コーチングの3原則「双方向」「個別対応」「現在進行形」を包摂した1on1とは…?(2021/12/13)

コーチングの3原則とは、双方向(インタラクティブ)、個別対応(テーラーメイド)、現在進行形(オン・ゴーイング)のことです。
1on1ミーティングはこの3原則が自然に組み込まれていることが求められます。

  1. 双方向… 上司と部下という役職に基づく関係ではなく、お互いが対等なスタンスでセッションを進めていきます。ところが、そのことを事前に確認し合っていても、暗黙裡に「肩書」が作用してしまい、本音の会話が紡がれていない1on1が数多く行われているのが実態です。パートナーシップこそが1on1の前提となります。
  2. 個別対応… 人には個性があります。上司部下ともまずはその個性を尊重し合い、上司が部下の個性をジャッジメントすることなく会話は流れていきます。したがって、それぞれの1on1は実に多様であり、誘導されて進行していくわけではありません。
  3. 現在進行形… 1on1は継続です。1回2回のコミュニケーションで成果を出そうとするのではなく、また1on1以外のシーンでも1on1を意識した関係性が続いていくと認識することが大切です。時間と共に両者の関係が深まっていくのが1on1です。

前回のコラムは、リーダーシップ理論のコンティンジェンシー理論を取り上げました。その最後のところで、A課長が「……次回はP. ハーシィ & K. ブランチャードの『SL理論』を取り上げたいと思います。私はとてもエレガントな理論だと感じています。いかがでしょうか?」と発言しています。

今回はその続きとなりますが、書き手である私もSさんとA課長の会話の趣くままに身を委ねてみようと思います。

コンティンジェンシー理論とコンティンジェンシー計画って違うの?

<Sさん>
今回の1on1のテーマはAさんが「エレガント!」と感じているSL理論ですね。私は美意識に自信がないので、Aさんと思いを共有できるか少し不安ですが、よろしくお願いします。

<A課長>
Sさんの言い回しには毎回刺激を受けます。エレガントという外来語を美意識と結びつけるSさんにまたしても一本とられた感覚です。こちらこそよろしくお願いします。

<Sさん>
また分析癖が出ていますよ~ フィーリングで思わず出た言葉なので、何も考えていません。そうそう、外来語で思い出したのですが、前回テーマのコンティンジェンシー理論について、実は大昔コンティンジェンシー計画について勉強したことがあって、それと混同していました。コンティンジェンシーは、不測の事態、偶然、偶発性と訳されます。つまり不測事態対応計画です。今日ではそのネーミングは一般に広がっておらずBCP…ビジネス・コンティニュイティ・プラン(Business continuity plan)に包含されているようですね。事業継続計画と訳されます。

<A課長>
BCPがレジリエンスという視点で企業の存続を考えていくのに対し、コンティンジェンシー計画は緊急性という初動を中心とした対応と定義する向きもあります。BCPは初動対応も当然含みますからSさんが言うように、BCPに含めて捉えても問題ないと思います。

<Sさん>
同じコンティンジェンシーなので、前回の1on1では途中まで「?」が点滅していました。何となく質問がはばかれるような気がして… 無知であることを隠そうとしたのかな? 見栄を張るのはよくないですね(笑)
後半になってまったく別の概念であることに気づきました。

日本語には3種類の文字が…他方中国語は漢字のみ!

<A課長>
そうなんですか… 得意になってしゃべってしまいSさんが疑問の表情を浮かべていることに気づきませんでした。コーチとしては反省です。

<Sさん>
いえ、Aさんのせいではありません。この歳になると無知であることを隠す能力といいますか、表情変化は生じていないと確信しています(笑)

<A課長>
またしても救われました…(笑)
日本語は外国語をいちいち訳さないでカタカナのまま使ってしまう、という特技が使えるので、“理論”と“計画”の二文字だけで両者の違いを理解しろ、と言われても無理な話です。日本語は、漢字、ひらかな、カタカナという3つの文字を使い分ける極めて特殊な言語です。融通無碍ともいえる日本文化の背景に思いを巡らせてしまいます。

