丸山茂雄さんの『私の履歴書』、そして保阪正康さんの『自伝の人間学』『昭和の怪物 七つの謎』について語ります!(2022/07/25)

自分は運がいい人間だと思っていたが、社長時代はうまくいったものを一つも思い出せない。「調子出ねーな―」の2年10か月。苦しかった。
乱暴なリストラができるのはCBS・ソニーレコード一期生の私だけとのおごりがあったかもしれない。短期間に結果を出そうと無理をした。あれは丸さんらしくないよね……。エピック時代の部下たちの声が聞こえてきそうだ。
(『日本経済新聞7月23日 私の履歴書 丸山茂雄23』より引用)

心理学を学びコーチングの資格を有する新進気鋭の若手A課長と、部長職を経て定年再雇用としてA課長のチームに配属されたSさんとによる1on1ミーティングです。
前回に引き続き、ソニー・ミュージックエンタテインメント元社長の丸山茂雄さんが登場する、日経新聞『私の履歴書』に触発を受けてのミーティングです。

グランドプリンスホテル広島でのワーケーションから始まります…

(A課長)
広島の天気はいかがですか?

(Sさん)
少し曇っていますが、この部屋から似島や江田島はしっかり見えています。
Zoomのおかげで、場所を選ぶことなくサクサク仕事が出来る時代になりましたね。今回は家族を伴うので有休をとって…と思っていたのですが、Aさんから「定年の際、貯まっていた有給休暇を消化されているので、今回は“仕事”でもかまいませんよ」と、言っていただきました。甘えることにしました。

(A課長)
Sさんについては管理しないマネジメントの方がチームのパフォーマンス向上につながる、と感じています。変な表現になりました(笑)
私が判断に悩んでいるとき、Sさんからさりげなくメールが届いたりして、それによって腹落ちした意思決定が出来たり… とにかく助かっています。

金曜日のチーム会で共有したように、Sさんにお願いしている業務のアウトプットは、今週末ですから、風光明媚な瀬戸内海を眺めながら思索を深めていただければ、と思います。ただメールチェックはお願いしますね。

ホテルロビーの片隅に「ドライブ・マイ・カー」のパネル展示が…

(Sさん)
ありがとうございます。ワーケーションもいいなぁ、と実感至極です。
今回は長女と孫も連れて4人で広島に来ているのですが、「ドライブ・マイ・カー」の舞台にもなった、グランドプリンスホテル広島に昨日から泊まっています。

「高槻(岡田将生さん)が宿泊しているホテルとして撮影されました。最上階のバーで、高槻と家福(西島秀俊さん)が亡き妻・音(霧島れいかさん)を巡り話すシーンも」、という説明が付されたバーのシーンのパネルなど、ロビーの一角が「受賞祝賀パネル展」になっています。

2016年に志摩観光ホテルでG7サミットが開催されました。世界でもっとも権威ある首脳会議と比較するのも変ですけど、志摩観光ホテルのここかしこが「G7開催ホテル」をPRする演出となっていたのに対し、ここは遠慮がちのパネル展示なので、広島出身者として“ほほ笑ましく”感じています。

と言いながら… 志摩観光ホテルに泊まったとき、オバマ大統領が立った場所で写真を撮っていますから、ミーハーであることは自覚しています、ちょっと古い喩えかな?(笑)

(A課長)
リフレッシュされているようで、何よりです!
さて、今日の1on1のテーマですが、どういたしましょう?

(Sさん)
はい、前回に続いて日経の『私の履歴書』をAさんと語ってみたいのですが…

(A課長)
実は私も同じことを考えていました。“Sさんと私の感じ方の比較研究”ということでやってみましょう。

(Sさん)
私は、まず23日土曜日の掲載を取り上げたいと思います。

若手から経営を「わかりにくいですね」と言われた丸山さんは…

(A課長)
23日ですか… ええっと…『経営「わかりにくいですね」…若手の指摘、退任の決め手に』がタイトルとなっている回ですね。
丸山さんが社長であった2年10か月を振り返って、「苦しかった」と率直に語っている回だ。

(Sさん)
そうなんです。そのまえの22回目が「ナンバー2」というタイトルで、そのポジションが自分に向いていたし、居心地のよさを感じていたと書いています。
それが、最後あたりでSMEの社長に指名されたとあり、これまでの自信にあふれていた書きっぷりに変化がみられるので「23回目はどう展開していくのだろう…?」と、自分なりの推測をもって22回目を読み終えています。

(A課長)
その推測は当たりましたか、それとも…

(Sさん)
はずれました。それは…感動、というと大げさになりますが、丸山さんは「自伝とは何を書くことなのか?」という本質を極めている方だぁ、という思いに浸っています。とても心地よい感覚です。

(A課長)
「自伝」…の本質?

