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米国は7割の経営者にプロコーチが付いているのに、日本でコーチングが普及しないのは何故?

コーチングは、経営者それぞれの個性を生かし、経営者自身の持っている力を最大限に引き出すことにあります。こうしたコーチングを通じた経営者の支援を、今後もっと広めていきたいと思います。経営者のコーチングに対する抵抗感を和らげ、多くの経営者が利用するサービスへと発展させたいですね。

こうしたコーチングの世界を広げるための施策のひとつとして、7月14、15日には日本エグゼクティブコーチ協会の主催で『チャレンジを支援する会社を作ろう』と題するオンラインシンポジウムを開催します。コーチングで未来を応援するという考えや意義などを発信したいと考えています。
( 一般社団法人日本エグゼクティブコーチ協会会長 五十嵐久~産経新聞社「イノベーションズアイ」インタビューより引用) 

心理学を学びコーチングの資格を有する新進気鋭の若手A課長と、部長職を長く経験し、定年再雇用でA課長のチームに配属された実践派のSさんとによる、2023年22回目の1on1ミーティングです。

とどまることなく進化する哲人には対話があった!

(A課長)
Sさん、前回の1on1は、日本経済新聞第二部の1面に掲載された五木寛之さんのインタビューを取り上げるところから始まりました。そこから吉本隆明さんの『今に生きる親鸞』を深掘りする内容になりましたね。

(Sさん)
今Aさんは「深掘り」と言いましたが、「親鸞をこれほどまで深掘れるのか!」と感嘆せざるを得ないこの本は、隆明さんと編集者のコラボレーションによって生まれました。そのことを隆明さんは明言しています。
Aさんの、「対話であるコーチングの力によって創造された本」という言葉に納得です。

(A課長)
ええ、お二人の深掘りが、私たちのコーチング型1on1にケミカルな反応をもたらしたのは確かです。コーチングのマイニングに終わりがないことを実感します。
私は「コーチングって何だろう?」と、無意識のときも… あっ、アドラーは無意識と意識を分けていないので、ちょっと違いますね。いずれにしても、ぼんやりしているときも、何かしらコーチングのことを考えているようです。

(Sさん)
Aさんは、私がその本の中で唯円のことを説明している隆明さんの言葉を紹介すると、すかさず、「面白い! コーチング的に捉えると、唯円という優れたエグゼクティブコーチの質問によって、エグゼクティブ親鸞が思わず自己開示してしまった、ということですね。それが随所に出てくる」と、反応しました。

親鸞に真剣勝負のコーチングを挑んだ唯円!

(A課長)
言いました。アドラー説は正しい(笑)
さて、今日の1on1ですが、これまで日経新聞の第二部は、付録だという印象をもっていたので、ほとんどスルーしていました。ところが、前回の五木寛之さんの特集が、Sさんとのユニークな1on1につながったので、「思い込みは世界を狭める!」と反省し、6月3日、土曜日に挟まれる『NIKKEI プラス1』に、しっかりコミットしてみました。

(Sさん)
おっ、Aさんは何かの気づきを得た?
土曜日の『NIKKEIプラス1』は、シリーズ企画の「何でもランキング」ですよね。その日は… はて、何だったかな?

5月26日、金曜の日経新聞第二部1面は、上半分が五木寛之さんの巨大な写真でした。圧倒的なAttentionです。私はInterestを覚え、内容を追っていくうちに、この記事をAさんに伝えたいDesireがむくむくと生じ、脳内の引き出しにしっかりMemoryされました。そして1週間前の1on1のテーマとして提案する、というActionにつながったわけです。
土曜日の『NIKKEIプラス1』は、最近はやりの「線画人物のイラスト」をAttentionとしていたように記憶しています。ブームというか、猫も杓子も状態なので、かえって目立たない。スルーしてしまいました。

(A課長)
AIDMAですね。Sさんは、『NIKKEIプラス1』の方にはフィットしなかったわけだ。ターゲティングの失敗です(笑)

(Sさん)
日経新聞は、英フィナンシャルタイムズをグループにもつ世界規模の総合紙ですから、私のような変わり者を相手にしているわけではない(笑)
失礼、まぜっかえしてしまいました。Aさん、そのランキングを紹介してください。

日本経済新聞が推す「ビジネススキル動画学習コンテンツ」とは?

(A課長)
はい。では今日の1on1のテーマということでやってみましょう。記事の見出しは「その仕事スキル 動画で学ぼう」です。1面と2面を使って、10のスキルが紹介されており、それぞれ300文字くらいの解説文で構成されています。
各スキルには簡潔な特徴も添えられています。とりあえず並べてみましょうか。

1位 プレゼンテーション : プライベートでも大活躍のスキル
2位 マネジメント : 若手こそが身に付けるべき知識
3位 デジタルツール活用 : 意外と簡単なデータ分析
4位 デジタルトランスフォーメーション : 導入の目的も動画で解説
5位 マーケティング : 万人に役立つビジネスの基本
6位 セルフマネジメント : キャリア形成を自律的に
7位 統計学入門 : 仮説構築や課題解決に役立つ
8位 ライティング(ビジネス文書) : いつの時代も必要な能力
9位 タイムマネジメント : 個人もチームも生産性向上
10位 動画編集 : 内製してすばやく配信

(Sさん)
日経新聞はトレンドをしっかり追っているので、このランキングも「なるほど…」と、感じられます。ただスキル系は、自然科学と違いますから、単純な序列はつけにくい。まあ人気投票のようなものとして理解すればいいかな?
このデータというか、ランキングの根拠は何でしょう?

