プーチン大統領とゼレンスキー大統領の「成功・失敗」に関する一考察(2022/05/06)

権力にはしばしば偽善が伴う。冷戦時代、米国は民主主義を標榜しながら、収奪や大量殺人に手を染めるならず者政権を世界各地で擁立したり、支援したりしてきた。おそらくEUはこの先も本音と建前を使い分けていくだろう。身勝手な利益を「欧州の価値観」と言い換え、ロシアの脅威に対する安全保障を、民主主義やよき統治より優先するはずだ。

日本経済新聞5月4日朝刊の『FINANCIAL TIMES/危ういEUの「価値観外交」(シニア・トレード・ライター アラン・ビーティ)』の一節です。

今回の1on1は「異質の調和」からスタートします!

(A課長)
以前の1on1で、Sさんが日経新聞の「ソニーとホンダ」の異業種提携の記事を紹介いただき、価値観が似通う同じ業界同士の企業ではなく、異なる価値観だからこそ「新結合」、すなわちイノベーションが生まれるのではないか、という話が展開されました。

そして前々回の1on1では、4月19日の日経新聞の「連合会長、自民会議に出席~野党の支持団体で異例」という記事に目が止まったことで、コーチビジネス研究所の五十嵐代表が提起している「異質の調和」という概念について思い至り、熱く語ったように記憶しています。
今回の1on1は、そのあたりをもっと深めてみたいと思うのですが、いかがでしょうか?

(Sさん)
「異質」と「調和」…考えてみれば対極ともいえる言葉ですね。
「それによって創造的な仮説が得られる可能性が大きく高まり、だからこそ調和する力は、人の成長と組織の変革にも深く関わっている」と、いう内容だったと思います。
実に深遠な捉え方だ。

ところで日経新聞については、「こうあるべきだ!」というイズムが漂っていないのが気に入っています。ある意味で柔軟な新聞ですよね(笑)
今日はAさんが日経を読み込んで臨まれているようなので、私としても望むところです。

(A課長)
Sさん流言い回し…「のぞむ」の連呼ですね。さすがです(笑)

(Sさん)
見破られましたか(笑)
私もいつものようにしっかり読んでいますので、OKです。

(A課長)
私が取り上げたいのは、5面Opinionです。英フィナンシャルタイムズのコラムや記事を翻訳して、月水金に掲載されるページです。
確か2015年でしたか、世界的なクオリティペーパーとして高い評価が確立している英フィナンシャルタイムズを日経が買収したことを知って、驚きました。買収額も1600億円です。

(Sさん)
1600億円ですか… それはスゴイ!
金額は知りませんでした。2015年ということは、兆円単位のM&Aが飛び交う前ですね。日本の新聞社が世界に名をとどろかせているマスコミを買収したわけで、画期的なことでした。

私も英フィナンシャルタイムズのページは読むことにしています。日本文化の価値観が内在化している自分のモノの見方に、必ず一石を投じてくれるので、毎度毎度新鮮な感覚を得ることができます(笑)

英フィナンシャルタイムズは思考の相対化につながる…!?

(A課長)
私もSさんと同じです。買収によって日経新聞はドメスティックでありながら、他の新聞とは異なる、世界を俯瞰する立ち位置を得たと感じています。

今日の記事は、ウクライナのEU加盟がテーマです。NATOは軍事同盟ということもあり、EU、米国、そしてウクライナ自身も加盟を否定しています。ただEUについては、ウクライナが意欲を示していることもあって、私も含め多くの日本人がウクライナの加盟を応援する気持ちになっていると思います。
ところが、今日の英フィナンシャルタイムズの記事は異なる視点です。

(Sさん)
そうでした。私も少し違和感を覚えたのですが、考えてみれば英国はEUを離脱しているので、「はは~ん、もろ手を挙げて肯定できないわけだ…」と解釈した次第です。

