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第10回:決断とは“自分に責任を引き受ける”ということ ─エグゼクティブの意思決定を支えるコーチング─

意思決定の核心は「自分自身」に向き合うこと

「どうすべきかは分かっている。でも、なぜか決められない」
これは多くの経営者が直面する、意思決定の見えない壁です。
戦略的に考えれば、数値的に見れば、選ぶべき選択肢は明白。
けれども、なぜか一歩が出ない。迷いが残る。判断を先送りしてしまう。
この「決めきれない」状態には、意思決定の本質的な苦しみが潜んでいます。
経営者の意思決定は、企業の命運を分ける重大な責任を伴います。それだけに、判断には「理性」だけでなく、「感情」や「価値観」――つまり“その人自身の存在全体”が関わってきます。

ある経営者が「主要取引先からの大型案件を断るべきか否か」で悩んでいたケースがあります。表面上は「採算が合わない」という判断材料が揃っていました。それでも彼が決めきれなかったのは、過去にその取引先に助けられた経験があり、「恩義を裏切るのではないか」という感情が強く働いていたからでした。

コーチングの対話の中で、彼はようやくこう語りはじめました。
「これはビジネスの判断ですが、私の中では“人としてどう在りたいか”が問われているように思います。」この言葉が出てきたとき、初めて彼は自分が本当に決断しようとしていることに触れたのです。
つまり、「選択肢」ではなく「自分自身」に向き合うことが、意思決定の核心だったのです。ここに、エグゼクティブコーチの存在意義があります。

エグゼクティブコーチは経営者が自分と向き合うための空間を創る

コーチは、「正しい答え」を提示することはしません。
代わりに、その経営者が自分の価値観、感情、信念、恐れ、覚悟に向き合うための空間を創ります。
時には問いかけ、時には沈黙を共有し、時には「決められない自分」をそのまま肯定する。このプロセスを経て、経営者は自分が何に責任を持つのかを明確にしていきます。

それは、「この選択肢が正しいから選ぶ」ではなく、「この決断を、自分が引き受けると決めたから選ぶ」という主体的な立場です。意思決定は、ロジックの果てにあるのではありません。それは、「自分の人生における答えとして、どこまで引き受けられるか」という問いに応じる行為です。

コーチングは、その決断の引き受け手として、ただそばに居続ける仕事でもあります。
コーチがいることで、経営者は一人で抱え込まずに済む。対話を重ねる中で、思考が整理され、感情が静まり、視野が開かれていく。その結果として、意思決定が「腑に落ちる」形でなされていくのです。

これからエグゼクティブコーチを目指す方にとって、意思決定支援とは「助言」や「判断材料の整理」ではなく、その人が自分の意志として決めることを支える対話の力だということを理解することは、とても大切です。
どんなに優れた戦略も、実行を決断できなければ意味がありません。そしてその決断は、他ならぬ“その人自身”の人生と結びついています――。
エグゼクティブコーチは、その覚悟と誠実に向き合う、静かで強いパートナーなのです。

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国際コーチング連盟認定マスターコーチ(MCC
日本エグゼクティブコーチ協会認定エグゼクティブコーチ
五十嵐 久

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