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栗山監督を語り、新海誠監督&川上未映子さんは「まるでコーチングだ!」と、感じ合った1on1ミーティングです!

…今思えば、たった5年ではありますが、ひたすら、こう深夜まで仕事をやってきて、できることがあって、でもなんだか誰も、誰にも見られていないような気持ちもあったし、誰にも届いていないような気持もあったし、あのぅ…「いるんだと、ここに!」…
(『SWITCHインタビュー 達人達(たち)「新海誠×川上未映子」(NHK)』より引用)

心理学を学びコーチングの資格を有する新進気鋭の若手A課長と、部長職を長く経験し、定年再雇用でA課長のチームに配属された実践派のSさんとによる、2023年12回目の1on1ミーティングです。

アイスブレイクはSHOW TIMEのWBC!

(A課長)
アイスブレイクはWBCしかありえない!
侍ジャパンが先週の木曜日に米国から帰国しました。3月8日から21日まで、日本中が熱狂の嵐でしたね。日頃スポーツには興味を示さない妻が、ワールドカップと同じく、WBCの中継に釘付けでした。

(Sさん)
私の妻も同じですよ。広島カープの試合には一顧だにしないのに、世界と日本の戦いになると“何か”が起動してしまうようです(笑)

(A課長)
特に今回の侍ジャパンの強靭さは別格だった。その象徴が大谷選手です。大リーグの頂点に立っている人物が日本人ですから。
大谷選手が米国との決勝戦前に、「憧れるのはやめましょう。やっぱり憧れてしまっては超えられない。僕らは超えるために、トップになるために来た。きょう一日だけは彼らへの憧れを捨てて、勝つことだけを考えましょう」と、チームを鼓舞したと、日経新聞にありました。

(Sさん)
多くは語っていない。この短いフレーズは全員の心に刺さったと思います。一人ひとりの気持ちを奮い立たせるこれ以上の“言霊”は存在しない!
本当にすごい選手が日本から生まれたわけだ。ただ、その大谷選手が今こうしてWBCで大活躍しているのは栗山監督との出会いがあったからです。これは確信を持って言えます!

栗山監督は大谷選手を守り抜き伴走し続けた!

(A課長)
ええ、木曜日までの新聞は、戦況と選手の活躍を詳細に取り上げてきました。
それが、決勝戦が終え2日を経ての日経新聞は、39面のスポーツ1で「栗山監督の誠意、原動力に~ダル・大谷選手の心に響く」、さらに42面の社会欄では「若い選手に期待~選手に憧れて野球を始めてくれる人がいればうれしい」というタイトルで、大きく栗山監督にスポットライトを当てています。

「世界に伍する実力を持ったプロ選手を束ねる監督のリーダーシップとは?」の実像を、森保ジャパン、そして栗山ジャパンが示してくれましたね。

日本ハムに入団して以降、二刀流にこだわる大谷選手を徹底的に守り伴走してきたのが栗山監督です。日本球界のレジェンドをはじめとする周囲は、「大谷選手を潰すことになる、どちらかを選択し専念させるべきだ。それが大谷選手のためになる」と、したり顔で批判していました。

栗山監督は悩みぬいたと思います。そして大谷選手と対話を続けた。その過程で大谷選手の想いを共有し、信じることができたのだと思います。師弟関係というより大谷選手をリスペクトし、徹底的にフォローしようと、固く心を決めたのではないでしょうか。

(A課長)
まさに、サーバントリーダーシップです。

(Sさん)
加えて、人間関係の機微を知り抜いた監督でもある。

(A課長)
なんだか栗山監督がスーパーマンのように思えてきた(笑) 真のカリスマとは俗にいうカリスマとも違いますし…

栗山監督は人間関係の機微を知り抜いた真のカリスマ!

(Sさん)
栗山監督の原点は、どこの大学を志望したのか… そこにあるような気がしています。Aさん、栗山監督の出身大学をご存じですか?

