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『コンサルティング・コーチング(自立支援型コンサルティング)』ありがちな経営コンサルティングの現状と課題

中小企業診断士(経営コンサルタント)が陥りがちな「ありがちなコンサルティング」の現状と課題について考えてみましょう。

経営コンサルタント活用の5つのメリット

クライアントが自社の経営課題を解決するために経営コンサルタントに依頼する場合、以下のようなメリットが期待できます。

①豊富な実績と専門性

経営コンサルタントには、コンサルティング会社に所属して活動している人と個人で活動している人がいます。中小企業診断士などの公的資格を持つ人もいれば、資格はなくても経験や学習を生かしてコンサルタント業務を行っている人もいます。いずれにしても豊富な実績とその分野に対する専門性があるということです。

②専門的な情報の利用

コンサルタントから専門性の高い知識やノウハウ、成功事例、最新情報、アドバイスなどを得ることが期待できます。

③問題点を把握し解決する診断力、分析力

コンサルタントは、テーマに沿ったクライアントへのヒアリングや資料をもとに問題点を抽出、分析し、課題を導き出します。

④革新的、創造的な改善提案

コンサルタントは問題点を解決するために取り組むべき課題を明確にし、専門的な知識や見地から革新的かつ創造的な改善提案を策定します。

⑤継続的なフォロー支援

提案を実行するために継続的な支援が望ましい場合には、顧問契約などを締結して中長期的にフォローを依頼できる場合があります。

経営コンサルタントへの7つの不満

コンサルティングの成功は企業の発展や経営の改善に大きな効果をもたらします。しかしクライアントは、コンサルティングのプロセスの中で次のような不満を抱くケースがあります。

①コンサルタントの自社への適合度

  • コンサルタントが豊富な実績を持っていても、異なる分野の専門家であったり、依頼したテーマが不得意であった場合
  • 自社の実情に合った個別対応を期待したにも関わらず、先行事例を踏襲した定型的な指導に止まった場合

②机上の理論

  • コンサルタントが提供した知識やノウハウ、成功事例などの情報の専門性が高く、理論的に正しくても、実際の経営にどう応用するかの具体的な説明が足らない場合
  • 経営の実態や実務についてのコンサルタントの理解が十分でない場合

③上から目線のアドバイス

  • 提案や指導を正当化する主張が強く、強制的に押しつけられているように感じた場合
  • 言葉遣いや態度が、上位の人から下位の人に向けた表現であると感じた場合

④表面的な問題解決に終始し、真のテーマとズレが生じている

  • 最初のテーマの範囲に集中した質問や資料確認、情報収集に止まり、表面的な問題解決で完了した場合
  • テーマの背景や、経営者がなぜ相談したかの問いかけがなかったため、本当の問題点や課題を摘出できなかった場合

⑤粗探し中心の質問

  • コンサルタントの聞きたい質問を、質問の順序の説明もないまま次々に繰り出され、尋問のような印象を受けた場合
  • コンサルタントが先入観を持っていて、事前に決めつけた結論に当てはめようとしていると感じた場合
  • トラブルや短所、弱み、脅威などのマイナス面の質問ばかりで、強み、機会などのプラス面の質問が少なく、クライアントの長所を評価しているのか不安な場合

⑥実用性の低い提案

  • 自社では思いつかない立派な提案だが、自社がただちに実施できる内容ではない場合
  • 提案内容が自社の実情や、経営者の想いと乖離している場合

⑦支援継続の費用対効果が不明確

  • 中長期的に支援を継続して依頼するのが妥当か、費用と期待できる効果の関係が判らない場合
  • 実際に実施できる提案か不安を感じた場合
  • 各種制度を利用した継続支援には回数、期間、費用などの制約があり、個別契約を締結するまでのメリットは感じない場合

不満を生む7つの原因

上記のような不満が生じるのは、コンサルタント側に主な原因があります。

①コンサルティング手法の専門特化

コンサルタントの経験、経歴によって、専門分野と不得意分野が生じるのは当然です。
専門家派遣の場合は専門を配慮した人選が行われますが、来場者の相談内容がまちまちな経営相談会などでは専門外のテーマの相談も往々にして発生します。
専門外のテーマに直面しても一定レベルのコンサルティングが可能な、汎用的なコンサルティング手法を発動できないことが失敗の原因です。

