
発展への転換点は86年に始めたドイモイ(刷新)政策だ。中国の改革・開放をモデルに外資導入で工業化を目指し、冷戦後のグローバル化の波に乗った。国連によれば2023年の貿易依存度(国内総生産に対する貿易額の割合)は世界6位の156%と、後発国ながら特筆すべき成功を収めた。
その過程で埋めた分断は国内だけではない。95年に旧敵の米国と国交を回復し、「反共のとりで」だった東南アジア諸国連合(ASEAN)にも加盟した。戦火を交えた韓国はサムスン電子を筆頭にいまや最大の対越投資国だ。
(日本経済新聞4月27日2面総合「社説」より)
日経新聞の『直言』は、インタビューを超える「対話」です
毎週、日経新聞日曜版の2面を楽しみにしています。このコーチングコラムでもたくさん取り上げてきた、世界の識者にインタビューする『直言~Think with NIKKEI』が掲載されるからです。4月7日のコラムは、ユヴァル・ノア・ハラリ氏が登場する回を取り上げています。
今回も(日曜日のパターンです)、1面を早々に切り上げて、『直言』の2面を開きました。大見出しは「トランプ時代、日本の好機」です。トランプ関税によって、ネガティブな報道が氾濫する状況だからこそ「リフレーミング」を意図している…と、俄然興味を覚え、丁寧に読み込んでいます。オバマ・バイデン両政権で、米国のインド太平洋戦略を主導した重鎮、カート・キャンベル前米国務副長官に、秋田浩之さん(論説委員兼編集委員)が迫ります。
コラムの構成イメージも、ほぼ固まったところで、「さて書くか…」と、どの質問と回答をコラム冒頭で引用するか、考え始めたのですが……
今回のコラムは「社説」からスタートしようと思います
普段、同じ2面にある「社説」には、あまり興味は惹かれないのですが(断定口調…上から目線?…の文体に抵抗を覚えるので)、「分断乗り越えたベトナム」という見出しが目に止まります。ベトナムについては、開発経済の専門家である早稲田大学大学院教授とのご縁もあって、10年前に1週間かけて、ハノイ→ダナン→ホーチミンを訪問しています。ダナンでは「インターコンチネンタル ダナン サン ペニンシュラ リゾート」に特別料金で泊まっています(ご縁のおかげです。通常料金ではとてもとても…)。半島全体がホテルの敷地で、圧倒されました。日本では“絶対”ありえないスケールです。「行ってみないとわからない」ことを痛感した次第です。
そこでコラムについては、方針を変更して、冒頭で、この「社説」の半ばあたりを引用しています。その書き出しは…
東西冷戦下で国民を二分して戦い、300万人超の死者を出したベトナム戦争の終結から50年がたつ。分断を乗り越えた同国はめざましい経済発展を遂げた。それを可能にしたグローバル化と自由貿易の大切さを再確認したい。……
ちょうど3年前の4月21日に、「プーチン大統領とゼレンスキー大統領の『孤独』に関する一考察」というタイトルで、コラムを書いています。プーチンロシアがウクライナに侵攻したのは2月24日。世界に激震が走ります。コラムでは、4冊の本を取り上げ、そのとき私が感じた「想い」を綴ってみました。
『マクナマラ回顧録 ベトナムの悲劇と教訓(共同通信社/1997年)』
『我々はなぜ戦争をしたのか~米国・ベトナム 敵との対話(平凡社/2010年)』
『ベトナム戦争(中公新書/2001年)』
『戦争はいかに終結したか(千々和泰明・中公新書/2021年)』
そのコラムの最後に、『我々はなぜ戦争をしたのか』にある、執筆者の東さんとザップ将軍の「対話」を引用しています。再掲します。
以前の敵同士が相まみえた4日間の「対話」が実現した!
