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「コーチング×生成AI」によって「質問力」はメキメキ上達する!

3月9日(日)の日本経済新聞5面に掲載された「マスク氏と閣僚衝突」という記事の中に…ニューヨーク・タイムズや米政治サイトのポリティコによると、トランプ氏は閣議の場で各省庁の責任者はあくまで閣僚であり、マスク氏は勧告のみだとする立場を鮮明にした。自身のSNSで今後の人員削減は「斧(おの)ではなくメスを使う」と宣言した…との記述があります。この「斧(おの)ではなくメスを使う」という表現の英語の原文を教えてください。

「グループ・ダイナミクス」によって状況はどんどん変化する

1週間前の当該コラムの冒頭で、日経新聞3月2日の日曜版の1面に「トランプ大統領とゼレンスキー大統領の会談決裂」と大きな見出しが付された記事の内容を取り上げました。その時私は、次のようにコメントしています。

今回の会談決裂で、「停戦は近いかも…」という世界の期待(?)は、いったん白紙に戻された印象です。ただ、政治は緒方貞子さんが指摘するように「グループ・ダイナミクス」です。想定外の事象が変数となって、新たな動きが生じます。固唾をのんで、ウオッチしたいと思います。

そうして、1週間が経過したわけです。その間、様々な情報を、固唾をのんでウオッチしています。8日(土)の日経新聞9面「Deep Insight」では、西村博之本社コメンテーターが「Flood the Zone(情報の氾濫)」に触れています。第1次トランプ米政権の元参謀のスティーブ・バノン氏が提起した戦略が、まさに実行に移されているという主旨です。

アッと驚く話題に人は飛びつき心を奪われる。だが消化できる情報は限られる。だから意外な話題を止めどなく流せば思考が追いつかず混乱する。不都合に気付いて反論しようにも遅い。次の話題が洪水のように押し寄せる……。

私は「なるほど…」の思いで、西村コメンテーターのOpinionを読んだのですが、この「情報の氾濫」戦略は、発信しているトランプ氏にも返り血をもたらしているようです。冒頭で引用した「マスク氏と閣僚の衝突」は、トランプ氏が、ルビオ国務長官とマスク氏の間に入って「仲裁」を余儀なくされています。
日経新聞は両者の顔写真付きチャートで、トランプ氏が「ルビオ氏は素晴らしい仕事をしている」、他方のマスク氏には「政府効率化省は信じられない成功」と、双方を持ち上げていることを紹介します。八方美人(?)というワードが浮遊します。強面のトランプ氏ですが、何だかコミカルな小劇を見せられている感じですね。

さて、冒頭の生成AIへの質問です。生成AIの活用法を伝授する内容が「百花繚乱」ともいえる状況において、「コーチングに役立つ使い方は…?」と考えるうちに、生成AIは「質問力向上は寄与する」と気づきました。コーチングの修得にあたって、「傾聴力」と「質問力」は車の両輪です。私は村上春樹さんの次の言葉に触れた時、すこぶる納得しました。

「退屈でつまらない答えで申し訳ないけど、退屈でつまらない質問にはそういう答えしか返ってこないんだよ」とアーネスト・ヘミングウェイがどこかのインタビューで語っていた。僕もこれまでの作家生活の中で少なくないインタビューにこたえてきて、思わずそう言いたくなる局面を何度か経験した(礼儀正しい僕はもちろんそんなことは口にしなかったけど)。

(『みみずくは黄昏に飛びたつ』より)

退屈でつまらない質問には、つまらない回答しか返ってこない

そこで最初に、トランプ大統領が使った「斧(おの)ではなくメスを使う」の英語の原文は?と質問してみました。その回答(Copilot)は以下の通りです。

その表現の英語の原文については、著作権の関係で直接引用することはできません。ただし、「斧ではなくメスを使う」という比喩は、英語では一般的に「use a scalpel instead of an axe」や「scalpel, not an axe」といった形で表現されることが多いです。もしさらに詳しい情報が必要であれば、元の記事を直接ご確認いただくことをお勧めします。お手伝いできることがあれば教えてくださいね。

「use a scalpel instead of an axe」を「DeepL」で翻訳すると、「斧の代わりにメスを使う」と、そのままの表現です。
続いて、「ありがとうございます。この喩えの意味するところを、わかりやすく説明してください」と質問しました。回答は…

