コーチングについては、日本にこのことばが輸入される1990年代以前に、ingを付さない「コーチ」ということばがスポーツ界を中心に浸透していました。東洋の魔女の大活躍、金メダル獲得によって「コーチの厳しい指導に耐え抜いた者か栄冠を勝ち取る」というイメージが付与されことは否めません。
もちろん、昭和から平成、そして令和と時代が移ろうに従い、コーチ像も変わってきています。ただし外来語のコーチングをそのまま導入したこともあって、日本においては、その本質が十分に伝わっていないのが実態ではないか… と感じるところです。コーチングは、人と人が関わり合う社会にとってなくてはならないコミュニケーションの基盤であり、その本質は「受容と共感」に基づく相互理解です。
私どもはこの「CBLコーチング情報局」を通じて、コーチングの本質が一人でも多くの人に広がり浸透していくことを願っています。
(CBLコーチング情報局~私たちについて)
心理学を学びコーチングの資格を有する新進気鋭の若手A課長と、部長職を長く経験し、定年再雇用でA課長のチームに配属された実践派のSさんとによる、今年最後の1on1ミーティングです。「コーチングとは?」を深掘りするセッションが展開されました。
アイスブレイクの定番である天気の話からスタート!
(A課長)
おはようございます。12月の半ばにもかかわらず、先週からの大雪が日本列島を覆いましたね。鹿児島でも降りましたから、驚きです。
(Sさん)
今月の始めの1on1だったと思いますが、森保監督の社会人生活が広島からスタートしたことで、出身地の広島を熱く語ってしまいました。そのとき温暖な土地柄と話しています。少し訂正させてください。
政令指定都市の広島市は結構広域で、現在母親が住んでいる家は、安佐北区の鈴張に開発された600戸近くの家が立ち並ぶ「安佐ニュータウン星が丘」の一角にあります。広さは東京ディズニーランドくらいあり、起伏にとんだ地形です。リビングからは、少し遠方に稜線が美しい山の景色を愛でることが出来ます。
山が好きだった父親が定年を機に、旧市内の西区南観音にあった家を売却して引っ越してきたのです。そのタイミングは、たまたまバブル景気がピークだった頃で、「かなりの金額で売れた」と喜んでいましたね。
今日の朝電話したところ「すごい雪で大変じゃけぇ~」と言っていました。それほど離れていない北広島町には大朝スキー場という、結構本格的なゲレンデもありますから、88歳の母親は難儀だろうなぁ、と想像しています。
(A課長)
広島市の近くにスキー場があるんですか? Sさんの自宅が、埼玉県であっても関東平野のど真ん中に位置する、と聞いたときと同じくらい意外です。
“身近で意外な話題”はアイスブレイクにうってつけ!
(Sさん)
思い出します。Aさんが埼玉に興味を持ってくれたことで、日本の流通業態の変遷をマクロ、ミクロで語り合う1on1につながっています。4回シリーズでやりましたね。初回は「桜と菜の花と青空のトリコロール」でした。
(A課長)
それもアイスブレイクがきっかけです。身近なことでも気づかないことがゴマンとあることを、それこそ気づかされました。
(Sさん)
Aさんが、「実際のコーチングセッションは、スタートのアイスブレイクがとても大切になります」と話してくれたように、2022年の〆を飾る私たちの1on1も上々のスタートですね。
今テーマを考えました。私が日頃考えているコーチングに関する諸々について、Aさんに質問する、というのはいかがでしょうか?
(A課長)
了解です。Sさんの鋭い質問にどこまで答えられるかわかりませんが…
そうだ!以前も話したと思いますが、CBLコーチビジネス研究所の「CBLコーチング情報局」が、コーチングに関するキーワードをさまざまアップしてくれているので、その力を借りながら回答するということでよろしいですか?
(Sさん)
私も時々チェックしています。コーチングに関する情報はネットに氾濫していますが、そのサイトはユニークですよ。気付いてみると、構えることなく文字を追っているというか、難解でないのがいい(笑)
Aさん、是非とも紹介してください。年の〆らしくやっていきましょう!
早速ですが、実際のコーチングセッションにおけるアイスブレイクの目的を教えていただけますか?
