「自分のことは自分が一番よく判っている」と言い切る人、「自分のことがよく判らない」と考えている人、両方の見方ができる「自分」。
そして、その両方の見方も正解であり不正解でもある摩訶不思議な存在の「自分」概念。そんな自分を知る、「自己理解」について、今回は話を進めていきます。
自分の顔は直接触れることはできても、見ることはできない
「自分のことは自分がよく判る」と思う部分を顔で表現するとしたら、自分の手で触れることで、肌の感触や凹凸を理解することは、他人よりも自分自身が一番理解できる直接的な感覚です。
しかしながら、直接目で顔を見ることは難しく、視界に入るとしても鼻の一部分だけで、「鏡」や何かに映った自分を客観的視点で理解していることになります。
つまり、自分の外見を理解することさえも、何かを通して客観的に見なければならない部分があるということです。
もっと複雑な自分の内面を見ることは、自分を知る方法をきちんと知っておかなければ、全体を見渡すことも、内側を理解することも、輪郭がぼやけてしまうことにつながるのです。
自分から見える自分と、他人から見える自分は違う
例えば、同じ風景を数人で見ていたとしても、自分が意識して見ている部分と、他の人が見ている部分が違うことは、経験したことがあると思います。
例えば、同じ場所を写生しても、一人として同じ色や形で絵を書くことはまずありません。
それは、自分が気になる色や形、空間が、一人ひとり違うからです。
一人ひとりが、自分の感覚のフィルターを通して、同じ場所を見ているのです。
それは、人間関係でも同じことで、すごく礼儀を重んずる人から見たあなたは、「落ち着きがない」と見えるかもしれませんが、ルールよりも自由を大切にした人から見れば、「活発で行動的」と見えるかもしれません。
このように、同じあなたを見る他人のフィルターは、相手の価値観や考え方によって大きく変わるものなのです。
他人からみた「自分」を否定することや、逆に気にしすぎて「自分が判らない」になってしまう必要はなく、あなたという風景を見ているフィルターの違いだけの話です。
他のフィルターを通した時「そう見える自分もある」ことを受け止めることが、自己理解を深める一歩になるのです。
自己理解は自分らしさにつながる
自己理解を深めるには、自分の気質や性格だけでなく、道徳観や価値観、育った環境や風土、行動や態度などのパターンを知ることが必要になります。
例えば、関西と関東では味付けもせっかちさも違うように、人には育った環境によっても価値観や大切なものが変わってきます。
それは、関東が悪い、関西が悪いといったジャッジではなく、土地柄であり環境です。
自己理解を深める時にジャッジは必要なく、自分は何に対して怒ったり喜んだりするのか、大切にしているものは何か、ストレスがかかった時にどんな行動をとっているのかを考え整理していきます。
自分では顔の全体を見ることができないように、自己理解を深めるためには他人のフィードバッグが必要です。
自分はこう感じているけれど、人からはどう見えているのかを評価することなく違うフィルターを通して教えてもらうのです。
また、他人との違いを知ることも、自己理解につながります。
自分が見ている風景と、相手の見ている風景を重ねることで全体像に近づくように、相手になくて自分にあるもの、その逆の場合があることを理解し、互いを否定せずに受け止めることで、「自分らしさ」を明確にすることができるのです。
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