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第15回:コーチングするのではなく、共に存在するという感覚 ─Beingとしての最終回─

Doing(すること)の先にあるBeing(在り方)

「〇〇さんの前だからこそ言葉にできた気がします」
「答えが見つかったわけじゃないけれど、今は静かに前を向けます」
これは、コーチングセッションのあとに、ある経営者が残した言葉です。
そのセッションは、決してドラマチックでも、技術的に高度な問いかけが続いたわけでもありませんでした。むしろ、ほとんどの時間が沈黙に包まれていました。しかしながら、経営者の表情や声の調子から明らかに何かが起きていたことが伺えました。

DoingからBeingへ──「何をするか」ではなく「どう在るか」
コーチングにおいてスキルや構造は重要です。
傾聴、質問、ゴール設定…。
言うまでもなく、これらはプロとしての土台を支えます。
しかし、それらをすべて備えたうえで、最終的に問われるのは、「コーチとしてどのように在るか」のような気がします。
その人の呼吸、まなざし、沈黙の受けとめ方、場の持ち方、そして、クライアントをどう信じているか。それらは目に見えませんが、確実に場に伝わります。そして、クライアントの内面に働きかける力を持っています。

エグゼクティブコーチングの最も深い支援とは

エグゼクティブコーチングにおいて、最も深い支援とは何でしょうか?
それは、アドバイスでも提案でもありません。
「この人と一緒なら、自分の本音に触れても大丈夫」と思える、存在の安心感です。
私たちはしばしば、「何かしなければならない」と焦ります。
しかしながら、経営者が本当に求めているのは、「何かをしてくれる人」ではなく、「何があっても一緒にいてくれる人」かもしれません。だからこそ、コーチの沈黙や、うなずき、間の取り方が、経営者にとっては「最大の支え」になることもあるのです。

Beingとは、無為でいることではありません。あらゆるDoingの基盤となる在り方を整えることです。そこには、勇気、誠実さ、自己一致、そして相手への信頼が含まれます。

エグゼクティブコーチとして共に在る力

これからエグゼクティブコーチを目指す方に、心から伝えたいことがあります。
あなたが提供する最も深い価値は、技術ではなく、あなたという存在そのものです。

言葉を選ばずに言えば、「あなたが、あなたであること」こそが、クライアントに最も届くものです。だからこそ、まず自分自身に問いかけてください。
あなたは、何を信じてこの仕事に向き合っていますか?
あなたは、コーチとしてどんな在り方でいたいと思っていますか?
あなたのBeingは、どんな価値観や経験に支えられていますか?
それに正解はありません。しかし、その問いを持ち続けること自体が、あなたのコーチとしての質を高め、クライアントに言葉ではない何かを届けていくことになります。

最終回に寄せて

このシリーズでは、エグゼクティブコーチングのさまざまな側面を扱ってきました。
スキル、関係性、問い、沈黙、信頼、弱さ、変化、そして在り方。
最終回のテーマは「共に存在する」でした。
それはつまり、経営者の旅路に伴走する者として、変化のプロセスに敬意を持ち、結果ではなく関係性に、指導ではなく信頼に、DoingではなくBeingに軸足を置くこと。
この姿勢こそが、エグゼクティブコーチングの本質であり、人と人との関係性がつくる「場の力」なのです。
あなたがコーチとして、ただ“そこに在る”こと。
それだけで、経営者にとっては「変化の始まり」になることがあります。
どうか、その存在の力を信じてください。

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国際コーチング連盟認定マスターコーチ(MCC
日本エグゼクティブコーチ協会認定エグゼクティブコーチ
五十嵐 久

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