(A課長)
いえ、東京六大学ではないと思いますが…

(Sさん)
国立の教育専門大学の東京学芸大学です。その大学卒のプロ野球選手は二人だけで、その一人が栗山監督です。日本にプロ球団が誕生してこれまで何人のプロ選手がいたか調べてみたのですが、見つけられませんでした。1万人以上はいたと思うので、極めて極少な確率です。
栗山監督は「巨人の肩の上」を知り抜いている人だと思うのですね。選手を育てることに無上の喜びを感じている人… それが栗山監督なのではないでしょうか。

(A課長)
なるほど…
ダルビッシュ選手が栗山監督のことを次のように語ったと日経新聞が取り上げていますね。

「基本的に人を傷つけるとか、恥をさらすようなことを言わない。そこはすごく難しい。そういう方は日本の指導者ではなかなかいないので、すごみを感じる」。栗山監督について、そう話したのは宮崎合宿から参加したダルビッシュだった。

(Sさん)
マスコミは、コメントを少し変えて記事にすることがあります。「わかりやすく伝える」という親ごころ(苦笑)、なのかもしれませんが、このダルビッシュ選手の言葉は“そのまま”だと感じます。
「恥をさらす」「そういう方」「すごみ」という表現は、文脈を考えると、ダルビッシュ選手の奥底から浮上してきた“思い”として伝わってきます。

栗山監督は孤高のダルビッシュ選手の心を溶かした…

(A課長)
今日の1on1は、前回お話ししたように、新海誠監督を語る続きとして準備しています。それが栗山監督のリーダーシップの語りから始まりましたね。栗山監督について語り合う内容はいくらでもあると思うのですが… Sさん、どうしましょう?

(Sさん)
日本人にとって最も身近なプロスポーツの野球監督であり、日本中を熱狂させたリーダーです。したがって、リーダーシップを専門に扱っている研究者、組織や機関が「栗山監督のリーダー論」を明晰に分析してくれると思うので、私たちは、そのレポートをしっかり学習することでよいのではないでしょうか?

前回、前々回に、新海監督をリーダーシップと結び付けて語るAさんには感服しています。オタク文化についてのAさんの視点は、実に面白かった。「新海監督を語る第三弾」ということでお願いしたい!

(A課長)
ありがとうございます! そう言っていただくとホッとするなぁ~
それでは、心理的安全性に包まれて(笑) ファシリテーションさせていただきます。

前回の1on1では、『秒速5センチメートル』を完成させた2007年の新海監督のナマの声を紹介しました。今日の1on1は、『君の名は。』で大ブレークを果たした2016年の新海監督です。

『君の名は。』以前は、新海監督の熱烈なファンは存在したものの、マニアックな世界だった。それが一気に「国民的監督」としてメジャーな存在に大化けしました。
題材は、NHKの『SWITCHインタビュー 達人達(たち)「新海誠×川上未映子」』です。デジタル携帯で2016年9月15日の午前0時に放送された1時間番組です。アーカイブスをチェックすると、次のような紹介文が寄せられています。

仕事の合間に何気なく読み始め、川上の小説にはまったという新海。自分の作品同様、少年少女の心理に深く入り込んだ小説世界にひかれたといい、川上にその創造の原点を問う。
一方、幼少時代「死」についてたびたび考え、おびえていたことが自らの原点と語る川上は、新海の仕事場を訪ねアニメ制作の様子を見学。勤めていた会社を退職し、デビュー作品を制作したという新海の、表現に対する情熱を聞き出してゆく。

前半は新海監督が川上未映子さんにインタビュー、後半になると攻守変わって川上さんが新海監督にインタビューするという構成です。

新海監督と川上未映子さんによる「まるでコーチング」が今日のテーマ!

(Sさん)
ビッグな対談だ!
現在の川上さんの勢いは「ひょっとしてノーベル文学賞?」と言われるまでになっていますね。世界的権威の英国ブッカー賞翻訳部門、そして全米批評家協会賞の小説部門で最終候補に選ばれています。受賞は逃しましたが、世界をうならせています。

ただ… 2016年ということは、まだ世界的な知名度には至っていない頃ですね。

(A課長)
ええ、そのタイミングでの両者の対談です。

(Sさん)
Aさんが紹介したくなる、ということは「コーチング的だ!」ということですか?

