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新海誠監督の「Magnetic wave + Servant leader ship」を語り合う1on1ミーティングです!

震災後の私にあったのは、生活必需品でないエンターテインメント作品を作る「後ろめたさ」でした。ほとんど言い訳を探すように「エンタメにしかできないこと」を考えました。そのうち「あの場所にいたのが自分で、自分が被災者だったら」ということを強く真剣に考えるようになった。いつか訪れるかもしれない災害が、常に頭の中に居座り続けるようになりました。
(日本経済新聞3月3日「映画『すずめの戸締まり』新海監督の思い」より引用)

心理学を学びコーチングの資格を有する新進気鋭の若手A課長と、部長職を長く経験し、定年再雇用でA課長のチームに配属された実践派のSさんとによる、2023年10回目の1on1ミーティングです。

A課長はSさんに「『君の名は。』より前の新海作品を1本視聴しておいてください」とメールします…

(Sさん)
Aさんから金曜日に届いたメールには少し戸惑いました。「新海監督の『君の名は。』より前の映画で、何でもいいですから次回1on1ミーティングまでに1本視ておいていただけますか」という内容だったので。
そのときは、短く「了解しました」と返信しましたが…

(A課長)
本当にスミマセン。実は悩んだ末のメールです。「藪から棒」だと受けとめられるのは分かっていたので…

前回の1on1ミーティングの最後で、「2回続けてSさんの知見を学ぶ1on1になりました。甘えてばかりもいられないので、次回は私がファシリテーションさせていただきます、ネタを仕入れておきます」と、お伝えしました。その時点で新海誠監督をテーマにしたいと考えていたのです。

というのも、Sさんが、日経新聞3月3日に掲載された「白川前日銀総裁のIMF寄稿」に関する記事をテーマに1on1をやってみたい、と提案されたその同じ日の日経新聞に、新海誠監督へのインタビュー記事が掲載されていましたから。

先週3月8日の1on1は、Sさんが「3月1日の1on1で植田日銀総裁候補の所信聴取をテーマにしたので、その続編ということでやってみたい」と、口火を切られました。ですから遠慮というわけではないのですが、私からのテーマ提案は3月15日の今日にしよう、とそのとき決めました。

(Sさん)
そういうことだったのですか…
でも本当に良かった。もし前回、新海監督がテーマになっていたら、そのミーティングは1on1にならなかったと思います。
Aさんが新海監督のことを熱く語る1on1… つまり私がほぼ聞き役で、コーチングの3原則にある双方向とは違った展開になったと想像します(笑)

1週前の1on1で新海監督をテーマしなくてよかった!?

(A課長)
そうですよね(笑)
私は去年の6月20日に実施した1on1についてはものすごく反省しています。アップルマニアの私が一方的に話すミーティングになったときです。
Sさんはそのとき上手に対応してくれましたが、コーチとしての失敗ミーティングです。ちょっと落ち込んでしまって… その雰囲気を察した妻から「どうしたの?」と、言われてしまい、そのあとはまるで妻がコーチ、私がクライアントになったセッションになってしまいました。

(Sさん)
いえ、私はソニーマニアですが、ジョブズもそれなりに勉強していたので、Aさんの話にもついていけましたよ(笑)

ところで、オタクだと前々からAさんは言うものの、コーチングの資格を持たれているせいか、オタク性はあまり伝わってきません。エヴァについては話されていますが、庵野監督は実写も得意な国民的監督ですし、日本全体もオタクと同化したというか、オタクもそろそろ死語となってきているように感じます。

日本全体はすでにオタクと同化している…?

