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「国鉄長期債務」→「たばこ税」→「防衛費増額」、そして「W杯」+「文化の発展」+「情報のオープン化」につながった1on1ミーティングです!

開催前、西側諸国ではカタールで移民労働者やLGBT(性的少数派)の人が不当な扱いを受けているとして反発が起きた。アラブの人は西側の人を偽善的な人種差別主義者と呼んだ。(中略)
こうした心構えで実際に現地に赴くと混乱する。筆者は毎日16時間ほど首都ドーハ周辺や各地のスタジアムにいるが、まったく異なる世界を目の当たりにしている。異なる文明同士が問題なく共存しているのだ。
(日本経済新聞12月14日6面「FINANCIAL TIMES…W杯の国家主義、すでに過去」より引用)

心理学を学びコーチングの資格を有する新進気鋭の若手A課長と、部長職を長く経験し、定年再雇用でA課長のチームに配属された実践派のSさんとによる1on1ミーティングです。W杯はアルゼンチンの優勝でフィナーレ! 余韻もさめやらぬ19日月曜朝に実施された二人の対話はどのような展開を見せるのでしょうか。

令和の大変革がこれから起こる!?

(Sさん)
感動! 感動! です。
今回のワールドカップは、最後の最後までハッピーで観ることが出来ました。アルゼンチン、フランスだけじゃなく、世界中がその思いを共有できたのではないでしょうか。間違いなく過去最高の大会でした。
アベマのおかげで、森保ジャパン以外の試合もかなり観ています。時代は変わります!

(A課長)
クロアチア戦の視聴回数は2000万回を超えたようですよ。17日土曜日の日経スポーツ欄には、「W杯配信時代キックオフ!!」というタイトルで、2日のスペイン戦でのアベマ視聴を詳細に分析していましたね。「地上波と“主役”競う」という見出しでした。

(Sさん)
令和大変革の予感です。思い返すと、昭和世代の私たちが時代の大変化を語る際の象徴的な現象は、鉄道から車へのシフトでした。東京オリンピックが開催された昭和39年、西暦では1964年に東海道新幹線が開業します。その時が国鉄の黄金期でありピークです。本社採用のエリートは東大京大ばかり、と言われた時代です。

(A課長)
国鉄という言葉は、私たち世代にとってイメージゼロです。

(Sさん)
そうでしょうね。
国鉄の経営悪化は、その年から始まります。2年間は繰越金で赤字を補填したものの、1966年以降は完全に赤字に転落。分割民営化までの20年間、延々と赤字が続きます。

昭和の大改革は国鉄の解体!

原因ははっきりしています。モータリゼーション、そして空港が全国に整備された結果、競争が激化し、さらに人件費の増大… それでも国は、運賃収入だけでは利益の見込めない新線の建設をどんどん進めていったからです。

乗用車の普及について調べてみました。人口100人当たりの自家用乗用車の台数は、昭和40年はたったの3.6台です。それが、昭和50年には17.9台。昭和60年、1985年になると30.3台です。一家に一台の時代が到来します。

バブル景気は1986年12月から51カ月続いたようですが、1987年に中曽根内閣により、国鉄が解体されます。旅客鉄道6社と貨物鉄道1社のJRグループに分割民営化されるのです。その時点の長期債務は、なんと37.1兆円でした。赤字を垂れ流し続けた結果、ここまで膨らんだという訳です。

ちなみに1987年の国の一般会計予算は、54兆円です。国は収益事業も公共事業の感覚でやってしまうのでしょう。民間企業になってもその感覚が抜けなかったJALも破綻しましたから。

長期債務の37.1兆円のうち、25.5兆円を国鉄清算事業団が継承します。JR各社は5.9兆円ですから、もちろん経営努力は求められるものの、民間企業として、身軽にしてもらっての再スタートです。

国鉄が解体されたときの借金額は何と37.1兆円!

(A課長)
凄い話になってきた… 25.5兆円は当然返済されなければいけないと思うのですが、国鉄清算事業団は商売をしていないので収益はないですよね。

(Sさん)
ええ、ウルトラCとはいいませんが、国有財産の売却収入を充てる計画でした。ただバブル崩壊もあり、うまくいかないのですね。ほとんどの売却可能資産を処分しても7兆円でした。結局金利負担や土地の管理費などが加わり、赤字は減っていません。国鉄清算事業団も1998年に解散します。

(A課長)
10年経つと、国鉄時代の大借金のその後について、国民の関心も薄まってきたと想像しますが、現在はどうなっているのですか?

