、面接での相槌、オファー面談で交わされる言葉の端々に至るまで、すべてを敏感に感じ取っているのです。

会社側は役割ごとに担当が分かれているかもしれませんが、応募者の目には、そのすべてが一つの「会社の在り方（＝人格）」として映ります。

ここで違和感が芽生えると「不信感の種」となり、選考辞退や早期離職という結果を招きかねません。
採用がうまくいかない時、条件を見直す前に、応募者が「会社という人格」から何を受け取っているのかに目を向ける必要があります。

「不信感」へと変わる、小さな違和感

応募者が抱く違和感は、多くの場合、一つの出来事ではなく、ごく小さなすれ違いの積み重ねによって心の中に巣食い始めます。

「話を聞いてくれているようだが、こちらの言葉が相手に届いている感じがしない」
「質問はたくさんされるが、自分を理解しようとしてくれている感触がない」

こうした経験が重なり、やがて「何か違う」という漠然とした、しかし拭いきれない感覚へと変わっていくのです。

無意識の「しぐさ」が、すべてを物語る

こうした違和感は、実は、何気ない振る舞いの中に潜んでいます。

話の終わり際にふと視線を逸らされる。
精一杯正直に答えた言葉に対して、相槌もなく次の質問へ流される。

否定されたわけでも、遮られたわけでもない。けれど、その「ほんのわずかなこと」で、応募者は「自分はここでは大事に思われていないのではないか？」と感じ始めます。

こうした振る舞いの多くは無意識でしょう。しかし、緊張の中で全身のアンテナを立てている応募者にとっては、「自分は関心を持たれていない」という感覚として残ります。

「判断の重さ」が、相手への興味を遮ってしまう

会社側のそれぞれの担当者も、決して不誠実なわけではありません。
むしろ「間違いのない判断をしたい」という責任の重さが、相手を丸ごと受け入れる余裕を奪ってしまうのです。

一見、会話は穏やかでも、興味のベクトルが相手ではなく「自分の評価の正しさ」に向いたとき。
それが聴く姿勢、目線の動き、間の取り方、ちょっとしたしぐさ、に表れてしまいます。
本人は気づかなくても、応募者の心には「大切に扱われていない」という感覚として伝わるのです。

「在り方」こそが、最高の採用戦略

応募者はその違和感をはっきりと言葉にできないまま、最終的にこう結論づけます。

「この会社は、自分に合わない」

これは条件の問題ではなく、コミュニケーションを通じて感じた「関係性の感触」による判断です。

裏を返せば、応募者は「この人（この会社）は自分を大切に扱ってくれるか」という一点を、とても大切に、重く見ているということです。潤沢な給与や福利厚生を用意できなくても、目の前の相手と一対一で真摯に向き合う「在り方」は、どんな大企業にも負けない最大の魅力になり得ます。

採用が進まないとき、手法を検討する前に問い直してみてください。
「私たちは今、目の前の相手に、本当の意味で興味を持ち、向き合えているだろうか」と。

しぐさとは、小手先のテクニックではありません。それは、あなたの「在り方」そのものの表れです。本気で相手に興味を持ち、この出会いから信頼を築こうと願うのか。それとも、ただ間違いのない判断を下そうと身構えるのか。その心の在りようが、指先ひとつ、視線ひとつに宿り、応募者を惹きつけることも突き放すこともできるのです。

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CBL認定アソシエイトコーチ
Support Runners代表
エグゼクティブコーチ/人材採用支援アドバイザー
山本知子