コーチングのアイスブレイクには重要な目的があった!?
(A課長)
こちらも早速… まず「CBLコーチング情報局」の「コーチング大百科」をクリックすると、コーチングに関するテーマ・キーワードが、ユニークな画像と共にずらりと出てきます。
その中の一つの画像もしくしタイトルをクリックすると、内容説明が表れます。読むうちにいろいろ興味がわいてきます。PCは右上に、スマホは下の場所に、サイト内検索のワードを入力するスペースがあるので、まず「アイスブレイク」と入力しますね。
(Sさん)
…3つ出てきましたね。
(A課長)
そうですね。では「ラポールを生み出すための具体的な方法とは?」をクリックしてみましょうか。
ラポールも重要なキーワードです。広辞苑にも掲載されているようです。親和関係・共感的関係のことです。
読んでいくと「アイスブレイクは潤滑油」という見出しがありますね。天気の話題は定番ですが、コーチングのコーチは、プロの視点でアイスブレイクを捉えます。
コーチングはクライアントとの共同作業であり、コーチ自身も自然体でコーチングを進めていくことができるようウォーミングアップも必要です。
さらにクライアントの今その時の状態を、アイスブレイクのやりとりの中で把握し、セッションをどのような方針で進めていくかなど、判断のための時間でもあるのです。
(Sさん)
今日のクライアントの状態をまず把握する、という重要な時間なわけだ。そしでコーチ自身のウォーミングアップでもある。実際のコーチングセッションはアイスブレイクの後、おもむろに始めていく、ということですね。
さて、コーチングはよもやま話ではないと思うので、起承転結というか、流れにパターンがあると思うのですが…
(A課長)
もちろんあります。検索欄に「コーチングの流れ」と入れてみましょう。
2つ出ました。「コーチングの基本10ステップ」をクリックします。
(Sさん)
アイスブレイクを含む「セットアップ」から「振り返りと次回へのアポイント」までの10ステップで構成されていますね。
- セットアップ
- テーマを設定する
- セッションのゴールを決める
- ありたい姿(目標)を質問し聴く
- 現状を確認する
- 目標と現状のGAP(ギャップ)を埋める
- 「行動」の明確化と決定
- フューチャーペーシング
- コミットメント
- 振り返りと次回へのアポイント
この通りやるんですか?
クライアントはコーチに合わせてくれるというわけではないので、この流れ…型といってもよいのかな? この通り進めるのは大変じゃないですか?
どのようなスキルも「基本の習得」欠かせない! ただし…
(A課長)
その答えも用意されていますよ。冒頭の解説を見てください。
…ただしコーチングは、一人ひとり異なるクライアントとの共同作業ですから、守秘義務告知などの必須項目は別として、この流れとは異なる展開も生じます。つまり「基本10ステップありき」ではなく、コーチングが機能した多くのセッションを分析した結果、「基本10ステップ」の要素が組み込まれ、フロー通りに展開していた、ということなのです。
すぐれたプロコーチとは、この「基本」をしっかり取り込み、その上で個性あふれるクライアントに寄り添い、柔軟にセッションを展開する能力を有する専門家のことです。
(Sさん)
“柔軟”という言葉が好きなので、ちょっとホッとしました(笑)
コーチングの資格はプロフェッショナル性が問われるので、この基本の流れをまずは身体に覚え込ませる。そうじゃないと素人のままで成長がない。
(A課長)
その通りだと思います。
(Sさん)
それから気になっていることがあります。Aさんは中小企業のオーナーを主な対象とするエグゼクティブコーチですが、彼らは、常に他社との競争にさらされていますから、新しい知見、情報に貪欲だと思います。コーチングはティーチング、コンサルティングとはスタンスが異なりますよね。そのあたりはどうなんでしょう?
クライアントから提案や情報提供を求められた場合は…
(A課長)
コーチングスクールで学ぶ過程で、誰しもが悩むところです。ただし、コーチングの実践を重ねていくと、Sさんの好きな言葉である“柔軟性”こそコーチングの肝だなぁ、と実感できるのですね。
コーチングはクライアントファーストですから、私の場合、経営者であるクライアントから提案や情報提供を求められたら応えることにしています。ただし「コーチングの3条件」は常に意識しています。
そのあたりもちゃんと解説してくれていますよ。「提案 情報提供」で検索すればよいかな?