(A課長)
そうなのですね。ただし「一理あるな」、と感じました。記事の主要テーマはロシアのウクライナ侵攻ではなく、EUの移民の流入に関するスタンスです。

……EUは「欧州人の生活様式を守るために」という当てつけがましい大義名分の下、移民の流入を制限している(この文言はさすがに批判を受け、変更を余儀なくされた)。そのため移民申請にやって来る人たちをEU域外へと押し戻す違法行為を繰り返し、国際法や人権をないがしろにしている。

15~16年の難民申請ではトルコに資金援助をし、シリアなどから欧州を目指していた難民を受け入れてもらうという見苦しい策を講じた。リビアとの合意は倫理的にいっそう強く非難されるべきもので、大勢の難民が性的暴行、拷問、殺人の横行する刑務所に収監された。……

同じ難民でも受け入れ国のスタンスは異なってしまうのか…!?

(Sさん)
プーチンロシアという安保理常任理事国がウクライナに侵攻したその衝撃によって、日本のマスコミ…おそらく世界も同様だと想像しますが、戦況が毎日報道されています。SNSによるリアルな映像もあり、対岸ではなく自分ごとのように受けとめる環境が生じています。さらに、ものすごい数のウクライナ難民がポーランドなどに流入しています。

ただ… 記事で取り上げているシリア難民とは、受け入れのスタンスが違っているのも、現実を映し出しています。

戦争は直接的被害もさることながら、拡大し長期化が必然となる宿痾たる難民問題が現出することを改めて実感させられます。

(A課長)
Sさん、私は地球規模の二大問題は、気候変動がいよいよ実感される地球環境問題と、この難民問題だと感じています。国連難民高等弁務官事務所、UNHCRのホームページは次のようなコメントで始まります。

UNHCRのホームページ ~数字で見る難民情勢(2020年)~

2020年末時点で、紛争や迫害により故郷を追われた人の数は8,240万人となりました。
2020年の間に、新たに故郷を追われた人は約1,120万人に達しました。初めての人もいれば、これまで複数回移動を余儀なくされている人も含まれます。

(Sさん)
今日は、私が想像するのとは埒外の数字をAさんから教えてもらう1on1になっている… ウクライナの状況は毎日報道されるので、受身でもどんどん情報が入ってきますが、報道されないことで、我々が知り得ない真実が膨大に存在することに気づかされます。
Aさん、今私は「覚悟」という言葉を想起しています。

真実に少しでも近づくには、情報に関して常にオープンにあらねばならない!
このことは、とてつもない努力を起動させ、強い意志をもって臨んでいかなければ実現しない!

つまり「覚悟をもつ」ということです。

(A課長)
私も実感します!
「見たいものだけを見て、聞きたいものだけを聞く」という認知心理学の知見を平たく表現したこの言葉を、Aさんと何度も確認し合っていますが、「バイアスに囚われてしまう私たち」から「少しでも進化していく」ためには、まさに「覚悟」が求められます。

(Sさん)
Aさんとプーチン大統領について、前回は「権威」、そして前々回は「孤独」というテーマで、1on1をやってみました。
プーチン大統領は就任して早々に、長期にわたるチェチェンとの紛争を力でねじ伏せます。

世界紛争地図/「世界情勢」探究会(角川SSC新書・2010年)』で、次のように書かれています。

02年10月には、チェチェンの武装勢力がモスクワの劇場を占拠する事件が起きた。自動小銃や爆弾で武装した約50人の犯行グループは、700人以上の観客を人質に立てこもると、チェチェン共和国から1週間以内にロシアが撤退することを要求。それが受け入れられなければ劇場を爆破すると訴えた。
これに対してプーチン大統領のロシア政府は、事件発生の4日後に特殊部隊を突入させ、犯行グループ全員を殺害。同時に人質約130人も死亡するという大惨事となった。

この事件に象徴されるように、00年にロシア大統領に就任したプーチン大統領は、チェチェン問題に対して極めて強い態度で臨んだ。チェチェンの過激派がテロ攻撃で抵抗しても、あくまで制圧を優先する姿勢を貫いたのだ。04年には北オセチア共和国の中学校に攻め入ったチェチェン独立派が1000人以上を人質に立てこもる事件も起きたが、この時も300人以上の犠牲者を出しながら制圧している。

プーチン大統領にとっての最初の成功体験はチェチェン紛争…!?

