Hさんはスマホをおもむろに取り出し、
「このロゴを見てくれますか?HUAWEIってあるでしょう、ファーウェイじゃなく正しい発音はフアウェイなんですよ」
と、笑みを浮かべ私に語りかけます。
令和という新しい時代となりましたので、本コラムも少し趣を変えて、30年来の友人であるHさんとの楽しいやりとりを数回シリーズで紹介しようと思います。
Hさんは私と同じく中小企業診断士です。
中西先生の門下生として共同執筆をしたのが縁で、以来付き合いは30年に及びます。
最近は数年に1度の邂逅ですが、先日
「五十嵐さん、本当にお久しぶりです。四谷にオフィスを構えられたにもかかわらずご挨拶ができていないので、お伺いしたいのですが…」
と嬉しい電話がかかってきました。
冒頭の会話は、居酒屋系焼鳥屋の大手チェーン店に場所を移し、座るや否やHさんの口から飛び出した一節です。
大手企業の中国現地法人総経理を経験したHさんの中国談義は時に脱線もし、私を戸惑わせますが、コーチングの視点がちりばめられており参考になります。
シリーズの初回は、われわれ日本人が“思い込みがちな中国という国のイメージ”を、よい意味で外してくれるHさんの語りにお付き合いください。
「私は『中国は…中国人は…』とか『日本は…日本人は…』という表現を極力避けるようにしています」
駐在を開始し、上海の日本商工クラブで行われる会合に参加してHさんは気づきます。
日本人だけの集まりであるその場で多くの企業人が『中国は…中国人は』と頻繁に口にすることを…。
尊敬を込めた語り、あるいは日本の優位性を強調する局面…内容はさまざまですが、不思議と“中国人の個人”“日本人の個人”が登場しない、とHさんは言います。
「それぞれの国は固有の歴史を抱え、当然それぞれの文化を持っているけれど、そのフレームで中国人個々人を括ってしまうことに抵抗を覚えたんですよね」
「中国現地法人のスタッフは、私以外すべて中国人でしたが、それぞれが実に個性的でした。
副総経理はTさんという大連出身の女性です。
カナダ国籍を取得し国家公務員としてカナダで仕事をしていた北京出身の彼とネットで知り合い、スカイプだけで交流を続け結婚しています(結婚前に直接会ったのは、カナダと北京の各1回のみと言っていました)。
その彼が日本人である私のことを“日本人は…”とネガティブに語るので、
『そういう言い方はやめたほうがよい。日本人にもさまざまな人がいるしH総経理は、あなたがイメージしている日本人とは違うよ。あなたこそ上海人から“北京人は何かといえば政治的議論を吹っかけるよね”と一般論を言われることに抵抗を持つじゃない』
、と言ってやりました、
と笑いながら私に話してくれます」
私はその話を聴きながら、ダイバーシティに想いを馳せていました。
コーチングとはすなわち一人ひとりの多様性を重視し、そこを立脚点として関係性を築いていくことです。
Hさんの話はたくさんの示唆を与えてくれます。
次回もHさんの話をとり上げていきます。楽しみにしてください。
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