
成果を生み出す組織に共通すること
「成果を上げる組織と、そうでない組織の違いは何か?」
その問いに対して、かつては「戦略」「人材」「仕組み」といった要因が挙げられてきました。しかし、近年の研究や実務経験が示しているのは、もっと根本的な要素“対話の質”です。
対話が変われば、意思決定が変わり、行動が変わり、最終的に成果が変わります。
逆に言えば、どれほど立派な戦略も、対話の質が低ければ実現しないのです。
成果を生み出す組織に共通するのは、「コーチング的対話」が日常化していることです。
それは、誰かが教えるのではなく、「問いを交わす文化」です。
上司が一方的に話すのではなく、部下が自ら考え、意見を述べる場があることです。
対話が「管理の手段」ではなく、「共に学ぶプロセス」として機能しているのです。
コーチング文化を育む組織の3つの特長
このようなコーチング文化を育む組織では、対話の中に三つの特徴があります。
第一に、「評価ではなく理解」に焦点があること。
相手を“評価”するのではなく、“なぜそう考えるのか”を聴く。
第二に、「過去ではなく未来」を扱うこと。
失敗の責任を問うよりも、「次にどう活かすか」に意識を向ける。
そして第三に、「正解ではなく意味」を探すこと。
何をするかより、なぜそれをするのかを共有する。
これらの対話が積み重なることで、組織は“人が動かされる場所”から、“人が動き出す場所”へと変わります。
ある企業では、マネジャー層を対象に「対話改革プロジェクト」を実施しました。
目的はシンプル—で、指示命令の対話を減らすことです。
最初は「そんなことで成果が変わるのか?」という懐疑的な声もありました。
ところが半年後、営業会議の雰囲気は一変しました。
マネジャーが「どうすれば目標を達成できるか?」ではなく、「どんな状態を創りたいか?」と問いかけるようになったことで、メンバーの主体性と創造性が高まり、売上も前年比で12%増加しました。数字を動かしたのは、制度でもツールでもなく、“対話の質”だったのです。
コーチング文化とは「生きた対話の文化」
コーチング文化は、一朝一夕には根づきません。
なぜなら、それは「行動の変化」ではなく、「関係性の変化」だからです。
人が互いをどう見ているか、どれだけ信頼しているか、その前提が変わらなければ、どんな対話も形だけに終わります。だからこそ、人事・経営が意図的に「安全に対話できる場」を設計することが不可欠です。
そこでは、結論よりもプロセス、成果よりも気づきに焦点を当てることが大切です。
組織にコーチング文化が根づくと、学びは“研修の場”から“日常の対話”へと広がります。
上司と部下、同僚同士、さらには部署を超えて、問いが飛び交い、学びが循環する。
その瞬間、組織は単なる集団ではなく、「学習する生命体」へと進化します。
コーチング文化とは、結局のところ“生きた対話の文化”なのです。
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国際コーチング連盟認定マスターコーチ(MCC)
日本エグゼクティブコーチ協会認定エグゼクティブコーチ
五十嵐 久
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