(A課長)
そうですよね。私はオタクという言葉を今も使ってしまいますが、「脱構築」ができていないのかもしれない(笑)

(Sさん)
「脱構築」…懐かしいワードだ。ええっと…ネットで確認してみましょうか? グーグルの「強調スニペット」はコトバンクを取り上げている。

《〈フランス〉déconstructionの訳語》西洋哲学で伝統的に用いられる統一的な全体性や二項対立の枠組みを解体し、新たな構築を試みる思考法。 フランスの哲学者デリダの用語。 デコンストラクション。

脱線しそうなので、戻しましょう(笑)
それでいきなり、直近3作とは違う新海作品を、「何でもいいですから1本視ておいてください!」というメールだったので「そこかぁ~」と、Aさんのこれまで見せていない自己開示がはじまる…とワクワクしています(笑)
ただ、どれを選ぶか本当に迷いました。

妻から「今日の夕食何にする?」とよく訊かれます。たいがい「何でもいいよ、任せるから…」と答えます。その都度「具体的に言ってよ! 任せられると困るのよ!」と返ってきます。ちょっと剣呑な空気が流れます。「しまった!」と毎回思うのですが、妻に関しては反省が蓄積されません(笑)

(A課長)
スミマセン…

(Sさん)
いえいえ、これにはオチがあります。久しぶりに久喜市内の、バーミヤンと駐車場を共有するTSUTAYAに行ってみました。新海誠監督のコーナーができていて、5本ずつあった『君の名は。』と『天気の子』はすべて貸し出し中です。そのTSUTAYAも来月末で閉店です。ストリーミングが普通になりましたから、時代の流れを感じますね。

新海監督作品は残り5つです。各作品1本ずつケースに収まっていて、人気がないのか誰も借りていません。何をチョイスしたらいいのかわからないので、とりあえず全部手に取りました。

(A課長)
えっ?

(Sさん)
私が稲盛さんの『京セラフィロソフィ』を紹介した際、その次の1on1でAさんは読破して臨んでくれましたからその恩返しです。5作品すべて視聴しました(笑)
『君の名は。』からの3作品は視ていますから新海作品すべてを制覇したことになります。

(A課長)
ホントですか?

(Sさん)
達成感です。『ほしのこえ』にあった映像特典の『彼女と彼女の猫』のフルバージョンも視ているので、新海監督の世界観がなんとなくわかったような気がしています。

自主制作の『彼女と彼女の猫』には、新海監督そのままがギュッと詰まっている!

(A課長)
嬉しいです! 本当に!
本の場合は文章だけなので、その箇所を引用したりすることで世界観はそれなりに共有できると思います。ただ映画全般に言えることですが、映像作品ですからどんなに言葉を費やしても共有は難しいと思うのですね。

特にアニメ。新海監督の場合、写実的で美しすぎる背景映像は言葉を失います。季節感… 空、雲、風、雨、雪の微妙な変化で登場人物の心象風景を描写する技は、比肩できる存在を許しません。声、音、そして音楽に対するこだわりもハンパない。新海監督作品こそ総合芸術です。

(Sさん)
いいですね~(笑)
私も新海監督の世界観は共有できると思います。思い切り自己開示して新海ワールドを語ってください!

(A課長)
ふ~っ、ありがとうございます(笑)
今日はコーチングにならないかもしれませんが、自然体で臨んでみます。作品の評価はあえて触れない方がよいかな? とも感じています。止まらなくなりそうなので。

ですから、コーチングの視点で、新海監督の『ほしのこえ』から現在に至る制作過程を通じてのリーダーシップが、どのように変化していったのか… いえ新海監督の本質は変わっていません。ただ「変わっていないけれど変化している」その世界をSさんと語ってみたいのです。

(Sさん)
そうだ! 「セカイ系」の意味がやっと理解できましたよ。そのワードをAさんが最初に使ったのは、いつの1on1でしたか…

(A課長)
ちょっと待ってください。ええっと… 去年の4月21日の1on1です。「プーチン大統領とゼレンスキー大統領は孤独なのか、どうなのか?」 をテーマに語り合った最後のところで、私が思わず、こんなことを言ってしまいました。メモっています。