<Sさん>
私は中国に駐在した経験からそれを実感しましたね。中国語の文字は漢字のみなので、外国語を外来語として表現する場合も全部漢字にしなければいけないので「大変だなぁ」と思っています。
一方で、それは日本人としての思い込みではないか… とメタ認知が起動してもいます。外国語を漢字に変換していく技はまさに中国文化のウイットそのものです。

<A課長>
メタ認知ですか… フェイスブックがメタに変わったことで世界的なトレンドワードになっていますね。

<Sさん>
フェイスブックの社名変更以前よりAさんがよく話してくれていたので、メタ認知はニアリーイコール幽体離脱感覚として腹落ちさせています(笑)
このワードはいろいろなシーンで使えるなぁ~と感じたので、私のトーク用の引き出しに格納しました。

メタからヒューリスティックに話題が転じます…

<A課長>
実は私がメタ認知を語るようになったのは、コーチビジネス研究所の五十嵐代表が2019年11月29日にアップした「メタ・コミュニケーション」というコラムを見てからです。影響を受けました。
それにしてもSさんの“言葉のマジシャン”ぶりは、磨きがかかっていますね。勉強になります。

<Sさん>
またしてもその気にさせるフィードバックです(笑)

<A課長>
メタ認知はもともと認知心理学で使われていたキーワードなのですが、コーチングにおいてクライエントに限らず、さまざまな対象を理解しようとする場合に最も重視する認識の方法です。

行動心理学でノーベル賞を受賞した認知心理学者のカーネマン教授は「多くの人はまず“速い思考”で対象を捉える」と言います。ヒューリスティックです。経験に基づいた近道の理解の仕方…と説明できるでしょうか。そのほとんどは認知のバイアスを伴います。つまり、ステレオタイプの類似性で同一視したり、思い込みが生じてしまう、という訳です。
ただ人間にはもう一つの“遅い思考”も持っていると言うのですね。メタ認知に近い捉え方です。

<Sさん>
“速い思考”ですか… 気を付けなければいけないですね。私は芸人ではありませんが、“反応型”で会話を進めてしまいますから。
中国語については、私の“勝手メタ認知”によって外国ブランドがどのように中国語化していくのか、 結構調べました。例えば… 「萨莉亚」は何のブランドだと思いますか…?

<A課長>
簡体字ですね、台湾で使われている繁体字だと漢字が特定できるような気がしますが… ちょっとわかりません。

話の流れがサイゼリヤの中国進出に…

<Sさん>
サイゼリヤです。繁体字だと「薩莉亜」です。サイゼリヤはこのブランドで展開しています。サリヤーと発音するのですが意味はない、といいますかネガティブな印象を感じさせない漢字を選択しています。
ちなみに吉野家はそのままですね。ジーイエジアと発音します。ビールの場合、キリンは麒麟で発音はチーリン、朝日はチャオリーです。サントリーはカタカナ名しかないので三得利という漢字にしています。サンドリ―と発音します。三つの利を得る… おそらく中国人スタッフによって生み出されたネーミングだと思いますが、思わず笑みがこぼれます。

<A課長>
なるほど… 面白いですね。

<Sさん>
サイゼリヤについては、私が中国上海での駐在を開始したのとサイゼリヤの中国進出がほぼ同時だったので印象に残っています。業界は違うもののしっかりウォッチしていました。

サイゼリヤも「日本ブランドは高級だ!」という当時多くの日本企業が抱く自己認識に基づき、高めの価格設定により品質感を訴求することで中国事業を始めています。
日本では低価格チェーンとして大成功していますが、廉価ブランドで成功した企業もどこか「上に…」という思いがあるように感じます。上昇志向ですね。これは理屈ではなく情念のような気がします。
ダイエーやイトーヨーカドーも百貨店業態を模索した過去がありますし…

<A課長>
ユニークな解釈ですね。心理学的経営論でしょうか、そんな分野は存在しませんが(笑)

<Sさん>
すぐ脱線してしまいます。
そのサイゼリヤですが、閑古鳥が続くのですね。同じ日本ブランドとして心配しました。実は私もとても苦労しましたから…

サイゼリヤが中国でバズったその背景とは…?

