先日、NHKテレビの『パンデミックが世界を変える』という対談番組があり、経済学者・思想家のジャック・アタリ氏の発言が印象的でしたので、ご紹介します。
ジャック・アタリ氏は、『危機のサバイバル』(2009年)という著書の中で、既に今日のパンデミックを予想していたことで知られています。
「協力は競争よりも価値があり、人類は一つであることを理解すべきである。利他主義という理想への転換こそが人類のサバイバルの鍵である。
ポジティブ経済へ
『ポジティブ経済』とは、長期的な視野に立ち、私が『命の産業』と呼ぶものに重点を置く経済です。生きるために必要な食料・医療・教育・文化・情報・研究・イノベーション・デシダルなどの産業です。生きるのに本当に必要なものに集中することです。
共感と利他主義
利他主義は合理的利己主義に他なりません。自らが感染の脅威にさらされないためには、他人の感染を確実に防ぐ必要があります。利他主義であることは、ひいては自分の利益となるのです。また他の国々が感染しないことも自国の利益になります。例えば、日本の場合も、世界の国々が栄えていれば、市場が拡大し、長期的に観ると国益につながります。
他者を守ることが我が身を守ることである
家族・コミュニティ・国そして人類の利益にもつながる
利他主義とは、最も合理的で自己中心的な行動なのです。
経済は全く新しい方向に設定し直す必要があります。戦時中の経済では、自動車から爆弾や戦闘機へ企業は生産を切り替えなければなりません。今回も同じように移行すべきです。
ただし、爆弾や武器を生産するのではありません。
医療機器・病院・住宅・水・良質な食料などの生産を長期的に行うのです。多くの産業で大規模な転換が求められます。パンデミックの後の人々が再び以前のような行動様式に戻ってしまうかもしれないからです。
「歴史をみると人類は恐怖を感じる時にのみ大きく進化する」
前進するために、恐怖や大惨事が必要というのではありません。私は破壊的状況を望みません。むしろ魔法によって今すぐにでもパンデミックが終息してほしいです。
しかし、良き方向に進むためには、今の状況をうまく生かすしかありません。
「利他的な経済や社会」「共感のサービス」と呼ぶ方向に向かうことです。」
しかし、人類は、未来について考える力がとても乏しく、また忘れっぽくもあります。
問題を引き起こしている物事を忘れてしまうことも多いのです。過去の負の遺産を嫌うため、それが取り除かれると、これまで通りの生活に戻ってしまうのです。
人類が今、そのような弱さを持たないよう願っています。私たち全員が次の世代の利益を大切にする必要があります。それが鍵です。誰もが、親として、消費者として、労働者として、慈善家として、また一市民として投票を行う時にも、次世代の利益となるよう行動を取ることができれば、それが希望となるでしょう。」
(経済学者・思想家 ジャック・アタリ氏発言要旨)
この世界的な危機にどう立ち向かうか、まさにいま人類の英知と結束が問われています。
ジャック・アタリ氏が指摘しているように、自国や自己の利益だけを考えるのではなく、
私たち一人ひとりが、利他精神を持って誠実に対応することが必要です。
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