ズバリのタイトルである「コーチが行なう提案や情報提供とは?」が出てきましたね。
コーチングはティーチングとは異なります。つまり「教え教えられる」という関係性ではありません。ただし、クライアントの要望を受けて、提案や情報提供をすることはあります。
クライアントに役立つ提案や情報提供は、出し惜しみせず提供します。その場合に注意することは、提案や情報提供は相手への指示や押しつけであってはならない、ということです。提案や情報提供を受け入れ、実行するかどうかは、クライアントの判断にかかっています。
(Sさん)
縛られる必要はないということですね。おっ、その下の「ティーチングをしてもよいということですか?」という疑問にも答えてくれていますね。
ティーチングの場合、生徒は「教えてもらう」、先生は「教えてあげる」という関係性が前提です。言い換えると「教えてくれない先生」は評価されません。
コーチングは異なります。クライアントに教えることをせず、自分で考えてもらうのです。その本質的な意味合いは、本人自身の「気づき」を促し、成長をサポートすることに他なりません。
ここがコーチングのプリンシプルですね。なるほど… コーチングの本質でもある。
そうだ本質と言えば、Aさんはよくコーチングと自己基盤の関係を語りますよね。そのあたりも紐解いてみたい。
(A課長)
自己基盤は、極めて重要なキーワードです。これについて深く考えることがプロコーチには求められます。コーチに限らず、人としての最終目標といえるかもしれませんね。
これも検索してみましょう。複数出てきました。「コーチングにおける自己基盤・ファウンデーションとは?」をクリックしてみましょうか?
(Sさん)
骨子は4つですね。
「自分を理解し、自分を認めてあげる」
「他者との違いを受けとめる」
「ありのままの自分を受けとめ、自分らしい一歩を踏み出すエネルギーに満たされている」
「やりたいことに挑戦できている」
言葉そのものは平易です。ただこれを自然体として会得するには… 人間としての根本、本質が問われる。
自己基盤の確立…「人として目指したい境地!」
(A課長)
「人として目指したい境地」、と言い換えてもよいかもしれません。ですから「私は自己基盤が確立しています」と、とても口にできません。「自己基盤を確立しようともがきながら日々精進しています…」が、心情的に近いかな?
(Sさん)
共感します。「自己基盤」は、他者の視点もしっかり受けとめることで、見えてくるのではないでしょうか? 私は「相対化」という言葉が好きなのですが、つまり、自分を客観的に見るということです。
(A課長)
Sさん、そのあたりの内容も取り上げられています。「相対化」と入力してみますね。
(Sさん)
「自己一致の自分を見出すことができるのがコーチングの力!」
このタイトルはいいですね。コーチングの魅力がダイレクトに伝わってくる。「相対化」もキーワードになっている。
人は、他の動物と異なり「多面性」をもっています。高度に発達した脳によって、環境によって使い分けをしている、ということです。健全な社会性を持ち、自分を相対化できる人であれば、その使い分けも自然な態度として、周りは受けとめてくれます。それが「自己一致」です。
それから、太字の「表面だけの魅力はいつしかメッキが剥がれ落ちる!」もグッドだ。このタイプの管理者、そして経営者は「あるある」ですよ。
(A課長)
心理学的に、第一印象に引きずられるのは人の常ですが、講演で評価を獲得している人は、そのテクニックを磨いていますから、本当の姿はなかなか見抜けない(笑)
「私は他者の力を借りるつもりはありません」…で大丈夫?
