ジョコ氏によると、15日にウクライナのゼレンスキー大統領がオンラインで参加した後、各国首脳が意見をぶつけ合い、白熱した。
「その中でバイデン大統領と中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は冷静だった」と明かした。近くの席にいた両首脳の落ち着いた振る舞いが、議論を収束に向かわせたという。
(日本経済新聞11月18日 1面「インドネシア大統領 衝突防止へ首脳は対話を」より)
心理学を学びコーチングの資格を有する新進気鋭の若手A課長と、部長職を長く経験し、定年再雇用でA課長のチームに配属された実践派のSさんとによる、日本経済新聞11月18日(金)の記事に触発されての1on1ミーティングです。さて、今回はどのような展開となるのでしょうか?
オートクラインは、どのような状況で起こるのか?
(A課長)
おはようございます。前回は国債の残高が1000兆円に膨らんでいる、という話から日本経済の行く末に話題が広がりました。そのマクロ経済の動向から、100均のDAISOというミクロの分野に焦点が移りましたね。Sさんの話を聴いていると実に脳が鍛えられます(笑) 私の頭のなかは目まぐるしく回転しています。
(Sさん)
プロコーチでもあるAさんの、「コーチングのセッションが極まってくると、クライアントにオートクラインが起こることがある」という話を思い返しています。私たちはコーチング型1on1をずっと続けていますが、Aさんが私の話に口を挟むことなく、真剣に聴いてくれるので、私の中でオートクラインが起こっているようです。
(A課長)
確か…「傾聴とは?」がテーマになった時ですね。
私はオートクラインを、「徒然なるまま」と「ねばならない」という二つのキーワードを使って説明することにしています。その時も…
「筋道を立てて論理的に話さなければ…」という、「ねばならない」を意識することなく、頭に浮かぶことを「徒然なるまま」クライアントは言葉にします。話の途中でコーチは口を挟むことなく、真剣に聴いてくれます。時間が経過していきます。すると、クライアント自身が、自分の言葉を自分の耳で聴いていることに気がつきます。自身の内側で「無意識の何か」が「意識」として浮上してくるのを感じるのです。
と、オートクラインが起こる状況を話したと思います。
「心理的安全性」の第一歩はこの言葉の認知が広がること…
(Sさん)
そうなんです。このところ心理的安全性というワードが俄然注目されるようになりました。オートクラインは、その感覚が生じていないと起こりません。関連本もさまざま出版されています。ただテクニックという側面で書かれている場合が多く、「ちょっとなぁ~」と感じています。
(A課長)
そうですね… ただ「まず言葉ありき」だと思うので、言葉がまずもって広がっていくことが大切だと思っています。心理的安全性という環境が空気のように受けとめられるには時間が必要だと思います。ステップバイステップですね。
(Sさん)
私は気が短いのでイライラしてしまいますが、Aさんのそういう目線は好きだなぁ(笑)
さて今日のテーマですが、18日金曜日の日経新聞を題材にやってみたいと思うのですが、いかがですか?
(A課長)
そう来ると思っていました。 1面は、Sさんと同じ広島出身の岸田首相と習近平国家主席が笑顔で握手している写真でしたね。
(Sさん)
笑顔っていいですよ。もちろん日経新聞の意図として、この笑顔の写真を選んでいます。「トゥキュディデスの罠」をなぞるかのような米国と中国とは違って、異なる立ち位置なのが日本です。特に経済面でのデカップリングは回避が必要です。日経新聞だからこそ、強い意志をもって1面を構成したと思います。
「トゥキュディデスの罠」とは…?
(A課長)
「トゥキュディデスの罠」を歴史好きのSさんはよく口にしますね。私の理解はちょっとあいまいなのでWikipediaで確認します。
トゥキュディデスのわな(英: Thucydides Trap)とは、古代アテナイの歴史家トゥキュディデスにちなむ言葉で、従来の覇権国家と台頭する新興国家が、戦争が不可避な状態にまで衝突する現象を指す。アメリカ合衆国の政治学者グレアム・アリソンが作った造語。
回避あるのみだ!
バイデン大統領と習近平国家主席も、11月14日に会談を設けています。どのような合意が形成されたのか、ググってみましょうか。…JETROのサイトがいいかな?
