
“聴く”という行為は最も高度で本質的な技術
「そんなこと、今まで誰にも言ったことがなかった」
エグゼクティブコーチングの場で、経営者がそう呟く瞬間があります。
それは、コーチが特別な質問をしたからでも驚くような助言をしたからでもありません。
ただ“本当に聴いてくれた”からこそ、生まれた言葉なのです。
ビジネスの現場では「聴くこと」は軽んじられがちです。会議では早く結論を求め、部下との面談ではアドバイスが優先される。経営者であればあるほど、「聴かれる側」として過ごす時間の方が長く、誰かの話に深く耳を傾ける時間は驚くほど少ないのが現実です。
しかし、エグゼクティブコーチングの本質において、“聴く”という行為は最も高度で本質的な技術です。コーチの仕事の多くは、“問い”ではなく“聴き方”に支えられています。言葉の背後にある感情に耳を澄ます。間の沈黙に宿る意味を受け取る。表現されなかったものにまで、まなざしを注ぐ。それは、相手の話を「理解する」以上に、相手の「存在そのものを受け止める」行為なのです。
たとえば、ある経営者が「今期の数字が厳しくて……」とつぶやいたとき、その言葉にすぐ「何が原因だと思いますか?」と返すのか、あるいは、「……その言葉の奥に、どんな気持ちがあるのでしょう?」と投げかけるのかで、対話の深さはまったく変わります。
エグゼクティブコーチの「聴く力」は最も能動的な行為
多くの場合、経営者は“話しながら気づいていく”のです。言葉にするうちに、自分の思いが形になり、矛盾に気づき、核心に迫っていく。その過程を妨げず、導かず、ただ静かに寄り添っているのが、エグゼクティブコーチの「聴く力」です。しかし、この“傾聴”は単なる受け身の姿勢ではありません。むしろ、深い集中と意図的な在り方が求められる、最も能動的な行為です。
- 相手の価値観や思考の癖を捉える
- 非言語情報(表情、声のトーン、沈黙)に意識を向ける
- 相手の意図を仮説として持ちつつ、解釈を押し付けない
- 必要なときにだけ、言葉を返す
これらの繊細な作業を同時にこなしながら、クライアントが自らの真実に近づくプロセスを見守る。それが、コーチに求められる“聴く力”なのです。
聴く力は、関係性の質を変え、組織文化の土壌を育てる力でもある
そして不思議なことに、このように「深く聴かれる体験」をした経営者は、次第に自分自身も「聴く人」へと変化していきます。部下の声に耳を傾けるようになり、組織内に対話の文化が芽吹いていく。つまり、聴く力は、関係性の質を変え、組織文化の土壌を育てる力でもあるのです。
これからエグゼクティブコーチを目指す人にとって、「良い質問をすること」よりも、「本当に聴くこと」の重要性を忘れないでほしいと思います。相手の話を“正しく理解する”のではなく、“深く受け取る”という姿勢が、何よりの信頼を生み出します。言葉が出尽くしたあとに訪れる静かな沈黙。そのときこそ、コーチの「在り方」がクライアントに最も届いている瞬間かもしれません。
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