
若いころから街歩きが好きで、五大陸のおおむね100都市を見てきた。都市の大小を問わず人気の住宅地には同じ条件がそろっている。都心へのアクセスがいいこと、そして緑が多いこと。エジプトの首都カイロも、米サンフランシスコもそう。そこにもう一つ、快適な都市環境を加えたいと考えたのが、流山おおたかの森だ。
(日本経済新聞3月2日日曜版2面『直言 ビジョンなき街づくりは幻~井崎義治・千葉県流山市長』より引用)
政治とは「グループ・ダイナミクス」
毎週1回、ホームページで公開しているコラムは、このところ日経新聞の日曜版を取り上げ、コーチングに敷衍しています。今回も、そのことを意識し、3月2日の1面から丁寧に読んでみました。1面アタマは「トランプ大統領とゼレンスキー大統領の会談決裂」です。国家間のトップ会談は、実際にバトルがあったとしても、隠されるのが通例でしたが、何事も「ショー化」したいトランプ大統領のスタイルが、こうして世界中の人に「現在進行形のリアル」を提供したわけです。加えて、ゼレンスキー大統領は、通訳なしで母国語ではない英語で臨んだ。言い回しで受け取り方は変わってしまう…
記事を読みながら、以前書いたコラムを思い出しています。緒方貞子さんが、カリフォルニア大学バークレー校に留学した際の「気づき」を取り上げました。再掲します。
これは、さまざまな政治的、組織的、心理的属性を持つアクターたちが、一定の内外環境の制約のもとで、相互に影響し合いながら政策を選択していく過程(プロセス)とその結果(アウトカム)との関係に焦点をあてた分析枠組みですが、私にとっては非常に刺激的でした。(中略)
心理学との関連で言えば政策決定者のパーセプション(認知)という変数が重要視されましたし、社会心理学の集団力学論(グループ・ダイナミクス)や組織リーダーシップといった視点もうまく取り込んでいました。
(『聞き書 緒方貞子回顧録』より)
今回の会談決裂で、「停戦は近いかも…」という世界の期待(?)は、いったん白紙に戻された印象です。ただ、政治は緒方さんが指摘するように「グループ・ダイナミクス」です。想定外の事象が変数となって、新たな動きが生じます。固唾をのんで、ウオッチしたいと思います。
1週間前のコラムと、井崎義治流山市長がつながった!
そして2面を開いたのですが、少々驚きました。大型企画の『直言インタビュー』は、井崎義治流山市長です。私は1週間前のコラムの最後で、次のようにコメントしていましたから。
今回の最後にもう一つ、受講生の声を紹介させていただきます。新藤隆志エグゼクティブコーチ(千葉県流山市)です。6回シリーズで掲載した最後のインタビューにリンクを張っています。一読いただくと幸甚です。
そのとき貼り付けた大きな画像は、「流山おおたかの森ショッピングセンター」です。符合です。そして、冒頭で引用した井崎市長の、「五大陸のおおむね100都市を見てきた」というコメントに、俄然興味を覚えました。そこで、Wikipediaをチェックしたところ…
東京都杉並区で生まれ、千葉県柏市で育つ。立正大学文学部地理学科、サンフランシスコ州立大学大学院修士課程修了(地理学専攻)。1981年からアメリカのJefferson Associates, Inc. (本社サンフランシスコ)、Quadrant Consultants Inc.(本社ヒューストン)で地域計画、交通計画、環境アセスメントに従事。1988年から(株)住信基礎研究所、1989年に帰国、1991年から(株)エース総合研究所。1999年に市長選に無所属無党派で立候補、落選。2003年に流山市長初当選。以後6期連続当選。世界保健機関健康都市連合日本支部長に就任(2014年6月~)
と、「来歴」に書かれています。大学は、仏教・日蓮宗系の立正大学ですが、高校は、山形県小国町の「基督教独立学園高等学校(男女共学で1学年25人)」とあります。
市長就任までのキャリアは、実にバラエティに富んでいる。柔軟で俯瞰する視点、レジリエンスを体得された人物であることが伝わってきました。
Wikipediaの「実績」を引用します。
実績(Wikipedia)
- 情報公開度 4年連続全国1位(全国市民オンブズマン連絡会議、2010~2013)
- 市民一人当たりの行政コスト:全国最小(日経グローカル、2006・2007)
- 人口増加率 千葉県1位/人口増加数 千葉県1位、全国10位(2014)
- 情報安全度:全国2位(日経グローカル、2010)
- 経営革新度:全国6位(日経グローカル、2014)
- 地球温暖化施策ランキング:全国5位(日経グローカル、2007)
- 行政革新度:全国8位(日経グローカル、2008)
- 財政健全度:全国41位 東葛エリア1位(都市データパック、2014)
- 情報セキュリティ:全国2位(情報安全度調査/本経済新聞社産業地域研究所)
日経新聞2面の『直言インタビュー』は、「全国の市で流山の人口増加率は、2021年まで6年連続1位で23年も1.12%増の6位。……」という、記者のコメントからスタートします。ちなみに全国の市区町村数(2025年3月1日時点)は1724です。流山市の「凄さ」は現在進行形ですね。
井崎市長の実績は、ビジョンを具体化させていったことが原点!
