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米国は人種のサラダボウル???

今回も友人Hさんとの会話からです。
「米国は人種のるつぼであるという表現は正しくない、人種のサラダボウルである、とある本に書かれていました。つまり融合しているわけではなく、それぞれの個性が個性を発揮しながら国を形成している、というわけですね」

「このたびの貿易戦争についても、このことを感じます。国としての意志が一つにまとまって貿易戦争を仕掛けているわけではなく、トランプ大統領という類まれな人物が大統領になったことで、さまざまな化学変化が起きている。

トゥキディデスの罠…従来の覇権国家、つまり米国に対して、新興の国家である中国がここまで大きくなってくると、戦争が不可避の状態にまでぶつかり合うようになる、という説が登場するまでに至っています」

「トランプ大統領というのは、ある意味オールマイティかもしれないなぁ、と思うのですね。

歴代大統領のなかで弾劾を受けたニクソン大統領が、マイナスイメージとしてのシンボルですが、ホワイトハウスの中でのニクソン大統領の肉声が公開され、それがとても下品であり、大統領ともあろう人物が…という“がっかり感”が弾劾を招いた要因の一つ、とも言われています。

一方トランプ大統領は、“下品な言葉”はトランプ大統領のキャラクターそのもので、最初から“立派さ”は期待されておらず、エリートが支配しているこの国に風穴を開けてほしい、という層からの強いラブコールがトランプ大統領を支えています」 

「日本のメディアはオバマ大統領のスタイルを是として報道してきていましたから、トランプ大統領のあり方には否定的です。

『なんでこんな人物が大統領でいられるのか!』と理解に苦しみます。でも米国での4月の支持率をみると46%ですから、米国民の半数がトランプ大統領に期待しているわけです」

ある現象を評価し、解釈する場合、与えられる情報がカギを握っていると思います。情報を提供する側が自分はフラットである、と思っていてもそこには意志の介在があります。

私が中国上海に駐在したときのマンションのちょうど向かいが上海総領事の公邸でした。駐在時に小泉総理が靖国神社に参拝したことで、それを批判するデモが起こっています。

上海市西部の虹橋にある総領事館は投石やペンキを入れたペットボトルなどが大量に投げ込まれ、武装警察が総領事館をぐるりと囲んで物々しい状況でした。

総領事公邸は総領事館の場所からかなり離れているのですが、入口の脇にある広報用のガラスケースが何者かに割られたのですね。

こちらの方は目立ったものではありませんでした。ところが日本から『Hさん大丈夫ですか? 上海は危険だから日本に戻るよう指示がでるかもしれません』という電話がかかってきたのです。

“総領事公邸のガラスが割られる”というニュースを日本では、テレビ・新聞が大きく取りあげており、このことで『中国は危険だ、上海は危険だ』という世論が1億2千万人の中に一気に形成された、というわけです。現地にいる私は違和感を覚えました」

Hさんの語りはこの後も続きました。
話を聴きながら、Hさんが言葉にする事柄には一つの傾向、スタンスが存在していると、私は感じています。

第一回目の冒頭で、「『中国は…中国人は…』とか『日本は…日本人は…』という表現を極力避けるようにしています」とHさんは言いました。このことについて事例を踏まえ、また表現を替えて、私に伝えているのです。

“分類して理解する”ということを私たちは求めます。さまざまな現象はそのままではわかりにくい、類似なモノをグルーピングし、それにラベルを貼っていく。考えてみれば学問のアプローチそのものかもしれません。

Hさんは、そういうわかりやすさを求める志向に対し、ちょっと距離を置き、時に懐疑の目で捉えることも大切なのではないか、と言っています。

30年来の友人とのこのたびの邂逅は、私に一つの刺激を与えてくれました。また機会があれば酒をくみ交わしましょう、とほろ酔いの気分で四谷を後にしたひと時でした。

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