遡ること16世紀に帝政ロシアからの侵攻を受け、19世紀にロシアに併合されたのがこの地域であり、チェチェン人は民族としての独立心が強く、ロシアから常に警戒されていたという背景があったようです。

そして登場するのがスターリンです。
第二次世界大戦中に、「チェチェンは敵国であるドイツに協力するのでは…」という猜疑心が膨らんだスターリンによって、50万人以上がシベリアや中央アジアへ強制移住させられています。

プーチン大統領はそのチェチェン人に対して呵責容赦ない手法で制圧したのです。
世界は当然非難しています。ただチェチェンはロシア連邦内の共和国ということで、このたびのウクライナのような非難決議の広がりはなかったのですね。

(A課長)
私が中学生の頃だったと思うのですが、チェチェン紛争についてはおぼろげに記憶しています。そうか… プーチン大統領は、「前任のエリツィン大統領には手に負えなかった大問題を自分の力によって電光石火で解決した!」という成功体験として受けとめたのかもしれないですね。

それから…旧ソ連時代に、粛清の累積による恐怖政治で100以上の民族を統治したスターリンをロールモデルにしているような気がします。

(Sさん)
スターリンという人物は、大戦後世界に広がっていった社会主義的国家にとってのカリスマであり、崇拝の対象でした。他の独裁者のように悲惨な最後をとげるどころか、神のような存在のまま亡くなっています。

ただし、フルシチョフの「スターリン批判」によって、実像が世界に発信されます。
このことは、世界の信奉者の間に大混乱をもたらすのですが、とにもかくにも本人は英雄のまま生を全うしています。

徹底した情報統制は秘密警察であるKGBが作り上げた密告網によって維持強化されます。スターリンの頃も2億人の人口を抱える連邦国家でしたが、隠蔽体質というか、情報を外部に漏らさない監視国家の稠密な機構をスターリンはつくり上げています。

KGBが出自のプーチン大統領にとっては、フルシチョフ以前の国家体制こそ、独裁者として盤石な権限、権威を獲得するための必要にして十分な条件であると、信じるようになっていったのではないでしょうか。

プーチン大統領の経済的手腕とは…

(A課長)
Sさん、ウラジミール・プーチンでWikipediaを検索してみます。ちょっと待ってください… おっ、すごいボリュームだ。

私はプーチン大統領に関して、石油や液化天然ガスといった資源によってロシアを復活させた経済的手腕をイメージします。ええっと…このあたりですね。
2期目となる2004年のロシア大統領選挙で70%以上の圧倒的得票で再選したと書かれています。

……ロシア経済は原油価格の高騰に伴い2期目も実質GDP成長率で年6~8パーセント台の成長(2004年 – 2007年)を続けた。ただしその多くがエネルギー資源に依存していたため、その経済構造を是正し、より一層の経済発展を達成することを目的として、プーチンは2005年7月に製造業とハイテク産業の拠点とするための経済特区を設置する連邦法に署名した。
それによって同年12月に6箇所の経済特区が設けられた。

8年間のプーチン政権でロシア経済は危機を脱して大きく成長し、ロシア社会から高い支持と評価を受けている。国内総生産(GDP)は6倍に増大(購買力平価説では72パーセント)し、貧困は半分以下に減り、平均月給が80ドルから640ドルに増加し、実質GDPが150パーセントになった。……

豊かになる実感を得たロシア国民にとってプーチン大統領は救世主です。
ただし続けて読んでいくと…だんだん雲行きが怪しくなっていく…

……2011年12月4日投開票の下院選挙において、プーチン率いる統一ロシアの不正を示す動画がユーチューブに投稿された。また、下院選挙に国際監視団を派遣した欧州安全保障協力機構は「水増しなどの不正操作が行われた」、欧州会議は「多くの不正が行われ、政府による監視活動妨害があった」と発表した。ロシアの民間団体「選挙監視団」も統一ロシアの得票率が中央選管発表の49.3パーセントを大幅に下回る30パーセント以下だったとする調査結果を発表した。……

