10月11日、オスロからすごいニュースが飛び込んできました。日本被団協のノーベル平和賞受賞です。「万感」という言葉は、なかなか使いにくいものですが、広島出身(原爆二世)の私にとって、そのとき感じた感情は、まさに「万感」です。
ただ、感情が高ぶると「真夜中のラブレター」になってしまいますので、今回のコラムは「平和賞」ではなく「物理学賞」について綴ってみようと思います。
2024年度のノーベル物理学賞は「AIの父」である、ジョン・ポップフィールド氏とジェフリー・ヒントン氏に授与されました。その第一報に触れた際、「AIは物理学賞なんだ…」という若干の違和感を覚えています。ただ、「半導体の加速度的(超絶?)技術進歩」が、「生成AI」の実現につながったわけで、ノーベル賞の他の科学分野である、生理学・医学賞、化学賞ではない…ことはすぐに理解できました。この腹落ちまでの時間は1分程度であったと感じています。
「生成AI」は、18世紀後半~19世紀前半にかけて起こったイギリスの産業革命に匹敵…いえ、それを優に超えるインパクトを社会(全世界)に与えています。今年のノーベル賞(科学賞)にもっともふさわしいと、誰もが感じていたとも想像します。ただ、この科学賞3分野は棲み分けが出来ており、これまでの大発見・大発明は、違和感なくいずれかの賞におさまっていた、と気づかされました。
「生成AI」については、多くの研究者(とても幅広い分野の)が関与して生み出されたので、「誰に与えるのがふさわしいか」については、スウェーデン王立科学アカデミー内でも、侃々諤々の議論がなされたと想像します。結局、「人工知能(AI)の基礎技術である機械学習に関する発見と発明」にスポットが当てられ、両氏が選ばれています。
このようなことをつらつら考えるうちに、今回のコラムのテーマが浮上してきました。つまり、従来のカテゴリーに収まりきれない「際」であるとか、さらに広範囲な「知識と知恵が融合」して、新たな広がりを持つ概念・分野が生じるのは、まさにリベラルアーツである、ということです。
リベラルアーツの定義は、一応確立しているようですが、なにごとも変遷しているので、バランスをもった解釈を提供してくれるチャットGPTに、次のように質問してみました。ただし、少しひねった問いにしています。
リベラルアーツは日本語ではどのように訳されますか?
(回答)
「リベラルアーツ(Liberal Arts)」は日本語で「教養教育」や「自由学芸」と訳されることが多いです。この言葉は、古代ギリシャやローマで「自由人にふさわしい学芸」を意味し、哲学、文学、歴史、数学、自然科学など、幅広い分野の知識を身につけることを目的としています。
現代では、リベラルアーツは単なる専門知識にとどまらず、批判的思考力や創造力、コミュニケーション能力など、実社会で役立つ汎用的なスキルを養うための教育として重要視されています。
コーチングを語る当該コラムにふさわしい回答ですね。最後の「実社会で役立つ汎用的なスキル」は、まさにコーチングであり、「CBLコーチング情報局~コーチング大百科」は、「心理学をベースとするコーチングはリベラルアーツ」であることを語ってきました。
弊社(株)コーチビジネス研究所は、コーチングがカタカナ語であり、端的な日本語訳が存在しないことに着目します。前々回より「コーチング×〇〇〇」と、コーチングに関係するワードを掛け合せて、コラムを書き始めていますが、「カタカナ語の不思議」を紐解きたい、というのがその動機の一つです。
「AI」は周知のとおり、「Artificial Intelligence」であり、「人工知能」と訳されます。ただ「Art」について、私たちは「芸術」をまずイメージします。そこに違和感を覚え、チャットGPTに質問してみました。回答を引用します。
あなたの感じる違和感は理解できます。「Artificial」という言葉は、確かに「芸術(Art)」という意味も含んでいますが、ここでは「人工的な」という意味で使われています。これは、英語の「Artificial」が「人間が作り出したもの」という広い意味を持つためです。
「Artificial Intelligence」を「人工知能」と訳した背景には、科学技術の文脈で「人工的な知能」を強調する意図があります。日本語の「人工」という言葉は、工業製品や技術的なものを指すことが多いため、技術的な文脈での使用が適していると考えられたのでしょう
言語の翻訳には文化的な背景やニュアンスの違いが影響するため、完全に一致する訳語を見つけるのは難しいこともあります。
このような視点を持つことは、言語や文化の理解を深める上でとても大切です。何か他に気になることがあれば、ぜひ教えてくださいね。
とてもバランスに富む回答でした。生成AIは頭がいい(笑)。
最後の「言語の翻訳には文化的な背景やニュアンスの違いが影響するため、完全に一致する訳語を見つけるのは難しいこともあります。このような視点を持つことは、言語や文化の理解を深める上でとても大切です」は、「わが意を得たり」です。嬉しくなりました。
今回のコラムのまとめとして、日経新聞10月9日3面(総合2)の「物理学賞、広がる分野」を引用しておきます。「変化」こそ「価値ある未来」を創っていく原動力そのものです。私はボブ・ディランに文学賞を授与したノーベル財団の慧眼を支持します。
ノーベル賞の科学分野は物理学賞と生理学・医学賞、化学賞の3つしかないが、科学研究のフロンティアでは複数の学問の融合や連携が活発だ。
アルフレッド・ノーベルは「人類に最も大きく貢献した科学者に贈る」という遺言を残した。真の革命的な研究をたたえる賞でありつづけるために、ノーベル賞は変化を模索している。
坂本 樹志 (日向 薫)
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