(Sさん)
1998年末の24兆98億円が、2020年度末には15兆9300億円に減っています。その返済原資はたばこ特別税です。

(A課長)
ええっ? たばこですか… 防衛費増額のうち1兆円を、法人税、たばこ税、所得税で賄う。つまり増税の方針を岸田首相が打ち出していますが、たばこは健康に害を及ぼすのが科学的に証明されているので、喫煙者はともかく国民全体からの批判は起きにくい、ということか…

国鉄の大借金は“たばこ”のおかげで返済が進んでいる…

(Sさん)
国鉄清算事業団が解散された1998年に、これまでの国たばこ税、地方たばこ税に加えて、たばこ特別税が創設されます。目的は、日本国有鉄道清算事業団及び国有林野事業特別会計の負債を、一般会計に承継させることに伴い生じる負担を補うためです。
JTのサイトが、たばこ税をわかりやすく解説してくれています。

たばこは、税負担が重い商品です。
たばこの価格には国たばこ税、地方たばこ税、たばこ特別税、消費税の4種類もの税金が含まれています。
銘柄などによって異なりますが、例えば一般的な紙巻たばこでは、税負担率は6割にも達するなど、たばこは、わが国でも最も税負担率の重い商品のひとつとなっています。

(A課長)
消費税もたばこにはかかるので、4種類の税金がたばこにはかけられている、というわけですね。さらに防衛費増額の原資の一部に… 所得税については、東日本大震災の復興特別所得税とセットで説明されたので、“転用”という言葉が広がりました。この言葉を最初に誰が使ったのか… 調べても分かりません。復興特別所得税から防衛費を賄う、という誤解を与えたように感じます。

(Sさん)
私はたばこ税に興味があったので、所得増税についての理解は少しあいまいだ。どういうことでしょう?

復興特別所得税を“転用”して防衛費増額に充てるのか?

(A課長)
所得増税については、税額に1%を上乗せして防衛費に充てる目的税であり、ロジックとしては復興特別所得税とは関係ありません。ただし、所得税全体の負担増を回避するために、復興所得税の税率を2.1%から1%引き下げるということです。

その補完として、決まっていた37年末までの期限を「復興財源を確保するために必要な長さとする」として延長しています。このあたりは先送りの増税といった感もありますが、マスコミは前回の1on1で取り上げた、「速い思考」のシステム1で記事化した印象です。自民党内のアンチ岸田派が、それを増幅したところもありますが…

(Sさん)
Aさんが、カーネマン教授の『ファスト&スロー)』を取り上げて、
「私たちヒューマンは、ヒューリスティックに基づいてあまり考えることなく判断してしまうことが多い」と指摘します。それを「ファスト・速い思考」であるシステム1と命名しています。
と解説してくれたところですね。
なるほど… 説明の仕方で、受けとめられ方が変わってくる、ということだ。私も気を付けないと。

(A課長)
面白いことに、“転用”という言葉はマスコミから消えました。「遅い思考」のシステム2が起動したようです(笑)

私は「復興所得税の税率を2.1%から1%引き下げる」という、与党税制改正大綱での案は、理由があってのことだと思うのですね。その税金がこれまで何に使われてきたのか、知りたくなりました。「増税内容が拙速に出て来た」、という印象はありますが、アドラーの「課題の分離」を参考にすると、分離されていない状態、つまり政局化がイメージされます。

(Sさん)
コーチングセッションで「課題の分離」は使いますが、さまざま使えそうですね。

復興特別所得税について、「遅い思考」「課題の分離」を使って考えてみる…

(A課長)
… 今「復興予算の使われ方」で、ググってみました。トップにNHKのサイトが出たので、チェックしてみましょうか。去年の2月25日にアップされていますね。

