「プロポーズを再現してみて」。5月30日、東京都内で天皇、皇后両陛下の結婚30年を記念した特別展を鑑賞した際、愛子さまに促されると、天皇陛下は困ったように笑顔を浮かべられた。陛下の言葉は「僕が一生全力でお守りします」。皇后さまが1993年1月、婚約記者会見で「私の心を打つ言葉」として明かされた。
(日本経済新聞6月9日33面特集「支え合い30年 苦楽共に~新たな時代の皇室像模索~」より引用)
心理学を学びコーチングの資格を有する新進気鋭の若手A課長と、部長職を長く経験し、定年再雇用でA課長のチームに配属された実践派のSさんとによる、2023年23回目の1on1ミーティングです。
新たな日本の象徴としての姿を追い求められる日々…
(Sさん)
6月9日金曜日の日本経済新聞の33面は、全面で天皇、皇后両陛下の30年の歩みが掲載されていました。見出しは「支え合い30年 苦楽ともに」です。今日の1on1は、そこから始めてよろしいでしょうか?
(A課長)
はい、もちろんですけど… Sさんが皇室のことを話題にするのは珍しいですね。
(Sさん)
そうかもしれません。今日Aさんと、天皇皇后両陛下、そして愛子さまのことを語ってみたくなったのは理由があります。テレビで、天皇陛下が皇后陛下に“おもわず”言葉にされた一言、いえ二言だったかな… そのシーンを視た時、“ジワン”ときたからなんです。
(A課長)
“ジワン”…?
(Sさん)
変な擬態語を使ってしまいました(笑)
4月に御料牧場で天皇、皇后両陛下と愛子さまが散策する際、桜の木を指さした天皇陛下と、馬の姿だったようですが、そちらを見ていた皇后陛下の、頭と頭が軽くぶつかったんです。そのとき“思わず”、といった感じで天皇陛下が皇后陛下に「ごめんなさい」と言葉にされました。
Aさん、そのテレビは視ましたか?
御料牧場でのハプニングをSさんはどのように受けとめたのか…
(A課長)
いえ、視ていません。そんなシーンがテレビで放映されたんですか?
(Sさん)
そうなんですよ。ハプニングです。ただ、御料牧場でのシーンは、その後もテレビで放映されていますが、そのハプニングはカットされたのか、私は視ていません。忖度が働いたのかも(笑)
CBLコーチング情報局「コーチングの受容とは?」の中に、次のようなコメントがあります。
ピッチャーが投げるボールはクライアントの言葉であり、ミットを持つコーチはどのような言葉であってもすべて受けとめます。加えてサイン交換のさい、ピッチャーのYES、NOというボディランゲージにも敏感に反応し、醸し出される精神状態も踏まえた、一瞬一瞬の、ピッチャーであるクライアントのコンディションを、キャッチャーであるコーチは五感を動員して把握していくのです。
私は“五感”を総動員して、そのハプニングを“感じ”ました。天皇陛下と皇后陛下、そして愛子さまに、“おもわず”といった笑顔があふれ出ます。天皇陛下の戸惑われたような表情もとてもチャーミングでした。
(A課長)
なるほど… ひょっとしてYouTubeにアップされているかもしれないですね… おっ、「TBS NEWS DIG」にありました。
ホントだ、ハプニングですね。ドキュメンタリーだ。
(Sさん)
日経新聞の33面には、「御料牧場を散策する天皇、皇后両陛下と愛子さま(23年4月 栃木県高根沢町)」と付記された、そのときの笑顔の写真が掲載されています。
Aさんは、「皇室のことを話題にするのは珍しいですね」と言いましたが、Aさんとこうやって、コーチング型1on1ミーティングを重ねていくうちに、私自身が変わっていったように感じています。
コーチングには魔力があるのかな?
A課長とSさんは完ぺきな対等関係!?
(A課長)
いえ、コーチは魔力を持っていません(笑)。 ただコーチングを学べば学ぶほど、気づきが深まります。Sさんは私の部下ですが、1年半以上こうしてSさんとコーチング型1on1をやっていると… ほぼ完ぺきといっていいかな? Sさんと私は対等になりきれている実感があります。
部長を長く経験した大先輩のSさんですから、1on1を始めてしばらくは、上司という肩書に頼っているのがわかっていました。葛藤… いえ、そういう自分がイヤでしたね。
ところがいつだったかな? ちょっと待ってください…
Sさんが中国駐在の時の話をしてくれた1on1でしたね。「サイゼリヤが中国でなぜバズったのか?」について、ご自身の体験を交えて、Sさんはいろいろ自己開示してくれました。
私はその日の1on1の最後に、次のような言葉を口にしています。
私は少し不思議な心持です。「コーチングとは何か?」と問われると、さまざまな回答が返ってきます。ただしコーチングの3原則は広く共有化されるプリンシプルです。それは、双方向、個別対応、現在進行形の3つです。
1on1がオンゴーイングに展開していくことで、Sさんが徐々に裃を脱いでくれているのを感じています。インタラクティブなコミュニケーションにより、お互いの個性と個性が融合して化学反応を起こす…ということなのですね。この3原則がコンクリートの用水路ではなく里山の自然豊かな小川に流れているのを感じています。
コーチングはコーチとクライアント双方にケミストリーが起こる!