(A課長)
はい、初対面にもかかわらず、お二人の間にラポールが早々に築かれます。分野は異なるものの、同じ表現者としてのリスペクトが自然体で醸し出されているんですね。
人を観察するプロフェッショナルであり、人との間合いを瞬時につくる能力に長けたお二人が、見事に胸襟を開いていることが伝わってきました。

(Sさん)
なるほど…

(A課長)
お二人の対話を一字一句…溜息も伝わるように書き起こしてみました。全て紹介したいのですが、そうなると1時間以上かかってしまうので、今日はゲーム会社のCGデザイナーをやっていた新海監督が、いかに鬱々状態であったかを自己開示しているシーンを紹介します。
それを聴く川上さんの姿は、コーチングのまさに「傾聴」です。

(新海)
今回の『君の名は。』に関して言うと、明日会うかもしれない人についての話でもあるんですよ。

(川上)
うん、うん…

(新海)
なんか、夢の中で出会う男女の話なんですけど、それって…まあアニメだから夢の中で出会って入れ替わったりするんですけど、でも現実の中でも僕たちは、明日誰か知らない人に会うかもしれないですよね。

(川上)
うん、うん…

(新海)
あるいは、何年後かにもっと大事な人に会うかもしれないじゃないですか。

(川上)
(首を少し傾けて、柔らかい表情で新海監督を見ている…)

(新海)
なんかね、そういう人が未来にいるということを、こう… 強く信じてもいいのかなぁ~と。特に過去の自分であったりとか、あるいは思春期あたりを、うろうろしているような子たちっていうのは…

(川上) 
(声は出さないで、うんうんとうなづく)

(新海)
あのぅ…今がピークっていう考え方もあるかもしれないけど、でもその先…大人になってから、まあ大人になる手前でもいいんだけど、まだ会っていない人の中にすごく大事な人がいるかもしれないっていう…

(川上)
(うんうん、と、つぶやきつつ細い目で新海監督を見ている。とても素敵な表情…)

(新海)
と、いうのを言いたいし、僕にはいたから…

(Aさん)
ここで場面が変わります。吉田羊さんのナレーションで『ほしのこえ』が紹介されます。ここから新海監督の本格的な自己開示が始まります。新海監督の口調は早口になっていきます。

(新海)
あのぅ…とにかく作りたいって衝動だけだったんですよね。
でも同時にいろんなことが上手くいっていない時期だったんですよ。そのぅ… いろんな人間関係とか、そのぅ… 例えば付き合っていた人のこともそうだし、友人関係もそうだし、会社との関係とかもあったりして、言いたいことがとにかく…

(川上)   
ギリギリのカンジだった…?

(新海)
そっ、そうなんです!
なんかもう言いたいことがあるんだと。

(川上)
う~ん… 何かある?

(新海)
何があったんだろう?(下を向いて強い感情を出している) 
でも、とても恥ずかしいんですけど、『ほしのこえ』は最後、「僕はここにいるよ」っていう言葉で終わるんですよね。

(川上)
はい…

(新海)
もしかしたらそういう、単純にそういう気持ちだったかもしれないです。
ここでこうずっと… 今思えば、たった5年ではありますが、ひたすら、こう深夜まで仕事をやってきて、できることがあって、でもなんだか誰も、誰にも見られていないような気持ちもあったし、誰にも届いていないような気持もあったし、あのぅ…「いるんだと、ここに!」
その上で何か言えることがあるし、届けられることがあるんだっていう気持ちだけが、衝動だけがあって、作り始めて…

(川上)
うんうん、もういっぱいいっぱいになったものが自然にあふれるような流れでそこに…

(新海)
そう、そうですね。その気持ちが強いですね。
会社を辞めて、1本『ほしのこえ』を作ったんですけど、その時に(その作品を)持っていったのは、短編専門の映画館ですね。

(川上)
あ~

(新海)
いわゆる単館です。下北沢にトリウッドというちっちゃい映画館があって、初日っていうのがあるわけですよ。

(川上)
(小さく「はい、はい」と言葉にして共感している)