10年間で32兆円! すごい金額だ。スクロールすると… 見出しに「“肥大化”の指摘も」というのがありますね。

しかし“全額国費負担”としたことなどが事業を必要以上に肥大化させたとの指摘が、復興に関わった関係者や専門家などから出ています。

復興構想会議の議長として復興ビジョンを国に提言した兵庫県立大学の五百旗頭真理事長は「阪神・淡路大震災では復興のための財源をどう確保するのかが課題となったが、東日本大震災では増税を行って全国民が被災地を支えることで、災害に強いまちづくりができたと思う」と話しました。

そのうえで「私たちの提言のあとに、国が“全額国費負担”の方針を決めたが、そのことは想定していなかった。結果として『国が負担するならやれることは全部やろう』ということが起きたと思う。日本全体が人口減少の局面にあるなかよりいいものを作ることと、より大きいものを作ることは別のことだ。今後は復興をどういう規模で進めるのか、災害が起きたあとではなく、事前に考えておく必要がある。『防災庁』のような組織を作ることも検討すべきだ」と指摘しました。

(Sさん)
いろいろ考えさせられます…
アイスブレイクのつもりで、「国鉄の大赤字はどうなっているのか?」と話を始めましたが、それが防衛費にまで広がりましたね。Aさんと対話することで思わぬ展開です。

そろそろ今日のテーマに移りましょうか。14日金曜日の日経新聞「FINANCIAL TIMES」のコラムを取り上げてみたいと思います。いかがでしょうか?

(A課長)
了解です。ええっと…タイトルは「W杯の国家主義、既に過去」、見出しは「現地で見た寛容な姿勢」。ライフ・アンド・アーツコラムニストのサイモン・クーパーさんの寄稿ですね。Sさんは、どこに惹かれたのでしょう?

W杯のトランスフォーメーションは、カタールに集まった世界の人たちにも起こっていた!

(Sさん)
森保ジャパンのトランスフォーメーションぶりを、前回まで3回語り合いました。それがサッカーの試合だけでなく、ありとあらゆる国・地域からカタールに集まったファンの間、関係性にもトランスフォーメーションが起こっています。ファンの多くは複数のチームを応援しているようです。私が嬉しくなったところは、このあたりです。

…だが、自国チームだけをひたすら応援する少数派のファンでさえ、礼儀をわきまえている。1次リーグ中は試合後で混雑する地下鉄の車内でサウジアラビアの男性ファンの一団がイラン人と歌うメキシコ人のグループと交じり合い、それをスキンヘッドのイングランドのサポーターがほほ笑ましく見守り、スマートフォンで社内を撮影する。
あるいは、ヒジャブ(スカーフ)で全身を覆った女性とショートパンツの女性が入り交ったり、サッカーを巡る対立が強烈なブラジル人とアルゼンチン人が入り交じったりしていた。

(A課長)
私は実感がないのですが、昔はフーリガンの暴動騒ぎがあったようですね。

(Sさん)
私はその頃のことを知っているので、様変わりです。明らかに何かが変わってきました。ロシアのウクライナ侵攻により世界の分断が起こっていますが、その視点だけでは捉えられないオープンな世界が広がってきているのだと思います。

(A課長)
Sさん、それはSNSの力ではないでしょうか。もちろんフェイクも氾濫しています。ただZ世代を中心に、情報リテラシーは明らかに向上しています。今回のワールドカップに関するSNSは、ヘイト情報はいつのまにか淘汰され、世界の人が「いいね」と共感できる話が、どんどん広がっていったように感じています。

森保ジャパンについては、試合後のロッカールームや、森保監督がピッチに向かって深々とお辞儀をした画像などが世界に発信されています。

(Sさん)
40年前と今のZ世代を対比したところもありますね。

選手も同様だ。40年前、フランス対西ドイツやポーランド対ソ連などの試合は国家的な熱狂をはらんでいた。
しかし、現代のZ世代(1990年代後半~2010年代初め生まれ)は相手チームの選手を同僚として扱う。イランが米国に負け1次リーグで敗退が決まった時、リベリア大統領の息子であるティモシー・ウェアを含む米国代表の選手は涙を流すイラン人選手たちを慰めた。

