「長島明子さんへのインタビュー」をシリーズでお届けしています。
前回の最後で、癌にかかった長島さんは、メタ認知で自分を俯瞰します。そして、全精力を注いで経営に当たっていた「京都シルク」を手放すことができた、と語ってくれました。その癌を長島さんは「プレゼントでありギフトだった」と、振り返っています。
(坂本)
遮るようですみません、質問します。もし、そのプレゼントがなかったら…?
今の話は、そのプレゼントと結び付けられたかどうかわかりませんが、そのプレゼントがなかったら5年後の今はどうなっていたでしょう。
(長島)
…(間)… 想像できない。
(坂本)
ですよね…
(長島)
できない…
(坂本)
できないですよね。いろいろ想像は浮かぶとは思うんだけど…
(長島)
ものすごく苦しんだと思います。私が元気で、コロナに直面していて、お店がパタパタパタパタ閉じていくなかで… もう、考えられないです。私がいてて、あの商品、思いつくことが出来ただろうか…と思うし。
癌にかかっていなかったら、異なる次元の苦しみを自分は体験していたかもしれない…
(坂本)
マスクですね。
(長島)
マスクにしても他のものにしても、違う商品を、企画できていただろうかって、思うから。今は、もう現在の体制に対して、何にも口出しすることはないなって、思ってます。
(坂本)
トップだから、もう死に物狂いになりますよね。部下はたくさんいる。でもトップはすべての権限を持っている。だから「これやろう」「これをやれ」って言ってしまう。みんなの意見を聴いているようで聴いていないかもしれない。トップも追い詰められると。
(長島)
そう、そう。
(坂本)
これは仮定の話だから、あっこさんの場合は、また違っていたかもしれないけど…
(長島)
まあ、わからない。どうなっていたか… わからないです。はい。
(坂本)
ありがとうございます。
では、いよいよコーチングに。それまでコーチングという言葉とか、勉強しようとかは?
(長島)
ないです、まったく!
コーチングを勉強しようとは「まったく」思っていなかった!
(坂本)
では、どのあたりからコーチングを?
(長島)
7ヵ月。7ヵ月動けなかったんですよ、本当に。最後の方は抗がん剤がたまってくるので、家の中で2本杖を使って歩かないといけないくらい体中が痛くて。だんだん蓄積してくると、筋肉にくるか、関節にくるかどっちかなんです。
(坂本)
うわ~…
(長島)
私は関節にきて、あらゆる関節が痛くて、足の指の関節まで痛くて、それを抑えるすごい強い薬を飲んでいます。何もできない。7ヵ月も本当に空だけを見て、過ごしていたんですけど、まあその中で「京都シルクは卒業だな」って思ったので、心の整理がついたというのが一つと、「じゃあ何かしないとな…」って思って。
(坂本)
うんうん。
(長島)
そこは、「京都シルク」のメンバーにがっかりさせないような、「さすがあっこさん」って言ってもらえる何かじゃないといけない、と思ったので、「何かなあ~?」って考えました。中小企業診断士は、法律は苦手なので「無理」と思って…(笑)。
(坂本)
政治学科だから?(笑)。
(長島)
(笑)…「コンサルタントも違うな~」って。
(坂本)
うんうん。
(長島)
実際にコンサルタントさんに付いてもらっています。じゃあ、なぜ「違う」と思ったかと言うと、アドバイスに対して、自分が「その通り思えない」って、受けとめていたから(笑)。
(坂本)
ハハハ…
(長島)
だから「しっくりこなかった」、というのがあって… でも中小企業の社長とか、なんか自分で判断・決断しなくてはならない役職の人のお手伝いをしたい、と思った。
(坂本)
なるほどね…
(長島)
「それなら私にできる」って思ったんです。それから10年くらい前、2013年にカウンセラーの資格をとっていて…
(坂本)
あの、ちょっといいですか?
(長島)
はい?
(坂本)
私は大学のときに心理学を専攻して以来、これまで自分のライフワークとして継続して学んできています。あっこさんが「CBLコーチング講座」で、心理学のことを話される場合、理論のまま紹介するのではなく、理論をしっかり消化されて、その上で自分の内面の言葉に昇華…昇る華のほうの昇華ですが…させて語っていることがしっかり伝わってきます。ですから、そのあたりのことも聴きたかったんです。
(長島)
ありがとうございます。
私は2013年に、一応カウンセラーの資格をとったんです。理由は、その年から学生支援をしているんですが、学生たちの話を大人のフィルターをかけて聞いてやったらアカンな、って思ったんですよ。ちゃんと聴いてやらないと。
私の一言で学生たちは右向いたり左向いたりするので、「私に彼らの人生がかかっているかもしれない」と思うと、ちゃんと聴けるようになりたいと感じて「メンタルケア心理士」の資格をとりました。
(坂本)
文科省が後援している資格ですね。
(長島)
はい。資格をとって、その頃から「社長のお話を聴かせてください」ということをしていたんです。
長島さんとエグゼクティブコーチングがだんだんとつながっていく
(坂本)
なるほど。ということは、10年の…自問自答していた間の時期ですね。
(長島)
そうです、そうです。カウンセラーの勉強もしたので、社長の相談ごとも守秘義務を守って聴きました。「私に話していただけませんか?」 って。そういうのを「カフェ」というネーミングで、ご飯を食べに行ったりとか。
(坂本)
あっこさんのネットワークの中で?
