心理学とコーチング 「自己開示」(2020/04/04)

今回は「自己開示」を取り上げます。
コーチングを学んでいる人にとって、この「自己開示」はとても重要な意味を持ちます。コーチはコーチングのセッションを通じてこの自己開示に努めます。自己開示、つまり自分がどのような人間なのかを相手(コーチングの場合クライアントになります)に知ってもらうことです。「それなら自分にもできる」と思われるでしょう。ただし、心理学においても一つの分野であり、なかなか深みのあるテーマなのです。
まずは心理学における定義です。

自分をありのままに示すことが自己開示である。

「自己開示は自分自身をあらわにする行為であり、他の人たちが知覚することができるように自身を示す行為である(ジュラード・1971年)」。
初対面ではまず自己紹介からコミュニケーションがはじまります。ビジネスの世界では名刺を交換することが当たり前ですが、自分を知ってもらうという自己開示の目的を補完する行為といえるでしょう。なお自己開示を、言語以外も含めて自分というものを何らかのカタチで相手に示すこと、と広くとらえると「自分の車はベンツで、それに乗っている場面を相手に見せる」という行為も自己開示といえなくもないですが、基本的にはコミュニケーションを前提とした自己開示を説明していきます。

さて、定義に“自分をあらわにする”とあります。これが自己開示のもっとも重要な点で、自分のことをとりつくろって相手に伝えることを否定します。平たく言えば「素直に、ありのままに、虚心に」伝えることであり、だからこそ難易度が高いことなのです。

自己開示の機能を、個人的機能と対人的機能に分けて解説いたします。

1.個人的機能

「悩み事があり、これまで誰にも話したことがなかったが、信頼できる友人に打ち明けたところ、心が軽くなった」という経験があると思います。カタルシス効果です。涙を思いっきり流した後、なぜか気持ちが晴れ晴れとした、ということは誰もが経験することですが、心に溜めていたモヤモヤを思いっきり吐き出した、といった場合に覚える「すっきりとした気持ち」です。

同時に自己開示は、自分の思っていたこと、考えていることを明確にしてくれる、という機能があります。手探りで話し始めたところ自分の気持ちが整理できた、という場合で、加えて相手からのフィードバックにより妥当性を確認できた、あるいは「是正しなければ」という相対化につながります。

2.対人的機能

自己開示は、自身のありのままを伝えることなので、そこには内密な内容もあるでしょう。これまでの表面的な話題であった段階から変化することで、関係性の進展が期待できます。開示が深いレベルであれば、それは相手を信頼するメッセージでもあるので、親密感の醸成につながっていきます。
上記で自己開示は難易度が高い、と説明しました。つまり自己開示だと思っていても、相手にはそれがうまく伝わっていない、というケースです。

自己開示にもルールがあり、適切に用いなければ逆効果になることもある。

適切な自己開示となるように留意しておかなければならない点があります。

1.相手を選ぶ

相手を不快にさせない、戸惑わすことのないようにする、ということです。自己開示は、いうなれば「あたりさわりではない内容」を伝えることですから、関係性が希薄な人にいきなり話すのは考えものです。相談相手は選ぶ必要があります。夫婦間の悩みを年若い独身者に開示しても相手は戸惑うばかりかもしれません。

2.返報性

自己開示をされた場合のことを考えてみましょう。相手が自分を信頼してセンシティブな話をしてくれたのに対し、関係のない旅行の話をしてしまうと、その後の会話は成り立たなくなってしまいます。自己開示には同レベルの自己開示で返すとよいのですが、自己開示でなくても、相手の悩みに寄り添う態度をしっかりと伝えることが大切です。

3.タイミング

会っていきなり内密な話をしてしまうと、相手はびっくりしてしまうかもしれません。内密な話を受けとめる準備ができていない、あるいは、まだその話をするタイミングではない、という場合があります。タイミングを図ることは自己開示を効果的なものにするための重要ポイントです。

4.個別性

「この話はこれまで誰にも話していない…あなただけに話します」という個別性は「私を信頼してくれている」という相手から自分への好意として返ってきます。もっとも、そう言いながら、別の人に話していることがわかってしまうと、信頼は失墜します。口が堅くないタイプの人は使ってはいけないフレーズですね(口が堅い人の方が少数派だと思うので、この個別性はまさに“個別”な人のみに適用できるルールです)

冒頭で「コーチングを学んでいる人にとって、この自己開示はとても重要な意味を持ちます。コーチはコーチングのセッションを通じてこの自己開示に努めます」と書き出しました。そこで今回のコラムの最後に、今日のコーチングが成立していく過程で、その根幹ともいえる概念を提示したカール・ロジャーズの言葉を紹介しておきます。

「他人を受容することができると、それはとても報いられるものである」
「誰でも進んで自分自身になろうとすればするほど、自分が変化するばかりでなく、自分と関係している人たちもまた変化していくのである」

(日向 薫)

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