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世界に向かってトヨタとソニーがプレゼンスを発揮すると…日本にトランスフォーメーションが起こる!

70年代の豊田英二の経営とは、トヨタ生産方式を使って、マツダやホンダなどの先進的イノベーション企業に比べて劣後していた開発力を、生産性の問題に置き換えることだった。また鎌田ら左翼的な資本主義批判に対しても、雇用体系の是正や海外工場の立地などを通じて、生産性の問題に置き換えた。
(『経営者~日本経済生き残りをかけた闘い/永野健二(新潮社 2018年5月)』より)

心理学を学びコーチングの資格を有する新進気鋭の若手A課長と、部長職を長く経験し、定年再雇用でA課長のチームに配属された実践派のSさんとによる、2023年7回目の1on1ミーティングです。

『どうする家康』の巴ではなく氏純にシンパシーを感じるSさん!

(A課長)
前々回の1on1から、『どうする家康』の話題からアイスブレイクをスタートするパターンとなりました。

(Sさん)
6話もよかったですね。「瀬名奪還の続編」ということでサスペンスの要素もあり、そして涙あり…

(A課長)
私は巴を演じる真矢ミキの演技に“ぐっ”ときました。ネットでも話題になっています。

(Sさん)
わかるな~ ただ私は渡部篤郎の氏純の方です。芸歴の長い超ベテラン俳優ですが、渋さが際立っていた。私が渡部篤郎ファンになったのは、大昔、中国で買ったDVDがきっかけです。

(A課長)
映画ですか?

(Sさん)
ええ、中国との合作映画です。ただ、渡部篤郎の映画作品はWikipediaで40ほど紹介されていますが、リンクが張られていない3つの中の一つという、かなりマイナーな作品です。

(A課長)
Sさん、引っ張りますね~(笑)

(Sさん)
はい、自覚しています(笑)
そのDVDを買ったのは、実は共演の中国人女優の大ファンだったからなのです。
「ウチの会社は、中国での認知はゼロだから、中国の有名女優を起用し、広告宣伝を拡大したい!」と感じ始めた頃です。

(A課長)
でもコストの関係で、キャラクターはなしで頑張られた…

『最後の恋、はじめての恋』の徐静蕾…

(Sさん)
おっしゃる通り!(笑)
中国四大女優の一人と言われたシュー・ジンレイと契約できたら…なんて妄想しましたよ。漢字では徐静蕾と書きます。

そのDVDは、シュー・ジンレイと渡部篤郎が共演した『最後の恋、初めての恋』です。ラブストーリーの定番であるヒロインの死が描かれます。上海が舞台で、ロケ地のほとんどが散歩コースというか、馴染みの場所だらけで、“じわ~っ”とこみあげてくるものがありました。ネットで見つけた、シュー・ジンレイへのインタビューも面白かったですね。

「そうね、彼はすごくマジメな人だと思う(笑)。ただ、渡部さんには二面性があって、笑うと子供みたいな顔になるんです。堅い表情をしている時はなんだかかわいくない人って思ってたのだけれど、笑うとかわいいなって(笑)。その差がすごく激しかった。そういうギャップは彼の魅力につながっている気がしますね。…」

シュー・ジンレイは渡部篤郎をしっかり捉えています。「ジョハリの窓」の視点をシュー・ジンレイはもっていますよ。コーチング能力の高い人だ(笑)

アイスブレイクはこれくらいにしましょう。止まらなくなる(笑)

(A課長)
了解しました(笑)
前回の1on1では、「ソニーを大復活させた平井さんにはかならず相棒が存在した」というSさんの言葉が印象に残っています。今日は、その「相棒」をテーマにしませんか?

(Sさん)
やりましょう!

シェアードリーダーシップの「相棒」がテーマに…

(A課長)
ちょうど1年前に、リーダーシップ理論をテーマに10回くらい語り合った1on1の最後が、シェアードリーダーシップでした。そのとき、Sさんらしい言葉で、「リーダーシップとは?」をまとめてくれています。メモっているので紹介します。

今回の1on1がおそらく「リーダーシップ理論の変遷」の最後というか、まさに今、そして未来に求められるリーダーシップを語ることになると思うのですが、これまでの理論を全部呑み込んで、そして私なりの見解を見出しています。

これは前フリでした(笑)

(Sさん)
さすがに1年前のことは忘れています(笑) 何て言ってます?