(Sさん)
おっしゃる通り! 私も何度か経験ずみです(笑)
このキーワード解説は、自己一致の大切さを語りつつ、その獲得にコーチングがいかに力を発揮するかが紐解かれている…
自己一致のためには、自分の強みや長所だけでなく、自分の弱みや短所、考え方の癖や価値観、劣等感や罪悪感などにも目を向けていくことが求められます。ところが、そのことを自分一人で会得しようと思っても… その難易度は想像できますよね。
コーチングは、不一致となってしまっている現状のギャップの背景・原因を見つけ、遠回りすることなく、自分の理想に近づくための方法です。いつも同じことで躓く、周囲の人が次第に離れていくと気付いたとき、コーチングはその力を発揮します。
あなたの内面から溢れ出る魅力が周りの人を魅了し、夢の実現に大きく近づくことができるようサポートし伴走するのが、コーチングのプロコーチなのです。
(A課長)
コーチングが機能した時の力はすごいですよ。
「Aさんとのコーチングがなかったら回り道したと思います」、という言葉がクライアントから返って来ることがあります。それはきまって、「クライアントと響き合っている!」という、確かな手ごたえを感じたセッションです。コーチ冥利というか充実感に満たされます。本当に嬉しいですよね。
ただ、いつもそうなるとは限りません。だから毎回が勉強です。
(Sさん)
充実感… 素敵な言葉だ。Aさんとこうやって1on1をやっていると、心地よい言葉、キーワードがたくさん出てくるので、気持ちいいなぁ~
人生を長くやっていると、ときにハードでタフな状況に見舞われます。「どうして自分の身にこんなことが起こるんだ!」と、嘆き悲しみ、そしてもがきます。
でも、そんなときこそ、声をかけてくれた人の「言葉が持つ力」によって、救われてきた実感があるのです。
そこでAさんに訊きます。このCBLコーチング情報局のなかにあるキーワードで、もっとも好きな言葉は何ですか?
(A課長)
Sさん得意の「いきなり質問」ですね。たくさんあるので… う~ん…
(Sさん)
この質問はその人の本質をあぶり出すような気がしています(笑)
シンプルな質問はその人の本質をあぶり出す!?
(A課長)
なるほど… Sさんはコーチャブルだ。
コーチングはシンプルな質問が有効です。「シンプル」で検索してみますね。質問の答えを考える時間稼ぎも兼ねて…(笑)
「シンプルな、そして深く考えさせる言葉を用いるのがコーチングです!」が出てきました。
このテーマがアップされた当日、画像を見た時は何の動物か分からなかったのですが、解説に「ヤマアラシジレンマ」とあるので、「なるほど…」と合点したのを思い出します。
見出しは「まず、シンプルに」、続いて「そして、クライアントが深く考えこむ言葉を投げかけます!」とあるので、Sさんは、まさに「深い質問」をされたわけだ。
(Sさん)
コーチングにとって有効な質問、ということですね。よかった(笑)
(A課長)
コーチングのキーワードで最も好きな言葉…
そうですね、「あるがまま…」かな?
(Sさん)
それも検索すると出てきますか?
(A課長)
ええ、出てくると思います…
「プロコーチとしての自己基盤は“あるがままの自分”であること!」がありました。
(Sさん)
お地蔵さまだ。癒される…
「あるがまま」と「自分の思い通り」の違いが説明されている。……なるほど。
最後のまとめもいいですね。
自分の中に浮かんだ様々な感情のすべてを自覚し、自分のありのままを受け入れることで、相手の態度に対し自分がどうすればよいのかが見えてきます。自分の中にある良い面も悪い面もすべて受け入れ、自分がどうしたいのか、どうなりたいのかを考えることで、「あるがままの自分」を相手に見せられるようになるのです。
プロコーチとしての自己基盤は「あるがままの自分」になろうとすることで、その実像がつくられるのです。
「あるがまま」は深遠でやさしく、そして言霊が宿っている…
(A課長)
「自己基盤」と「あるがまま」は一体ということです。
(Sさん)
そろそろ時間ですね。
Aさん、今年1年ありがとうございました。Aさんとの1on1によって、さまざま気づきを得ています。今年の〆として、そして来年に向かって、「あるがまま」をじっくりと考えてみようと思います。
(A課長)
Sさんの質問で自分があぶり出されました(笑) 本当に深遠な言葉だ。やさしく、それでいて言霊が宿っている。
Sさん、来年も引き続き1on1をやっていきましょう。よろしくお願いします。
良いお年を!!
坂本 樹志 (日向 薫)
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