最初の質問は、「24年の増田リポートでは、流山に人口問題はないようにみえる。歯止めがかからない少子化に苦慮する自治体と何が違うのか?」です。その回答は…
「あのリポート自体、自治体にとってはあまり意味がない。太平洋戦争末期の日本軍のように、武器や食糧がないまま『大変だからとにかく戦え』と命じられているようなもの。何をすれば苦境を打開できるのか、全くわからない」
「少子化は自治体が抱える問題の焦点ではない。憂うべきは国や多くの自治体のトップが地域を発展させていくビジョンを持ってこなかったことだ。そのためには明確な問題意識がないといけないが、選挙で『ふるさと納税への恩返し』を掲げる候補者が少なくない。20代、30代でもいる。が、私は疑問に思う」
切れ味鋭い回答です。ちなみにこの『直言インタビュー』の大見出しを日経新聞は「ビジョンなき街づくりは幻」としています。井崎市長の、続く3つ目の回答から切り取っています。
「……ビジョンがなく、分析や目標も甘い政策はカオスを招くだけだ。そして政策なきビジョンはファンタジー(幻想)だ」
この後で井崎市長は「ビジョン」を熱く語ります。「ビジョンを決めたら、実現に向けた具体策が必要になる。どんなことから着手したのか」という質問には…
「共働き子育て世帯の行動パターンを注意深く追った。それで通勤、買物、休日の過ごし方、子どもの送り迎え、遊ばせ方といった日常生活から、街の情報アクセスまで配慮しようと」
「当時は市のPR予算もゼロだし、PRする考えすらなかった。メディアへの露出はひっそりと育児・出産の情報誌『たまごクラブ』の小さな記事から始めた。キャッチコピーはずばり『母になるなら、流山市。』『〇〇の都』などとうたう自治体もあるが、目標がはっきりしているのはどっちだろうか」
2面のすべてを使った井崎市長の『直言』は、このように具体的です。そして、自治体が取り組まなければならないさまざまな課題に対して、全方位かつ明快なプライオリティを定め、市政に取り組まれてきたことが、しっかりと伝わってきました。
さて、今回のコーチングコラムのまとめです。流山在住の新藤隆志エグゼクティブコーチにインタビューした際、「政治をやっている人へのコーチングは、マーケットがあるなと思いました」という言葉に引き付けられました。
(新藤)
それから、事業者の方ではないんですが、ある地方自治体の政治家の方にもコーチングをやった経験があるんです。
興味深い話でした。全部再現したい気持ちを抑え(コーチングは守秘義務厳守です)、5回目に掲載したインタビューのまとめを、新藤さんの次の言葉をセレクトし、紹介しています。再掲します。
(株)コーチビジネス研究所の「エグゼクティブコーチング」は、全方位です。レジリエンスが体得できる講座であることを、最後にPRさせていただきます。
自治体のリーダーである首長にもコーチングを展開したい!
(新藤)
政治をやっている人へのコーチングは、マーケットがあるなと思いました。マーケットっていうとおかしいですけど、政治家は一方的に話をするというか、プレゼンそのものが仕事だから、それで支持者を増やしていく、という世界ですよね。
ただ政治家を、人として理解して話を聴こうって人たちは、そんなにいないんじゃないかな、って感じるんです。
政治家として、住民に対して何をなされようとしているのか、ご自身がどう貢献したいと考えているのか、コーチングを通じて深掘りしていけば、今までとは違ったその方の「気づき」につながると思うんです。コーチがその「壁打ち相手」にしっかりなる。
坂本 樹志 (日向 薫)
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