(A課長)
「一人じゃないよ!」でした。
私はそのワンフレーズを聞いたとき、すぐに反応できなくて、間が生じたと思います(笑)

(Sさん)
あ~ 思い出しました。言いました、言いました。

(A課長)
その次に続く言葉は、実践家らしいSさんそのものだと感じています。

「地球上の全ての人が、世界中の情報に簡単にアクセスできて、瞬時に知りたいことを知り得ることができる世界」というグーグルの設立目的…パーパスですが、それが現実のものとなっています。
以前のように、上司と部下の情報量の非対称性を利用して成り立っていたリーダーシップは、完全に過去のものだと思うのですね。

IT化がここまで進展してしまうと、「ひとりのリーダーが…」というのは、ありえないですね。グリーンリーフが言う「自己防衛的な全知全能のイメージ…」は、まさに幻想であり、ここが行きついてしまうと、ロシアのプーチン大統領になってしまいます。

プーチンロシアがウクライナに侵攻したのは去年の2月24日でした。この1on1は2月28日にやっていますから、臨場感ありました。

グーグルは「情報の非対称性」で成り立っていたリーダーシップを破壊した!

(Sさん)
1年前に、そういう対話をAさんと交わしていたということか…

(A課長)
そして、その2か月後あたりにSさんが、「プーチン大統領とゼレンスキー大統領をコーチングの視点で対比させてみませんか?」と、提案しています。3回シリーズとなりました。初回のテーマは「孤独」でした。

(Sさん)
いろいろつながっているんですね。私がいかに「孤独」を回避したいのか… 気づかされます(笑)
私が課長になったのは38歳の時です。その後、販売会社の出向社長や、中国現地法人を設立し、総経理も担当しましたから、42年間の…そうですね、三分の二くらいは「リーダーシップって何だろう?」と自問自答し続けた会社人生だったと振り返っています。

60歳の定年を機に、その重みと言うか、責任から解放されて、こうしてAさんの下で仕事することになりました。Aさんはエグゼクティブコーチの資格を持っていますから、1on1ミーティングは、イコール「コーチングセッション」であると受けとめています。

(A課長)
ありがとうございます。
Sさんが私のチームに異動されて、最初に1on1ミーティングを実施したのが2021年11月8日でした。テーマは、マサチューセッツ工科大学のダニエル・キム教授が提唱した「成長の循環モデル」です。

(Sさん)
ええ、初回だったので印象に残っています。組織を活性化させるためのシステム的なアプローチですね。

(A課長)
それからほぼ毎週やっていますから、今日の1on1は63回目です。

(Sさん)
そんなにやっていますか! ということは「コーチングセッションを63回実施した!」とも言えますね。そうですか…
最近つくづくというか、セッションを通じて、私は「私の履歴書」を頭の中で綴っているなぁ~ と感じるようになりました。

コーチングは「私の履歴書」を頭の中で綴っていくこと…

(A課長)
なるほど… 私はその「私の履歴書」を読んでみたい(笑)

(Sさん)
お恥ずかしくて、とても公開できない(笑) コーチングとはまさに「気づき」であり、内省の連続です。

日経新聞の『私の履歴書』に、ソニーの大御所であった丸山茂雄さんが登場しました。インスパイアを得て1on1をやりましたね。それも3回シリーズでした。その2回目の1on1で、丸山さんが自らを「目立つ黒子」と評し、語っている内容を取り上げました。共感しましたね。

(A課長)
ええ、私も刺激されました。そのときのSさんのコメントもメモっています… ちょっと待ってください。

オールマイティの人なんていませんよ。成功した経営者については、その人の能力を称えることが多いのですが、私は環境、そして周りの人たちが助けてくれたからこそ、成功したのであって、俗にいうカリスマを強調するのは「いかがなものかな…」と感じています。

(Sさん)
本当にメモ魔ですね(笑)
その言葉こそが、私自身の「リーダーシップ観」です。リーダーシップというと、一人の人物を思い浮かべますが、私はペアがイメージされます。それは「支える人」ではなく、バディ… まさに「相棒」です。

(A課長)
前回の1on1ともつながりますね。ソニーの新体制は、吉田さんと十時さんのツートップですから。

リーダーシップは「ツートップ」により力が吹き込まれる!