<A課長>
それで現在はどうなのですか?

<Sさん>
中国における日本ブランドのファミレス業態では一人勝ちだと言われています。

<A課長>
それは… 閑古鳥状態をガマンし続けた結果、ということですか?

<Sさん>
いえ、そうではありません。
ここからはそのとき上海にいた日本人としての純粋な想像です。サイゼリヤはしばらくガマンしていました。1号店の場所の家賃相場は知っていましたし、結構店舗面積も広かったので投資負担がどんどん増しているのが手に取るように理解できました。

<A課長>
それは大変だ…

<Sさん>
サイゼリヤとしてこの状況をどう打開していったのか…? それは「開き直り戦略」だと私は勝手に名付けています。
思いっきり低価格に価格を変更したのですね。半端ではないシフトです。低価格戦略で失敗すると、もう後がありませんから… これについては高度な経営判断であったと想像しています。

その結果… バスった、といいますか、SNSで評判が一気に広がり、店の前はとんでもない行列になります。
そこからサイゼリヤはもうイケイケ状態です。

中国の大規模デモに遭遇したSさんの迫真の語りがスタート!

<A課長>
そういえば私たちの会社が、中国有数の高級ブランドとして高い認知を得ることになったきっかけは、ハリウッドでも活躍していた中国人大女優の〇〇〇がブログで「素晴らしい」と書き込んでくれたその一言ですから… ヤラせ、ではなかったので我々も驚愕したことを思い出しました。

<Sさん>
初代の私は直営店とは別に高級百貨店にカウンターをもつ方針を掲げ、上海だけでなく、北京、瀋陽、大連、杭州、成都、重慶…と、バスに乗るように飛行機で飛び回り、何とか当時の中国で有名な7百貨店まで進出できたところで交代しました。大化けするのは結構後のことです。まさかあの世界的女優の〇〇〇がブログにしてくれるとは… 涙が出ましたよ(笑)

サイゼリヤに戻します。サイゼリヤの公式な中国ヒストリーでは、今私が語る内容は書かれていないので、あくまでも私の想像です。

中国のSNSについては、小泉首相が靖国神社に参拝したことで上海の延安路での大規模デモが起こったことを思い出しています。
私が上海に最初の直営店を構えたのは水城路という場所で、当時上海のGMSでもっとも賑わっていたカルフールの近くです。

そこからタクシーで淮海中路と烏魯木斉路の交差点にあるマンションに帰ろうとタクシーを拾いました。当然延安路を避けるよう運転手に伝え、運転手も「当然そうします」と言うのですが、いたるところが通行止めで、くねくね行くうちに延安路に出てしまいました。恐怖でしたね。あの恐怖は体験した人にしか分からないと思います。もしスーツを着ていたら…と思うと、ぞっとします。当時もスーツを着るのは日本人くらいですから。

隣の白い車は日本車で、その上に複数の人間が飛び乗ります。ルーフはボコボコです。運転手は中国人の女性で、「私は中国人だ!」と絶叫しているにもかかわらず…です。
とにかくものすごい人でした。まさに津波が押し寄せてくる感じです。
群集心理というか集団になったとき、いつものその人ではなくなるように感じました。一人一人がモビルスーツを着たガンダムになってしまう、という印象です。

ただ、旅行者でなく中国で長く生活していると、「中国人は…」という発想がなくなってきました。PHP新書に田島英一さんが書いた『中国人、会って話せばただの人』という本がありますが、まさにそんな感じです。もちろんそれぞれが個性的です。個人に対して国家をかぶせていくのは…認知のバイアスが生じてしまう、と感じます。

<A課長>
Sさんの表情がさきほどとは様変わりです。リアル感が伝わってきます。

<Sさん>
失礼しました。クールダウンしますね。
会社に戻ってスタッフに告げると… とても心配してくれて、今後のデモ情報についてしっかり教えてくれました。

中国人にとってSNSは生活そのもの…

<A課長>
えっ、今後のデモがどうなるかわかるのですか?