②一方的、一般的な情報提供

専門知識やノウハウ、成功事例などの情報提供はコンサルタントの役割の一つです。
しかし一般的な情報を一方的に提示するのでは役割として不十分です。「コンサルタントは教える存在」「クライアントは黙って教わる存在」という誤解が失敗の原因です。

③コンサルタントと経営者の関係の誤解

コンサルタントの上から目線の発言や、高圧的な口調の原因は、経営者よりも自分が優れていると考えるコンサルタントの傲りや慢心です。

  • 専門的な教育や経験を蓄積して、コンサルタントの能力やスキルは経営者よりも優れているという誤解
  • 経営者には経営力を高める能力や意欲が不足しているという誤解

経営者は緊急度の高い数多くの経営課題に日々直面しているため、情報収集や中長期的な経営戦略に取り組む時間がないだけかも知れません。
これを短絡的に能力や意欲の不足と決めつけることは誤りです。
経営者が多忙であるところに、重要度の高い課題に取り組む上で不足する力を補う、というコンサルタントの存在意義があります。
コンサルタントには権威的に振る舞って尊敬を得ようと試みる人もいます。しかし経営者は人物を見極める専門家ですので、信頼に値する存在かどうかは見抜いています。

④テーマ解決がミッションという誤解

コンサルティング開始前に設定したテーマは仮のテーマです。
仮のテーマの範囲に限定した質問や資料から導き出せるのは、仮のテーマの問題解決に過ぎません。
コンサルティングのミッションはテーマ解決という誤解が失敗の原因です。
本来のミッションは本当の経営課題を具体的に解決し、経営者の経営意欲を高めることです。
そのためには、仮のテーマの背景や経営者の想いを引き出すことを通じて、本当の経営課題に立ち入ることが必要になります。

⑤問題点指摘が目的というはき違え

自分が中心になって問題点を指摘し、解決を図ることを目的にしていることが失敗の原因です。
コンサルタントでないと問題点を発掘できないという使命感や、重要な問題点を数多く指摘したいという功名心が厳しい質問を連発させます。
トラブルや短所、弱み、脅威など、質問がマイナス面に偏るのは、コンサルタントがクライアントの「いまある姿」を軽視していることが原因です。
いまある姿は、過去にクライアントが「ありたい姿」として目指した結果と考え、正当に評価すべきです。
コンサルティングの本来の最終目的は「経営者の支援」です。
目前の問題点の抽出に逸るあまり、経営者の意欲を削ぐようなことがあってはなりません。

⑥優れた提案が成果という思い込み

誰よりも優れた提案を出すことがコンサルティングの成果という思い込みが失敗の原因です。
この思い込みは、コンサルタントが理想と考えた「あるべき姿」を提案させます。
クライアントが心の中に抱いている「ありたい姿」は、コンサルタント目線によるあるべき姿とは一致しません。
あるべき姿に固執した提案は、クライアント満足よりもコンサルタントの自己満足を優先しているように見えます。
実用的な提案を策定するためには、経営者の無意識の中のありたい姿を引き出し、その想いを生かした提案を考えることが必要ではないでしょうか。

⑦実行可能なアクションプランの合意不足

提案の実用性が低いうえに、アクションプランやスケジュールが現実的ではないため、経営者が継続支援のメリットを感じないことが失敗の原因です。
実現の可能性や経営者の想いよりもコンサルタントのアイデアを優先した計画は、経営者の提案に取り組む気持ちを高めることはありません。
提案を策定するプロセスで経営者の想いを引き出し、実行可能なスケジュールの共通理解ができていれば、中長期的なフォローを含めた提案を行うことができます。

コンサルティング失敗の類型

①コンサルタントの誤解の連鎖

コンサルティング・プロセスの中で、コンサルタントがどのような誤解を繰り返し、コンサルティングの失敗に至るか、フローを整理します。

②星一徹型コンサルタント

「巨人の星」は、主人公:星飛雄馬がプロ野球の読売ジャイアンツ球団で活躍する漫画作品です。
父:星一徹が飛雄馬を特訓した子供時代の印象的なシーンを紹介します。

「あれが栄光の星」飛雄馬に対し、一方的に目標を指し示す
「大リーグボール養成ギプス」飛雄馬の意向や体力を超えたツールを強制し、厳しく管理する
「ちゃぶ台返し」意見の通りに行動しない飛雄馬に対して、不満を爆発させる

