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第3回:管理職未経験で赴任 ─現地スタッフに仕事を任せられない駐在リーダーが出会った「対話」という選択肢─

前回、タイの日系企業で「何のためにやるのか」を現地メンバーに共有したことで自走が始まった奥山さんの事例をお伝えしました。
「具体的にはわかった。でも、うちはもっと厳しい状況なんだよ」── そう思った方もいるかもしれません。
今回から3回にわたってお伝えするのは、まさにその「厳しい状況」の中で、対話の力で組織を変えていった、ある女性リーダーの物語です。

海外赴任先で「頼める人がいない」── 駐在員2名、社員55名の現実

タイ・イースタンシーボード。バンコクから車で約2時間の工業地帯。
ある商社グループの運輸関連事業を率いる女性リーダー。社員55名。駐在員は社長と彼女の2名だけ。
日本では管理職の経験がなかった。タイに来て、初めて「上司」になった。
しかも相手は、言葉の通じないタイ人チーム。15名ほどのメンバーのうち、英語で業務の話ができるのは1〜2名。仕事を振れる相手が、ほとんどいない。
管理職経験ゼロで、いきなり言葉の通じないチームを率いる。日々待ったなしの業務に追われ振り返る余裕もない。私が初めて彼女の話を聴いた時、胸が痛くなりました。

本社と現場の板挟み ── 安全管理と営業目標の狭間で

赴任して2年半、事故が多発した。営業活動を自粛し、安全管理の立て直しに集中した。その間に、重要プロジェクトが止まったままになった。
本社からは「なぜ進んでいないのか」と問われる。現場では事故対応に追われ、計画が狂う。どちらを向いても行き詰まる。

現地メンバーに数字の「なぜ」を伝えられない焦り

2年で安全管理の立て直しを実現。しかし、次に迫っていたのは「達成できなければ事業の存続が危うい」。そんな数値目標だった。
数字はチームに共有していた。でも「なぜそれを目指すのか」をうまく説明できない。案件を逃しても、メンバーは「しょうがないよね」で終わる。
前回の奥山さんが「数字ではなく感情を共有した」と語っていました。彼女はまさに、その「感情の共有」ができずに苦しんでいたんです。日々のタスクに追われ、言葉の壁も立ちはだかり、組織の「なぜ」が置き去りになっていた。

「タイ人はかまってちゃん」── 講演で気づいた承認の本質

2025年10月、チョンブリラヨーン日本人会で私が講演をした時、彼女は客席にいました。そして11月、TERAKO屋の体験会に来てくれました。
驚いたのは、彼女が自分の課題を資料にまとめて持参してきたことです。組織図、課題一覧、チャレンジすべきこと──。
その中で、ある話をしてくれました。
現地採用の日本人から「タイ人はみんなかまってちゃんなんですよ」と言われたことがある。グサッときた、と。
でも思い当たることがある。彼女が現場に出向くと、ドライバーが興奮する。スタッフが嬉しそうにする。
みんな、自分の仕事を大事だと思ってほしいだけだ。
講演で私が話した「承認欲求」の話が深く刺さったのは、まさにここだったそうです。そう気づいた時、2年半モヤモヤしていたものに、初めて輪郭が見えた── そう話してくれました。
彼女はこうも言いました。究極の目標は、現地のローカルメンバーが自分たちで回せる状態にすること。日本人駐在員がいなくても大丈夫だと、みんなが自信を持てるようになること。

「どうして誰も教えてくれなかったんだろう」── 駐在員支援との出会い

体験会が終わった時、彼女が言った一言が忘れられません。

「このようなサービスが世の中にあるんだということが、すごく驚きで、全く知らない世界があるんだなと思ってワクワクしました。今までの悩みはこういうところで解決できるっていうこと、どうして誰も教えてくれなかったんだろう」

切羽詰まった状況の中で、「ワクワク」という言葉が出てきた。この言葉を聞いた時、私はこの方は絶対に現状を変えられる、と確信しました。
彼女はTERAKO屋への参加を決めました。そしてその後、タイ人マネージャー2名にも声をかけ、英語でプログラムに参加することになります。
第1回でお話しした「孤軍奮闘」。彼女はまさにその状態から、一歩を踏み出しました。
次回は、学びが始まった後に彼女がぶつかった壁── 「言い訳を聞いていると態度に出てしまう」という、対話の根っこにある難しさをお伝えします。

一言まとめ

「なぜそれを目指すのか」を伝えられない焦り。仕事を任せたいのに任せられない孤独。その壁を壊す第一歩は、「やってみよう!」という決断でした。


このブログは、部下の行動が変わらないと悩むすべてのリーダーに向けて書いています。その中でも、異文化の壁の中で孤独な戦いに挑む海外駐在員、すべての責任を一身に背負う現法リーダー、そして駐在員の成功が会社の生命線である経営者・人事リーダーの皆さんに届けたい。DLQ(対話知能指数)の実践と、現場が動いた実際の成果を、連載でお届けします。

河原 説子(エグゼクティブコーチ/CBL海外駐在サポート「Polar Star」)
私たち「Polar Star」は、海外駐在歴30年の元大手メーカー北米Executive VP、欧亜5カ国で駐在員500名以上と対話したタイ永住コーチ、グローバル企業で人事20年のプロ、外資系企業でJapan CFOのキャリアを持つコーチ、大手総合商社で海外新規事業を手がけた戦略家── 6人のエグゼクティブコーチが、駐在リーダーの「孤軍奮闘」を終わらせるために集まったチームです。一人で抱え込まなくていい。私たちが、あなたの隣にいます。

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