バワハラ防止法(職場でのパワーハラスメント防止措置を企業に義務付けた改正労働施策総合推進法)が2020年6月(中小企業は2022年4月)から施行されるのを受け、厚生労働省は2019年11月20日指針案を示しました。
パワハラ法については、下記の記事も併せてご覧ください。
https://coaching-labo.co.jp/archives/2439
パワハラ(職場のパワーハラスメント)の定義
パワハラ(職場のパワーハラスメント)とは、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」と定義されています。
【2019.11.20厚生労働省指針案の要旨】
職場におけるバワーハラスメントの内容
<職場におけるバワーハラスメント>
職場において行われる言動で次の①から③の要素をすべて満たすものをいいます。
①優越的な関係を背景とした言動である
②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものである
③労働者の就業環境が害されるものである
<職場とは>
事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所
当該労働者が通常就業している場所以外であっても、当該労働者が業務を遂行する場所については「職場」に含まれる。
<労働者とは>
正規雇用労働者のみならず、パートタイム労働者、契約社員等いわゆる非正規雇用労働者を含む事業主が雇用するすべての労働者
<優越的な関係を背景とした言動とは>
当該事業主の業務を遂行するに当たって、当該言動を受ける労働者が行為者に対して抵抗又は拒絶することができない蓋然性が高い関係を背景として行われるもの。
- 業務上の地位が上位による言動
- 同僚又は部下による言動で、当該言動を行う者が業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、当該者の協力を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難であるもの
- 同僚又は部下からの集団による行為で、抵抗又は拒絶することが困難であるもの
<業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動とは>
社会通念に照らし、当該言動が明らかに当該事業主の業務上必要性がない、又はその態様が相当でないもの。
- 業務上明らかに必要のない言動
- 業務の目的を大きく逸脱した言動
- 業務を遂行するための手段として不適当な言動
- 当該行為の回数、行為者の数等、その態様や手段が社会通念に照らして、許容され
る範囲を超える言動
<就業環境を害することとは>
当該言動により労働者が身体的又は精神的に苦痛を与えられ、労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じること。
パワハラ(職場のパワーハラスメント)の6類型と具体例
パワハラ類型と主な具体例
パワハラの6類型 | 該当する行為 (主な事例) | 該当しない行為 (主な事例) | |
1 | 身体的な攻撃 (暴行・傷害) | ・相手に物を投げつける | ・誤ってぶつかる |
2 | 精神的な攻撃 (脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言) | ・人格を否定するような発言をすること ・必要以上に長時間、繰り返し厳しく叱る ・他の労働者の面前で大声での威圧的な叱責を繰り返す ・能力を否定し、罵倒する ような内容の電子メール等を送信すること | ・遅刻や服装の乱れなど社会的ルールやマナーを欠いた言動 ・行動が見られ、再三注意してもそれが改善されない労働者に対して強く注意すること ・重大な問題行動を行った労働者に対して、強く注意すること |
3 | 人間関係からの切り離し (隔離・仲間外し・無視) | ・自身の意に沿わない労働者に対して、仕事を外し、長時間にわたり、別室に隔離したり、自宅研修をさせること ・一人の労働者に対して同僚が集団で無視をし、職場で孤立させること | ・新規採用労働者を育成するために短期間集中的に個室で研修等の教育を実施すること ・処分を受けた労働者に対して、通常の業務に復帰させる前に、個室で必要な研修を受けさせること |
4 | 過大な要求 (業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害) | ・長期間にわたる、肉体的苦痛を伴う過酷な環境下での勤務に直接関係のない作業を命ずること ・新卒採用者に対し、必要な教育を行わないまま到底対応できないレベルの業務を課し、達成できなかったことに対し厳しく叱責すること ・労働者の業務とは関係のない私的な雑用処理を強制的に行わせること | ・労働者を育成するために現状よりも少し高いレベルの業務を任せること ・業務の繁忙期に、業務上の必要性から、当該業務の担当者に通常時よりも一定程度多い業務の処理を任せること |
5 | 過小な要求 (業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと) | ・管理職である労働者を退職させるため、誰でも遂行可能な業務を行わせること ・気にいらない労働者に対して嫌がらせのための仕事を与えないこと | ・経営上の理由により、一時的に、能力に見合わない簡易な業務に就かせること ・労働者の能力に応じて、業務内容や業務量を軽減すること |
6 | 個の侵害 (私的なことに過度に立ち入ること) | ・労働者を職場外でも継続的に監視したり、私物の写真撮影をしたりすること ・労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露すること | ・労働者への配慮を目的として、労働者の家族の状況等についてヒアリングを行うこと ・労働者の了解を得て、当該労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、必要な範囲で人事労務部門の担当者に伝達し、配慮を促すこと |
(厚生労働省の資料を基に作成)
事業主が取り組むべきこと
前述のように、バワハラ防止法(職場でのパワーハラスメント防止措置を企業に義務付けた改正労働施策総合推進法)が2020年6月(中小企業は2022年4月)から施行されます。厚生労働省の指針案にも示されているように、事業主として以下のような対策を講じることが必要となっています。
- 職場におけるパワーハラスメント問題に関する研修の実施と必要な配慮
- 職場におけるバワーハラスメントを防止するための雇用管理上の措置
- 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
- 相談窓口の設置等
- コミュニケーションの活性化や円滑化のための必要な取り組み
- 定期的な面談やミーティングの実施
- 感情をコントロールする手法についての研修、コミュニケーションスキルアップについての研修の実施等
パワハラ防止に不可欠なコーチング
パワハラの防止は、規定や制度面の整備も重要ですが、なぜ、このようなことが求められているのか、その背景と趣旨、目的をよく理解することが大切です。この度、厚生労働省から指針案が示されましたが、これらはほんの一部でしかありません。基本的には、一人一人の尊厳を重んじ、相手が不快に思うような言動をしないという人間として当たり前ことが求められています。
パワハラが起きる大きな原因は、社内風土や人間関係にあります。指針案にも示されているように、風通しの良い職場環境や互いに助け合える労働者同士の信頼関係を築き、コミュニケーションの活性化を図ることが必要です。リーダー、マネージャーのみもならず、全社員に対し、パワハラ問題に関する教育研修はもちろん、人間関係改善、面談スキルの向上やメンタル面の教育が求められています。さらに、労働者の感情をコントロールする能力、コミュニケーションを円滑に進める能力等の向上を図ることの必要性も指摘されています。
これらをすべて解決できるのが「コーチング」です。コーチングには、「人は皆人生の主人公である」「人は無限の可能性を持っている」「相手のことを100%受け止める」「答えは相手の中にある」といった大切な考え方があります。
これらのコーチングの考え方を軸にして、コーチングスキルを身に付ければ、いわゆるパワハラに該当するような言動が起こることはありません。コーチングを学ぶことで、自分自身の感情をコントロールするセルフコーチング力も高めることもできます。パワハラ防止のためにも、全社員を対象にコーチング研修を導入することをお勧めします。
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