<Sさん>
私も半信半疑だったのですが、SNSを通じた中国人のネットワークには驚きました。
「〇日の午前〇時に予定されていたデモは公安が□□という判断をしたという情報をもとに中止が決定されています。だからその日のデモは起こりません」
ときっぱり言うのですね。残念ながら私の情報は日本領事館というか、日系企業間で共有されたものにとどまっていたので、実際とはかなり違っていることがさまざま判明します。改めて郷に入れば郷に従う…という諺を想起しました。

今から20年近く前の話です。スタッフが「上有政策下有対策」と笑いながら話してくれました。「上に政策あれば下に対策あり」ということで、中央政府が政策を発表し展開しても地方政府や市民は、それをかいくぐる方策を編み出して実行する、という意味です。実感しましたね。SNSが中国人にとっては生活そのものを左右する重要な情報源であった、ということなのです。中国のSNSは我々とは歴史が違います。
ただ市民の武器であるSNSも今は全部監視されているので… 彼らの思いをいろいろ想像してしまいます。

SさんとA課長の1on1はインタラクティブな化学反応を起こします!

<A課長>
今回、Sさんに中国の実体験を赤裸々に語っていただく1on1になるとは… 思ってもみませんでした。これは伝承ですね。貸借対照表に表れる企業資産は企業の価値を金銭として評価するものですが、Sさんのお話は今注目されている非財務情報として受けとめました。経営とはゴーイング・コンサーンである、が自明です。「継続すること」と訳されます。伝承によって歴史が紡がれていくのですね。

<Sさん>
長く続いていく企業というのは、歴史を教訓としてメタ認知で分析理解し、それをしっかり企業内に包摂させているのだと感じています。
失敗も成功もあります。だからこそメタ認知です。「失敗は成功の母」であり、それ以上に「成功は失敗の友」です。過去の成功に酔ってしまうと… その企業は劣化していくのだと思います。

デモでの体験や中国のSNSで感じたことは、これまで社内で話題にしていません。ですが… この1on1でなぜか話してしまいました。問わず語りです。これがコーチングなんですね…

今回の1on1はAさんがエレガントと称するSL理論の解説を聴いて、「唯一最善なリーダーシップは存在しない」というリーダーシップの本質を考えてみようと意気込んでいました。それなのに… 雑談になってしまい恐縮です。

<A課長>
私は少し不思議な心持です。「コーチングとは何か?」と問われると、さまざまな回答が返ってきます。ただしコーチングの3原則は広く共有化されるプリンシプルです。それは、双方向、個別対応、現在進行形の3つです。

1on1がオン・ゴーイングに展開していくことで、Sさんが徐々に裃を脱いでくれているのを感じています。インタラクティブなコミュニケーションにより、お互いの個性と個性が融合して化学反応を起こす…ということなのですね。
この3原則がコンクリートの用水路ではなく里山の自然豊かな小川に流れているのを感じています。

<Sさん>
その表現は文学ですね(笑)

<A課長>
恐縮です(笑)
今感じたことをお話ししてもよろしいですか?

<Sさん>
もちろんです。

<A課長>
Sさんの「雑談になってしまい恐縮です」こそ、余計な言葉かなぁ~と…(笑)
若輩のマネージャーである私は、大先輩であるSさんのような人たちにどのように接していけばよいのか… すごく悩んでいたんです。それが今回、問わず語りをしていただいたことで私は救われました。自己開示させていただくと… 気持ちよさに浸っています。
次回もよろしくお願いします。

<Sさん>
お互いに救われた、ということでハッピーエンドになりましたね(笑)
私こそ次回もよろしくお願いします。

坂本 樹志 (日向 薫)

 

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