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第14回:オンボーディングプランの核心 ─心理学者マズローに学ぶ─

マズローの欲求の5段階説

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前回は、「採用した人をどれだけ活かせるか」が経営の生命線であるとして、オンボーディングを成功させる6つのポイントをお伝えしました。

今回は、入社者が「活躍」していくための核心である心理的支援について、アメリカの心理学者アブラハム・ハロルド・マズロー(Abraham Harold Maslow)の「欲求の5段階説」をもとに紐解いていきます。

入社とは、出来上がったコミュニティに飛び込むということ

入社とは、すでに出来上がっている人間関係・文化・習慣の中に、一人で飛び込むことです。
転校の経験があれば、初日のあの緊張感を思い出すのではないでしょうか。

誰がキーパーソンで、何が地雷なのか、何が喜ばれるのか。
自分がどう思われているのか――まさに手探りです。
この緊張感は、新社会人だけでなく、転職に慣れた人や社会人歴の長い人でも、程度の差こそあれ、入社時には誰もが感じるものです。

マズローの欲求5段階説に沿って整理すると、緊張した手探りの状態から、「この会社で自分の力を伸ばして頑張っていこう」と思えるようになるまでの心理的ステップは、次の3段階になります。

  1. 「自分はここにいていいのだ」(社会的欲求の充足)
  2. 「自分はここで役に立っている」(承認欲求の充足)
  3. 「この会社で自分の力を伸ばして頑張っていこう」(自己実現欲求の追求)

順を追って見ていきましょう。

マズローの欲求の5段階説

マズローは、人間の欲求を下から順に「低次」から「高次」へと段階的に整理しました。
人は下位の欲求がある程度満たされると、次の段階の欲求を求めるようになる――という考え方です。

5つの段階(低次→高次)

  1. 生理的欲求:食事・睡眠・住まいなど、生きるための基本的な欲求
  2. 安全欲求:身の安全、健康、経済的安定など、安心して暮らしたいという欲求
  3. 社会的欲求:仲間や家族、職場などに「所属し、受け入れられたい」という欲求
  4. 承認欲求:他者から尊敬されたい、自分を有能だと感じたいという欲求
  5. 自己実現欲求:自分の能力や可能性を最大限に発揮しようとする欲求

1.生理的欲求、2.安全欲求は、現代の日本で生活して職を得ている時点で大きな問題はないと考えられるでしょう(問題がある場合は、個別対応)。

一方で、入社時点の3.社会的欲求、4.承認欲求はどうでしょうか。
手探りの人間関係や、これまでの知識・経験がどこまで通用するのかわからない不安などで、大きく揺らいでいるのではないでしょうか。

実は、マズローは、1.生理的欲求から4.承認欲求までを「欠乏欲求」としてグループ化しています。
「欠乏欲求」とは、これらの欲求が満たされないと、人は“欠けた部分を埋めようとする行動にエネルギーを奪われ、成長や創造のための意欲を発揮しにくくなる”――という意味です。

「この会社で受け入れられているのだろうか?」(3.社会的欲求が満たされていない不安)
「自分は役に立っているのだろうか?」(4.承認欲求が満たされていない不安)
このような状態は、成長や創造への意欲に大きなマイナス影響を与えます。

オンボーディング期間に、3.社会的欲求、4.承認欲求を満たしていく仕組みやコミュニケーションを意識的に取り入れることで、5.自己実現欲求を追求する段階への移行を推進し、「活躍」の土台を整えます。

「3.社会的欲求」を満たす――「自分はここにいていいのだ」

社会的欲求を満たすには、まずは、名前を覚える、挨拶をする、微笑む、雑談を交わす――最初はそんな小さなことからです。
入社後の数か月は、周囲は特に意識してこれを行いましょう。

さらに、オンボーディングプランの中で、あらかじめ「関係づくりの場」を設計しておくことも重要です。

たとえば、次のような方法です。

  • 入社前または初週に、関係者と30分ずつ話す時間を設定する
  • バディ(日常の相談相手)を任命し、気軽に相談できる環境をつくる
  • 他部署や社外の主要関係者にも早めに紹介する
  • ランチなど、カジュアルに関われる場に誘う

これらの仕掛けが入社者の「居場所」をつくり、「自分はここにいていいのだ」という安心感につながります。

「4.承認欲求」を満たす――「自分はここで役に立っている」

人は、承認欲求を抱えながらも、自分の変化や成長には気づきにくいものです。
ましてや、入社直後の自信がない時期はなおさらです。
このため、オンボーディングでは教育プロセスを小さく区切り、段階ごとに「達成したこと」を承認する仕組みを取り入れることをおすすめします。

たとえば、管理の厳しい製造現場であれば、現場に入る際の着替えルールを習得した時点で「着替え=〇」とするなど。

小さな段階を積み重ねることで、「できた」→「認められた」と感じられる瞬間が増え、自己効力感が高まります。
そして、次なるチャレンジに意欲的に取り組む「5.自己実現欲求の追求」段階に進むことができます。

なお、「承認」というと「成果を認めること」が真っ先に思い浮かびますが、たとえ成果に至らなくても、起こした行動や努力そのものも認めていきましょう。
また、その人の存在自体を認めることも大切です。
たとえば、次のような声かけや姿勢です。

  • 行動の承認:「それに取り組んだ姿勢が素晴らしいですね」
  • 努力の承認:「前回よりも工夫できしましたね」「ここまでの頑張りを見ています」
  • 存在の承認:「あなたがいると社内が明るくなりますね」
    (姿勢)話を最後まで聴く、顔だけでなく身体を向けて話をする

結び

人が真に力を発揮できるのは、「ここでやっていける」という安心と、「自分は認められている」「役に立っている」という実感があるときです。
マズローが示したこの説は、時代や職種を超えて、人の心理の根幹にあります。
経営者がその考え方を理解し、オンボーディングや日々のマネジメントに息づかせること――それが、採用のゴールである「活躍」への最短ルートを作ります。


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CBL認定アソシエイトコーチ
Support Runners代表
エグゼクティブコーチ/人材採用支援アドバイザー
山本 知子

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