(A課長)
ええ、「専門家が薦める動画学習サービス」と付記されています。

有料・無料を含めると動画学習コンテンツは数多くある。何から始めていいか分からない人のために、専門家にお薦めの動画コンテンツを聞いた。

と始まり、数名の専門家が推すスキルを日経新聞が“独自の視点”で順位付けしたようですね。

(Sさん)
わざわざ“独自の視点”と日経はコメントしているのですか?

(A課長)
いえ、これは私の勝手な補足です。入試問題などの採点は明快な解答を基準に採点されますから、客観的に合否が決まります。ですから、蛇足を自覚のうえで、言葉にしています。

アファーマティブアクションどころか…

(Sさん)
なるほど… ただその入学試験も、少なからずの医学系大学や医学部で、女性の採点が公正でなかったことが明らかになって社会問題になりましたね。今ではもちろん是正されていると思いますが…

(A課長)
思い出します。アファーマティブアクションについては賛否がもちろんあります。この不公正は、さらに逆アファーマティブアクションですから、弁解の余地はまったくない。

(Sさん)
テーマからズレてしまったかな?
Aさんは、このランキングを受けて、どのように受けとめているのでしょうか。

(A課長)
Sさんのファシリテーションで、私も思わず羽を広げてしましました。戻しましょう。
私は、ランキングそのものは「まあいいかな…」という思いです。いずれもがトレンドをしっかりグリップしています。前回の1on1のテーマである「リスキリングよりアンラーンが求められている」、が腑に落ちる内容も含まれていますし。

大学もリベラルアーツの観点や、これまで注目されていないカテゴリーがにわかに脚光を浴び、新設学部ラッシュとも言える状況です。

データサイエンスは文理融合のリベラルアーツ!

(Sさん)
そういえば、一昨日月曜日の日経新聞『チーム池上が行く!』に、パックンが、お茶の水女子大学と一橋大学に取材した内容が掲載されていましたね。ちょっと持ってきます… 23面の「18歳プラス~Growing up」です。

お茶の水女子大では、すべての学生を対象にデータサイエンスの授業が行われています。ユニークな分析をしている授業を見学しましたので紹介しましょう。学生たちは真剣な表情で参加していました。
土山玄准教授が「源氏物語のテキストデータを対象として分析事例を紹介します」と説明しました。日本の古典を使うという方法は意外でしたが、「助詞、助動詞、接続詞といった文法的な機能を担う単語に書き手の個性が出るだろうと考えられます」(土山准教授)

(A課長)
面白そうですね。まさに文理融合だ。

(Sさん)
一橋大学の新設学部も実にユニークです。

続いて一橋大の国立キャンパス(東京都国立市)を訪ねました。72年ぶりの新学部として作られた「ソーシャル・データサイエンス学部」を取材するためです。この学部は社会科学とデータサイエンスの融合による現代社会の課題解決を目指しています。

一橋大は文系、社会科学系の学部を集めた最難関の国立大学ですが、この学部の第一期生は、ほとんどが理系だということです。72年ぶりの新学部というのも、ちょっと驚きですが、リベラルアーツが教育の現場を変えようとしています。従来型の分類は、実際のところ賞味期限切れが進んでいたということです。

類型化されることで分かりやすくなりますが、あくまでも一つの見方です。ガラガラポンも必要だ。私はエキサイトメント・シーカーを自認しているのでワクワクしています。

一旦形成された分類も変化し解体されるのがまさに“常態”!

(A課長)
Sさんとはリフレーミングを常に語ってきました。学問として捉えられている対象もどんどん塗り替えられますし、解体もされる。

ランキングを改めて見ると、10テーマのレベル感というか、切り口はバラバラです。オールドな分類と、新しいテーマが混在していますし、スキルの狭さ広さもさまざまな10テーマです。分類学を専門にしている学者がこの10のカテゴリーを見ると、ストレスで胃の毛細血管が軋んでしまうかもしれない(笑)

(Sさん)
学問の基本は分類ですから(笑)

(A課長)
Sさん、2位のマネジメント、それから5位にマーケティングが取り上げられていますが、この二つはビジネスにおける「不動の3番・4番」といった感じですね。ただ包含する分野も幅広い。Sさんが解説してくれたAIDMAもマーケティングです。理論とは別モノですが、未だに古びることなく納得できる視点です。

(Sさん)
ありがとうございます。
それで… この10テーマをAさんが腹落ちして語ってくれているのが伝わってくるのですが、Aさんは何かを考えているような気がします。この10のランキングにコーチングは登場していません。Aさんはコーチングの申し子ですから、そのことを口にしないのは何故なのか?
さきほどから私の頭の中で「?」が浮遊しています。

(A課長)
見抜かれましたか(笑)。私がコメントしない理由は… 何故だかわかりますか?