ベトナム戦争、そしてウクライナ侵攻は国レベル、そして巨大な時空の悲劇ですが、その根底には人と人のコミュニケーションの齟齬があるのではないでしょうか。ザップ将軍の未来志向の言葉に力を得ています。

ウクライナ侵攻はまさに現在進行形であり、その悲劇の行方は見通せません。それでも私は、コーチングという相互理解を目的とする行動、活動を続けていくことが、小さな歩ではあるものの、かかわる人たちの変化につながっていく、と信じています。
Sさん、まるで「世界系」のように語ってしまいました。次回はクールダウンですね。

(Sさん)
そう、それです! ただその時私は「系」をつけるのは、流行りというか、特別な意味はないと思っていたのですが、何となく気になっていて、その次の1on1でAさんに質問しましたよね。

(A課長)
ええ、それもメモっています。
「前回も質問しようと思って、なんとなく口をつぐんでしまったのですが、その“世界”に“系”をつけるというのは、大きな視点で捉える…という意味ですか?」という質問には、Wikipediaを引用してSさんに説明しています。

いや、その… 実はオタクというかアニメから生まれた表現で「セカイ系」とカタカナを使います。これもWikipediaの力を借ります。

……セカイ系とは「主人公(ぼく)とヒロイン(きみ)を中心とした小さな関係性(「きみとぼく」)の問題が、具体的な中間項を挟むことなく、「世界の危機」「この世の終わり」などといった抽象的な大問題に直結する作品群のこと」であり、代表作として新海誠のアニメ『ほしのこえ』、高橋しんのマンガ『最終兵器彼女』、秋山瑞人の小説『イリヤの空、UFOの夏』の3作を挙げ、肯定的な評価を与えた。…

(Sさん)
そうなんですね。「セカイ系」の意味はそのときなんとなくわかったのですが、新海監督の『ほしのこえ』を実際視聴したことで、肚落ちしました。

セカイ系『ほしのこえ』が新海監督に“なっていく”起点!

(A課長)
ありがとうございます。何だか嬉しいなぁ~ 『最終兵器彼女』は実写版もあります。なかなかの作品でした(笑)

私は精神科医の齋藤環さんが書いた、ちくま文庫の『戦闘美少女の精神分析』という本を大学生のとき読んで、リフレーミングを体験しています。オタク文化に関する学術書と言っても良いと思います。

「日本最大のソフトパワーはアニメ」というのが世界に定着しました。アニメはオタクの原点です。その本の第5章で「戦闘美少女の系譜」が詳細に分析されており、日本のアニメが独自の進化を遂げていったことが書かれています。

(Sさん)
独自の…進化ですか?

(A課長)
ええ、話し始めると止まらないので内容は省きますが、石ノ森章太郎の『サイボーグ009』が1968年にアニメ化され、9人のサイボーグ戦士の中にフランソワーズ・アルヌールという女性が一人含まれているのですね。そこから歴史を語られます。

(Sさん)
マニアックですね… なるほど。

(A課長)
1997年6月号のアニメ誌『アニメージュ』での読者の人気投票が紹介されており、「戦闘美少女」がメインストリームとして定着したことを分析しています。

第1位『新世紀エヴァンゲリオン』
第2位『スレイヤーズNEXT』
第3位『機動戦艦ナデシコ』
第4位『新機動戦記ガンダムW』
第5位『美少女戦士セーラームーン セーラースターズ』
第6位『天空のエスカフローネ』
第7位『機動新世紀ガンダムX』
第8位『セイバーマリオネットJ』
第9位『るろうに剣心』
第10位『爆走兄弟レッツ&ゴー‼』

タイトルだけでは判りにくいが、この10作品のうち、実に1位から9位までの9作品に、戦闘美少女が登場する(戦隊中の女性兵士を含める)。また11位以下20位までを含めると、20作品中16作品で戦闘美少女が活躍している。つまり、1996年に発表された代表的日本のアニメ作品の約8割が、主要なキャラクターとして戦闘美少女を登場させていることになる。