ギプスはこの作品の中で魔球「大リーグボール」のトレーニングのために繰り返し使用されます。
使用の都度、短期間で驚異的な成果を生みますが、使用者の身体に変調を起こさせるなど、長期的には副作用も与えました。
星一徹はコンサルタントではありませんが、コンサルタントもこれまで、似たような問題行動をクライアントに対して起こしていなかったでしょうか。

③コンサルタントが持つ「3つのムチ」

コンサルタントが知らず知らずのうちに身に着けている失敗の火種は、3つとも読み方が「ムチ」です。
これらは自分には見えず、コンサルタント同士でも見えない点が大きな問題です。
しかし、コンサルティングの時に経営者には見えてしまいます。

無知経営者の想いや、心の動きに対する理解が不十分
無恥コンサルタントは経営者よりも優れているという誤った過信が生む、上から目線
無知と無恥から生じる、クライアントへの高圧的な言葉や、難度の高い提案

コンサルタント育成の課題

中小企業診断士の資格取得までの学習プロセスは、経営に関する幅広い知識の取得や、診断能力養成に重点がおかれています。
標準教育に含まれないために学習する機会が限られるスキルは以下の通りです。
いずれもコンサルティングを行う上では重要なことですが、獲得は各中小企業診断士の自助努力に任されています。
そのため、中小企業診断士にとって必須のスキルという認識は広まっていません。

①コンサルタントの心構え

ア.経営者の理解

  • 経営者の長年の労苦、ものづくり・ひとづくりへの意欲、地域社会や産業経済に貢献する姿勢などを理解し、敬意を抱くこと

イ.経営者とのコミュニケーション力

  • 中小企業診断士の提案力だけで経営者と信頼関係を築くのは難しい
  • 経営者と心のつながりを持つコミュニケーションの取り方を身に着けたい

②コンサルティング手法

ア.コンサルティング・プロセス

  • 中小企業診断士登録前の実務補習は、チームによる経営診断を行い、中小企業診断士の視点で問題解決の提案を作成する、コンサルティングの一手法を学ぶ機会
  • これ以外にコンサルティング・プロセスの講座は標準教育の中にない

イ.コンサルティングの成果の出し方

  • 何をコンサルティングの成果と考え、どうしたら成果が出せるかを学ぶ機会がない
  • このため、コンサルティングの成果について共通認識が形成されていない

コンサルティング手法の確立と教育メソッドの開発、教育機会の普及がこれからの中小企業診断士育成の課題です。

コンサルティング手法開発の方向性

日本の中小企業の経営支援に適したコンサルティング手法を開発するに当たり、次の2つの視点を提言します。

①マーケティング的視点

コンサルティングを「サービス」の提供と考えると、ターゲットは「経営者」です。
経営者から依頼されるコンサルティングのテーマを「ニーズ」と捉え、コンサルタントは真摯に応えることが基本です。
しかし、さらにターゲットの顧客満足度を高めるには、潜在的な要求である「ウォンツ」を意識したサービスの提供が必要になります。
このウォンツは、コンサルタントが経営者の無意識の想いを引き出すことによって認識することができます。

②ホスピタリティ的視点

サービスの語源はラテン語の「servus」(奴隷)で、サービスの提供に応じて等価値の対価が支払われます。
一方、ホスピタリティはラテン語の「hospes」(客、異人)が語源で、提供者とクライアントが共通の場で価値を共に創り、互いに満足を得ている状態です。
このホスピタリティの概念は、コンサルティングの語源と言われるラテン語の「consultare」(協議する、con(共に)+sedere(座る)=共に座る)と相通じるところがあります。
ホスピタリティもコンサルティングも、提供者の一方的な行動ではなく、提供者とクライアントの双方向の行動です。
コンサルティングもホスピタリティと同様に、両者が価値と満足を共有する機会と考えるとどうでしょう。
経営者の「コンサルタントから提案を受けて良かった」という評価は、コンサルタントが提供したサービスの成功です。
これに対して「コンサルタントが一緒に考えてくれて良い成果が出た」という評価の場合には、両者の間にホスピタリティの関係が成立したと言うことができます。
(埼玉県中小企業診断協会コンサルティング・コーチング研究会の調査研究事業報告書から一部抜粋加工)

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