タイトルは「バイデン米大統領、中国の習国家主席と初の対面会談、対話継続で合意」ですね。
…こうした中、今回の首脳会談が両国関係の緊張緩和につながるかが注目された。共同声明などの発表はないものの、ホワイトハウス公表の会談要旨では、簡素な内容だった過去5回のものと比べると、意見を交わした議題や両首脳で合意した点が含まれ、厚みのある内容となっている。
それによると、バイデン大統領は習主席に対して、米国は中国との競争は継続するが、それが衝突に発展してはならないとし、両国は責任を持って競争を管理し、開放された対話のラインを維持することが重要と伝えたとしている。
この点は、会談後にバイデン大統領が現地で行った記者会見でも強調しており、記者の問いにも「新冷戦の必要はないと固く信じている」とした。
G20の首脳間には「対話」が存在した…
(Sさん)
とりあえず一安心です。
笑顔と言えば、同じ1面のインドネシアのジョコ大統領が実にチャーミングです。不安を抱えることがあたりまえの日常となっていますが、18日朝は日経新聞が世界の要人3人の笑顔で1面を飾ってくれましたので、ちょっと幸せな気持ちに包まれました。
(A課長)
今回のG20サミットで議長を務めたジョコ大統領のことを世界は称賛していますね。大変な役回りだったと思います。タイトルは「衝突防止へ 首脳は対話を」です。
インドネシアのジョコ大統領は17日、日本経済新聞の単独インタビューに応じた。自身が議長を務め16日に閉幕した20カ国・地域首脳会議(G20サミット)を振り返り、各国が衝突を避けるため「首脳同士の直接対話が必要だ」と強調した。事前に採択が危ぶまれながら、実現にこぎ着けた首脳宣言に関し「戦争のさなかで最善の結果だった」と述べた。
日経新聞の1面を俯瞰してみて気づいたことがあります。
(Sさん)
俯瞰…ですか、何でしょう?
(A課長)
「対話」という表現です。
(Sさん)
なるほど… ジョコ大統領は直球で「対話」の必要性を語っていますし、岸田・習会談も、内容を読むと… 「対話」が繰り返し登場する。JETROのサイトも「対面会談」「対話継続」が骨子ですね。
(A課長)
Sさん、「対話」は普通に使われる言葉です。類似の表現で「会話」もありますが、その違いをしっかり説明しているサイトがあります。
(Sさん)
それほどの違いを感じませんが…
(A課長)
コーチングは会話ではなく対話なのですね。「CBLコーチング情報局」というサイトにそのことがわかりやすく書かれています。
それによると…
対話は英語ではダイアローグ(dialogue)であり「価値観の異なる相手と双方向コミュニケーションを通じて相互理解を深めていく行為」という意味です。
と説明されており、日経新聞の1面で用いられる「対話」がまさに、そのことを物語っています。
「対話」によって相互理解が実現する!
(Sさん)
なるほど… このサイトは… コーチングのたくさんのキーワードが… 一話完結で、まさに簡潔に紹介されている。ビジュアルとタイトルが見事に融合していて、コーチングの世界観が伝わってきますね。
(A課長)
私がコーチングを学んだコーチビジネス研究所が、8月にこのサイトをオープンし、月~金の毎日、コーチングのキーワードが一話完結でアップされています。
コーチングの用語については、ネットで調べるとさまざま出てくるのですが、ほとんどが「コーチングをある程度理解している人」を前提に説明しているような印象です。
トップページの「コーチングの“わかりにくさ”を紐解いてまいります」を読むと、そのあたりを踏まえていることが伝わってきます。
コーチングの対象者はカウンセリングと異なり、パフォーマンスの向上を願う健常者を前提としています。対象者であるクライアントと伴走しサポートするのがプロコーチの役割であり、その実現はコミュニケーションを通して展開されます。ただし、外形的には「会話」なので、プロのコーチがどのような内容の知見を持ち、どう活用しているのかは“わかりにくい”のです。
コーチングには高い専門性が求められるのですが、この“わかりにくさ”によって多様に解釈されている状況です。私どもは、その“わかりにくさ”を「コーチング情報局」を通じて紐解いてまいります。
(Sさん)
外形的には「会話」だが、その本質は「対話」である、ということですね。なるほど…
(A課長)
18日の日経新聞は、1面の「対話」に響いたこともあり、他の紙面を読むのもいつにも増して、気合が入りました。15面の「ビッグBiz解剖」でデンソーを取り上げた記事を読むうちに、QRコードのことがイメージされたのです。
(Sさん)
QRコードですか? スマホ、タブレットとQRコードは切っても切れない関係と言うか、世界中の人に恩恵をもたらした、いわば絶対的なインフラですよね。
(A課長)
QRコードはデンソーが開発しました。
(Sさん)
えっ、本当ですか? それは知らなかった…
QRコードは「オープンンソース」ゆえに世界化が実現した!