(Sさん)
あったなぁ~ 懐かしい。
私はAさんがしみじみそう話すと「その表現は文学ですね」と、茶化してしまった。
(A課長)
それもSさんです。
(A課長)
なるほど…(笑)
(Sさん)
1993年1月の婚約記者会見で「僕が一生全力でお守りします」と、お言葉にされたテレビを見ています。私は結婚して、すでに小学生の二人の子を持つ父親になっていましたから、そのとき「すごいお言葉だ…」と、驚きました。むしろ、ちょっと心配しました。「大丈夫かな?」という思いです。
(A課長)
それって、Sさんのご自分の思いを投影されていませんか?
(Sさん)
そうかも…(苦笑)
そして、2004年に宮内庁によって雅子さまの「適応障害」が発表されます。日本中が想像していない、したくなかった現実が明らかになります。そして皇太子殿下が、感情をはじめて国民に開示したとも受け止められる内容を言葉にされます。日本中が驚きました。
「それまでの雅子のキャリアや、そのことに基づいた雅子の人格を否定するような動きがあったことも事実です」
「伴走」という言葉にはとても深い意味が込められている…
(A課長)
私は高校生になったばかりで、その会見はあまりピンときていません。ですが、コーチングを学びエグゼクティブコーチの資格をとって、クライアントと伴走するうちに、そのときの皇太子殿下のお気持ちに少しだけ近づくことができているように感じています。いえ… きわめて主観的ですが。
四面楚歌という言葉があります。雅子さまの置かれた状況がまさにそれだったと思うのです。
(Sさん)
38面に、「皇居内の紅葉山御養蚕所で繭の収穫作業に臨む天皇、皇后両陛下と長女、愛子さま(5月30日)=宮内庁提供」と付記された写真が掲載されています。
見出しは~共に歩み「感慨ひとしお」~です。
柔和な表情で会話されています。「感慨ひとしお」という言葉は、まさに言霊のごとくです。皇太子殿下のときに交わされた雅子さまとの約束を一貫して守られた。徹底的に守られました。
歴史にIFはいかがなものかと思いますが、あのとき皇太子殿下が国民に対して、ご自分の思いを言葉にされていなかったら… いずれ天皇になられる方が、国民に殿下ご自身の感情として受けとめられるであろう発言です。それを言葉にされた。
雅子さまを応援する人たちは日本にたくさんいたはずです。それでも、雅子さまを支えることができるのは、この世界でお一人だけ。皇太子殿下だけだったと思います。
両陛下がご結婚30年を迎えられ、今こうして天皇家の日常が報道されることに、万感の想いです。
(A課長)
Sさんは私たちとはまた違う思いで、日経新聞を読まれたのでしょうね。
(Sさん)
そうかもしれません。雅子さまはご縁によって皇室に嫁がれた。覚悟を持ってご結婚された。ただ想像を絶する世界だったと思います。とにかく…
(A課長)
そしてお二人で乗り越えられた。愛子さまも成年皇族となられ日本中が祝福している。
できることから少しずつ時間をかけて…
(Sさん)
日経新聞の33面の一節です。
療養生活は長期化。その間、愛子さまが通学に不安を訴え、皇后さまが付き添われた時期もあった。終始、支えてこられたのが天皇陛下だった。
「できることから少しずつ時間をかけて」といたわり、その様子について側近は「ゆっくり、焦ることなく皇后さまを支えられている」と明かす。
38面には…
成年皇族の一人として、徐々に活動範囲を広げている愛子さまについて「私たちの生活を楽しく和やかなものにしてくれるだけでなく、愛子が学び、経験する一つひとつのことが、私たちにとっても新たな学びへとつながっていると感じます」と成長を喜ばれた。
昭和天皇、平成天皇、そして令和天皇…時代は確実に変化している!
(A課長)
被爆されたSさんのご両親がどう皇室を見られていたか、わかりません。ただ、ご両親とSさんの皇室に対する感じ方は、違うと思います。さらに時代が下って、私たちの世代も当然Sさんとは違います。
皇室も、昭和天皇、平成天皇、そして現在の令和天皇。本当に変わりました。そして今日は、これまでとはまた違う1on1を体験したという実感です。
(Sさん)
『易経』には「変わるもの変わらないもの」が著されています。日本の皇室について考えるとき、滋味に富むその言葉を味わいます。
今日の1on1の最後に、日経新聞33面の最後のコメントを紹介します。引き続きコーチング型1on1ミーティングを重ねていきましょう!
最近は皇居内で歴代皇后が継承してきた「養蚕」を、ご一家で取り組むなどだんらんを大切にされているという。
側近は「話し合い、助け合いを大切にしながら、ご一家は今後も国民の心に寄り添い、あるべき姿を追求されていくだろう」と話す。
坂本 樹志 (日向 薫)
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