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「Well-being」の実現は大変であるが、一度形成されると、それは企業文化として定着する!

第5回「廣器会」講演会レポート

開催日時:2024年8月8日(木)18:30~20:00(懇親会 20:00~22:00)
開催場所:株式会社コーチビジネス研究所 飯田橋セミナールーム
参加人数:19名(リアル参加18名・オンライン参加1名)

第5回の「廣器会」は、「J Linklusion合同会社」CEOの中島崇さんをお招きしての講演です。テーマは「Well-being経営」です。

「J Linklusion」は「人的資本経営」のスペシャリスト集団

中島さんの語り口はとてもクリア。ハイトーンでメリハリの利いた声音が、私たちに届けられます。「Well-beingを体現されているなあ」、と伝わってくる講演がスタートしました。

「人的資本経営」という言葉を聞かれたことがあると思うんですが、「J Linklusion合同会社」は、このスペシャリストの集団です。そして、「人的資本経営」を用いて、働く人の笑顔につなげていこうとの思いを抱いて活動しています。
まずアジェンダですが、4つの内容でお話させていだきます。

  1. Well-beingとは?
  2. Well-being経営とは?
  3. Well-being経営を行うメリットとは?
  4. Well-being経営を実践している会社

です。

「Well-being」は、とても大切なステップがあります。

  1. 知る
  2. 計る
  3. 実践

の3つです。

さて、「Well-beingがなぜ注目されるようになったのか?」 なのですが、「人生100年時代」を迎え、「SDGsの次はWell-being」だよ、と言われるようになるんです。「Well-being」は、個人だけでなく企業にとってもすごく大切なんだよ、という認識が広がってきました。

「皆さんは幸せですか?」

ここで中島さんは、私たちに問いかけます。「なんかいきなり宗教っぽいですけど…」と、笑みを浮かべ「皆さんは幸せですか?」と。
すると…会場の面々の手が一斉に挙がります。ほぼ全員でした(笑)

さすがっ! やっぱりここにいらっしゃる方は「Well-being」ということですね(笑)
それでは、もう一つ…「皆さんの大切な人は幸せでしょうか?」
さらにもう一つ…「皆さんの会社の社員は幸せですか?」
皆さんは経営者ですから、あえて質問させていただきます。目を瞑ってください。この両方とも「その通り」と思う方は手を挙げてください。……

素晴らしい! 素晴らしいです! たくさんの方に手を挙げていただきました。ありがとうございます。目を開けていただいて大丈夫です。
今、私が申し上げたことが「今日お話しすることのすべて」ということです。私は「Well-being経営」というキーワードでお話させていただいています。従業員もステークホルダーも含めた「みんなが幸せな状態」が何よりも大切なんです

「Well-being」は「well(よい)+being(状態)」という意味

英語圏で「Well-being」は、特別な言葉ではなく、普通に使われています。ただし、中島さんが「SDGsの次がWell -beingです」と、言葉にされたので、「SDGsは国連でいつ採択されたのか?」が気になり、チャットGPTに訊いてみました。回答は…

SDGs(持続可能な開発目標)は、2015年9月の国連サミットで採択されました。この目標は、2030年までに達成することを目指しており、17のゴールと169のターゲットが設定されています。

2016年10月に出版された「人生100年時代の戦略」を紐解く、リンダ・グラットンの『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』が、世界的ベストセラーになったことで、「Well-being」という言葉の認知が高まった、とも中島さんは言葉にされます。

講演はまだ前半ですが、私が再認識したことがあります。弊社の設立は、2014年3月です。創立に当たって五十嵐代表は、「経営理念(Philosophy)」を明文化しました。

最も人を幸せにする企業が最も幸せになる『幸せ創造企業』の支援を通して、『幸せ共創社会』の実現を目指します。

『幸せ創造企業』と『幸せ共創社会』がキーワード!

