リーダーシップ理論の変遷(6-1)〜『7つの習慣』コヴィー博士の「前書き」と『サーバントリーダーシップ』〜(2022/01/21)

世界中で4000万部以上発行されたベストセラー書籍である『7つの習慣』の著者、スティーブン・R・コヴィー博士が、ロバート・K・グリーンリーフの『サーバントリーダーシップ』25周年記念版(日本語翻訳版は2008年12月に「英治出版」から発刊)の巻頭に、「前書きに代えて」を寄せています。

このたび『サーバントリーダーシップ』の二十五周年記念版の出版にあたり前書きを書かせていただけることになったが、これは、とても光栄なことだ。なにしろ、本書はこの二十五年間、直接的にせよ間接的にせよ、絶大な影響力をまわりに与えてきたのだから。 長年にわたって多くの<組織>と仕事する中で、私はこの本が与える衝撃を目の当たりにしてきた。そして、最も大きな成果はこれから現れるだろうと確信している。(中略) われわれひとりひとりを促している、人間の根本の部分には、現状よりもさらに上を目指し、ありふれた自分を超えた存在になりたいという欲求がある。その欲求をうまく取り入れられれば、モチベーションというまったく新たな糧を活用できるはずだ。だからこそ、ロバート・グリーンリーフのサーバントリーダーシップの教えが、すばらしく刺激的で、精神を高揚させ、自分を高めてくれるものだと思えるのだろう。……

最大級のリスペクトです。
今回もこれまでのコラムに引き続き、定年再雇用のSさんと心理学を学びコーチングの資格を持つ若手A課長に、1on1を展開してもらうことにしましょう。
今回の1on1では、Sさんの自己開示がどんどん進みます。書き手の私も、ややドライブ過剰のSさんに、あえてブレーキをかけないで、身を委ねることにします。

『サーバントリーダーシップ』の1on1を提案するA課長です。

<Sさん>
リーダーシップ理論の変遷を1on1のテーマとして取り上げてきましたが、いよいよサーバントリーダーシップの登場でしょうか?

<A課長>
はい… と思っているのですが、1on1のテーマは、基本的に私が選ぶのではなくSさんの意向といいますか… あまり乗り気でないのであれば、別のテーマにしますけど…

<Sさん>
まず了解をとる、というコーチング型1on1を念頭に置くAさんらしさが伝わってきました(笑)
Aさんはすごく勉強家で、実践派の私と違うところがありがたいのですね。会社のなかで、切った張ったを続けていると…どこか感受性が偏っていくのを実感します。イカンなぁ~と思いつつ、どうも学者先生の理論に対して眉唾で見てしまうのです。

ただ、Aさんのおかげで、リーダーシップ理論についても表面的な理解ではなく、提唱者が思いを込めて伝えたいところとかが腑に落ちてきて、実践が補強された感じです。この感覚は新鮮ですよ。

<A課長>
ありがとうございます。私は営業を経験していませんし、もともと本を読むのが好きなタイプなので… だからこそ、といいますか、Sさんのような人がうらやましいところもあります。コンプレックスかな…(笑)

<Sさん>
おそらくどんな人もコンプレックスを抱えているんじゃないですか。実はAさんのチームに入る前は、Aさんのことを誤解していたようです。
“キレッキレの企画マン”で、何と表現していいかな… ちょっと冷たい雰囲気を感じていましたから(笑)

自分のことは案外わかっていない…?

<A課長>
そうなんですか… 自分にはそんな声は届いてこないので… 自分がどう見られているのか、案外自分はわかっていないなぁ、というところです(笑)

<Sさん>
本当にそうです。だからこそ人間関係は難しい…
では、サーバントリーダーシップをぜひお願いします!

<A課長>
了解しました!(笑)

<Sさん>
実は、Aさんが何度もサーバントリーダーシップのことを話すので本でも読んでみようか、とアマゾンで検索したのですが、ブランチャードの『新1分間リーダーシップ』とは違って、分厚い本なので諦めました(笑)
それから…何といいますか、サーバントというネーミングが召使を連想して、その段階でモチベーションが減退します。

<A課長>
なるほど… 確かに700ページ近くありますから… 
サーバントという英語について、そのように訳される場合もありますので、分からないわけでもありません。直訳は「奉仕」となっています。

丸刈り5厘…!?

