
長年その度を増してきた社会病理だから、簡単に解決できるものではないだろう。今の若い人はとりあえず能力社会でなんとか居場所を作らなくてはならず、出版物はそのためのノウハウ本が隆盛だ。紀伊国屋書店新宿本店の星真一さんは「ビジネススキル本が売れるのは昔からだが、30代40代と若年化している」と話す。周囲が教えなくなり、自腹で学ぶ若者像も見えるという。
(日本経済新聞2月16日日曜版12面<文化時評>「“自分は何か”という不安」より引用)
日本経済新聞2月16日の日曜版は、悲観論に覆われている…
日経新聞2月16日の日曜版の1面アタマは、「安住の家なき氷河世代」の大きな見出しで、現在40~50代の持ち家率が、全世帯平均は横ばいにもかかわらず、30年前と比べ、この年代の持ち家率が特化して下がっていることを記事にしています。「今この年代は就職氷河期世代といわれ、就職難に見舞われた」と、この1面記事は始まります。続きを引用します。
現在も経済的な苦境は続いており、老後の年金も多くを望めなければ賃貸に住むこともままならない。「安住の家」を求めてさまよい続けることになる。(中略)年収の低迷は住宅の購入を抑制した。総務省の国勢調査で20年時点の男女の未婚率を30年前と比べると、全世代では1.2~3.1ポイントの上昇にとどまっているのに対し、40~50代は10.3~21.5ポイントも上がった。
トランプ大統領が「その本領を発揮(?)」し始めたと、速断したくはないのですが、この日の日経新聞は、先の世界に対して悲観論を前面に打ち出し分析しています。3面は、ドイツで開催中の「ミュンヘン安全保障会議」に登壇したバンス副大統領が、世界各国の首脳らを前に「米国と共有するはずの最も基本的な価値観が後退している」、と発言したことを受けて、日経新聞は「言い放った」との表現を使っています。この記事の大見出しは、「米欧対立、G7結束に試練」です。
「未来はまだ起こっていない」わけで、だからこそ……
1週間のインターバルで5年の間、綴ってきた当該コーチングコラムは、「未来はまだ起こっていない。だからこそ悲観論に捉われるのではなく、可能性を信じ、学びを重ね、そして実践することで、未来を切り開いていくことはできる!」がモチーフです。
悲観論の中にあっても、そのことが感じられる内容を、日経新聞の紙面をめくりつつ、探してみました。そして見つけたのが、冒頭の引用<文化時評>です。宗教学者で東京大学名誉教授の島薗進さんへの取材を踏まえた内容です。リードは…「自分を俯瞰して眺めることでうわついたものに流されない本当の自由に近づく」です。
島薗さんの本をいくつか読んでいるので、静謐な感覚を抱きつつ読み終えることが出来ました。
執筆者の深田武志さんによる書き出しを、まずは引用します。
何年か前に中小企業の社長が、知人を評して「人がこう言っているああ言っているという話ばかりで、『じゃあおまえはどうなのか』と聞くと、何もない」と話していたのをときどき思い出す。毎日SNSなどを見て、ああ思ったりこう思ったりしている自分も同じようなもの。「これが自分の意見」とおぼしきことも、実は誰かの借り物でありそうに思われる。
この言葉に触れると、多くの識者も同様なニュアンスを語っていることが想起されます。ただし、ノーベル賞受賞者をはじめとする「すごい人」たちは、だからこそ「巨人の肩の上に立っている」ことを自覚し、学びを重ね、独自の世界を創り上げることに成功した人たちであることが納得できるのです。
「巨人の肩の上」は、1000年以上の歴史を経ても、新鮮さを失わない優れた箴言です。以前書いたコラムの当該箇所を再掲します。
矮人と巨人、いずれが遠くまで見渡せるか。無論、目が矮人よりも高くに位置する巨人である。しかし矮人が巨人の肩の上に乗せられたならば、いずれが遠くまで見渡せるか。 … つまり我々もまた、巨人の肩にまたがった矮人である。我々は彼らの知識から学び、さらに先へと進む。彼らの知識により我々はより多くを学び、言うべきことを言えるようになるが、これは我々が彼らよりも優れているからではない。
深田さんは島薗さんの言葉に啓発を受けます。書き出しの続きです。
宗教学者の島薗進さん(東大名誉教授)にそんなことを最近考えるという話をしたところ「しんめいPさんみたいですね」と思わぬことを言われた。仕事になじめずニートになり、自分が何者か分からない虚無感に苦しんだ末、仏教や道教の東洋哲学に答えを見出し「自分とか、ないから。」(サンクチュアリ出版)という本を書いた。軽妙な文章が読者を捉え、昨年春に出て今も店頭に並ぶ。