(Sさん)
実は面白くない…

(A課長)
いえ、ホッとしています。

(Sさん)
ううん…それは何故?

(A課長)
逆質問ですが、ここにコーチングが入っているとしたら、Sさんはどう感じますか?

(Sさん)
……なるほど。Aさんの意図がわかりましたよ。Aさんはコーチングのことを常日頃「ただのスキルではない」と言っていますよね。

コーチングは多くのスキルを包摂する人生を豊かにする基盤!

(A課長)
Sさんがコーチャブルなので対話が進みます。コーチングにはもちろんスキルも求められます。禅問答的な表現を許していただくとして、「コーチングとはスキルを超えたスキルが満載された人生を豊かにしてくれる基盤」ですから、「スキルの一つである」と誤解されるのを回避しなければならない。

コーチングは、1位のプレゼンテーション2位のマネジメント、さらにマーケティングも包含します。セルフマネジメントはコーチングに直結する内容です。ですから、ベスト10とはいえ、その1つに紛れ込んでいなかったので、ホッとしているというわけです。

(Sさん)
共感できます。ただ残念なのは、数多く出版されている「ビジネススキル本」の中には、コーチングをビジネススキルの一つとして解説しているものもある。

(A課長)
そうなんですね。その背景には、コーチングが「コーチング」という英語表現のまま輸入され、今に至っている、ということもあると思うんですよ。
ビジネスとしてのコーチングは、1990年代になって米国で誕生しました。日本でその名前が広がり始めたのは2000年あたりからです。
ただ、日本において「ing」が付いていないコーチという言葉は、敗戦によって「英語」が解放され、さらに東京オリンピックで、東洋の魔女が金メダルを獲ったことで、日本語化したといっていいくらい「日常語」として定着しました。その共有認識は「スパルタ教育」です。

「コーチ」イコール「スポーツコーチ」であり、「指導者の厳しい指導に耐え抜いた者こそが栄冠を勝ち取る」というイメージが、まったく別の概念の「コーチング」とダブって受けとめられたことがあると思うのですね。コーチングはまさにリベラルアーツです。
そもそもコーチという言葉の本質も半世紀前の日本では誤解され定着してしまった。価値観と化してしまいましたから、これは強固です。

もっともスポーツの世界も、水泳の平井コーチや、野球の栗山監督のようにコーチングを究めた人が「本来のコーチング」を体現してくれていますから、日本もその本質の理解が進んでいます。

(Sさん)
平井コーチも栗山監督も「私はコーチングを実践しています」と、言葉にされていないので残念ですよね。コーチングは一般名称ですから、そうコメントしてくれてもいいのに(笑)

(A課長)
おっしゃる通り!
一方で、公的資格ではないコーチングを都合よく解釈して、とてもコーチングとは言い難い“自称コーチ”も増えています。悩ましいところです。

(Sさん)
それが現在の日本の実態だ。

日本でもコーチを付けたいというニーズは着実に高まっている!

(A課長)
ですから、機会を見つけてアナウンスしていくことが大切だと実感しています。
JEA、日本エグゼクティブコーチ協会の五十嵐久会長が、産経新聞社「イノベーションズアイ」のインタビューを受けて、次のように語っています。

アメリカでは経営者の7割はコーチを付けていると言われるくらいコーチングが普及していますが、日本でもコーチを付けたいというニーズは着実に増えてきています。最近は1対1のコーチングだけでなくチームコーチングの手法を用いた組織変革も注目されています。同時に、コーチになりたいという人も増えています。この背景にはコロナ禍があったようにも思います。コロナで仕事をやめたり、在宅勤務などで時間ができ、今後のことをいろいろと考える人が増え、そうした中でコーチングを学びたい人、コーチ志望の人が出てきたのだろうと思います。
ただ、いいかげんなコーチ、専門的な技術や知識を持たないコーチも増えています。これは業界にとっても良くないことです。コーチの資格は民間資格ということもあり、スクールによって教える内容も違っています。業界全体の課題でもあります。

(Sさん)
コロナ禍は間違いなく「自分と社会の関係を見つめ直すきっかけ」を私たちに与えました。五十嵐代表の言葉通り、日本でも「本当のコーチング」が求められる環境が生まれつつあります。だからこそ、コーチングの真の素晴らしさを伝えていかなければならない!

(A課長)
Sさん、ありがとうございます。エグゼクティブコーチの一人として、この日本に真のコーチングを浸透させるべく微力ながら歩みを進めていこうと思います!

坂本 樹志 (日向 薫)

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