新海監督の劇場デビュー作の『ほしのこえ』に登場するヒロインは中学3年生の長峰美加子です。彼女は、国際連合宇宙軍のタルシアン調査隊のリシテア艦隊に選抜され、戦います。
ガンダム、エヴァの影響を強烈に受けた作品です。

(Sさん)
そういえば最新作である『すずめの戸締まり』の鈴芽も、災いをもたらす「扉」を閉めるミッションを背負う、ある意味「戦闘美少女」ですね。

(A課長)
そうなんです。
少し回り道しました。新海監督のリーダーシップ像を描く1on1でした。好きなことを話しはじめると本題から離れてしまいますね(笑)
新海監督の原点はまぎれもなく『ほしのこえ』です。Wikipediaで次のように紹介されています。

25分のフルデジタルアニメーションの監督・脚本・演出・作画・美術・編集のほとんどを、新海誠が一人で行なった。制作はさいたま市の武蔵浦和駅付近にあった新海の自宅で行われた。制作環境はPower Mac G4 400MHz、使用されたソフトはAdobe Photoshop 5.0・Adobe After Effects 4.1・LightWave 6.5など。

単館上映の作品であったが、新海が当時の自身のホームページで制作状況や予告編を公開してネット上の口コミで話題を呼び、公開初日には劇場に行列ができた。DVDの売上は2003年8月時点で6万枚以上を記録した。

(Sさん)
すべて一人でやってのけたわけだ。それが成功してしまう…

新海監督のStrong magnetic waveによって人は引き寄せられていく…

(A課長)
強烈な成功体験だと思います。この体験を礎として今に至る新海監督がつくられていくのですが、私は新海監督とは「強烈な磁石」だと感じています。ものすごい磁場をもっていて、新海監督から醸し出される波動を感じてしまうと、みんなが引き寄せられてしまう。ただ磁力は見えませんからなんだかよくわからない(笑)

最近読んだ、土居伸彰さんの『新海誠 国民的アニメ作家の誕生』のなかに、次のような箇所があります。

『ほしのこえ』の大ヒットを受けて、新海誠は専業のアニメーション作家になっていきます。『ほしのこえ』のDVDを扱ったことがきっかけとなって新海誠の才能に惚れ込んだ伊藤忠商事の社員、川口典孝が、マンツーマンでその活動をサポート。川口は伊藤忠商事から出向先のコミックス・ウェーブに転籍し、後には個人で億単位の借金をして事業をMBO(マネジメント・バイアウト)し、コミックス・ウェーブ・フィルムとして、新海誠を支え続けています。

そのような体制のもと、新海誠はコンスタンスに作品を発表していきます。初の長編となる『雲のむこう、約束の場所』(2004年)、現代の日本を舞台にした短編三作によって構成される長編『秒速5センチメートル』(2007年)、本格的にファンタジーに取り組んだ『星を追う子ども』(2011年)、そして日本最大級の映画会社である東宝の映像事業部が配給についた中編『言の葉の庭』(2013年)のリリースによって、制作規模としては小規模ながら国内のみならず海外も含め、新海誠は熱狂的ファンを獲得していくことになります。

順調にキャリアを重ねていった新海誠は、2016年の『君の名は。』で東宝の売れっ子プロデューサー川村元気を迎え、東宝も出資に参加。本作は周知のとおり破格なまでの大ヒットを記録します。

(Sさん)
川村元気さんは知っています。映画の『億男』も視ましたが、実に面白かった。ところで『君の名は。』の興行収入は凄かったですよね。何億円でしたっけ?

(A課長)
250.3億円です。『鬼滅の刃』『千と千尋の神隠し』に次ぐ3位です。驚きなのは、前作の『言の葉の庭』が1.5億円ですから、いきなりの166倍です。『天気の子』『すずめの戸締まり』も140億円を超えていますから、日本作品ベスト10の中に新海監督作品は3つ入っています。
ちなみにそれを超えるのは、宮崎駿監督の4つです。

(Sさん)
突然の大ブレークですけど、その背景というか秘密はあるのでしょうか?