(東)
なぜ、べトナムがハノイ対話を受け入れたのか、日本人の私には簡単に理解できない面があります。一体なぜあれだけの被害を受けたベトナムが、マクナマラ氏らアメリカとの対話を受け入れたのでしょうか。(ポー・グエン・ザップ )
…… 一つ付け加えたいことがあります。歴史を振り返れば、アメリカがベトナムを侵略し、ベトナムがそのアメリカを打ち負かしたのは明らかです。しかしより正確に言えば、いったい誰が勝者で、誰が敗者だったのでしょうか。
もちろん、自由と独立のために闘ったベトナム人民の勝利であることは間違いありません。しかし同時に、ベトナム戦争に反対し平和を求めたアメリカの多くの人々の勝利でもあったのです。敗れたのは、ペンタゴンをはじめとして、戦争を好んで遂行した連中でした。
だからこそ私は、アメリカとベトナムの人々が、友好的な関係を築くのは決して不可能なことではなく、むしろ必要なことだと考えています。特に若い世代の人たちが、相手をより深く理解し、将来に向けて良好な関係を作ってくれることを私は期待しています。ハノイ対話のように、お互いをより深く理解するための機会を持つことは、21世紀の平和にとって非常に大切な事だと思っています。
すべては「対話」なんだ…という想いが、私に次のコメントを書かせています。
ベトナム戦争、そしてウクライナ侵攻は国レベル、そして巨大な時空の悲劇ですが、その根底には人と人のコミュニケーションの齟齬があるのではないでしょうか。ザップ将軍の未来志向の言葉に力を得ています。
ウクライナ侵攻はまさに現在進行形であり、その悲劇の行方は見通せません。……
それから3年が経過しました。「社説」は、次のように続きます。
内戦を泥沼化させたのは1965年に北爆を開始した米国の本格介入だ。米軍は物量で圧倒しながら、北ベトナム軍のゲリラ攻撃に苦しみ、73年に撤退する。市民への無差別攻撃や枯葉剤の散布は深い傷を残した。
米国とベトナムが「分断」を乗り越えたのは「対話」があったから
ホーチミン市の戦争証跡博物館を、日本語が抜群に堪能なガイドさん(五感で私の雰囲気を掬いとってくれます)の案内で、全館をゆっくり見て回りました。日本の博物館ではありえない、数々の残酷な写真が展示されています。「枯葉剤」の残虐性に言葉を失いました。
その後、統一会堂も参観しています。ベトナム戦争が終結したのは、私が17歳のときでした。私の父親は、14歳(中学2年生)のときに爆心地から2㌔の場所にある、県立第二中学校で被爆しています(爆心地付近で建物疎開に動員されていた1年生の321人は全滅しています)。
「ベトナム戦争(1955年~1975年)」の終結は、20年を経て訪れます。ただし、フランスからの独立を目指した第一次インドシナ戦争(1946年~1954年)も含めると、ベトナムは30年間、戦下にあったわけです。
トランプ大統領の「メチャクチャぶり」がどんどん露になり、「何が何だかわからない混沌」に、世界は覆われています。ただ…トランプ大統領から、動機と提案内容はともかく、「戦争を終わらせたい」という強い意志が伝わってきます。世界各国の首脳も、それは同じでしょう。ただトランプ大統領は、とにかく「動いている」。提案の中身も同様に「動いている」。「直接対話」も拒絶していない。仲介を放棄してしまえば、戦争は続く。その先に見えてくる「戦争の終結」は、悲惨な姿なのかもしれない……
コラムのまとめは、『直言』のインタビュアーである秋田さんの「インタビューにおける戦略性」について、感じたことを書いてみようと思います。
前回取り上げた『直言』では、インタビュアーの中山淳史本社コメンテーターの質問力に感服しました。中山さんは、ユヴァル・ノア・ハラリ氏の思考様式の本質を引き出していますから。
今回の、カート・キャンベル前米国務長官は、オバマ、バイデン大統領の側近ともいえる人物ですから、回答はかなりのボリュームで「トランプ批判」で占められると予想し、読み始めています。ところが…… キャンベル氏は、そのような「批判」は口にしていないのですね。日本の行動・振る舞いに期待しているのです。見出しは2つ、「自由貿易維持 今こそ出番」「中ロ枢軸の抑止を急げ」です。
秋田浩之さんの「戦略的対話」を最後に語ります
その「謎」は、最後に判明しました。秋田さんによる「インタビューから」の中で、理由が明かされます。秋田さんは「戦略」を立ててインタビューに臨んでいました。「抑えた批判」と、秋田さんは見出しを付します。
コーチングは「対話」です。秋田さんとキャンベル氏の「深い対話」を実感できた私は、日経新聞の『直言』をこれからもウォッチし続けますので。
インタビューに際し、強く心掛けたことがあった。前政権に仕えたキャンベル氏の発言が、トランプ批判だけに終始しないようにすることだ。そのような話に新味はないし、次へのヒントも得られないからだ。
だが、不安は杞憂(きゆう)に終わった。彼はトランプ氏への激しい個人攻撃には踏み込まず、米外交の現状に懸念をにじませるところで批判を寸止めした。
代わりに力説したのが、日本は「どうすればよいか」というテーマだ。(中略)
米国は深い分断を引きずり、すぐには身動きできない。その分、日本にもっと頑張ってほしい。彼のことばを意訳すれば、こんな苦渋の訴えになる。
(本社コメンテーター 秋田浩之)
坂本 樹志 (日向 薫)
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