ストロークとは
私たち人間の肉体は栄養や睡眠を必要としています。それらがないと健康な状態で生きていくことができません。
人間の心にも、『人との接触から得られる刺激』が必要であると言われています。
この人とのふれあいがないと、人間は心のバランスを失ってしまって、心身の健康を保つことが難しくなってしまうというのです。
私たちが社会的な生活をするうえで、人との接触から得られる刺激をストロークと呼びます。
ストロークという言葉の意味は、“なでる”“さする”“愛撫する”などの意味がありますが、ここでは、「他の人の存在を認めるための行動や働きかけ」と定義します。
アメリカの精神分析医エリック・バーン博士は、「幼児に十分なストロークが与えられないと、その子の脊髄は萎縮してしまい、肉体的にも、情緒的、精神的にも成長が遅れてしまう」と言います。
子どもは成長するにつれて言葉を覚え、言葉を使って生活ができるようになっていきます。
そうすると、幼児の頃の肉体的な接触の欲求から、ほめられたり、うなずかれたりして、自分の価値、自分の存在を認めてもらえる“心のふれあい”を求めることに変わっていくと言われています。
このような言葉や無言の動作によって与えられるストロークのことを『心理的ストローク』と言っています。
人間は、無視されたりして、ストロークをもらえないと、『ストローク飢餓』の状態になってしまいます。
そうすると、例えば、母親や父親とふれ合いの少ない子どもは、わざと叱られるようなことをすることがあります。
叱られるようなストロークのことをマイナスのストロークと言いますが、マイナスのストロークであっても、全く関心を示してもらえないストロークがない状態よりはいいので、無意識的にそれを求めるようになってしまうと言われています。
ストロークの種類
ストロークは、下図に示すように、その刺激が肉体的なものか、心理的なものかによって、肉体的ストロークと心理的ストロークの二つに分けられます。
また、そのストロークの内容が、受ける側にとって肯定的な意味を持っているか、否定的な意味を持っているかで、肯定的ストロークと否定的ストロークに分けることもできます。
「こんにちは」「おはようございます」などの挨拶、あるいは「あなたに好意を持っている」とか「あなたは素晴らしい」などの肯定的な言葉は、すべてプラスのストロークです。
反対にマイナスのストロークとは、受け取った相手を不愉快な気持ちにさせるものです。
「あなたが嫌いだ」「お前の顔など見たくない」「近寄るな、あっちへ行け」などの、相手を傷つけたり怒りをぶつけたりする言葉がそれにあたります。
表情でいえば、プラスのストロークの典型的なものは笑顔であり、マイナスのストロークを示すのはしかめっ面や怒りの表情ということになります。
ストロークの種類
肯定的ストローク | 否定的ストローク | ストロークではないもの(ディスカウント) | |
肉体的ストローク | なでる、さする、愛撫する、抱擁する、握手する、など | 叩く | 殴る、ける、暴力をふるう、突き飛ばす、殺す |
心理的ストローク | ほめる、励ます、微笑む、うなづく、挨拶する、相手の眼を見る、相手の話をよく聴く、信頼する、任せる | 叱る、怒る、制止する | 皮肉を言う、嫌みを言う、けなす、無視、無関心、仲間外れ、情報を流さない |
ストロークにも良いストロークと悪いストロークがあり、それによって私たちは、育ったり損なわれたりします。
しかしながら、たとえどんなに悪いストロークであっても、ストロークの特徴は、相手の存在を無視しないで、認めることです。
それに対して、ディスカウントは、存在を認めないこと、価値を認めないこと、関心を示さないことをいいます。
より良い人間関係を築くには
エリック・バーン博士は、「人は何のために生きるのか…それは、ストロークを得るためである」と言っています。
人間は誰しも、他の人から触れてほしい、他の人から認められたいという欲求を持っています。
お互いに、認め合い、心のふれあいが持つことが大切です。
肯定的なストロークを受けた時には気持ちがいいし活き活きし、自信を持つことができます。
そこで、相手の人が欲しがっているストロークを与えることができれば、より豊かな人間関係を築いていくことができるはずです。
ところが、なかなかそうはうまくいきません。
なぜなら、私たちは皆、それぞれ自分なりのストロークの与え方、受け方のくせを持っているからです。
私たちは、子どもの時に両親や学校の先生などから、しつけを受けて育てられてきましたが、その過程の中で、一時的にもせよ、愛情を与えれなかったり、叱られたり、ほめられたり、無視されたりしてきました。
こうした幼児期のしつけを受ける過程の中で、他人とのかかわり(ストロークの与え方や受け方)を自分なりに身につけてきています。
そのため、よりよい人間関係を築いていくためには、次のようなことに注意する必要があります。
- 自分のストロークの与え方、受け方の傾向をつかむ
- 肯定的なストロークを与える
- 相手の存在を無視(軽視)しない
- 条件つきの肯定的ストロークを避ける(相手が自分の期待にそった行動をとった時にだけ与えられるストロークを“条件つきのストローク”と言います)。
- 相手に対して誠実で真摯なより深いストロークの交換をする
自分と他人に対する基本的な信頼感の質と量は、幼少時にどのようなストロークやディスカウントを受けたかに強く影響されると言われています。
肯定的なストロークの貯蓄
人に肯定的なストロークを与えるには、まず自分の中に、肯定的なストロークがたくさん貯まっていることが必要です。
自分の心の中に、肯定的ストロークがたくさん貯蓄されていると、相手の人に対しても肯定的なストロークを与えることができ、お互いに肯定的ストロークを与えたり、受けたりすることができ、益々肯定的ストロークの貯蓄を増やすことができるようになります。
ところが、これとは反対に、肯定的ストロークが少しずつしか貯まっていなかったり、否定的ストロークが貯まっていたりすると、憂鬱な気分になり、何事に対しても“つまらない”と思うようになってしまいます。
職場のストローク環境を整える
肯定的ストロークの貯蓄のことを考えると、いかに職場における管理者・監督者の役割が重要なものかが分かると思います。
部下やスタッフの人たちが、自分の能力に自信を持ち、その持てる能力をさらに発揮するためにも、職場のストローク環境を整えていくことが必要です。
そのためには、管理者・監督者自身が、自分の肯定的なストロークの貯蓄を増やして、部下やスタッフにも肯定的なストロークを与えていくかなければなりません。
職場のストローク環境をつくりあげていくのは上司の責任だけではありません。
職場全体の肯定的なストロークを与え合うような環境を整えることが大切です。
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