(Sさん)
ソニーの創業そして成功は、「井深さんと盛田さんのツートップだったから!」と語り継がれている。大賀さんは、それに少し遅れて経営陣に加わりました。

(A課長)
Sさんは、大賀さんまでを「ソニーのリーダーシップ1.0」と喩えましたね。リーダーシップ2.0の出井さんのリーダーシップは、どう捉えますか?

(Sさん)
出井さんも明確なビジョンをもった傑出したリーダーでした。ただバディがいなかった… パティを求めていたのですが、見つからなかったということだと思います。いや、見つけられなかった、ということかな?
それと出井さんがCEOのときのソニーの業績不振を関連付けるのは「いかがなものか…」、と言われるかもしれませんが、当たらずとも遠からず、だと感じています。

(A課長)
Sさん、私が今日の1on1のテーマとして「相棒」をやってみたいと思ったのは、12日の日経新聞の中に「ホンダ故藤沢氏 米<車の殿堂>に~本田宗一郎氏の右腕」という、記事を見つけたからです。6面にとても小さなスペースで掲載されていました。
右の5面には、「このヒト」のタイトルで、米大統領首席補佐官のジェフ・ザイエンツさんが取り上げられています。ザイエンツさんの言葉を紹介しています。

ザイエンツ氏は言う。
「適切なチームなら何でもやってのけられる。すべては仲間次第だ」

(Sさん)
本田、藤沢コンビはとても有名です。絶対的な信頼を寄せあった二人です。

爽やかすぎる「本田宗一郎&藤沢武夫」コンビ!

(A課長)
本田さんが藤沢さんに、破顔といえる笑顔を向けている写真が添えられています。今Sさんは「絶対」という言葉を使いましたが、ソニーのCEOを6年務めた平井さんと現CEOの吉田さんが、新社長になる十時さんのことを「絶対の信頼」という言葉で表現されていますね。Sさんが話してくれました。

(Sさん)
はい、平井さんの著書である『ソニー再生…』のなかにあります。「絶対」は「絶対」ですから、これ以上の信頼関係は存在しません。

(A課長)
Sさんにここで質問したいのですが、トヨタの歴代トップに「相棒」は存在したのでしょうか?

(Sさん)
う~ん、どうでしょう… トヨタに関する本もかなり読んできましたが… そうだ、永野健二さんが書いた『経営者』がいいかもしれない。ちょっと待ってください。本棚からとってきますから…

これです。
最近になって、文庫も出版されていますが、私が購入したのは…2018年の初版です。
最後のページに「本書に登場する主な経営者」のリストがあります。年代順で、岩崎弥太郎、福沢諭吉、渋沢栄一からはじまって、新浪剛史まで57名の経済人、経営者の名前が並んでいます。

(A課長)
圧巻の書ですね。

(Sさん)
その通り(笑)
著書プロフィールにはこうあります。

1949(昭和24)年生れ。京都大学経済学部卒業後、日本経済新聞社入社。証券部記者、兜クラブキャップ、編集委員としてバブル期の様々な経済事件を取材する。その後、日経ビジネス編集長、編集局産業部長、日経MJ編集長として会社と経営者の取材を続け、名古屋支社代表、大阪本社代表、BSジャパン社長などを歴任。

ものすごく濃い本でした。
トヨタのトップは… 豊田英二、豊田章一郎、奥田碩、豊田章男の4氏を取り上げていますね。ソニーは… 井深大、盛田昭夫、大賀典夫、出井伸夫の4名です。

トヨタで最も力が入っていた記述は豊田英二さんで、タイトルは「トヨタが日本一になった日」です。印象に残ったところをマーキングしています。いくつか紹介します。

イノベーションの分野では、トヨタが必ずしも業界を先導していたわけではなかった。なかでもマツダのロータリーエンジン(RE)は、世界の自動車業界を席巻する技術ではないかとさえ言われていた。70年代に入ると、トヨタはマツダとの間で、ロータリーエンジンの供給交渉を始める。

マツダのロータリーエンジンは世界を席巻するかも…しかし…

EVに席巻されようとしている現代にあっては、今は昔…です。世界最初のロータリーエンジンの量産化に成功したマツダは輝いていましたね。広島出身ですから、初代コスモは誇りでした。