つまり、「ウェルビーイング」というカタカナ語が日本で認知される以前に、日本語の「幸せ創造企業+幸せ共創社会」を理念として掲げ、明文化していた、という気づきです。 
ここは、弊社のPRになってしまいました。講演レポートに戻ります。

中島さんは、「Well-being」の定義を、「心」と「からだ」と「社会的つながり」の3つの円が重なった図で、紐解きます。
そして…「私がこれから質問します。各設問の最高は7点です。スマートフォンを取り出し、電卓機能で合計点を出していただけますか?」と、5つの質問が繰り出されました。

  1. ほとんどの面で私の人生は理想に近い。
  2. 私の人生はとても素晴らしい状態。
  3. 自分の人生に満足している。
  4. これまで自分の人生に求める大切なものを得てきた。
  5. もう一度人生をやり直せるとしても、ほとんど何も変えないだろう。

「廣器会」メンバーの「人生満足度」を点数化してみると…

「ここにいる皆さんは幸せな方ばかりです。では…」と、中島さんは20点(合計)をスタートに、5点刻みで挙手に誘います。……
「素晴らしい、それでは30点以上だった方は?」

3人の手が挙がりました。テンポよく進んだので、各配点での挙手人数はカウントできていないのですが、25点以上が最も多かったようです。
ここで、受講メンバー(弊社中村智昭取締役)から質問が出ました。

あの~ 5番目の、もう一度人生をやり直せるとしたら…ですが、行ったり来たりの人生だから、「もう一回生きるのもいいなあ~」と思ったんです。「Well-being」と関係あるような、ないような……

中島さんからは、次のフィードバックが返ってきます。

ありがとうございます。これは「Well-being」の質問ではなくて、「人生満足度」というエド・ディナー博士(イリノイ大学を2008年に引退するまで、34年間心理学教授として活発に活動されています)がつくった「アセスメント」で、世界中で使われているんです。今中村さんがおっしゃったのは「幸福度」で、「満足度」とは違うかもしれませんね。冒頭で、ステップを「1.知る 2.計る 3.実践」、と言っていますので、ここで「計って」みたということです(笑)

私もこの5番目の質問に引っ掛かっていました。
「それなりに楽しい人生だけど、失敗も多かったので、異なるチョイスによってパラレルな別の人生となっていくのもエキサイティングだよなあ~」などと夢想していたので、ちょっと安心しました(私は⑤を3点にしています)。
ただし、「幸福度と満足度の違いとは何ぞや?」という新たな疑問も浮かんできましたが(笑)

中島さんは「ゲーテ、アリストテレス、ダライ・ラマ14世が、同じことを言っています」と、その言葉を紹介してくれました。

「人は幸せになるために生まれてくる」

「人は幸せになるために生まれてくる」、とおっしゃっています。いろんな考え方があると思いますが、多分これが人間の究極のゴールだと思います。こういったものを考えてみても、やはり我々は幸せになる権利があるし、幸せにならなければならないと思います。これが「Well-being」という考え方ということです。
アリストテレスは「人生の最終目的は幸せ以外にありえない」と、言います。「なるほどなあ~」と、私もこれを聞いたときに思いました。

中島さんは、私たちの表情を観察(?)された故か、講演の要所・要所に、数分間のシェアタイムを盛り込んでくれました。
「何かに啓発され脳が活性化すると、そこで浮かんだ思念をだれかに話したくなる」、という習癖を持つのが経営者だと、私は勝手に定義しているのですが、経営者同士(3~4人)の対話に耳を傾けているうちに、「これは、“幸福とは?”を語り合う、“哲学問答”なのではないか…」という思いに捉われてきました。もっとも、ソクラテスやプラトンといった偉大な哲学者の名前は登場しませんが…

講師の声が聞こえなくなるほど議論は盛り上がった!?

めちゃくちゃ盛り上がってましたけど、私は途中2回ぐらい、「ではそろそろ…」と言ったんですけど、誰も聞いてくれない(会場 : 大笑い)。
やはりそれくらい盛り上がって、自分の幸福度、「Well-being」について計ると「自分の現在地ってどうなのかなあ~」って、多分皆さんの中で、いい話題になったんじゃないかと思います。
では、「私こんな風に思ってるんだ」って、話していただける方、いらっしゃいますか?