ロシアの飛び地であるカリーニングラードで、不正疑惑をめぐって政権を批判する12万人規模のデモが開かれたとも書かれていますね。

独裁型長期政権の行く末とは…

(Sさん)
「長期政権は必ず腐敗する」と言われますが、プーチン大統領にとっての逆回転が始まっています。こうなるとなかなか変わることができない… 独裁体制を築いてしまったから、誰も意見を言えない。

「孤独」「権威」、さらに「成功体験の呪縛」が加わり、プーチン大統領は、俯瞰した意思決定ができない精神状態に追い込まれていったのかもしれません。

(A課長)
一方のゼレンスキー大統領はコメディアン出身です。
私は日本のTVは吉本興業の芸人の人たちの力でもっている、と常日頃より感じています。芸風はさまざまですが、視聴者の気持ちをつかむ能力というか、次から次へと繰り出される会話術というか、本当にスマートな人たちですよね。

特にTVで視聴率を稼ぐことができる芸人は、ハンパない努力を積み重ねている人たちです。吉本興業の芸人とゼレンスキー大統領を符合させてしまうのは「いかがなものか」と言われてしまいそうですが…

(Sさん)
レーガン大統領はハリウッドのB級俳優でした。役者としては成功していないようですが、「視聴者から受け入れられることがすべて」という自分を徹底的に相対化させる努力を積み重ね、その上で政治の世界に入り、問題意識を高め、理念を行動につなげていった延長上に大統領職が待っていたのだと思います。

(A課長)
ゼレンスキー大統領のWikipediaには、こうあります。

……2015年、ウクライナの「1+1」でゼレンスキーが主演する政治風刺ドラマ『国民の僕』(こくみんのしもべ)が全24話で放映された。一介の歴史教師がふとしたことから素人政治家として大統領に当選し、権謀術数が渦巻く政界と対決する姿を、ユーモアを交えながら描いた同作はウクライナで大流行した。(中略)

ドラマ『国民の僕』の流行によって、国民の間では作中で描かれた主人公とゼレンスキーを重ね合わせ、現実の大統領選挙への出馬を期待する動きが起きた。2018年、ゼレンスキーは期待に応えて来年の大統領選出馬を声明した。……

そして決選投票で圧倒的な得票率によりポロシェンコに勝利し、大統領に就任します。まるで劇画のような展開です。
ただ現実は甘くなかったようで、期待が膨らんでいた分、支持率はどんどん下降していき、2021年10月には支持率25%まで後退しているのです。

ものすごく悩んだと思います。ただこの失敗体験によって、「どうしてこのような状況を招いてしまったのか」を自問自答し、そして周囲のアドバイスに耳を傾け、立て直していったのだと想像します。まさにレジリエンスです。

ウクライナ侵攻以降のゼレンスキー大統領の肝の据わった態度とコミュニケーション能力は世界が認めるところです。

「孤独感の有無」「権威の強弱」「成功と失敗体験」のファクターを人間という対象に当てはめ研究した場合のアウトプットとして、プーチン大統領とゼレンスキー大統領の姿がクローズアップされるような気がしています。

本日の1on1の〆はPVPです!

(Sさん)
Aさんはコーチングの素晴らしさをいつも語ってくれますが、人が生きる目的である「Purpose」、人は何を価値として生きていくのかという「Value」、それを実現するためのブレない意志である「Principle」…このPVPを探求していくことがコーチングということなのですね。
あれっ? このPVPってAさんから伝授されたと思うのですが…

(A課長)
はい、コーチビジネス研究所五十嵐代表のメッセージです。VUCAの時代であり、私個人もアップダウンの連続だと覚悟していますが、このPVPを追い続けていこうと思っています。

坂本 樹志 (日向 薫)

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