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第2回:「アドバイスしない」という力 ─答えを渡さず、問いを差し出すという仕事─

エグゼクティブコーチはアドバイスしない

「アドバイスをしてはいけないのですか?」
エグゼクティブコーチングを学び始めた人が、最初に戸惑うのがこの一点かもしれません。
多くの人は、「誰かの役に立ちたい」「経験を共有したい」という善意を持ってコーチを志します。特に、経営経験のある人や、マネジメント職の経験者にとっては、アドバイスや提言が“支援”の中心にあるという実感があるでしょう。だからこそ、コーチングの原則である「アドバイスをしない」「答えを教えない」というスタンスに、違和感やもどかしさを覚えるのは自然なことです。
しかし、ここにこそエグゼクティブコーチングの核心があります。
それは、「答えは相手の中にある」という前提に立ち、答えを渡すのではなく、問いを差し出すことで思考と気づきを引き出すというアプローチです。

たとえば、ある経営者が「組織の風土がどうにも閉塞的で、新しい意見が出てこない」と語ったとします。
一般的な助言であれば、「フラットな対話の場を設けては?」「ミドル層への巻き込みを強化しては?」といった提案が出るでしょう。

しかし、コーチは違います。
「あなたは、その状況をどんなふうに受け止めていらっしゃいますか?」
「その中で、何にいちばん違和感を覚えているのでしょうか?」
「あなた自身は、どんなリーダーシップを発揮したいと感じていますか?」
このような問いは、相手に考えさせます。
表面的な課題ではなく、その人の“意味づけ”や“価値観”に触れさせます。
答えを外に探すのではなく、内側から掘り出す思考のプロセスを引き出します。
ここにこそ、コーチの仕事の真髄があります。

「自分の言葉で語れる答え」を生み出す支援

アドバイスは速やかな解決感を与えてくれる一方で、相手の主体性を弱めるリスクもはらんでいます。一方、問いは即効性に欠けることもありますが、深い納得感と自発的な行動の源になります。
つまり、コーチングにおいては「答えの質」よりも、「問いの質」こそが重要なのです。
実際、エグゼクティブたちは、アドバイスを受けすぎています。
社内外から提案が山のように届きます。経営会議では毎週のように意見が飛び交い、顧問やアドバイザーからも「こうすべきだ」が絶え間なく届けられます。
それでも変わらない。なぜか?
それは、“自分の答え”にたどり着いていないからです。
コーチは、正論ではなく「自分の言葉で語れる答え」を生み出す支援をします。
だからこそ、アドバイスを封印するのです。
では、コーチは何もしないのか?というと、決してそうではありません。
問いを生むために、観察し、共感し、沈黙を聴き、感情の揺らぎを見逃さない。
問いを差し出すタイミング、言葉の選び方、声のトーン――すべてに細やかな意図とスキルが込められています。

エグゼクティブコーチは「どう在るか」で深い変容を生む

エグゼクティブコーチは、「何かをする」のではなく、「どう在るか」で深い変容を生むことができる点にあります。
アドバイスを手放すことで、相手の思考が動き出す。
答えを与えないことで、相手の主体性が目覚める。
その瞬間に立ち会えるのは、コーチだけの特権です。
これからエグゼクティブコーチを志す方にとって、「語ること」よりも「問いかけること」、「導くこと」よりも「寄り添うこと」、その尊さに気づいたとき、コーチングの世界が本当に開かれていきます。
“アドバイスしない”という力は、決して無力ではありません。
むしろそれは、人の可能性を信じて待つ、最高の支援のかたちなのです。

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国際コーチング連盟認定マスターコーチ(MCC
日本エグゼクティブコーチ協会認定エグゼクティブコーチ
五十嵐 久

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