マスコミには「分断」が溢れているが、Z世代を中心に「世界のオーブン化」が着実に進んでいる…

(A課長)
Sさん、モノの見方・視点はさまざまあるなぁ、と感じています。ある情報が与えられると、カーネマン教授の言うところの「速い思考」が、まず浮かびますが、メタ認知の思考である「遅い思考」のシステム2で捉えていくことがいかに大事であるか… 痛感させられます。そして、厄介なのはバイアスですね。
コーチビジネス研究所の「CBLコーチング情報局」が、そのあたりのことを解説してくれています。

(Sさん)
サッカーはスポーツであり文化です。そのサッカーに、それぞれのお国柄の違いを超えて、共通する何かを世界が見出しているのではないでしょうか。宗教性とも異なる「感動」を世界が「体感」することが出来る、ということを。
改めて文化のもつ価値を感じています。

思い出しました。40歳の頃、2週間ほどアメリカへマーケティングセミナーに行った時のことです。同室は、リクルートを経て起業し、スタートアップ期からアーリーステージ期の段階にある、私より5歳年下の会社経営者です。英語がベラベラで、自信に溢れているナイスガイでした。

とにかく彼はタフなんですね。日々のセミナーが終了してからが彼の本領発揮です。毎晩午前様になるまで街に繰り出すのです。英語がダメな私は結構辛かった…(笑)

(A課長)
Sさんのタフな時代が伝わってきます(笑)

(Sさん)
ある晩のことです。一人の白人が街頭でギターを持ちビートルズを歌っているのです。若社長はビートルズが大好きで、そこにいきなり介入します。ギターを持った彼もウエルカムで、二人のセッションが始まります。私もビートルズは数曲歌えるので、言葉がしゃべれないストレスを歌で発散しました。すると…

(A課長)
すると…?

(Sさん)
どんどん人が集まってくるのです。最終的には20人くらいの輪が出来ました。皆が一緒に歌うのです。黒人も私たち以外のモンゴロイドもいます。ビートルズは世界共通言語であることを実感しましたね。「これこそが文化だ!」と体感できたひと時でした。
スポーツ、音楽といった世界は、理屈を超えて共感できるのです。

「ビートルズ」が世界共通言語であったことをSさんは語ります!

(A課長)
いい話だなぁ~ 今度は私が思い出しています。お話ししてもいいですか?

(Sさん)
ええ、もちろん。

(A課長)
かなり前ですが、コーチビジネス研究所のコラムで、アインシュタインがフロイトに手紙を出し、フロイトがそれに応えた手紙の内容を取り上げていました。
ちょっと待ってください… 去年の4月6日ですね。コラムのタイトルは「心理学とコーチング ~ロジャーズ、フロイト、アインシュタイン~」です。

この往復書簡は、『ひとはなぜ戦争をするのか(A.アインシュタイン/S.フロイト 浅見昇吾 訳・講談社学術文庫)』として出版されています。その中の、フロイトがアインシュタインへの手紙の最後に綴った内容を紹介させてください。

…では、すべての人間が平和主義になるまで、あとどれくらいかかるのでしょうか? この問いに明確な答えを与えることはできません。けれども、文化の発展が生み出した心のあり方と、将来の戦争がもたらすとてつもない惨禍への不安……この二つのものが近い将来、戦争をなくす方向に人間を動かしていくと期待できるのではいでしょうか?

これは夢想(ユートピア)的な希望ではないと思います。どのような道を経て、あるいはどのような回り道を経て、戦争が消えていくのか。それを推測することはできません。しかし、今の私たちにもこう言うことは許されていると思うのです。
文化の発展を促せば、戦争の終焉へ向けて歩みだすことができる!

最後に心からのご挨拶を申し上げます。私の手紙が拙く、あなたを失望させたようでしたら、お赦しください。

「文化の発展」「情報のオープン化」によって、戦争がこの世からなくなることを信じたい!

(Sさん)
…… 今も現実にはウクライナで戦争が起こっている。でも、戦争の世紀である20世紀の真っただ中で、思索を深めていった思想界の巨人の預言を信じたいと思います。今回のワールドカップにその兆しを感じています。

(A課長)
ありがとうございます。
Z世代を中心として、世界の人たちの情報リテラシーはどんどん成熟しています。境界はだんだん溶けていくのではないでしょうか。
「文化の発展と情報のオープン化が両輪となって、世界のトランスフォーメーションは必ず起こる!」 そう信じたいと思います。

坂本 樹志 (日向 薫)

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