(A課長)
はい、その分析も『新海誠 国民的アニメ作家の誕生』の中にあります。

本作が誰の予想も超えて大ヒットしたのは、『言の葉の庭』までには存在していなかった「キャラっぽさ」というものが登場したからだといえるのではないでしょうか。
新海作品にキャラクターが誕生したのは、Z会のCMにおいて、キャラクター・デザインの数々の話題作に参加する田中将賀が起用された時であるといえます。(中略)

このCMは、東京にいる男子高校生と地方にいる女子高校生が、ともにZ会で勉強しながら東大(と思われる大学)を目指す物語になっているのですが、男子高生の顔立ちはまつ毛がしっかりとして目が非常に大きく、髪型もデフォルメ感があります。一方で、女子高校生のほうは、眼鏡っ子で、シーンによってはいわゆる漫画的な表情を見せることもあります。

表情が変わることによって、作中で表現や物語のモードを変えることができ、作品作りに幅が出る。ひとつの物語やキャラクターのなかに真剣さとコミカルさが共存するようになり、作品にある種の弾力性が生まれたといえるわけです。(中略)

ちなみにですが、アニメ業界の一部では、Z会のCMを見て、「新海誠がついにキャラクターを手に入れてしまった、これは大変なことになるかもしれない」と言われていたらしいのですが、まさにそのとおり、同じく田中将賀をキャラクター・デザインに迎え、離れていたふたりが出会うことで終わる『君の名は。』は、アニメ史上どころか日本映画史に残るヒットになったわけです。

新海監督のチームは日本最高の布陣で構成される究極のプロ集団!

(Sさん)
なるほど… 私は『言の葉の庭』が一番気に入っています。「さまざま変化する雨と情景」を極限まで描き切っていますよね。「大人びた高校1年生の男子と20代後半の女性教師」との恋愛がテーマです。ヒリヒリ感がたまらない。“静寂”が漂う大人感満載の作品といえるんじゃないかな。
言われてみれば、キャラクターの表情変化はあまりないですね。ある意味で“整って”いる。

(A課長)
そうなんです。土居伸彰さんは、「これまでの新海作品のキャラクターは“端正”で、それゆえに棒線画や書き割りのように見えてしまっていた…」と著書の中で解説してくれています。

新海監督は風景画の人です。特に雲を描くのが大好きで、そのこだわりはハンパないことが映像を視れば一目瞭然です。ただ人間を描くのは得意ではないと、ご本人が語っているのですね。

アニメーションの直訳は動画です。ところが新海作品は、静止画の微妙な変化と言葉、モノローグが世界を切り採って重ねられていきます。音、そして音楽はBGMというより作品全体と融合しています。
私は新海作品とは逆説としてのアニメーションだと思うのですね。そこにビビッドなキャラが加わることで、新海ワールドが完成したと言えるのではないでしょうか。

(Sさん)
Aさんの解説からも新海愛が伝わってきます(笑)

(A課長)
はい!(笑)
ええっと… もうこんな時間だ。新海監督のリーダーシップを「強力な磁石」と勝手に命名しています。そこに分け入ってみようと思ったのですが、本題に入る前に時間が来てしまいました… 反省です。

前回Sさんが「一次資料の重要性」を語ってくれたので、この1週間、ネットにアップされている新海監督の言葉、そして新海監督のことを周りの人をどう捉えているか… インタビューを通じてのナマの姿、ナマの言葉をたくさん感じてみました。
次回はその内容を紹介させてください。新海監督のリーダーシップスタイルが浮かび上がってきます。

『すずめの戸締まり』の鈴芽、原菜乃華さんの涙…

今日の最後はその導入として、「東宝ムービーチャンネル」の『すずめの戸締まり』公開記念特番OPEN THE DOOR ―新たな旅立ち―』で、鈴芽役の原菜乃華さんが川口典孝さんにインタビューしているシーンを視ていただけますか?