(新海)
「初日舞台挨拶やってよ」、って言われて…

(川上)
あっ! わ~(笑)ドキドキしますね~ なんかプロみたい!(笑)

(新海)
ハハハ… で、下北沢に行ったら、なんかですね~行列ができているんですよね~
「この行列は何かなぁ?」って思いながら、自分とは無関係と思いながら、こう…行ったらそれが自分の映画を観に来てくれている人の列だったんです。

(川上)
ちょ、ちょっと、感、感、感動的じゃないですか。うわ~!
感動的じゃないですか~(口を押えながらの大笑い…新海監督もつられて笑う)
わ~っ、て! 「なに並んでんの?」って思ったら「まさか!」って。(手で口を押えながら目を見開いて、ビックリの表情で新海監督を見る)
で、挨拶されたんですか?

(新海)
ええ、挨拶は何言ったか、すごい緊張して何言ったか覚えていないんですけど、ちっちゃい映画館なので、ここに立ったらここですよ、お客さんは…

(川上)
ハハハ(大笑い)、インスタライブみたいじゃないですか!

(新海)
(笑)…50人くらいの箱なんですけど、何か言ったんでしょうね、挨拶で。
上映22分終わったらすごい拍手が起きたんですよ。それが生まれて初めての経験で…

(川上)
う~ん…

(新海)
あのぅ…それが何というか、本当に大きな経験だったんです。あのぅ…多分、あの拍手の残響みたいなものが今でも映画づくりをやっている自分のモチベーションの一つになっているような気がするんですけど… その先生(川上さんが小学4年生の時、はじめて自分の作文を評価してくれた)の話と一緒で、何だろう…認めてくれた…

(川上)
なんか「ようこそ」じゃないけど、はじめてのねっ! やっと、やっとここに立てたみたいな…

(新海)
そっ、そうですね。

(川上)
なんかね、プラスじゃないんですよね。
マイナスだったものが、なんかゼロになったっていう、やっと水面から顔が出たっていう雰囲気…

(新海)
そうか… ずっと息を止めてて、海の底みたいな気分で毎日こう作っていて… で、そのぅ…そうですね。顔が出た感じだった、っていう気がしますね。
それで拍手を浴びることができて、人生で初めてのたぶん拍手で、そこからアニメーションの監督らしいことになり始めていくようになりましたね。

(A課長)
もっと続くのですが、新海監督が川上未映子さんの「傾聴」で、どんどん自分を開いていくのが伝わってきます。まさにコーチングです!

(Sさん)
新海監督の原点が見事に現れている。

(A課長)
Sさん、そろそろ時間が来ました。今日の1on1はここまでとして、次回も続きをやってみたいのですが、いかがでしょうか?

(Sさん)
もちろん!です。

(A課長)
それで、Sさんにお願いがあります。次回の1on1では村上春樹さんにつながっていくのですが…

(Sさん)
“さん”付けですか?(笑)

(A課長)
大尊敬しているので、敬称略は無理です。
その春樹さんの短編集『神の子どもたちはみな踊る』の中の「かえるくん、東京を救う」を次回までに読んでおいていただきたいのです。
可能であれば、同じく収録されているタイトル名の「神の子どもたちはみな踊る」も読んでいただくと、次回の1on1が芳醇なものとなるような気がしています(笑)

(Sさん)
3月15日の1on1の直前に、Aさんから「新海監督の『君の名は。』より前の映画で、何でもいいですから次回1on1ミーティングまでに1本視ておいていただけますか」と、あいまいなメールが届いたことを私が指摘したことを踏まえての“具体的な”依頼ですね(笑)

(A課長)
おっしゃる通り(笑)
春樹さんの珠玉の短編です。長編作家のイメージが強い春樹さんですが、『レキシントンの幽霊』など、素晴らしい短編小説が数多く存在します。
新海監督、そして川上未映子さんがリスペクトする村上春樹さんについて、Sさんと語りたい衝動に駆られています。
ぜひともよろしくお願いします!

坂本 樹志 (日向 薫)

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