<Sさん> 「奉仕」ですか… う~ん、二宮尊徳がイメージされます(笑)
道徳という言葉が浮かんできました。その道徳ですが、私の個人的体験もあって校則を連想します。
私は広島出身です。私が通った公立中学校は、男子の丸刈り5厘が校則でした。今どきの若者にとっては“異常な世界”ですよね。
ですが… 私はそれなりに適応していました(笑)

少し前に、ソニーを大復活させる平井一夫さんの『ソニー再生』を読んだのですが、サブタイトルである「異端のリーダーシップ」に惹かれて手に取っています。
平井さんは帰国子女で、次のような箇所があります。

『ソニー再生』の平井さんが語る逆カルチャーショックとは…?

また日本の公立中学校で異邦人のやり直しはまっぴらだ。そもそもなぜみんな同じ制服を着て髪型まで学校に決められないといけないのか。いったい、誰がどんな理由で決めたのだろうか。日本の先生が言う「中学生らしく」なんて、とてもついていけそうにない。もちろん日本の学校にも良い部分はたくさんあるのだろうが、少なくとも当時の私の目には、日本の学校というものがとても息苦しい場所に映ってしまっていた。

幼少期に米国のライフスタイルに接し、それを自明のものとして適応していた平井さんは、まさに逆カルチャーショックだったのですね。

<A課長>
丸刈りについては、私も信じられない思いです。ましてや今の小中学生にとっては、遠い異国の出来事のように受けとめるでしょうね…

<Sさん>
私は昭和33年生まれですが、考えてみれば…ほんの13年前に原爆が落とされています。 記憶に鮮明に刻印されている東京オリンピックは、幼稚園年長組でした。その頃米国が介入しベトナム戦争がはじまります。
戦争と言えばベトナム戦争でした。同時代とはいえ、遠い異国の出来事の感覚でした。

<A課長>
“もはや戦後ではない”という経済白書の有名な言葉は昭和何年でしたか…?

<Sさん>
私が生まれた頃だと記憶していますが、ググってみましょうか… 昭和31年です。

戦後10年と2010年頃から今に至る10年間は何が違うのか…?

<A課長>
終戦から10年ちょっとなのですね… 今を基準にすると10年前は2010年頃となります。同じ10年でも、戦後の10年の劇的な変化と比べると… 何も変わっていないような気がします。

<Sさん>
劇的な変化は、戦争によってインフラなどあらゆる物的資産が壊滅した、という背景があります。つまりすべてがブルーオーシャンでした。投資をすればリターンが約束されるという環境です。ただ日本国家の財政は戦争により破綻していました。

<A課長>
エンジェルではないですが、資金の貸し手は誰か、ということになりますね。

<Sさん>
このあたりは以前興味があって調べたのですが、まずは米国です。占領地政策としてガリオア・エロア基金を使っています。すごい金額なのですが7割が無償供与なのですね。 そしてIMFと国際復興開発銀行、特に後者の通称世界銀行が復興支援としての役割を担います。

<A課長>
高校の政治経済の科目を思い出します。1on1でその話が出てくるとは… Sさんの口から現代史が次々に出てきますが、リアル感が伝わってきました。

<Sさん>
あともう一つの要因はGHQによる財閥解体です。戦前世代の経営者が強制的に排除されました(笑)
これがなければ、ポテンシャルを秘めた新世代は表にでることが出来ませんでした。わけがわからないまま背中を押された若者たちは、五里霧中の中、実践によって徐々に自信が育まれ、そして高度経済成長を実現させたのです。

旧来型の価値観が崩壊したことで、前例踏襲にとらわれることなく、イノベーションに邁進できました。まさに“環境のおかげ”です。

米国は理想主義+資本主義を極め続ける国家…?

<A課長>
エキサイティングです!