保阪正康さんの『自伝の人間学』を再読したSさんは何を語るのか?

(Sさん)
私は以前読んだ『自伝の人間学(保阪正康/新潮文庫・平成19年11月)』を思い出し、書棚から引っ張り出して再読しました。

(A課長)
Sさんの再読紹介だ! ぜひともお願いします。

(Sさん)
ありがとうございます。保阪さんは昭和史研究の巨人です。学者ではなくノンフィクション作家であり、東條英機、秩父宮、吉田茂… そして田中角栄など、昭和史における膨大な数の要人について、著作を発表しています。そのスタンスは徹底した「一次資料+インタビュー」からの書き起こしです。

最近では『昭和の怪物 七つの謎(講談社現代新書・2018年7月)』がベストセラーになっています。

(A課長)
あっ、それ読んでいます。
東條英機、石原莞爾、犬養毅… ええっと、あと誰だったかな?

「二・二六事件」で父を失った渡辺和子さんの語りとは…

(Sさん)
『置かれた場所で咲きなさい』を書かれたシスターの渡辺和子さん、瀬島龍三、そして吉田茂についての秘話です。

渡辺さんの父親は「二・二六事件」で兵士たちの銃弾で亡くなった渡辺錠太郎教育総監です。保阪さんは4時間余に及ぶインタビューによって、その場に居合わせた9歳の和子さんの語りを引き出しています。

「(将校や兵士たちの機関銃の)タタタタタッと銃声が響き渡りました。まず父の足を狙って撃ってきたのです。『ああ、逃がさないとだめだな』と思ったときには、血や肉片が壁や天井にまで飛び散り、父の片足は一瞬にしてほとんどなくなっていました」

「兵士たちが去った後、座卓の影から出て『お父様!』と呼びかけましたが、返事はございませんでした。母が飛んできて、父の姿を一瞥すると『和子は外へ行きなさい』と言い、その後は姉が万事運んでくれたようです」
(証言は月刊『文藝春秋』2016年3月号より)

(A課長)
思い出しました。
渡辺和子さんは、アジア太平洋戦争が始まった戦時下にカトリックに入信し、修道院生活に入っていますよね。

(Sさん)
保阪さんのインタビューは2016年の1月で、その年の12月に渡辺和子さんは、理事長であったノートルダム清心学園内の修道院で、帰天されています。89歳でした。

(A課長)
丸山さんの『私の履歴書』が「二・二六事件」に… すごい展開の1on1になってきました。

“面白い”自伝と“面白くない”自伝の違いとは…?

(Sさん)
“思索の流れ”というのは不思議なものですね… 私が紹介したかったのは保阪さんの『自伝の人間学』でした。

……自伝を書くというのは、決して生半可なものでない。全人格を賭けた戦いである。しかし裏を返せば、実は誰もが書けるということがわかってくるのではないか。そして、いまの時代は誰が自分の軌跡を書いてもかまわないのである。十人の人がいれば、十冊の自伝ができあがる。百人がいれば、百冊の自伝ができあがる。どれが面白くて、どれが面白くないなどというのは、まったく“読む側”に任せるべきことなのだ。

総理大臣の自伝が面白くて、平社員のうだつのあがらない自伝が面白くないなどと決めつけることはできない。

私は“面白い”とか、“面白くない”という言い方を意識的にしてきたが、“面白い”というのは、素材もさることながら、自分がどれだけ裸になったかの尺度であり、“面白くない”というのは、いかに巧妙に自分を偽っていても、そのからくりが暴かれてしまった自伝についていっているのだ。

(A課長)
「自伝」の本質…だ。

(Sさん)
丸山さんが保阪さんの『自伝の人間学』を読まれているかどうかわかりませんが、保阪セオリーと実にフィットしているなぁ~ と感じています。本当に“面白い”!

丸山さんの23回目は、ご自身による「社長業は向いていなかった」という赤裸々な社長失敗談です。

……私はSMEの若い社員を連れて出かけた。道中、彼に尋ねた。「最近おれの経営はどうだ?」。返ってきた答えが心に突き刺さった。「ちょっとわかりにくいですね」
社長を辞めると決め、2000年11月末に退いた。

丸山さんは「自分が社長に向いていなかった」ことを率直に語ります!

(A課長)
任期途中の退任に噂が飛び交ったようですね。ソニーから赤字の責任をとれと迫られたからだ、との説に対しては、もしそうなら「プレステでもうけているのに文句あるか」と突っぱねていた、というのも丸山さんらしくて… 何だかいいですね。

(Sさん)
「若手社員の一言」というのも丸山さんらしくてイイ!
丸山さんとは何も面識もありませんが、『私の履歴書』が読者である私に話しかけてくれているようで、勝手にともだちになってしまいました(笑)

(A課長)
「丸山マジック」とネーミングすることにしましょう(笑)
日曜日の24回目のタイトルは「丸山学校」であり、「社内起業家育成に注力」で、校長の丸山さんの生きざまを通じた「アントレプレナーシップ」の伝承が描かれています。
丸山さんは、サラリーマンだけれど、エピックやSCMで「創業者気分」を味わった、と語っています。丸山さんの生き生きとした姿が復活しました。

丸山さんはソニーグループのゴーイングコンサーンを支えている!