ただオイルショックによって、すべてが逆回転となります。

…さらに打撃を受けたのは、本家本元のマツダである。いかんせん、オイルショックによるガソリン価格の急騰のもとで、ロータリーエンジンの燃費効率の悪さは決定的だった。それに代わって、四輪の日本最後発メーカーであるホンダの空冷式のCVCCエンジンが、世界で一番厳しい排ガス規制である米国のマスキー法をクリアし、脚光を浴びることになる。

(A課長)
自動車開発が、いかに環境変化の荒波をかいくぐってきたかが伝わってきますね。

(Sさん)
永野さんはトヨタをイノベーティブであるとは書いていません。

オイルショックによる劇的なエネルギーコストの上昇は、日本企業に主力産業のあらゆる部分で、生産性の改善運動で対応することを求めた。豊田英二の時代の「かんばん」方式によるトヨタ自動車の輸出競争力の改善は、結果として、トヨタを業界のトップに押し上げる原動力となった。

(A課長)
なるほど… 「徹底的なカイゼン」であり、技術革新ではない、という見方ですね。

トヨタが日本一になったのはイノベーティブではなかったから!?

(Sさん)
Aさんの質問である「相棒」については、どうも見当たりません。「カイゼン=大野副社長」というくらい有名ですが、このように記述されています。

…トヨタ自動車の創業者である豊田喜一郎を発案者とする、中間在庫をなくす生産方式は、太平洋戦争ですべて水泡に帰す。その過程を従弟である豊田英二は真近で見ていた。そして、「一度死んだものを『かんばん』を使って生き返らせ、発展させるのが元副社長の大野耐一君の仕事であった」と総括するように、トヨタ式流れ作業を自分の時代に粘り腰で再び極める道を選択する。大野耐一の「かんばん」が、トヨタの円高競争力の源泉となるのである。

(A課長)
時代は昭和そのものなので、副社長を“君”と称するのも、なんとなく理解できますが、まさに部下ですよね。「かんばん」を緻密に完成させていくテクノクラートとして、大野副社長を見ている印象です。

(Sさん)
「トヨタはいまだに創業家の会社である」と、社内もそして私たち世間も、捉えてしまっているのかもしれない。豊田家の持ち株比率は2パーセントです。ところが、「創業家は別格の存在」というナラティブが、暗黙裡に浸透し、定着してしまっている。

忖度が文化となっている会社… それが西三河を中心に企業城下町をつくりあげたトヨタという会社なのかもしれません。

(A課長)
ただ、それこそがトヨタの強さかもしれませんよ。安定感の源泉だ。
ソニーもホンダも、創業者のことは語られます。でも、創業家の会社というイメージは払しょくされている。実際にイノベーティブな経営者がどんどん誕生し、社内組織も革新され続けている。ただし… あぶなっかしいところもある(笑)

昨日14日に、名誉会長の章一郎さんの死去が報道されました。今朝の日経新聞17面には、「日米摩擦に対応するため米ケンタッキー州工場建設を決めるなど、トヨタを世界の“TOYOTA”に育てた」、という書き出しの追悼記事が掲載されています。記事は次のようにまとめられています。

創業家は「自分のため、会社のためということを超えて、『お国のため、社会のため』となれるかどうか。この価値観を全員が共有できているか」などの行動指針「豊田綱領」をまとめた。

トヨタだからこそ、世界に向かってプレゼンスを発揮してほしい!

(Sさん)
英二さんはトヨタを日本一に、そして章一郎さんは世界への地歩を築かれたわけだ。そして世界一の自動車会社となった。トヨタは、正真正銘日本最大最強の会社です。つまりナンバー1です。

(A課長)
そして、ナンバー2がソニーですね。そのソニーは実にオープンな会社だ!

(Sさん)
ですから、トヨタがそのモンスター級の潜在能力を出し惜しみすることなく、思いっきり解放して、世界に向かってプレゼンスを発揮するようになると…

(A課長)
日本のツートップによる相乗効果で、日本そのもののトランスフォーメーションが起こるかもしれない!

(Sさん)
いえ、「かもしれない」ではなく、「絶対」に起こります!

(A課長)
Sさん、熱い!

(Sさん)
またしてもヒロシマ男の血が騒いでしまいました。クールダウンです(笑)

(A課長)
今回もSさんがドリームを語る1on1になりましたね。日本のフューチャーペーシングをこれからも語っていきましょう!

坂本 樹志 (日向 薫)

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