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「コーチング×ダイバーシティ&インクルージョン」について、語ってみようと思います

…… しかも日本では、昔から母性の肯定的な面がすごく強調されてきたんです。本来世の中には絶対よいものというのはなくて、よく見たらよい面と悪い面があるはずなんです。しかし日本は母性社会だから母性の否定的な面はなかなか見えにくい。だから「お母さん」といったら「よいお母さん」でなければならない。
(『Q&Aこころの子育て~誕生から思春期までの48章』Q5の回答より)

一人の母の内部に「よいお母さん」ではない“母性”が存在する

私は、日本経済新聞の毎週土曜日に掲載される話題の本を紹介する、見開き2面の「書評(読書欄)」を楽しみにしています。12月14日の26面は6冊が紹介されていました。その中の一冊は、『母親になって後悔している、といえたなら : 語り始めた日本の女性たち』(新潮社)であり、目に止まりました。前回、河合隼雄さんの『Q&Aこころの子育て』を取り上げたこともあり、河合隼雄さんの視点との異同が気になって、約1000文字の書評にじっくり目を通してみたのですね。
冒頭の引用は、「後悔している、といってもいいよ…」と、河合さんが寄り添ってくれているような4ページの回答の一部を引用しています。

『母親になって後悔している、といえたなら…』は、社会学者のオルナ・ドーナトの『母親になって後悔している』(新潮社・2022年)に啓発された、NHKの記者のたかはし・あいさんと、ディレクターのよだ・まゆみさんが、「母になった後悔」をテーマに番組を作ったところ、予想を超える反響があったことで出版されたようです。お二人は、声を寄せた人などに次々とインタビューし、傾聴を重ねます。それがまとめられた本なのですね。
この書評(評論家の萩上チキさん執筆)のタイトルは「日本の家族規範 神話にヒビ」です。その最後は、次のようにまとめられています。

データや分析は一度、脇にしまう。まずはとにかく話を聞こう。その構成が、本書を輝かせる。「母になった後悔」を、子や親の特性に矮小化してはならない。何が「後悔」を増やしているのか、その正体を問おう。

母親の言葉をジャッジメントすることなくすべて「傾聴」する

コーチングの「傾聴」はスキルを超えたスキルです。クライアントの言葉をすべて受容します。そこにはジャッジメントは存在しません。クライアントの心の声をくみ取るのです。コーチングは、すべてそこから始まります。

さて、隣の27面は、「今を読み解く」というシリーズテーマがメインの紙面となっています。今回はライターの武田砂鉄さんが4冊を紹介しています。

この4冊に横断する内容が「大見出し」として集約される訳ですが、「男性優位社会 直視を…歪んだ被害者化と決別」という、キャッチ―な言葉が踊っています。今回の日経新聞書評欄は、テーマ性をしっかり打ち出していることが見て取れますね。
コーチングの本質には「ダイバーシティ&インクルージョン」が存在します。(株)コーチビジネス研究所のコラムは、この基盤に支えられています。

『マチズモの人類史』は「マチズモ」の歴史が詳述されているようです。「マチズモ」については、過去のコラムでも取り上げています。エグゼクティブコーチの資格を有する若手A課長と、その妻との架空の1on1として描いてみました。タイトルは、「『コーチングのフィードバックとは何か?』を、妻とのコーチングセッションで考えてみた!」です。一読いただくと幸甚です。
「マチズモ」は、男性による無意識の「防衛機制」なのかもしれませんね。

さて、今回のコーチング解説は、河合さんの『Q&Aこころの子育て…』戻って、「Q5の回答(4ページ)」の最後のメッセージを紹介することにしましょう。「しかし女の人にとって、母性と女性の両方を生きるというのは、すごく難しいことみたいですね…」と、河合さんは言葉にします。

「よい子」という没個性的なパターンに入れようとしている…?

そして女性がそれをやっていくには、一緒に暮らしている男の方がそのことの大事さを理解して、協力していかないとできません。女性が赤ちゃんを産んで母性に徹してくれたら、男の人はずいぶんラクだから、これまで子育てを「お母さん」に任せて家庭から逃げ出していたんだけど、これからは逃げ出しても絶対うまいこといかないですよ。
それとよくあるのは、お母さん自身は必死になって、「お母さん」だけでなく、個人としても生きようとしているのに、そういうお母さんが、自分の子どもは「よい子」という没個性的なパターンに入れようとしている。不思議ですね。子どもだってお母さんと同じで、個性的に生きたいはずでしょう。

坂本 樹志 (日向 薫)

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