(長島)
そうです。わりと皆さん、いろんなお話をしてくださって、そういうのもあったんです。そのときは無料ですが、病気になっていろいろ考えているうちに、そういうことをビジネスとしてやってみたいなあ、と思ったんですよ。空を見ながら…
(坂本)
おっ、だんだん近づいてきた。まさに「エグゼクティブコーチング」ですね。ただコーチングという言葉はまだ出てこない?
(長島)
ええ、全然! 全然出てこない(笑)。
(坂本)
空を見て…「それは何だろう?」と。
(長島)
そうです。「それは何だろう?」と思って調べた。そして五十嵐先生と巡り合った。
(坂本)
ありがとうございます。ただ、「情報ゼロ」から、いきなり五十嵐代表につながったとは思えないので、そのプロセスを教えていただけますか。ここはしっかり聴きたいと思っています。
もともと何の関係もなかった五十嵐代表の講座をどうして申し込むに至ったのか? 何を判断基準に、それなりのお金を振り込まれての受講を決断されたのか? コーチングに興味をもたれている読者の方に、ありのままをお伝えしたい。
(長島)
わかりました。調べようと思いネットを検索すると、とにかくいろいろ出てきます。まず受講料ですが、コーチングのことを調べれば調べるほどに「ほんの数十万円で身に付く資格ではない」ということがわかりました。それくらいのスキルを私は求めているんじゃない。
エグゼクティブコーチングの“資格”を、長島さんはどのように捉えているのか?
(坂本)
あっこさんにとってのそれくらいのスキルというのは、どういう…?
(長島)
簡単に身につくスキルなら受けようと思う方はいっぱいいると思うんです。私はちょっと違って、もう一段上の…
(坂本)
そこがあっこさんだ。
(長島)
(笑)…書いてあるのが「だれでも出来る」とか、「数日で身につく」「稼げる」とか… これは違うな、と思ったんです。というのも、元々経営者の支援をしたい、というのがありましたから。
それから150万円とか300万円ぐらいの、そういう講座もありますが「それも違う」と。なぜならば、私のこれまでの経験にさらに何百万円を足す必要はない、と思ったんです。
(坂本)
なるほど…
(長島)
10年大学で勉強しました。20年会社を経営しました。ただ、あとちょっとだけ何かが足りない。全部教えてもらうつもりは、そもそもない、と感じていたんです。
「これさえ学べばOKです」と、そういう売り方をしているスクールもありますが、「そんなわけない!」と私は確信しているので、選択肢がだんだん絞られてきてCBLに行き当たりました。
(坂本)
細かいことを訊きますが、CBLはエグゼクティブコーチングをメインとしているので、ネット検索は、「エグゼクティブコーチング」でググったんですか?
(長島)
いえ、「経営者 コーチング」で検索しています。
「私の足りないところを教えてくれる先生…」を探していたので、CBLのサイトを見つけて、五十嵐先生にたどり着いたんです。
(坂本)
そして説明会に参加された。
(長島)
はい、一対一のZoomでしたね。1時間くらいでした。
(坂本)
五十嵐代表の第一印象は?
(長島)
さっき「売り方」のことを言いましたが、そのことがまったく感じられなかったのと、とても落ち着いてらっしゃって、そのことがすごく印象に残っています。
私は商売人の“気”がありましたので、そのときは“挑戦的な感じ”で、五十嵐先生に質問してたと思うんですね。「本当に身に付くんでしょうか?」とか、「……、そんなふうに思っています」とか。そういう質問に対しての回答も、まさに五十嵐先生でした。「ス~ッ」と肚に落ちてきたんです。
(坂本)
あっこさんのこのインタビューの前に、JEA理事で広報委員長の新藤さんにインタビューをお願いし、コラムでも5回ほど紹介させていただきましたが、「個人のレピュテーションマネジメント」について、熱く語られました。
レピュテーションというと「企業」がイメージされるけど、一人の人間として、どのような人に対しても「一貫性のある人格」として接する、ということです。
(長島)
五十嵐先生だ……。「コーチングは奥が深いので、学んだらすぐ、というのはないかもしれない。でも、本当にやればやるほど、学ぶことがいっぱいあります…」って、静かな口調でお話されたんです。そして、「何の制約もなかったら何がしたいですか?」と訊かれました。その質問をいただいた時、「確かに!」って思ったし…
「何の制約もなかったら何がしたいですか?」
(坂本)
「大質問」ですね。
(長島)
そのときはじめてね… 久しぶりに大学院のことを口にしたと思います。「私研究者になりたかったんです」って。
(坂本)
お~っ…
(長島)
本当は商売なんてしたくなかった…
「制約がなけりゃあ、そりゃあ自分のやりたいことやりたいです」って言いました。「それは何ですか?」って、続けて質問されました。この「何の制約もなかったら…」という質問が…すごく効いた!
その時の私は、本当に何の制約もなかったわけですよ。「京都シルク」は卒業しようと決めていたし、コロナでまだ世の中・社会に出てないし… なんにもない。
やり切って、荷物一つで入院したんで、全部綺麗にしてしまっていますから、本当に何も制約がなくって、「本当にやりたいことやればいいんだ」って、降りてきた!(笑)。
(坂本)
降りてきた!(笑)。
今回のインタビューの再現はここまでとさせていただきます。
長島さんは「コーチング」と出逢います。五十嵐代表の質問によって、「それが降りてきた!」と、長島さんは語ります。
さて、長島さんのインタビューをここまで5回にわたって再現してきましたが、いよいよ次回が最終回です。長島さんのコーチングへの想いをしっかりお伝えしようと思います。
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