「自己開示」と「自己呈示」、心理学では異なった意味で扱います。
まずは、広辞苑で開示と呈示の違いを見てみましょう。
- 開示 → 明らかにし示すこと。
- 呈示 → さし出して見せること。
いずれもシンプルに記されています。“明らか”と“さし出す”の違いをどう解釈するかですが、何となくニュアンスの違いが伝わってきますね。
自己呈示の英語表記は「self-presentation」です。
心理学では、他者の目を意識する、他者からの評価を気にする、という態度に着目して、「自己演出」や「印象操作」についても研究対象としています。『心理学とコーチング』の最初のコラムで紹介した「ジョハリの窓」の「自分はわかっているが他者はわかっていない」という第Ⅲの窓をあえて利用して自分をアピールする、ということも含まれます。英語表記では、自己開示はself-disclosure、自己呈示はself-presentationとなります。
まずは自己呈示にはどのようなものがあるか、挙げてみましょう。
ジョーンズとピットマンによる「自己呈示の5つの方略(1982年)」
1.取り入り
典型的行為として「相手に同調する」「相手をほめる」「相手に恩恵を与える」などが挙げられます。過度の同調はその真意を疑われることにもなりかねません。相手が重視している、あるいは是非とも賛同してほしい、という場合に効果的です。なお「ほめる」のは、相手が重視している特性だが自信に欠けている場合に有効のようです。この呈示に失敗すると「おべっか者」「こびへつらう」といったレッテルが貼られますので要注意です。
2.威嚇
「脅す」「怒る」などの行為です。これを意図的に使う人がいるのか、と思うかもしれませんが、政治やビジネスの世界では、コトを成し遂げようとする場合の一つの手段として用いられています。郵政民営化を強力に推し進めた小泉元総理陣営の選挙戦で「刺客」というコトバが飛び交ったことを想起しますね。ただし、ひと昔前は“指導”と大目に見られた行為が「パワハラ」として認定されることになりますので、勘違いは禁物です。
3.売り込み
「業績を主張する」「巧みな実演でアピールする」などですが、この呈示に失敗すると、「思い上がった」「だましている」「防衛している」と、否定に傾いてしまいます。「売り込み」ではない「コンサルティングセールス」が大切です。
4.模範
「克己する」「援助する」「闘志を燃やす」といった行為です。1~3がネガティブな方略ですので、安堵を覚えます。行為者の意図するところは「立派な人」「苦労人」「献身的」という印象をもってほしい、ということですが、受け手がその振る舞いに対し「素直に受けとめない」、あるいは「行為者の中に邪心を感じてしまう」などが生じると、「偽善者」「殊勝ぶる」といった印象に転化してしまいます。
5.哀願
「あえて短所を述べる」「自分を卑下する」といった場合です。人の心には、意識しているか否かは別として、自分が他者より優れている、優位に立っている、と思いたい願望があります。そこを巧みに突いていく行為といえるでしょう。相手に「保護したい」「助けてあげなければ」という感情が起こればこの方略は一応成功といえそうです。
さて、上記の5つは呈示の種類です。続いて「行為者がどうしてそのような自己を呈示するのか(してしまうのか)」に関する影響要因を説明します。
コワルスキとリアリー(1990年)は次の5つを挙げています。
1.自己概念
自分のことをどのようにとらえているのか、自分の性格はどのようなものなのか、に影響を受けるということです。自分を「社交的であり話し上手だ」と思っていれば、相手に積極的に働きかけるという行動をとるでしょう。同時に、他者からも「そう思われている」という確証を得たいという「自己確証動機」の存在が指摘されます。
2.理想の自己像
他方「自分はシャイであるがそれはあまりよくない。社交的こそが人に好かれる第一歩だ」という理想像を描いていると、それにふさわしい行動をとる(とろうとする)、という要因です。理想は人それぞれですが、社会的に好ましい理想像を投影し、その獲得に努力することで自分が変化することができれば、まさに「理想の姿」ですね。
3.役割や規範
「自分はこのようなことはやりたくないが役割としてやっている」と思っていた行為が、いつの間にかその役割にぴったりな雰囲気になっている、という場合があります。象徴的なのは制服です。制服を着衣すると権威的に変わる警察官。白衣を着た医者を前にして患者が“先生”的に接すると、医者もそれらしく振舞うようになる、といった例が挙げられます。
4.他者の価値づけ
相手がどのような価値観や好みを有しているか、そして相手が自分にどのような期待を抱いているか、によって呈示の仕方を決める、という場合です。「ぶりっ子」もこの範疇に入るかもしれません。
5.他者の自分に対する現在のイメージ
3および4と似ていますが、3が制服や肩書の存在、4は相手の好みの存在、を前提としているのに対し、この5は自分のイメージに合わそうとする自己呈示です。「相手はどうも自分のことをまじめだと思っているようだ、そうであればそれらしく振舞おう」といった自己呈示です。
コーチングの場面では自己呈示は不要です。
「自己開示」との違いを理解していただけたでしょうか。「自己呈示」は社会生活において、時には意識的に使わざるを得ないシーンに遭遇します。しかしながら、自己呈示は状況によっては一種の“ゲーム”となってしまいます。従って、「コーチングの場面では基本的に自己呈示は不要」です。
坂本 樹志 (日向 薫)
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