(Sさん)
私も企業内ベンチャーである新規事業を担当してきましたから、この言葉には深い意味が込められているのがわかります。つまり、あくまでもソニーという器の中で“やんちゃ”ができた、ということですね。会社への感謝の気持ちが伝わってきます。

ソニーは自分を取り込もうとせず、でもソニー一家の住人として、ちゃんと貢献するんだよ… という眼差しを丸山さんはしっかり受けとめていたのだと想像しています。
だからこそ、なのでしょうか… この24回目の最後に、ソニーのSME完全子会社化について否定的見解を述べています。

もちろん、ソニーのブランドや資本力があってこそ、私の仕事が成立していたのは紛れもない事実。そこはわきまえている。それでもやはり、子会社、孫会社をどんどんつくって繫栄することを日本の産業界はもっと真剣に考えた方がいい。私にはそういう気持ちがつよくある。

(A課長)
企業に限らず、「中央集権」か「分散型」か…というテーマは常に議論を呼ぶところです。「完全子会社化によって自由度が狭まってしまう」、というのは絶対的ではないですが、「資本の論理」は、いよいよになると冷徹さを帯びていきますからね…

(Sさん)
気候変動、そして新型コロナによって、企業ガバナンスの考え方、そしてパーパスの捉え方は明らかに変わってきたと思います。その会社に属しているメンバーが、会社はしっかり社会にコミットできているか、共同体に貢献できているのか、ということを実感できないと… そのことが一人ひとりのモチベーションを、直接的に左右する時代になりました。

日本の会社は99%が中小企業です。経営と従業員が一体となることが可能な中小企業の環境は、いくらでもプラスに捉えることが可能です。

大企業にありがちの「他社と比べてウチは給料をしっかり払っているのに…」と、経営層が思っていても、優秀な社員の退職がとまらない、ということが現実に起こっています。昭和のときとは…いえ、平成とも違ってきています。経営者はこのことを理屈ではなく体感として受けとめないと、売上利益とは別次元で、その会社の存続があやうくなっていくと感じています。
まさに「共感の時代」ですね。

「共感の時代」は「共感の経営」が問われている!

(A課長)
丸山さんから「自分の経営はどうだ?」と訊かれた若手社員が、「わかりにくいですね…」と、応えています。Sさんだったらどう感じますか?

(Sさん)
究極のショックですね。極端な解釈を許していただくとして、丸山さんにとって、上司の存在は二の次だったと思います。あっ、こう言ってしまうとマズイな…(笑)

『私の履歴書』の丸山さんは、メンバーとの共感を何よりも大切にしていたことが伝わってきます。これは丸山さんが意識的にやってきたというより、ご本人のそのものだと思うんですね。

『私の履歴書』のアーカイブを見ると、丸山さんの第1回目のタイトルは「目立つ黒子」です。この第1回目で『私の履歴書』全体を通しての主要人物となるふたりを、まず紹介しています。私が響いたところを読み上げますね。

ふたりとも熱量が高い。早稲田実業学校で簿記などを学んだ小室さんは「財務がわかるアーティスト」を自称し、音楽の才だけでなく商才も示した。久多良木さんはゲームを突破口に半導体産業の頂点に立つ野望を持っていた。

そんな革命を起こしかねない人というのは、往々にして社会との接し方がうまくない。だからそこを補う世話役が必要で、一端を担ってきたのが私ということになる。

私は大勢の個性あふれる人たちの隣で働く機会に恵まれた。彼らが浴びるスポットライトの光が少し私にも漏れてきて、図らずも「ちょっと目立つ黒子」になったのだ。

(A課長)
シビレますね~
23回目はご自身が社長業に向いていなかったことを正直に開示されました。つくづく思うのですが、人それぞれ役割があって、それがはまった時、人は幸せを感じられるのではないかと…

(Sさん)
オールマイティの人なんていませんよ。成功した経営者については、その人の能力を称えることが多いのですが、私は環境、そして周りの人たちが助けてくれたからこそ、成功したのであって、俗にいうカリスマを強調するのは「いかがなものかな…」と感じています。

(A課長)
サーバントリーダーシップであり、シェアードリーダーシップだ。

(Sさん)
丸山さんの『私の履歴書』はあともう少しで終わります。どのようなフィナーレを迎えるのか… とても楽しみですね。

坂本 樹志 (日向 薫)

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