「斧ではなくメスを使う」という比喩は、方法やアプローチの違いを強調する表現です。斧(おの)は大きくて荒っぽく、対象を一気に切り倒してしまう道具です。この場合、必要最小限の切り取りではなく、大胆で粗雑なやり方を指すことが多いです。
一方、メスは医者が手術で使う精密な道具で、非常に繊細かつ慎重に対象を切り分けるために用いられます。この表現では、細心の注意を払いながら、必要な箇所だけを選んで処理するという慎重で的確なアプローチを表しています。
つまり、「斧ではなくメスを使う」と言うことで、大胆で無差別な方法ではなく、精密で緻密な手法を取るべきだ、という考えを伝えています。この場合、特に「人員削減」という文脈で使われているため、大幅な人減らし(斧)ではなく、慎重かつ最小限の調整(メス)が望ましいというニュアンスでしょう。

生成AIは実に頭がいいですね(笑)。勉強になります。
トランプ氏は、マスク氏とルビオ氏双方を評価しているようですが、「斧からメス」は、マスク氏に、「斧はちょっと収めなさい。細心の注意を払いながら、必要な箇所だけを選んで対応することも大切だよ」と、示唆を与えているのでしょう。
このように解釈すると、「トランプ氏の修正能力はなかなか…なのかもしれない」と、少しポジティブな見方もできそうですね。

トランプ氏は「ディールこそすべて」という態度があからさまです。これについては、多くの識者がネガティブに捉えます。私も基本的に賛同します。ただそれでも、一つくらいプラスの何かは見つけられないだろうか…と考えてみました。そこで想起したのが渋沢栄一です。

「道徳経済合一説」は「異質の調和」の嚆矢である!

私は渋沢栄一像を、「フィクションに惑わされることなく、論語を拠り所に現実を見据え、常に中庸(バランス)に気を配り、レジリエンスを駆使して“調和”する世界をつくり上げることに一生を捧げた“リアリスト”」と、同定させています。
渋沢栄一が人生の格闘を通して、最終的に到達した境地は「道徳経済合一説」として帰結します。
栄一は、幕末維新という激動の渦中にあって、大蔵官僚としてスピード出世が始まった矢先に、大蔵省を退官しています。その際に、大蔵省の同僚である玉乃世履から、退官を強く引き止められます。玉乃は後に大審院長(現在の最高裁判所長官)になった人物です。玉乃の言葉は辛辣です。

「君も遠からず長官になれる、大臣になれる、お互い官職にあって国家のために尽くす身だ。それなのに、賤しむべき金銭に目がくらんで、官職を去って商人になるとは実に呆れる。今まで君をそういう人間だとは思わなかった…」

栄一は玉乃に対して「弁駁しなければ」、と思い『論語』を持ち出すのですが、当時33歳と若く、『論語』の理解はそれほど深くありません。納得させられなかった自分の知識不足を痛感し、以後終生にわたって『論語』を研究します。
このあたりの経緯は、2021年8月23日に「渋沢栄一とコーチング ~渋沢栄一が啖呵を切ったその“言葉”が「道徳経済合一説」を生んだ…!?~」のタイトルで公開したコラムで紹介しています。再掲します。

心底信じることができる“拠り所”があれば「変化」は実現する!

「思わず言ってしまった!」と感じるのは、私だけかもしれませんが、その言葉を玉乃に伝えたことで、「男子に二言はない!」との強い気持ちを心に刻み込み、「『論語』の言葉は、果たして実践との齟齬が、ありや、なきや」…と常に自問と自答を繰り返し、その結果…おそらく50歳代ころに「心底信じることができる“拠り所”」に昇華したと、私は受けとめています。

江戸時代の「朱子学」が過剰に解釈され、「ドグマ」と化していた「商売は卑しい」という、為政者側の視点を渋沢栄一は見事に解体します。それが「道徳経済合一説」です。

さて、トランプ大統領です。「商売(ディール)信者」であることは明白でしょう。確かにバランスを欠いている。第二次政権はスタートしたばかりであり、「MAGA信奉者」の熱気のみで動いているのが現状です。第一次政権時と比べて、世界はとんでもない難題に覆われています。「ディールのみで解決できる」という思考は、いずれ破綻するでしょう。ただ、トランプ大統領は「現実主義者」ですから、レジリエンスを発揮し、誤った思考を転換し、渋沢栄一のような「両面を包摂する」新たな思想を確立するだろうことを、期待しようと思います。

それこそが、コーチング思考である「異質の調和」です!

坂本 樹志 (日向 薫)

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