(原菜乃華)
今日はよろしくお願いします。
監督の最初の印象だったり、そのときの思い出を教えてください。

(川口典孝)
もう21年前かな~ まだ彼が28歳! たった一人でね、『ほしのこえ』という24分のアニメーションをつくっていたの。普通アニメーションって200人くらいでつくるでしょ、短編でも。

誰が視てくれるかもわからない、完成するかもわからない、誰にも頼まれていないものを自分の意志で、1日3時間睡眠で、家にこもって戦っていた。
ご存じの通り腰低いでしょ、あの人。穏やかじゃない…

(原菜乃華)
ええ、すごく穏やかで柔らかくて…

(川口典孝)
礼儀正しくて…「惚れてまうやろ!」みたいな…(笑)

(原菜乃華)
ハハハ…

(川口典孝)
そんな人です。

(原菜乃華)
わかります。

(川口典孝)
かたやアフレコのときなんかに妥協がないじゃない。お客さんが喜んでくれることに対してはすごく貪欲。

(原菜乃華)
うん、うん…

(川口典孝)
なので… 制作現場で時折、キラッと見せるするどいところ… 背筋凍る部分があるんですね。観てくれるお客さんに対してはブレない。あのギャップがたまらんよね(笑)

(原菜乃華)
はい、ホントに。それはすごく思います。ええ…

(川口典孝)
ハハハ…

(原菜乃華)
川口さんは、なぜ新海さんをそうやって支えようと思ったんですか?

(川口典孝)
知りあった頃に「なんでそんなに一生懸命に命削って作品つくるんですか?」って訊いたら、「僕はつくるか死ぬかなんですよね~ そういうことなんです…」と、そんなことをポロっと言うんだよね~ 当時まだ29とか30とかだったかなぁ、そんなことを言う…それ自体が才能かな?

誰かが支えてやらないといけないだろうなぁ、と思って… で、俺がたまたまそこに居たんで、そこから僕はここに20年いる、という感じですね~

(原菜乃華さんはこのあたりで涙ぐみ始める…)

天気の子、2019年に作って、お客さんいっぱい入っていて、興行もどんどん上がっている…それなのに、ポロっと、「次はもっといいものつくらないといけませんね」って言うの。

(原菜乃華)
(涙ぐみながら)なんか… ホント… 新海監督と仕事できて… 嬉しい…

(川口典孝)
よかったね~ 俺が泣いちゃう(笑)

(原菜乃華)
ごめんなさい、楽しく話ししようと思ったのに…

(川口典孝)
感受性ですよね~ その感受性をオーディションで新海誠は見抜いたんだと思うんです。

(原菜乃華)
つくるか… 死ぬか… っていう言葉が、すごく胸に来るものがありました…

(川口典孝)
その主人公だからね… あたなは。

(原菜乃華)
えっ… ホントですね~

(川口典孝)
500人とかで絵を描いている… でも声はあなた一人だから、鈴芽の声はあなた一人だから。

(原菜乃華)
…たくさんの方の情熱とか、なんだろう… そういうものを背負っているんだな、っていうのをすごく感じました。
ホントに素晴らしいものだったから、早く視たいし皆さんに観てもらいたいと思いました。

(Sさん)
Aさん、新海監督ってサーバントリーダーそのものですね。

(A課長)
私も本当にそう思っています。
ワールドカップのときにやった1on1で、Sさんは「森保ジャパンはシェアードリーダーシップである!」と看破しました。
そのとき私は新海監督のことが浮かんできて、「サーバントリーダーシップ」と結びついたんですね。

(Sさん)
エグゼクティブコーチのAさんがリスペクトするリーダーシップだ。次回の1on1も楽しみです。新海監督を徹底的に語り合いましょう!

坂本 樹志 (日向 薫)

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