先に「希望」をはらんだ不安…自分らしきものも見えてきそう
2000文字近いボリュームで書かれた<文化時評>最後のパラグラフを引用します。深田さんが訴えたい結論です。
「自分とは何か」という不安は、仏教でなくとも、哲学や心理学、文学など、自分に響く先人の知恵などを使って乗り越える道があると思う。ひとつ上の次元から不安な自分を俯瞰して眺められるようになれば、うわついたものに流されない、本当の自由に近づく意義ある問いにもなり得る点で、先に希望をはらんだ不安ではないか。矛盾するようだが、そうするうちに、自分らしきものも見えてきそうである。
弊社は「米国発のコーチングをこの日本でも広めたい!」という志を抱き、事業を展開しています。その想いが少しでも伝わることを願って、昨年の12月5日に公開したコラムの一部を再掲させていただきます。
現在、一般社団法人コーチングスカイの代表、加えて、日本エグゼクティブコーチ協会副会長の要職にある長島明子さんへのインタビューです。
長島さんは、同志社大学大学院博士課程(政治学)を修了。お母様が創業された「京都シルク株式会社」の経営者を経て、コーチングに出遭います。50歳のときでした。
CBLコーチングスクールの説明会に参加された長島さんは、五十嵐代表の言葉に「気づき」を得ます。そのときのことを次のように語ってくれました。
コーチングによって人生が激変した!
(坂本)
五十嵐代表の第一印象は?
(長島)
さっき「売り方」のことを言いましたが、そのことがまったく感じられなかったのと、とても落ち着いてらっしゃって、そのことがすごく印象に残っています。
私は商売人の“気”がありましたので、そのときは“挑戦的な感じ”で、五十嵐先生に質問してたと思うんですね。「本当に身に付くんでしょうか?」とか、「……、そんなふうに思っています」とか。そういう質問に対しての回答も、まさに五十嵐先生でした。「ス~ッ」と肚に落ちてきたんです。
(坂本)
あっこさんのこのインタビューの前に、日本エグゼクティブコーチ協会の理事で、広報委員長の新藤さんにインタビューをお願いし、コラムでも5回ほど紹介させていただきましたが、「個人のレピュテーションマネジメント」について、熱く語られました。
レピュテーションというと「企業」がイメージされるけど、一人の人間として、どのような人に対しても「一貫性のある人格」として接する、ということです。
(長島)
五十嵐先生だ……。「コーチングは奥が深いので、学んだらすぐ、というのはないかもしれない。でも、本当にやればやるほど、学ぶことがいっぱいあります…」って、静かな口調でお話されたんです。そして、「何の制約もなかったら何がしたいですか?」と訊かれました。その質問をいただいた時、「確かに!」って思ったし…
(坂本)
「大質問」ですね。
(長島)
そのときはじめてね… 久しぶりに大学院のことを口にしたと思います。「私研究者になりたかったんです」って。
(坂本)
お~っ…
(長島)
本当は商売なんてしたくなかった…
「制約がなけりゃあ、そりゃあ自分のやりたいことやりたいです」って言いました。「それは何ですか?」って、続けて質問されました。この「何の制約もなかったら…」 という質問が…すごく効いた!
その時の私は、本当に何の制約もなかったわけですよ。「京都シルク」は卒業しようと決めていたし、コロナでまだ世の中・社会に出てないし… なんにもない。
やり切って、荷物一つで入院したんで、全部綺麗にしてしまっていますから、本当に何も制約がなくって、「本当にやりたいことやればいいんだ」って、降りてきた!(笑)。
(坂本)
降りてきた!(笑)。
今回引用した<文化時評>の中に、「真理や癒しを求めて内面に向かう人も増え、心理学や哲学の人気が高まっている」、という文言があります。ホームページとは別のURLで「CBLコーチング情報局~コーチング大百科」を開設しているのですが、この「文言」が実感できると感じられるよう、解説を重ねています。
今回のコラムの最後のメッセージです。「縁」によって人生は“激変”します。
ぜひともコーチングの世界に、一歩踏み出されてみてはいかがでしょうか!
坂本 樹志 (日向 薫)
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