(A課長)
デンソーは、QRコードをパテントとして商売にしようとしたわけではなく、世界化したのは偶然というか、オープンソースだったためです。そのあたりのことがWikipediaで描かれています。
トヨタ生産方式「カンバン」(ジャストインタイム生産システム)において、自動車部品工場や配送センター等での利用を念頭に開発された。しかし、誤り検出訂正の能力が高く、また、オープンソースとされたことから、トヨタ自動車のサプライチェーンの範囲から飛び出して独り歩きを始め、現在では日本に限らず世界に広く普及している。
(Sさん)
QRがQuick Responseというベタな英語から来ているのも今知りました。必要に迫られ、オープンソースでスタートしたことが結果として世界化したということか… 開発した技術者たちがQRコードを世に送り出した時点で、今日の状況になるとは、誰も想像していなかったでしょう。
(A課長)
デンソーの上層部は商売としての直接的利益がもたらされなかったことで、口惜しい思いを抱いたかもしれませんが、開発した技術者のみなさんは、誇りを感じていると思います。アドラーが唱える「共同体感覚」を心底実感できたのではないでしょうか。
完成車メーカーが自動車業界のトップであるとは限らない!?
(Sさん)
稲盛さんの「利他の精神」につながりますね。デンソーは自動車部品のメガサプライヤーですが、記事を見ると、すごい会社であることが伝わってくる。広大なすそ野が形成されている自動車業界のトップに君臨する完成車メーカーは、自覚無自覚は別として「上から目線」であるのが常態です。
デンソーは、いい意味でそのことに縛られていないので、この混とんとした時代にはプラスに働いていくのではないでしょうか。
デンソーの電動化を市場は評価している。デンソーの足元の時価総額は約6兆円だ。一時ホンダを抜き、日本電産を上回り続けている。インバーターをはじめとする電動化製品の売上を25年に21年の2倍となる1兆円に引き上げる考えだ。
東海東京調査センターの杉浦誠司企業調査部長は、「電動化製品で半導体まで自社で開発する技術力に安定感があり、環境重視の投資家の受け皿になれた」とする。
(A課長)
私はいつもコーチングのことを考えてしまうので、いろいろ情報を得て刺激を受けると、何かしらコーチングにつながっていきます。
「対話」という言葉から、「CBLコーチング情報局」につながりましたし、そしてデンソーの「オープンソース」をSさんと語るうちに、一般社団法人日本エグゼクティブコーチ協会の会長でもある五十嵐さんの考えが想起されてきました。
協会が設立された目的は、「人と人が関わり合う社会にとってなくてはならない、コミュニケーションの基盤であるコーチングが、企業の枠を超えて広がり、浸透していくことを願って」のことだと聞いています。
そして、五十嵐代表のコーチビジネス研究所「CBL情報局」には、オープンソースが感じられるのです。
私はCBLのコーチングスクールを受講しています。この講座は、「講座そのものがコーチング」でした。その中で、さまざまなスキル、ノウハウを学んでいます。実践を積み重ねていくことが、いかに重要かも体験しました。
他の企業、団体のスクールは受けていないので評価は控えますが、いずれも受講料をいただく以上、それに見合う価値の提供を心がけていると思います。当然各企業はそのノウハウをオープンにはしないと思うのですね。
ところが、「CBL情報局」から発信される情報は、わかりやすく、かつ深いものです。つまり、ノウハウを開示してくれている印象です。ネット上で「ここまで開示してもいいの?」と感じさせられる内容です。
内向きというのは、かなり無知というものにつながっている…
(Sさん)
オープン… まさに世界に求められている大テーマですね。
日経11面には「穀物回廊の延長合意」というタイトルで、黒海に安全な回廊を設けてウクライナ産穀物の輸出を可能にする4者合意の延長が決まった、と国連のグテーレス事務総長が17日に発表したことが記事になっています。対話による成果です。
私は国連というと、事務総長就任の可能性もあった緒方貞子さんの言葉を思い出します。それは…
内向きはだめですよ。内向きの上に妙な確信を持ってそれを実行しようとすると、押しつけになりますよね。理屈から言えば、そうではないですか。内向きというのは、かなり無知というものにつながっているのではないでしょうか? 違います?
(A課長)
混沌する世界ですが、「オーブンな対話」があれは「トゥキュディデスの罠」は絶対回避できます。11月18日の日経新聞を読んでそのことを確信している自分がいます!
(Sさん)
ありがとうございます。Aさんとの対話であるコーチング型1on1をこれからも続けていきましょう。リスキリングの醍醐味を実感できている自分がいます!
坂本 樹志 (日向 薫)
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