ここで、AグループのTさんのコメントを紹介させていただきます。

(Tさん)
うちの4人はですね、二人が低くて二人が結構高い、という結果となっています。低かった二人は、過去があって未来がある。階段状で上がって行って…そうすると現在がこの辺になる。現在からこの先を見た時に、まだまだギャップがある。だから、足りてないので点数が低いんだ、ということでした。
(中島さん)
なるほど…
(Tさん)
僕の場合は高い方だったんですけど、現在を見た時に、それまでいろんなことがあって、これからもいろいろあるかもしれないけれど、今現在この瞬間、楽しいし…この時に点を計っているから高くなったと思います。なんで、人によってモノサシというか、どこを軸に見て、幸せ度を計るかで、結果は変わってきそうだね~ …そんな結論になりました。
(中島さん)
ありがとうございます!

「廣器会」は「哲学を語り合う会」なのかもしれない…

この後も、各グループで話し合った内容がシェアされます。中島さんと私たち、そして、私たちと私たちの双方向の語り合いが熱を帯びます。「女性の方が“幸福感”は高いのでは?」という言葉も飛び出します。女性と男性の比較論は、ジェンダー視点で、さまざまな指摘も受けそうですが、「幸福」という抽象的な概念を真剣に討議していく今回の「廣器会」は、「哲学の会」に思えてきました。
「Well-being≒幸福な状態」は、まさに人それぞれであり、その人がどう受けとめているかで、百人百様であることが実感されます。「幸福論」は深奥です!

中島さんは「Well-being経営」が、いかに注目されているかを語ります。
トヨタ自動車、日立製作所というビッグネームの取り組みが紹介されます。そして…

世界一「Well-being」の研究が進んでいるのが日本なんです。今までは、欧米がやってきたことをそのまま受け入れてきた。それが「Well-being」は、日本が主導しようとしている。ただ、実際に推進していくにあたっては、メリットとデメリットがあります。……

中島さんは3つのメリットの後で、デメリットについて指摘されました。「わかりづらい」というのがデメリットの一つ。二つ目は、さまざまな施策を打たなければならないので「短期的には売上が下がる」可能性がある。そして…

そしてですね、即効性はないんです。今日「Well-being」を学んだ。じゃあ、すぐに売上がめちゃくちゃ上がるか? というと、そんなことはありえない。遅効性です。ただし「Well-being」は一度形成されたら、ずーっと、その文化というものは流れていきます。一回形成されると、その企業の生産性は上がっていきます。

「Well-being」は遅効性、でも形成されると企業文化として定着する!

中島さんの語りは熱を帯びます。

「Well-being」が、いちばん根本で基幹的なものなんです。「Well-being」が形成されていなければ、エンゲージメント(組織に対する愛着心や思い入れ)が高い状態や、ミッション・ビジョン・バリューやパーパスを達成することができなくなるよ、ということなんです。ですからこの図は、「人的資本経営」そのものを表しているんです。全部つながっているんです。

エンゲージメントの重要性が紐解かれます。
残り時間が迫ってきたところで、最後の「シェアタイム」のテーマは「エンゲージメント」でした。終わると、「闊達な議論」そのままの、自由奔放な意見も飛び出しました(笑)

最後の〆として、中島さんはご自身の会社である「J Linklusion合同会社」についてコメントされました。

組織開発のコンサルティングがおもな事業内容です。「働く人の笑顔をつなげよう」というパーパスを掲げています。心理的安全性を感じさせる職場環境を通じて、「Well-being経営」を高めていくことをお手伝いしています。ただ、「Well-being」はわかりにくいので、カードゲームを使ったワークショップなども展開しています。
それから重要な「エンゲージメントの測定(数値化)」については、いろんな会社が、ものすごく細かい内容のものを出しています。ただ詳細過ぎて、「使い切れない」ということもあるので、シンプルにしたサーベイをわれわれとしては、実施しています。……

これにて講演会「第一部」が終了。「第二部」は……

「お困りのことがありましたら、ぜひともお声がけください。今日は本当にありがとうございました!」という中島さんの言葉で、「第5回廣器会」の講演「第一部」は終了しました。そして、恒例の「第二部」の懇親会でも、中島さんと私たち、そして私たちと私たちの熱き対話は、夜が更けるまで続いてゆくのです……

坂本 樹志 (日向 薫)

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