<Sさん>
被爆地広島の出身なので、「米国とは?」という疑問が常に頭の中を巡っているようです。 米国はピューリタンが原点ですから、理想主義の国です。同時に、資本主義を極め続けている国なので、投資とリターンを冷徹に分析するところも感じます。戦争すらそうです。いや戦争だからこそ、かもしれません。

極め続ける…というのは変な表現ですが、どのような逆境でも資本主義でいうところのアニマルスピリットを失わないのです。この両面のイズムというか、戦略が日本という国家を実験台にすることで、成功しました。

ただ、ソニーがコロンビア・ピクチャーズを買収し、ロックフェラーセンターが三菱地所の手に渡ったことで、自分たちは“お人よし”だったのでは? という疑念が生じ、日本に対する国家戦略が転換します。

バブル以降の、失われた30年はもちろん複雑な要因がからまっていますが、常に地球上で最強であることが国家の精神として血肉化している米国に、「調子に乗るな!日本よ」という、私たちが透視しにくい感情が喚起されたのではないでしょうか。

そして…結果的に米国にとって“日本が安心できる国”になったのです。
これと同じことを中国に対して繰り返していますね。ただ、14億人を曲りなりにも束ねている国なので、日本のようにうまくいくか… 何とも予断は許しません。

<A課長>
ちょっと…すごい解釈ですね。

<Sさん>
失礼しました。思考にドライブがかかってしまいました(苦笑)

<A課長>
私はSさんが“道徳”から何をイメージするのかを聞いて、コーチングという言葉から何を連想するか…興味があります。

コーチング≒厳しめのスポーツコーチ…が日本でのイメージ!?

<Sさん>
いい質問です(笑) 
Aさんからコーチングについて、繰り返し“深いところの思い”を聴くうちに、コーチングの素晴らしさ、そしてコーチングマインドが日常会話の中に広がり、そして浸透していく必要があると、今は実感しています。

<A課長>
今は…ですか?

<Sさん>
当然その質問が返ってきますよね(笑)
もちろんコーチングという言葉は知っていました。ただ、私は「巨人の星」と「アタックナンバーワン」で育った人間なので…(笑)

今でも星一徹、飛雄馬親子がうさぎ跳びをしているテレビの映像が浮かんできます。 ♪…思い込んだら試練の道をゆくが男のド根性…血の汗流せ、涙をふくな…♪ ですからね。もちろん今思えば“ドン引き”ですが…

<A課長>
そうなんです! コーチというとスポーツを連想するし、高校野球にはまだ星一徹のにおいが漂っているような気がします。

<Sさん>
私はサッカーのJリーグによって、高校野球に対する見方が変わってきたものの、日本にはコーチングの本質がまだ伝わっていません。ここは大きな障害だと思いますよ。

<A課長>
同じ文化を共有する人たちが、その文化の中で口にする“言葉”によって、その人たちに共通したライフスタイルが形成されます。

コーチングは米国発であり、スポーツだけを連想する人はいません。むしろ企業経営としての概念が中心です。
私はコーチングが日本に広がっていくことを切望しているのですが、コーチングという呼称も含めて、壁を突破する糸口を見出したいのです。

<Sさん>
熱いですね~

<A課長>
Sさんの米国、そして日本国家論に煽られてしまいました(笑)
今回の1on1の最後に、グリーンリーフが、哲学者のパーシー・ブリッジマンの言葉を引用し、有能なリーダーにもかかわらず狭い世界に閉じこもってしまう背景を語ったところを紹介させてください。61ページです。

「……多くの人は、首尾一貫したひとつの言語体系に、すべての経験を押し込もうとしている。そうすることで、自分たちの言葉だけの世界を作り上げ、その中でしか存在できなくなり、仲間にも同じ言語世界に住んでもらってその世界を守ろうとするようになるのだ」。 当然、ここからカルト集団が生まれる。カルト集団とは、発展を続ける主流から、このようにして孤立していくグループだ。自分たちだけの閉ざされた言語社会にとどまっているため、彼らは、ほかの人々を導く機会を失ってしまう。 誰から見ても有能なリーダーが、こうした閉ざされた言語の世界に囚われ、導く能力を失ってしまうのは大きな悲劇である。

<Sさん>
いや~ 含蓄にあふれています。

<A課長>
サーバントリーダーシップは、Sさんのイメージする“道徳”ではなく、とても実践的なリーダー論なのですね。「あるある…」が満載されています。

著作はコヴィー博士の「前書きに代えて」の後、
「サーバントとリーダー…このふたつの役割を、実在するひとりの人間が併せ持つことはできるだろうか 」というグリーンリーフの言葉から始まります。

次回も引き続きサーバントリーダーシップについてSさんと1on1を進めていきたいのですが、よろしいでしょうか?

<Sさん>
ものすごく興味が湧いてきました。ぜひともお願いします!

坂本 樹志 (日向 薫)

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